どうも千日です。もしこんな保険があったら絶対に入りたくない!と思う生命保険を挙げてみました。
- 死亡時の保険金を債権者が受け取るのに保険料を負担させられる保険
- 保険に入ると副作用で住宅ローン残高が減るスピードが遅くなる保険
- 退会するのに家を手放すか多額の費用を支払わなければならない保険
実は住宅ローンとセットになっている団信の疾病保障特約のうち保険料が金利に上乗せとなる商品は、多かれ少なかれ、共通して上記の要素を含んでいるのです。
団信とは、債務者が死亡または失明などの高度障害状態になった場合に債権者に保険金が支払われローンが完済となる生命保険であり、民間の住宅ローンでは加入が必須です。
これによって遺族が住宅ローンの債務を負うことがなくなるため、わたしたちにもメリットがあるのですが、その本質は債権者の利益のために、債権者の求めに応じて加入する保険です。
こんな住宅ローンの疾病保障団信に入ったら後悔する|千日太郎のYOUTUB動画
- 1.死亡時の保険金を債権者が受け取るのに保険料を負担させられる保険
- 2.保険に入ると副作用で住宅ローン残高が減るスピードが遅くなる保険
- 3.退会するのに家を手放すか多額の費用を支払わなければならない保険
- 病気のリスク、団信の疾病保障でなければダメですか?
- お勧めする疾病保障特約と加入の適齢期は?
- まとめ~団信の本質とリスクの本質
1.死亡時の保険金を債権者が受け取るのに保険料を負担させられる保険
民間の金融機関が債権者となる住宅ローンでは原則として団信への加入が必須条件になっています。そして、団信の保険料は金融機関が負担する事になっています。
民間銀行のホームページではよく「団信はゼロ円」と書いていますが、本当にゼロ円ということではありません。
保険料は銀行が負担しているが、それでもちゃんと利益の出るような金利に設定している。
こういうことです。仮に保険料がすこぶる上がって赤字になりそうになったら住宅ローンの金利を上げるなり、銀行員をリストラしたりして利益を確保するのです。
- 銀行が負担する保険料は金利を通じて利用者から回収している。
- 保険の契約者と保険金の受取人は債権者(銀行)である。
経済的な実質と契約関係に捻じれが生じているんです。つまり、団信は債権者の債権を保全するために債務者がコストを負担して入る保険なのですよ。
平たく言いますと、
- 金貸しに生命保険を掛けられその保険料を払わされている。
ただ、もしも大黒柱が倒れたら保険によってローン残高がゼロになり、遺族が路頭に迷わなくて済むというメリットがあるから日本に特有の商慣行として定着しているのです。
ちなみに米国にも団信のような制度はありますが、加入者が少なく高額なので、生命保険は生命保険として個別に加入する人がほとんどです。
2.保険に入ると副作用で住宅ローン残高が減るスピードが遅くなる保険
団信は要するに生命保険です。その保険料を保険料としてではなく、金利として負担しているという点に注意が必要です。
ローン残高が高いうちは保障も厚いのだから保険料が高いのは道理だ。
こんな風に思っているとしたら、まんまと騙されてますよ。
銀行が負担する保険料は全ての住宅ローン利用者をまとめて団体で生命保険会社に申し込むので割安な上、年齢などによる差もありませんし、住宅ローン残高も全体では平均されて平準化されているのです。
そもそも、生命保険の保険料とお金を借りる利息は別モノではないでしょうか?
