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住宅ローン2017年度の金利動向は今後どうなるか?わかりやすく解説します

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2016年12月に一時増加したが、しばらくは今の低金利が続く

どうも千日です。2016年2月の日銀によるマイナス金利政策がトリガーとなり、さらに英国のEU離脱ショックから歴史的な低金利が続いていた長期金利が9月には5カ月ぶりに急上昇しました。 
 
主因は7月29日の日銀の金融政策決定会合です。あくまで物価上昇指数2%を目標に掲げている日銀は、その後の9月21日の金融政策決定会合で長期金利をおよそ0%程度に誘導することを新たな政策として発表しました。
 
フラット35の2016年9月から10月への適用金利の動きはというと、
  • 15年~20年固定0.96%⇨0.95%(△0.01%)
  • 21年~35年固定1.02%⇨1.06%(+0.04%)

長期の固定金利については、おおむね増加となりました。そして2016年10月から11月にかけてはどちらも下がりましたね。

  • 15年~20年固定0.95%⇨0.93%(△0.02%)
  • 21年~35年固定1.06%⇨1.03%(△0.03%)

そして、トランプショックです。米国の長期金利の上昇の波及効果で日本の国債利回りも上がり、2016年11月から12月にかけてフラット35の金利が上がりました。

  • 15年~20年固定0.93%⇨1.03%(+0.10%)
  • 21年~35年固定1.03%⇨1.10%(+0.07%)
f:id:sennich:20160324232748j:image 

今回のエントリーは、日銀のマイナス金利政策から今後2017年度までの固定金利と変動金利の動向についてわかりやすく解説していきます。 

日銀のマイナス金利政策とは

日銀のマイナス金利政策を一言で言うと、銀行が日銀に預ける預金の利息をマイナスにするという政策です。 
全部の預金利息がマイナスになるのではなく、金融機関が今後日銀に新たに預ける預金の一部から金利をマイナスにするということです。 
 

日銀の狙い

日銀がマイナス金利政策に踏み切った思惑は下記の様なものです。
 
  • 預金に利息を取られるなんて金融機関は嫌がるだろう
  • 金融機関が日銀に預けていたお金が企業や個人への貸し出しに回る
  • そのお金は個人の消費や企業の設備投資に活発に使われるだろう
  • 経済が活発化して物価指数が2%を超え、デフレを脱却できる
  • デフレを脱却したら長い間ゼロ金利としていた金利を上げよう
思惑どおりになった部分と、思惑どおりに行かなかった副作用の部分があります。
 
 

実際の市場と経済の反応

これに対して、実際の経済の反応はこうです。
預金に利息を取られるなんて嫌だと金融機関は考えました。
そこでまず、余剰資金の運用として、日銀と同等に安全で、すぐに投資出来て、金利も幾らかつく国債の購入に走りました。
多額の資金を持った銀行が一気に国債の買い入れを行ったため、国債の相場が短期間に大幅上昇して長期金利がマイナスになりました。 
 
国債の価格が上がるとなぜ長期金利が下がるのか?それもマイナスまで行ってしまうのか?についてはマイナス金利で住宅ローンはどうなるか?分かりやすく解説します - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答えるでわかりやすく解説してます。
 
国債の金利がマイナスになってしまうと、個人はともかく利益を出さなければならない銀行はこれ以上国債を買えなくなりました。そりゃそうですよね。
そこで銀行は国債に次ぐ安全な投資として住宅ローンの獲得に乗り出しました。住宅ローンっていうのは銀行にとっては超優良融資案件なんですよ。
 
  • 物件に第一順位の抵当権の設定を受けるので利用者が返せなくなってもほぼ取りはぐれが無い。
  • マイホームは利用者にとっては生活の基盤なので、他の支払いや返済よりも優先させ、死にものぐるいで返済にコミットする。
 
ということです。
 
そこで銀行間の住宅ローン争奪戦が始まりました。まず三井住友銀行が2月の途中から金利を下げました。
 
他の都銀もそれに追随し、預金金利も下がりました。2016年3月には長期金利と10年固定金利を中心として史上稀に見る低金利となり、さらにEU離脱ショックで8月には更に低下してます。
 
しかし、9月21日の日銀の金融政策決定会合でマイナス金利の副作用を修正するための長期金利の操作(0%に誘導)政策を発表し、9月でいったん上がったフラット35の全期間固定金利は10月で横ばいとなり、11月には下がりました。 

これに対して10年固定はというと、9月でいったんあがり、10月11月と横ばいです。

 
 

