2024年2月5日公開
どうも千日です。1月の日銀政策決定会合ではマイナス金利政策を含む大規模緩和の現状維持が決定されましたが、2024年3月~4月にマイナス金利政策解除を予想するエコノミストが大半であり、長期金利はこれを織り込む形で上昇しました。
3月の決算月には1年でもっとも住宅ローンの引き渡しが集中する月です。3月の日銀会合は19日ですが、利上げとなれば民間銀行の住宅ローン基準金利はその日のうちに上昇する可能性があります。
今日は主として3月に住宅ローンの実行を予定している人向けに、日銀利上げの影響を小さく抑える住宅ローンを解説します。
千日のブログでは、毎月最新の金利動向と住宅ローンの選び方について分かりやすく解説しています。
具体的には、金利タイプ別に…
- 今どの金利タイプが割安になのか?
- どんな人にどの金利タイプがお勧めか?(どういう返済計画で借りるべきか?)
普通のランキングサイトでは書かない内容が盛りだくさんなので、よろしければ参考にしてください。
またYouTubeでは「変動金利が上がる2か月前までに通知🔔します」という企画を行っていますが現時点では既に2か月を切っています。住宅ローンは申込から実行までに最短でも1か月から1か月半かかります。更新通知(🔔マーク)を設定し最新情報を見逃さないようにしてください。
また、最新の日米金利動向については下記ページで毎日更新しています。
民間銀行は月の途中からでも金利を上げることができる
通常、民間銀行の住宅ローンは月初に金利を発表し、その月の間はその金利で住宅ローンの実行を行います。しかし、月の途中で金利を変えてはいけないというルールはありません。
つまり、3月19日に日銀がマイナス金利政策を解除すれば、その日から銀行の基準金利を上げるということは可能なのです。その決定権は銀行の側にあります。
日銀の利上げが行われるとすれば、17年ぶりであり、最初は銀行ごとに対応にばらつきが出ると考えられます。その日のうちに金利を上げる銀行、翌月に上げる銀行、あえて上げない銀行、という対応の違いが出る可能性はあります。
現時点で各銀行がどういう対応に出るかを正確に予想することは困難です。しかしすでに利上げが既定のものと考えられている現時点で、固定金利にどういう対応をとっているかによってある程度は予想することができます。
2月は固定金利を上げる銀行と下げる銀行に分かれた
それを予想するうえで、参考になるのが2月に発表された固定金利の動向です。金利を下げているのは三菱UFJ銀行、SBI新生銀行ですが、多数の主要銀行は軒並み金利を上げています。
10年固定金利 | 12月 | 1月 | 2月 |
三菱UFJ銀行 | 1.120% | 1.020% | 0.860%↓ |
SBI新生銀行 | 1.050% | 1.100% | 0.950%↓ |
住信SBIネット銀行 | 1.338% | 0.918% | 0.968%↑ |
auじぶん銀行 | 1.195% | 1.095% | 1.145%↑ |
みずほ銀行 | 1.400% | 1.350% | 1.450%↑ |
りそな銀行 | 1.585% | 1.465% | 1.605%↑ |
固定金利を上げた銀行は、この3月4月に日銀のマイナス金利解除が行われ、政策金利が上がっていくことを想定し、あらかじめ固定金利タイプの金利を上げていると考えるのが妥当です。
では、固定金利を下げた銀行は日銀のマイナス金利解除が無いと予想しているのでしょうか?それは否です。同じく日銀の利上げを予想しているものと思います。
違いは利上げ後の政策金利の推移と当該銀行の営業方針にあります。
周回遅れの利上げは緩和を維持しながら行う
2024年は米国の景気後退リスクが高まっています。米経済が減速すれば当然のことながら、世界経済にもマイナスの影響を及ぼします。これまでもようやく日本が金融政策の正常化を始めた時に、米欧の景気悪化で進められなくなった歴史を繰り返してきました。
いまのところ、日本が米欧より周回遅れで金融引き締めやろうとして失敗する、従来の負けパターンが見えているのです。そこで考えられるのが、大規模緩和政策を維持しつつ、マイナスになっている政策金利をプラスの正常な水準に引き上げるということです。
まず手をつけるとするならば、日銀の当座預金残高のうち、政策金利残高に適用される金利を現在の-0.1%から0.0%にするということだろうと見ています。だとするならば、利上げ幅は通常の半分以下となります。
初回の利上げは利用者からの反発が予想される
日銀が利上げに伴うものといえど、民間銀行が変動金利を上げれば予想されるのは利用者からの反発ですね。仮に千日太郎の予想どおり、緩和政策を維持しながら0.1%だけ上昇させるというものであっても、利用者にはどう受け止めるのでしょうか?