金利は債務者の返済能力が低い場合は高く設定されます。これをリスクプレミアムといいます。理論的には金利は債務者の属性によって決められるべきなのです。「保障が厚いから保険料も高い」というこじつけで金利に保険料をオンすることで、銀行にとって以下のメリット(=利用者にとってのデメリット)があります。
- 元利均等返済のローン残高の減りが遅くなる。
元利均等返済は利息と元本の合計が均等になるように毎月の返済額を計算する方式です。ローン残高が多い前半には大きな利息が計上されるため、元本の返済は少なくなります。
元本に対して別途保険料を払う場合と、保険料率をオンする場合で総支払額を比較してみましょう。
(単位:円)
3000万円 固定金利1.3% 35年元利均等 |
別途0.3%保険料を払う | 団信0.3%上乗せで1.6% | 差異 |
---|---|---|---|
毎月返済 | 88,944 | 93,331 | 4,387 |
毎月保険料 | 7500 ~265 | 0 | |
総額 | 39,095,621 | 39,199,414 | 103,793 |
このように金利に上乗せした方が約10万円支払い総額が増えます。
これは、金利が高くなったことで、特に前半の元本の減少ペースが遅くなり、支払い利息が増えたことによるものです。なお元金均等返済ではこのような差は出ません。
このように、提供する保険は同じでも「金利に上乗せするだけ」で収入が増えるようにしているのですね。
利用者のデメリットは比較的小さく、銀行にとってリスクもコストも無く収入が増える仕組みであり、「薄く広くカネを集める」方式で確実な利益を銀行にもたらすものです。
実にクレバーです。誉め言葉として言ってます。
3.退会するのに家を手放すか多額の費用を支払わなければならない保険
一番のデメリットはこの保険をやめるときの障壁が高すぎることです。普通の掛け捨て保険であれば「やめます」と意思表示するだけで退会できて、その後の保険料の負担は無くなります。
しかし、団信の疾病保障特約は住宅ローンを完済しなければやめることができないんですよね。「金利に上乗せ」というのがここにも効いてます。簡単に脱退できないようになっているんですよ。
- マイホームを人質に取られている。
という状態なんです。後で「やっぱりここまでの保障は要らない」という状態になったときに普通の保険であれば、脱退したり保障をリストラしたりという柔軟性があります。
しかし、団信の疾病保障特約は住宅ローンと不可分になっているので、住宅ローンを完済しないことには、そこにメスを入れることができません。
つまり、マイホームを売却して完済するか、数十万~百万円単位の借り換え費用を払って銀行を乗り換えるかということですね。脱退するにあたってここまで高い障壁のある保険は他にありません。
病気のリスク、団信の疾病保障でなければダメですか?
本質に立ち戻って考えましょう。生命保険と住宅ローンは別物です。そりゃそうですよね。
多額の債務があるんだから、生命保険に入っておいた方が良いよ!
なんとなくわかります。しかし、逆に賃貸だったら生命保険の必要性が下がるのでしょうか?
約定の家賃が払えなくなったら、即出て行かないといけなくなりますよ。大黒柱が倒れるというリスクは、持ち家か賃貸に関係なく共通のリスクです。
つまり、
保険の必要性は住宅ローンとは分けて考えた方が良い。
家は人生最大の買い物であり、長期の住宅ローンで多額の債務を負います。誰しも不安に駆られます。つまりそれは、保険を売る側の視点に立てば、保険を売るのに最適なタイミングということなんです。
住宅ローン返済中の病気やケガに対する不安に対応するのが、疾病保障付き団信ですが、住宅ローンにプラスαの付加価値を付けて「金利プラスαの収入を増やしたい」というのが銀行の本音です。
お勧めする疾病保障特約と加入の適齢期は?
しかし、団信の疾病保障はスペックの高い保険であるという面も否定できません。病気になっただけで、数千万もの負債がチャラになるような保険は普通の保険にはありませんからね。
そうなったらすごく助かります。これに関して異論はありません。
ただ、こうした保険が住宅ローンを組むにあたって必須に近いものだというような認識になっているのだとしたら、それは違うだろうと言いたいのです。
「こんな保険はイヤだ…」というテーマで3つのデメリットを挙げました。そのデメリットが無い、又は相殺するほどのメリットがあれば、検討の余地があります。
- 病気時の保険金を債権者が受け取るのに保険料を負担させられる保険
- 保険に入ると副作用で住宅ローン残高が減るスピードが遅くなる保険
- 退会するのに家を手放すか多額の費用を支払わなければならない保険
1.については金利上乗せの無い疾病保障特約もあります。また、確率の高いリスクに対して早期に保険金が支払われるならば加入する意味があります。
2.については利用者のデメリットは無視できるほど小さいのでパスしましょう。
3.については、完済せずとも途中解約できるならデメリットにならないと言えますね。
厳し目の目線でお勧めできる団信の疾病保障特約について解説します。
金利の上乗せ無く診断時点で保険金が支払われるガン50%保障
主にネット銀行に多いですが、金利への上乗せがなく疾病保障特約が付いている住宅ローンですね。表面金利への上乗せが無ければ、利用者側のデメリットは顕在化していません。
