変動金利で陥りがちな繰上げ返済貧乏とは何か?
どうも千日です。住宅ローンを変動金利で借りている場合、常に金利変動リスクに晒されている状態です。これって不安ですよね。
一方で、今は金利が安いですから、同じように返済しても元本を多く減らすことが出来ます。
だから、できるだけ繰上げ返済していくべき。ただし当初の10年は住宅ローン控除があるからその恩恵が得られる程度にとどめておこう。
こんなことを言う人が居るかもしれません。
確かに間違ったことは言っていないのですが、結論までに一つ欠落している重要な要素があります。
「貯蓄」です。
繰上げ返済したおカネは返ってきませんよ。繰上げ返済とは、以下の二つのメリットとデメリットがセットなのです。
- 今ある現金が減るデメリットのかわりに、
- 将来の利息の支払いが減るメリットを得る。
メリットばかりに集中して繰上げ返済し過ぎて、貯蓄を危険なラインまで減らしてしまうと本末転倒なのですね。これが繰上げ返済貧乏です。
今日は、特に変動金利の人が陥りがちな繰上げ返済の落とし穴と、ベストなさじ加減の見つけ方についてお話します。
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目次
繰上げ返済とは銀行の利益を自分の老後資金にすること
まずは大原則として、繰り上げ返済のセオリーを一通り確認しておこうと思います。
繰上げ返済とは、約定返済時期よりも早く借入元本を返済することです。
つまり、繰り上げ返済した元本の部分については、今後完済日までの利息を払わなくて済むということですね。
ですから、
- 早期に、より多額の金額を繰上げ返済すること。
これが最も、利息を節約できる方法というわけです。シミュレーションしてみましょうか。
- 10年後に2千万円繰上げ返済する。
- 20年後に2千万円繰上げ返済する。
【当初借入】6,300万円
【期間】35年
【金利】住信SBI変動金利0.568%
【返済方法】元利均等返済ボーナス払い無し
グラフは各月の元利均等返済額のうち、利息部分を示しています。黄色の部分が繰上げ返済によって節約できる利息ということです。
10年後に2千万円繰上げ返済すると146万円の利息の節約
住宅ローン控除の終わった10年後に2千万円繰上げ返済すると、その後25年間の利息が合計で146万円減る計算ですね。
この146万円とは何か?というと老後の資金になります。
だって別に146万円貰えるわけでは無いのですよ。25年かけて146万円の支出が減るということです。
つまりその分は住宅ローンが終わった時の、貯金の増加に相当するわけですね。
分かりやすくまとめるとこうなります。
- 2千万円を繰上げ返済すると、
- 老後の貯金が146万円増える。
20年後に2千万円繰上げ返済すると87万円の利息の節約
同じ2千万円を繰上げ返済するのでも、これが20年後になると利息の節約額は87万円に減ってしまいます。
- 2千万円を繰上げ返済すると、
- 老後の貯金が87万円増える。
いかがでしょうか、同じ額を繰上げ返済するのであれば、より早い方が得ということです。
銀行が受け取るはずだった利息を老後資金にする
シミュレーションでは2千万円という多額の繰上げ返済を例にとりましたが、これは元々借りている元本ですから、いずれにしても35年の期間で払うお金です。
これに対して利息が減る分というのは、繰り上げ返済によって支払いが減る部分ということです。
繰上げ返済は銀行にとっては損失です。本来ならば、その元本部分についても今後利息が儲かるはずだったのに、それが貰えなくなるということです。
つまり、住宅ローンの繰り上げ返済とは、銀行が受け取るはずだった利息(利益)を自分の老後資金に換えるという行為なんですよ。
次に大事になってくるのが冒頭でも述べた「貯蓄」の観点です。
何となく思いませんでしたか?