ちなみに過去の利上げ事例は下記のとおりです。
- 2000年8月(ITバブル時):0%→0.25%
- 2006年7月(リーマンショック前):0%→0.25%、2007年2月:0.25%→0.5%
2024年に利上げとなれば18年ぶりですから、利用者とってかなりのインパクトであることは確かです。また、銀行間の連携はそれほど取れていないと考えられます。だからこそ、2月の固定金利には対応に真逆の違いが出てきたわけです。
他行よりも変動金利を大きく上げれば利用者を失います。銀行によっては最初の日銀の利上げに対して住宅ローン金利を全体的に上げない銀行が出てくる可能性もゼロではないのです。
マイナス金利解除によるリスクをヘッジするお勧め住宅ローン
では、利上げに伴う長期金利の急上昇のリスクを踏まえてどんな住宅ローンがリスクヘッジになるのか?解説します。
変動金利の初回上げ幅は小さいのでリスクヘッジ
日銀が金融緩和政策を続けながら金融緩和政策を解除するとして、住宅ローンの変動金利は何ポイント上がるのでしょうか?
それについてはすでに民間銀行が横並びの動きを見せています。昨年11月に三菱UFJ銀行が口火を切った定期預金の金利引き上げ幅である0.2%です。定期預金の金利引き上げはその後全てのメガバンクと全国の地銀に波及しました。
ただし前述のように、初回の上げ幅は銀行によってバラつきがあると見ています。お勧めの変動金利は1月から2月にかけて10年固定を大幅に下げており、最低金利を付けている三菱UFJ銀行です。
メガバンクでありながらネット銀行並みの低金利であり、さらに1日の入院でも住宅ローンがゼロ円になる疾病保障付団信が魅力です。sennich.hatenablog.com
フラット35は前月に金利が決まるのでリスクヘッジできる
フラット35は独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債はフラット35の融資を実行する前月の20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。つまり融資実行月の前月に実質的な住宅ローンの金利が決まるということです。
3月の日銀会合でマイナス金利政策が解除され長期金利が高騰しても、フラット35ならば2月20日前後に公開される機構債の金利水準で固定されるので、3月利上げの影響を受けないすね。
さらにフラット35の金利は昨年の11月から今年の2月にかけて下がっています。特に1月から2月にかけてARUHIスーパーフラット8、7、6が0.1ポイントもの大幅な引き下げとなっています。
フラット35買取型 | 12月 | 1月 | 2月 | 動き |
ARUHIフラット35(買取型) | 1.91% | 1.87% | 1.82% | ▲0.05% |
フラット35保証型 | 12月 | 1月 | 2月 | 動き |
ARUHIスーパーフラット9 | 1.62% | 1.58% | 1.53% | ▲0.05% |
ARUHIスーパーフラット8 | 1.55% | 1.51% | 1.41% | ▲0.10% |
ARUHIスーパーフラット7 | 1.54% | 1.50% | 1.40% | ▲0.10% |
ARUHIスーパーフラット6 | 1.53% | 1.49% | 1.39% | ▲0.10% |
住信SBI保証型90% | 1.90% | 1.84% | 1.79% | ▲0.05% |
住信SBI保証型80% | 1.82% | 1.76% | 1.71% | ▲0.05% |
さらにフラット35の金利は2024年2月の資金受取分から新しい金利引き下げ制度、子育てプラスがスタートします。金利引き下げの上限が年1%まで引き上げられており、子育て世帯はポイントの獲得によってさらに金利引き下げを得られます。
つまり、公的融資のフラット35は、金利が決まるタイミングと国の少子化対策の両面から長期金利の上昇リスクをヘッジできる住宅ローンなのです。
今のところ、ARUHIの保証型であるスーパーフラットは買取型よりも低金利を維持しています。子育て世帯には特にお勧めします。
ウェブで手続きすれば融資手数料が割引となります。また、団信不加入とすることで団信込みの金利から0.28%引き下げられます。千日太郎がARUHIに取材したときのブログがこちらです。
変動と固定の折衷案としてのミックスローンはNG
現在の金利を取り巻く環境は、非常に不安定なため、金利が大きくうごきやすいタイミングです。複数の金利タイプで審査を通しておき、直前に特定の金利タイプが高騰した場合には別の金利タイプで実行できるようにしておくことをお勧めしています。
その延長線上の考え方で、固定金利と変動金利をミックスしようと考える人もいます(複合型ローンやミックスローン)。しかし、そうしたリスクヘッジの動機で金利タイプをミックスすることはお勧めしません。