さらに金利上乗せ無しで付帯するケースでは、全疾病保障が付く商品とガン50%保障が付く商品の2つに分かれます。どちらかというと、ガン50%保障の方がお勧めです。
全疾病保障は全ての病気とケガが対象となりますが、入院期間中も約1年は住宅ローンの支払いが必要になりますし、現在の医療現場において1年の入院はハードルが高すぎてほとんど対象になるケースが無いからです。
ガン50%保障の場合はゼロ円にはなりませんが診断の時点で、つまり早期に支払いが半減します。資金繰りのリスクという面ではガンと診断された時点で保障される方が利用者の実態に合致した保険と考えます。
金利上乗せ無しの疾病保障では、auじぶん銀行が全疾病保障とガン50%保障の両方が無料で付帯し、金利も低金利であるため頭一つ抜けていますね。
後から退会できる団信、1日の短期入院でも保険金が出る団信
例えばみずほ銀行の8大疾病補償プラスがんサポートプランは、金利上乗せによる保険料ではありませんので、加入後いつでも中途解約が可能です。
また、三菱UFJ銀行の7大疾病保障付住宅ローンの〈安心の保険料タイプ〉も、保険料が低く設定されており、いつでも脱退可能です。
そして、〈3大疾病保障充実タイプ〉では、がん診断、脳卒中・急性心筋梗塞の入院時点で、住宅ローン残高が0円になります。
他行では就業不能60日とか半年、長いものでは1年超という期間を条件です。1日の入院で保険金が出るのは三菱UFJ銀行の商品だけです。そのため、いわゆる医療実態に詳しい医師や看護師の方、保険会社の社員の方などがよく利用しています。
団信の疾病保障加入の適齢期はアラフォーから
一般的に生命保険はリスクの低い若い時に加入したら保険料は安く、年を取ってリスクが高くなってから入ると高いので若いうちに入っておくと良いといわれますが、住宅ローンの疾病保障団信は逆です。
住宅ローンの金利上乗せ団信は、年齢にかかわらずローン残高に金利上乗せだからです。
例えばローン残高の0.3%が上乗せには次のような不公平があります。
- 若い人は本当は0.3%未満の保険料だけど0.3%負担している。
- 年寄りは本当は0.3%超の保険料だけど0.3%の負担でよい。
全く同じ条件で一般の生命保険と比較する事は出来ません。そういう所から推測すると、かけ捨ての生命保険と比較すると、損か得かの分水嶺は概ね30歳から35歳位です。同じ保障内容の団信でも40代から加入すれば相対的にお得と言えます。
まとめ~団信の本質とリスクの本質
団信の保険料はローン残高に一定率の上乗せです。
ローン残高が多い前半は高い保険料の代わりに保障額も大きくなります。ローン残高が少ない後半は安い保険料の代わりに保障額も小さくなります。
はじめのうちは住宅ローンの残高は何千万もありますから保障が手厚い印象があります。
しかし、住宅ローンは長年の返済によって減って行くのです。一方でがんや成人病にかかるリスクが高くなるのは、人生の後半です。
子供が成長し教育費がかさむ時に大黒柱が病気に倒れた。繰上げ返済して住宅ローン残高は僅かになっていたので、疾病保障付き団信で僅かな住宅ローンの債務が無くなっただけだった…
最初と同程度の保障を付与するには、ローン残高とライフステージに合わせて別途生命保険を掛ける必要性があります。
住宅ローンの金利にオンする形でフル装備の疾病保障を付けて、それだけで「自分はやれるだけのことをやった」「万全だ」と考えてしまうのは、とても危険なのです。住宅ローンを選ぶときの基準はあくまで毎月の返済額に無理が無いか、総支払額で有利かということが第一です。
生命保険(団信)とはいったん切り離して考えるべきです。千日のブログを読んだ方が後悔の無い、良い決断をされれば、それが何よりの喜びです。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
今回の記事は千日太郎YOUTUBEにコメントを下さった方に答えるものです。「金利の安さだけでなく団信の手厚さも含めてをおすすめのローンを紹介していただけないでしょうか?」というものでした。
こちらの記事でも書いてますが、団信も含めてローンを考えるスタンスではなく、団信と住宅ローンは切り離して考えるということをお勧めします。
お気軽にコメントやリクエストなどしていただければ嬉しいです。
2020年7月19日
毎月更新!コロナ情勢下の住宅ローンランキングを更新しました!
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ランキング | 年齢 | |||
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20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 | |
新規借入 | 20代800未満 | 30代600未満 | 40代600未満 | 50代1000未満 |
30代600~1200 | 40代600~1200 | 50代1000以上 | ||
20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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