ずいぶん多額の繰上げ返済をするにしては、節約できる利息は少ないよな…
この『感覚』は正しいです。つまり、それが「貯蓄」の側面なのです。
貯蓄のリスクに目を向ける
繰上げ返済をもう一つの側面から見てみましょうか。
- 繰上げ返済額=今の貯蓄のマイナスです。
- 利息の節約額=老後の貯蓄のプラスです。
この前提を置いて、さっきのシミュレーション結果の数字を当てはめてみましょうか。こんな感じでしたよね。
2千万円繰上げ返済して146万円の利息を節約した。
これはどうなるかというと…
- 今の貯蓄を2,000万円マイナスして、
- 老後の貯蓄を146万円プラスする。
こういうことになります。『ゼロが一つちゃいまんがな!』て感じです。思わず大阪弁が飛び出します。
老後の資金も、もちろん大事ですよ。
知らず知らずに老後破産の予備軍になっている人って結構いると思うんです。年金だけでは生活できませんから、基本的には老後は貯蓄を取り崩す生活ですからね。
でも、現役時代にも多額の出費を伴うリスクはあります。例えば大病を患ってしまい、数カ月間入院してしまうかもしれません。その間の住宅ローンの支払いと生活費を賄う貯蓄が必要です。
また、現役時代の後半には、子供の大学入学など教育費も嵩む時期です。
- 今と老後
この両者の貯蓄のリスクを比較衡量して繰上げ返済額を考える必要があるのですね。
ですから、ゼロが一つ二つ違ってくるような、先の2つのケースはどちらも『繰上げ返済貧乏』パターンなのです。
過ぎたるは及ばざるが如し
なのです。
変動金利の繰上げ返済は金利が上がってからでも遅くないですよ。
何千万円もの繰上げ返済をしても利息の節約が少ないのはなぜ?
答えはシンプルです、金利が低いからです。
前段で繰上げ返済とは銀行の利益を奪うことだと言いました。その銀行の利益が、そもそもスズメの涙なのですよ。
ちっちゃな利益を奪っても儲けは小さい。
道理ですよね。
試しにもう一つシミュレーションしてみましょう。
- 金利0.568%(住信SBI変動金利)で10年後に2千万円繰上げ返済する。
- 金利1.06%(住信SBI20年固定金利)で10年後に2千万円繰上げ返済する。
【当初借入】6,300万円
【期間】35年
【返済方法】元利均等返済ボーナス払い無し
金利0.568%で10年後2千万繰上げ返済は146万円の利息の節約
最初のケースと同じです。
つまり、元本2千万円について、金利0.568%で残り25年間にわたり貸す銀行の利益=146万円を銀行から奪うということです。
金利1.06%で10年後2千万繰上げ返済は277万円の利息の節約
いかがでしょうか?金利が2倍くらいになると、利息の節約額も2倍位に増えましたね。
ここまで読んで頂いた方は、もうお分かりだと思います。
つまり、金利が2倍ということは銀行の利益も2倍なのですから、繰り上げ返済によって節約できる利息も2倍になるということです。
どうせ、繰り上げ返済によって銀行の儲けを獲るのでしたら、金利が上がってからでも遅くはない。
むしろ、そうした方が有利であるということですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。これは、決して繰上げ返済が損ということではありません。
住宅ローン控除が終わった後であれば繰上げ返済したら、確実に利息の負担は減りますから、損はしません。
しかし、やみくもに繰上げ返済しても、金利が低いうちは効果が少ないということもまた真なりということです。
金利が上がるかもしれない…
変動金利で借りていると確かに不安です。でも金利が倍位に上がったところで、このシミュレーション程度のものなんですよね。
変動金利が安く、今後は上がるかもしれない…という間は、あえて繰上げ返済はせず貯蓄の城壁を高く築く時期なのです。
そして銀行がいよいよ金利を上げてきた!というときこそ、その貯蓄でごっそり元本を減らして、銀行の利益を奪ってしまえば良いのです。
金融機関の関係者の方すみません。でも、そういうことですよね?
それに、もともと金利低い今、繰り上げ返済されてさらに儲けが少なくなってしまい、そのうえ、繰上げ返済貧乏になってしまった債務者の返済が滞ってしまう…よりは良いと思います。
どうか、ご容赦ください。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
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