支払額が安くなるように変動をミックスするならば、おのずと変動金利で借りる金額も大きくなり、結局のところ金利上昇リスクへのケアが必要になります。固定金利だけを選んでいたら不要なタスクを今後自分に課すことになります。こういうタスクは貨幣単位で測定できませんが、まぎれもなくコストです。
金利タイプを固定にするか変動にするかは住宅の所有ポリシーによって最終的には一つに決めることをお勧めします。変動か固定かを決められないのでミックスに逃げようとしていないか?ご自身の胸に手を当てて考えてみてください。
これから変動金利を選択する人の心構え
民間銀行としては、日銀が利上げすれば、変動金利を上げるだけで確定した利ザヤを得ることができます。そのため、民間銀行の多数派は変動金利を低金利で据え置き、変動金利へ誘導しようとするでしょう。
ただし、変動金利は私たちが金利上昇リスクを負います。つまり、「将来金利が上昇することを想定して利用する」ものであり、「将来金利が上昇しないと信じて利用する」ものではありません。むろん変動金利が上がると予想しながら変動金利を選ぶ人はいないと思いますが、そうであっても金利上昇に備えた資金の確保やマイホームの売却相場の把握を行うことを前提に、変動金利を選ぶようにしてください。
変動金利をお勧めする人=金利上昇を想定できる人
そのため、わたしが変動金利を勧めるタイプの人は「金利上昇を想定できる人」です。具体的には次のどれか1つ以上にバッチリ当てはまるという人は変動金利に向いています。
- 毎月返済額にかなり余裕のある人
- 繰り上げ返済資金が潤沢にある人
- 物件のリセールを想定して物件選びをしている人
3つのうち1.毎月返済額にかなり余裕があるというのは、毎月の元利均等返済額が手取り月収の3割以下という人です。最近は夫婦共働きが増えてきており、夫婦二人ならば3割以下だけども、夫単独だと4割を超えるという人が多いです。このような場合は、「かなり余裕がある」のは夫婦共働きが維持できている間だけであり、片方の収入が無くなると、全く余裕がなくなるので変動金利が向いているとまでは言えません。
次の2.繰り上げ返済資金が潤沢にあるというのは、金利が上昇したときに即座に繰り上げ返済して金利上昇を相殺できれば良いという考え方です。金利がどれだけ上がったら、いくら繰り上げ返済しなければならないか?は下記のシミュレーションでやってみてください。
ここで出ているレベルの金額を繰り上げ返済する資力が現時点であるなら、お勧めできます。ただしこの金額を見て大きなプレッシャーを感じるならば、それは金利上昇リスクが無視できない心理的な圧力になるということです。変動金利はお勧めしません。
最後の3.物件のリセールを想定して物件選びをしている人は、将来の状況によっては売却することで住宅ローンを清算することを選択肢として持っている人だとも言えます。資産の処分について一つでも選択肢が多いということは、具体的な金額として換算はできなくても、経済的な資産と同等に捉えることができます。つまり、1.の収入や2.の資金に代替しうると言えます。
金利が上昇して維持が困難と判断したら、比較的ためらうことなく任意売却を実行に移すことが出来る人です。現実的に変動金利をお勧めすることが出来ます。
3つに共通するのは現実的に「金利上昇を想定できる人」なのです。
お勧めする変動金利は5年ルールと125%ルールのあるもの
金利が上昇した場合、すぐに毎月の返済額が増えるとは限りません。これが5年ルールと125%ルールです。
- 5年ルール:金利が上昇しても5年は従前の毎月返済額を維持する。
- 125%ルール:6年目から毎月返済額を増加させる場合、直前の1.25倍を上限とする。
この2つのルールが適用されると、変動金利がどんなに急上昇しても5年間は毎月の返済額が増えません。ただし利息は増えますので、元金が予定どおりに減らないということになります。そのため6年目から帳尻を合わせるために毎月返済額を増やすのですが、その場合の上限は直前の1.25倍までに制限されるというものです。
この2つのルールはすべての銀行の変動金利に適用されるものではありません。例えばPayPay銀行、SBI新生銀行、ソニー銀行の変動金利にはありません。
5年ルールと125%ルールの適用がない銀行は毎月更新コロナ禍の利上げ金利先読み住宅ローンランキング - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答えるの「デメリット」で注意を喚起していますので確認してください。
また、5年ルールと125%ルールの適用がある銀行でも、「元金均等返済」方式を選択すると、5年ルールと125%ルールの適用がなくなるのでこれも注意が必要です。
以上、千日のブログでした。
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2024年2月5日千日太郎
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