損か得かという物差しを一度捨てリスクという物差しを持つ
どうも千日です。
住宅ローンの10年固定とは、当初の固定期間の後にその時点の金利を反映した変動金利か固定金利かを利用者が決める金利のタイプです。
これは、10年後にならないと契約の全体が確定しないということです。
言い換えるとこういうことです。
先にお金を借りて返済条件は10年後に確定する。
コレって得な(良い)のか?、損な(悪い)のか?
にわかに判断出来なくて当然ですよね。普通に考えてかなり特殊な条件の金銭消費貸借契約です。今日はこれを判断する一定の尺度を示したいと思います。
タイトルにもある「リスク」という尺度です。
目次
リスクを負う負わない、取る取らない
まずリスクを定義します。リスクという時、二通りの使われ方があるのをご存知ですか?
- 危険性
- 不確実性
危険性は、ある行動に伴って損をする可能性を言います。
不確実性は、資産運用でのリターンの変動性、その振れ幅を言います。大きなリターンを得ようとすればリスクは大きくなります。
リスクを危険性と言う意味で使う時は「リスクを負う(負わない)」という言い方をします。文字通り回避するべきモノなんです。
リスクを不確実性という意味で使う時は「リスクを取る(取らない)」という言い方をします。プラスになることもマイナスになることもある、その振れ幅を言うんです。
変動金利と固定金利のリスクと利息の関係
単純な例として変動金利と固定金利で、利息とリスクの関係を確認します。
3千万円を35年元利均等払いで返済する場合の変動と固定の利息を比較してみましょうか。
- ネット銀行の変動金利 0.497%(2016年12月)
- フラット35の固定金利 1.10%(2016年12月)
これに住宅ローン控除を加味します。当初10年間12月31日のローン残高の1%が税金から控除される(限度額は年間40万円又は50万円)効果です。
- 変動金利は最初から最後まで利用者が金利変動リスクを負うんです。リスクを負うことを赤い線で表しています。
- 固定金利は最初から最後まで利用者は金利変動リスクを負いません。リスクを負わないことを青いラインで表しています。
ここで言う「リスク」は「危険性」です。変動金利は危険を負う対価としてその分利息が安いと考えると理解しやすいですね。
特に変動金利では、当初10年間は住宅ローン控除によって「逆に利息が貰える」という現象が起きています。
対してフラット35などの全期間固定金利の場合は収支トントンにとどまります。それでも十分におトクなんですけどね。
10年固定金利のリスクと利息の関係
お待ちかね、10年固定金利です。
10年固定に適用される金利は、店頭金利からの引下げ幅で表示されます。店頭金利とは、銀行のローン金利の「定価」みたいなものです。
定価からこれだけお安くしますよ!
と言ってるわけです。例えば10年固定最安の三井住友信託銀行の金利引下げ幅はこうです(2016年11月)。
- 当初10年の引下げ幅は店頭金利▲2.3%
- 10年経過後の引下げ幅は店頭金利▲1.35%
リスク=危険性という前提
では、さっきの要領でグラフにしてみましょうか。
当初10年は0.45%の固定金利です。(2016年11月適用)
10年経過後に現在の店頭金利ベースで変動金利を選ぶと1.125%です。
なんということでしょう!