マイナス金利政策がもたらした副作用とは

日銀にとって想定外だったのは、年初から円高・株安が進む中、中国の景気減速や英国の欧州連合(EU)離脱などのリスクが顕在化し、企業や家計の心理が悪化したことです。

一般の家計では、消費を増やす余裕が無くなりました。2016年6月の家計調査では2人以上世帯の実質消費支出は前年比2.2%減少しており、利息収入の減少や年金退職金の運用難が預金者の将来不安を呼び、家庭が財布のひもを引き締めざるを得ないんです。

 

借り換えの増加がもたらす金融機関の業績悪化

ここまで金利が下がったことで銀行間の住宅ローン争奪戦が激化し『借り換え』の増加をもたらしました。
 
三井住友銀行など主要8行の2016年2月の借り換え申込件数は約2万8千件で前年比の約2.5倍でした。さらに3月には前年同期比3.6倍になったとのことです。
 
つまり10年位前に住宅ローンを借りた人たちが、今の低金利の機会を捉えて金利の負担を軽くする為に今の金利水準でローンを借り換えたということです。
 
借り換えというのは、高い金利でA銀行から借りていた住宅ローンを返す為にB銀行から安い金利で住宅ローンを借りて一括返済するということです。
 
  • お金はB銀行からA銀行に動いただけ
  • A銀行は高い金利をもらえなくなる
  • B銀行は多額のお金を赤字覚悟の安い金利で貸す
 
いかがですか?『借り換え』が増えてもトータルで経済は活発化せず、金融機関の利益を圧迫していくんですね。
 
国内メガバンクの2016年第一四半期決算では、本業の儲けを示す実質業務純益が軒並み減益となりました。
銀行にとって、儲けになる貸出金利が過去最低水準まで下がる中、コストである預金金利を引き下げる余地がほとんどなく、利ザヤが一段と縮小したためです。
 

貸し渋りに発展する恐れ

マイナス金利による収益悪化が長期化すれば、銀行が一転して「貸し渋り」に走る可能性もあります。

マイナス金利をさらに引き下げれば、お金の貸手と借り手をつなぐ銀行の機能が失われかねません。

今の低金利は、そういう綱渡りの状態を続けているような、とても不安定な状況なんですよね。

 

『景気判断の下方修正』という現時点の政府の自己評価

マイナス金利によるプラス要因として、住宅ローンの金利の低下をはじめ個人や企業にお金が回りやすくなったことは確かです。
 
しかし
 
一方で、マイナス金利によって先行きの不安感を煽ったことも確かです。
 
  • 中国人を中心とするインバウンドの増加
  • 東京オリンピックによる地価の上昇や設備投資の増加
こういったプラス要因の中で、資金を借りやすい状況であるにもかかわらず以下のような不安感が拭えないんですね。
 
  • 所詮は一過性のものではないか?
  • オリンピックが終わったらどうなる?
 
皆が『そんな上手くは行かんよ』と慎重になっているんです。
 
将来の不安感による消費の『弱さ』がプラス要因を上回ってしまった。
 
これが政府の評価です。
 
 

2016年7月の月例報告

では、内閣府の公表している直近の内閣府ウェブサイトの常時暗号化による「https:」への切り替え - 内閣府を見て行きましょう。2016年3月に下方修正されてから「住宅建設」を除いて軒並み下方修正に振れています。
 
全体:このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続く。
2016年2月にも「緩やかな回復基調」としていましたが、「このところ一部に弱さも見られる」の「一部」という文言を外しました。
全体として下方修正したという事です。
 
3月に下方修正してから、7月までに全体的な評価は変えていませんね。その一方で6月には消費税の増税を2年半延期してます。
増税すると僅かに残された回復の芽も無くなってしまうという判断であったのでしょう。
 
個人消費:消費者マインドに足踏み。おおむね横ばい。
2016年2月までは「総じてみれば底堅い動きとなっている」という表現から一転して、3月に表現を変えました。個人消費については明らかに減速したという事で7月も同じ表現です。
 
5月の家計調査では実質消費支出(住宅除く)で前月比2.0%の減少になっています。販売側の統計でも5月の商業動態統計では前月比減又は横ばいになっています。 
 
住宅建設:持ち直しの動き。
2016年2月の「おおむね横ばい」という表現から上方修正です。首都圏のマンション総販売戸数は緩やかに減少し、3月は横ばいで推移していくという判断でしたが、7月に唯一上方修正されています。
 
持家、貸家及び分譲住宅の5月の着工件数は前月比2.3%増の101.7万戸となりました。
これを反映してか、国内銀行の貸し出し全体はペースが上がらないのに、不動産向け融資は6月末時点で68兆3,206億円と過去最高を記録しました。
総貸出残高に占める不動産向けの割合も過去最高だそうです。
水を差すようですけど、空き家問題が深刻化している今、新築住宅が増えているというのは将来世代への負担にもなってるんじゃないかと思うんですよね。
 
