変動金利なのに金利が下がらない皮肉な現象
どうも千日です。千日は2008年11月に変動金利で住宅ローンを借りましたが、その時の金利水準から全くと言って良いほど金利が下がっていません。
- 借入当初 1.175%
- 2016年11月 現在0.975%
きょうび、フラット35の全期間固定金利でも1%を切る勢いなのに、変動金利でやっと1%を切る水準です。
ナニコレ?変動の意味ないじゃん!
ということで今日の内容は、このマイナス金利政策で長期金利が下がっていて、新規利用者の変動金利もかなり下がっているのに、既に住宅ローンを借りている人の変動金利が何故こんなに下がらないのか?
その理由と対処法について書きたいと思います。
目次
変動金利が下がらないシンプルな理由
変動金利とは借入期間中に銀行が金利を変動させることが出来る金利タイプです。
この逆が固定金利ですね。
つまり…
変動金利が下がらない理由は、銀行が下げないからです。何ともシンプルな理由なんですよ。
ただ、銀行は完全に自分の好きに金利を決めている訳ではありません。
銀行間で資金を融通しあう金利を短期プライムレートと言い、変動金利はこの短期プライムレートに連動して銀行が金利を上下させることが出来る金利タイプなのです。
債務者と銀行のどちらが金利変動リスクを負うかがポイントです。
- 銀行が他の銀行からお金を借りる時の金利が低い時は住宅ローンの金利は低くする。
- 銀行が他の銀行からお金を借りる時の金利が高い時は住宅ローンの金利は高くする。
銀行は自分が借りる時の金利よりちょっと高く住宅ローンの金利を設定して、金利変動のリスク無く確実に利ザヤを得る(儲ける)ことが出来るようにしているんですね。
変動金利のゼロ金利は2008年に既に到来している
変動金利が変動していない直接的な理由は、その基準となる短期プライムレートが変動していないからです。
そして、なぜその短期プライムレートが変動していないかと言えば2008年のリーマンショックで「ゼロ金利政策」が復活したから、という理由です。
赤い矢印のところがリーマンショックの2008年9月15日です。それまでずっと0.5%だった政策金利はこれを境に0.1%になり、2016年の現在までずっと0.1%です。
つまり市場の短期金利は一足早く2008年にはゼロとなっており、だとすれば、それに連動する短期プライムレートもすでにリーマンの時点で「底」に達したという理屈なんです。
短期プライムレートの推移
2008年11月〜2009年1月 1.675%
2009年1月〜2016年12月 1.475%
過去からの店頭金利をホームページで公開している三井住友銀行の店頭金利の推移を見ると、ほぼ政策金利・短期プライムレートと連動していることがわかります。
三井住友銀行の店頭金利の推移
2008年11月〜2009年1月 2.675%
2009年1月〜2016年12月 2.475%
短期プライムレートを下げない銀行の思惑
しかしこの短期プライムレートにせよ、店頭金利にせよ、ちょっと高いと思いませんか?