- 当初10年は安い金利でリスクを負いません。
- 10年経過後は高い金利でリスクを負います。
さっきの変動金利と固定金利の常識で考えると訳がワカラナイですよね。
これは「リスク」を「危険性」=負うものと考えるから分からないのです。
リスク=不確実性という前提
では「リスク」を「不確実性」=取るものと考えてみましょう。
10年後の事は決まったコトじゃないんです。
グラフを描く便宜上、現在の条件で線を引きましたけどこうなると決まった訳ではありません。何も決まってないんですよ。
- 10年固定金利は、当初の10年は固定の安い金利を享受して、10年後にはその時点に合わせて選択の幅を持つということです。
この様に考えると変動金利と全期間固定金利の見方も変わってきますよ。
- 変動金利は全期間リスクを取り続け、何時でも変化に合わせて選択の幅を持つタイプです。ただし5年ルールと125%ルールがあるので急激な変化はありません。
- 全期間固定金利は全期間リスクを取らず、最初の条件に固定して選択の幅を持たないタイプです。
10年固定には変動金利のような5年ルールと125%ルールがありません。10年経過したら即その時点の利息を反映した返済額となります。
タイプ別10年固定のメリットデメリット
そんな10年固定金利タイプが良いか悪いかは、人によります。どんなタイプの人にマッチする(良い)かについてお話ししましょう。
そのポイントは10年固定のリスクです。
- リスクでメリットの方が多い人
- リスクでデメリットが無い人
こういう人が10年固定で得をする可能性が高いのです。
10年固定のリスクがメリットになる人
- 経済の動向や住宅ローンの金利情報を抜け目なく収集する情報にマメなタイプ。
- 今後の仕事でのキャリアアップ、収入アップに強いモチベーションがあるタイプ。
どちらかに当てはまるなら、10年固定のリスクをメリットに出来る人です。
10年経過後には金利の引き下げ幅が1%前後減ってしまいます。
- 当初借入20百万円の10年後残高は約14百万円。残り25年で0.9%上昇の利息は164万円。
- 当初借入30百万円の10年後残高は約22百万円。残り25年で0.9%上昇の利息は257万円。
- 当初借入40百万円の10年後残高は約29百万円。残り25年で0.9%上昇の利息は340万円。
住宅ローン10年固定最安0.5%の三井住友信託とは?金利はどこまで下がるか - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える
あくまで目安です。
ですから借り換えたり、金利の交渉をしたりするんですが、そういう時に自分の利益を最大化出来るような情報収集と交渉力が鍵になるんですね。
今、銀行と交渉するのに気おくれしてしまうという人でも10年といえば10歳の少年が成人する期間です。
今よりも銀行に対する信用力は上がっていて、電器屋さんで家電を値切るような感覚で銀行と交渉出来るようになっているかも知れません。
値下げしないんだったら他行を利用するからイイよ。
てな感じです。
10年固定のリスクにデメリットが無い人
- お金持ち。
リスクが高いというのは、あくまで一般的なサラリーマンの資産を前提にした結論です。例えば1億円の現金を持っている人が3千万円の住宅ローンを10年固定で組んだら?
リスクは低いです。
それだけ現金があるなら、借りなくてイイじゃん。
と思うかも知れませんが、住宅ローン控除があるので住宅ローンを借りた方がお金が儲かるという理由でそうしているお金持ちも多いのです。
親から多額の贈与が見込めるような人も同じですね。
10年経過後の経済情勢や金利動向を見て、一括返済してもイイです。
住宅市場や減税政策を見て買い替えてもイイですね。さらに10年間、住宅ローン控除が受けられます。
10年固定のリスクにメリットが無くデメリットが多い人はどうすればいい?
- ここまで読んで暗い気持ちになった。
私も書いてて辛くなりました(⌒-⌒; )
しかしまだ決まった訳じゃありません。情報にマメかどうか、今後出世するモチベーションが高いかどうかはあくまで現時点の自分に対する主観です。
貯蓄額は客観的ですが。
10年固定にしたのは失敗だったかも…?
実はそんな事は無いんですよ。2016年11月の10年固定の金利水準は、日銀のマイナス金利政策を中心とする金融緩和で自然な決まり方よりも低くなっているんです。
銀行にとっては『赤字なんだけどしょうがない』という破格の条件なんです。
ですから、この10年間に十分な貯金を貯めて10年後のリスクをいくらでも小さくして行けるんですよね。
儲けるために家を買うんじゃない。
自分と家族の人生が守られれば、それで成功なんだと千日は思いますよ。
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10年固定は得か損か
彼を知り己を知れば百選危うからず。
これが住宅ローンの10年固定は得か損か?良いのか悪いのか?という問いについての千日の答えです。
彼を知る
まずは10年固定について十分な理解をし、それを取り巻く経済環境を知ることです。しかしそれだけで判断しては足元をすくわれます。
己を知る
自分はこれからどう生きて行きたいのか?マイホームをなぜ買うのか?これを知ることです。10年固定を知るよりも、ホントはこっちの方が難しいかもしれませんよね。
百戦危うからず
10年固定を選ぶにしても選ばないにしても、上記の二つをクリアしていれば何も恐れる事は無いんですよ。
住宅の購入は殆どの人にとって人生最大にして、初の一回限りの買い物です。必要なのは十分な自己資金と冷静な判断です。
このエントリーを読んだ人が後悔しない良い決断をされれば、それが千日の何よりの喜びです。
おススメ記事
- 2016年11月1日に金利の情報を更新しました。
- 2017年10月8日に内容を見直し、一部修正しました。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
三井住友信託銀行の10年固定金利は、2016年12月は据え置くとのことです。
このエントリーは住宅ローン10年固定必見のポイント 10年後に借換えか繰上返済か買替えか - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答えるのブックマークコメントにあったid:ichi40さんの疑問に答えたい!という動機から執筆しました。参考になれば嬉しいです。
2016年7月28日
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20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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