企業収益:改善に足踏みが見られる。

2016年2月の企業収益は「改善している」でした。それが3月には「非製造業」に限定され「傾向」という言葉が足されましたので、明らかに下方修正ですね。さらに7月は企業収益は高い水準にあるものの、改善に足踏みが見られる、と更に下方修正されています。


6月の日銀短観によると売上高は2016年上半期で前年比1.2%の減少、下半期で0.9%の増加が見込まれています。経常利益では上半期で前年比13.9%の減少、下半期で0.2%の増加が見込まれています。

 

企業の業況判断:慎重さが増している。
2016年2月の企業収益は「一部に慎重さが見られるものの、おおむね横ばいとなっている」でした。3月には順序が逆になりました。
7月には企業の業況判断は慎重さが増している、とさらに下方修正されています。

6月の日銀短観によると全規模全産業で9月時点の業況を示す「先行き」は「最近」と比べて慎重な見方になっています。  
 

2017年度の固定金利の動向

  • マイナス金利政策が継続される事が条件であるが急激な上昇は考えにくい。

2016年7月の日銀の金融政策決定会合の結果を受けて長期金利が増加しました。主に追加緩和政策への失望が原因だと言われてます。

金融政策に関する決定事項等 2016年 : 日本銀行 Bank of Japan
加えて言われているのが2016年9月20日21日の会合で予定されている「これまでの緩和策に対する総括」に対する警戒心です。

総括そのものは会合の度に行うものですから、当たり前の事を言ってるだけなんです。しかしその、わざわざ当たり前の事を言うという事が「方向転換」のサインではないかと市場に受け止められたんですよ。

  • マイナス金利政策の撤廃。
  • 2%の物価安定目標の縮小。
  • これまでの金融緩和政策の抜本的な見直し。

こういう事じゃないの?と警戒心を強めたんですね。


しかし、現在の微妙な状況下でこれをやってしまうと日銀が1日も早く達成したい物価の上昇は更に遠のいてしまうでしょう。

  • では逆にマイナス金利政策の拡大か? 

コレについても難しいです。既にマイナス金利政策によって金融機関の業績が圧迫されていて、貸し渋りに振れるのではないか?という警戒心が働いているからです。 

結果は、

2016年9月からの日銀の金融政策は長期金利を0%で推移させることに軸を移した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」というものになりました。日銀が長期金利を0%程度に誘導するものです。

2016年12月のフラット35かそれほど上がらなかったのはこの政策のおかげなんですね。急速に上がろうとする国債利回りを日銀の指し値オペによって食い止めたんです。

 

2017年度の変動金利の動向

  • 日銀の政策金利に連動するので、長期金利の影響は直接受けない。
では、変動金利はどうか?というと8月17日の無担保コール翌日物のレートは−0.044%です。依然としてマイナス金利ですし、先月のレート−0.05%とほぼ同じ水準です。
 
メガバンクも変動金利については変更なしでしたね。これは変動金利が日銀の政策金利に連動するからなんです。
 
日銀の金融緩和政策が、日銀が目標とする十分なインフレ状態に達するまで継続されるとするならば、住宅ローンの変動金利も継続して低い水準を維持し続ける事になります。

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まとめ

あくまで現時点の発表や統計に基づく全体的な評価ですが、このような政府の発表もまた全体的なムードに影響するのは間違いないですね。
 
今後何か大きな事象が発生しない限りは、今の住宅ローンの低金利が続く、続かざるを得ない。 というのが、千日の考えです。
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  • 2016年4月1日に金利情報を更新しました。
  • 2016年4月6日に住宅ローン借り換え増について更新しました。
  • 2016年5月2日に金利の情報を更新しました。
  • 2016年6月1日に金利の情報を更新しました。
  • 2016年7月1日に金利の情報を更新しました。
  • 2016年7月29日に金利の情報を更新しました。
  • 2016年8月18日に9月の日銀会合の影響等、全体的に加筆し更新しました。
  • 2016年9月1日に金利の情報を更新しました。
  • 2016年10月1日に金利の情報を更新しました。
  • 2016年11月1日に金利の情報を更新しました。
  • 2016年11月30日に金利の情報を更新しました。

以上、千日のブログでした。

《あとがき》
住宅は人生最大の買い物で、ほとんどの人が長期のローンを組みます。今、借りたら安いことが分かってても肝心の家が決まらないと住宅ローンは組めません。
当たり前なんですけどね。
安い時にタイミング良く家が決まるとか家が完成する人は良いですけど、そうとは限らないのが人生なのかもしれません。
2016年9月14日
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