事実、2016年11月1日の無担保コール翌日物(一晩だけの極めて短い期間の市場金利)のレートは−0.045%でマイナスなんですよ。
もっと下がっても良いはずなんです。
しかし、実際には短期プライムレートは全く下がっていません。
つまり、前の節で書いたように、短期プライムレートは預金金利や銀行員の給料などのコストと儲けを考慮して銀行同士で決めるということがあるからなんですね。
銀行は短期プライムレートを下げないように敢えて高い金利で資金を融通し合って高めを維持しているんです。
既存顧客から搾取し新規顧客を優遇金利で獲得する
ここまで読んで「アレ?」と思った人も居ると思います。
実際に広告などで謳われている住宅ローンの変動金利は店頭金利よりもずいぶん低いですよね。つまり店頭金利と実際の貸出し金利は連動してません。
本来連動しているはずの住宅ローン金利と短期プライムレートが連動していない理由は優遇金利の存在によります。
つまり銀行間の住宅ローン金利引き下げ合戦は、短期プライムレート引き下げではなく、優遇金利の拡大によって引き起こされているんです。
- 短プラ・店頭金利は『定価』
- 優遇金利は『定価からの割引』
両者の最大の違いは、前者はその影響が住宅ローン利用者全体に及ぶのに対して、後者は住宅ローンの新規利用者にしか及ばないということです。
釣った魚に餌やらん…(/ω\)アカーン
要するに銀行は「既存の顧客」には割高な金利を適用しながら「新規の顧客」にのみ魅力的な金利を適用しているという訳です。
以前に借りた人は今より優遇が少ない分、新規利用者の住宅ローンの金利を肩代わりしているようなもの…ごぼっ(吐血)
借り換えのススメ
しかし翻って見れば携帯料金や電気料金、ネット料金など、新規の利用者だけ優遇されるといった「二重価格」設定はよくあることです。
知ってて割高な利息を払っているんでしょ。
というのが銀行の言い分なんでしょう。
そのように「黙って割高な料金を払う顧客」がいる限りこうした二重の価格設定は無くならない、ということになります。
それが嫌なら借り換えれば良いということです。
借換えコスト=利率0.3%
極めてシンプルな話です。さっさと借り換えてしまえばいいのです。
何故か昔から「1%の金利差」があるなら借り換えした方がいいと言われてますが、実際には0.1〜0.3%位の金利差があれば十分です。
- 住宅ローンを変動から固定に借り換えるなら?使いやすい借換コストと利率の早見表 - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える
- 2018年のフラット35の金利は1.38%前後で安定 固定から固定へ借換え検討を - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える
今は0.5%前後の金利も珍しくないですから、今のローン金利が0.8%以上の人は十分借り換えチャンスがあると言えます。
借換え申し込みが殺到し1ヶ月待ち状態
同じ事を考える人は多いです。千日も既にインターネットで借換えの審査を申し込みましたが、全くナシのつぶて状態です。
報道では店頭に行っても「今日はご相談のお客様でいっぱいです」 と断られ、審査は1ヶ月待ちになる事も珍しく無いそうですね。
悪化する銀行の財政と貸し渋りへの警戒
そしてこの借換え増加は確実に銀行の利益を圧迫しています。
借り換えというのは、高い金利でA銀行から借りていた住宅ローンを返す為にB銀行から安い金利で住宅ローンを借りて一括返済するということです。
- お金はB銀行からA銀行に動いただけ
- A銀行は高い金利をもらえなくなる
- B銀行は多額のお金を赤字覚悟の安い金利で貸す
借換えが増えてもトータルで経済は活発化せず、金融機関の利益を圧迫していくんです。
ますます短期プライムレートを下げる訳にはいかなくなりますよね。
既存顧客から貰う高い利息が無ければ利下げ競争を続けられないんですよ。既存顧客の高い金利が今の低金利を支えている皮肉な状態です。
それだけではありません。
マイナス金利による収益悪化が長期化すれば、銀行が一転して「貸し渋り」に走る可能性もあります。
もしも日銀がマイナス金利をさらに引き下げれば、お金の貸手と借り手をつなぐ銀行の機能が失われる可能性があります。
今の低金利は、そういう綱渡りの状態を続けているような、とても不安定な状況なんです。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
低金利だからそのうち自分の金利も下がるだろう…
それは甘い。
という事がお分かり頂ければ幸いです。少なくとも銀行の立場からは既存顧客の金利を下げる事は出来るだけ避けたいんです。
低金利はチャンス?
確かに今この瞬間は低金利のメリットだけが表面化してますが、その反面、確実に銀行の利益を圧迫しています。
一転して貸し渋りに振れるリスクもまた、水面下で進行していて、日銀は既に警戒を強めている状態なんですよ。
チャンスとピンチは紙一重です。
- 2016年11月1日に金利の情報を更新しました
以上、千日のブログでした。
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30代600~1200 | 40代600~1200 | 50代1000以上 | ||
20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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