利用者は騙されているのに住宅ローン詐欺の犯人にさせられている
どうも千日です。東京都内の中古マンション販売会社の営業マンが、本来は投資用なのに居住用と偽ってフラット35の融資を引き出すという不正を2年間で約150件行っていたとして、波紋を呼んでいます。
フラット35は返済の継続が困難となったときに賃貸に出すことで返済を継続することができる唯一の住宅ローンです。しかし、購入当初から賃貸に出すことを目的として借りることは出来ないんですよ。
あくまで自分やその家族が住む目的であることが条件です。
フラット35を取り扱う住宅金融支援機構は、実態を本格調査する方針を固め、すでに通報を受けた不正融資分だけでなく、全融資から投資の疑いがあるものを抜き出し居住実態や利用目的を今月から調べることとしました。
なお通報を受けた不正融資は、主に20代から30代の単身者、年収300万円台以下の所得層を中心に融資額は2000万~3000万円ほどで、不正融資の合計額は数十億円にのぼるとのことです。
「低金利で不動産を持てて家賃収入も稼げる」などと勧誘して、高額の手数料で荒稼ぎしてたみたいですね。
報道では、利用者にどういったデメリットがあるかが十分に書かれていなかったので。千日のブログでは、今後同様の被害が広がらないように、その手口だけでなく、不正融資を行う利用者側のデメリットも明らかにしておこうと思います。
利用者は騙されている方なのですが、この仕組みにおいて金融機関を直接騙しているのは利用者なのです。つまり詐欺の犯人になってしまっているのですよ!
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目次
なぜフラット35を賃貸投資に使う不正が行われるのか?
この条件が揃っていると不正が起こる、という3つの要素があり、これを不正のトライアングルと呼ばれています。
- 不正を働く動機や誘引
- 不正を可能とする環境や機会
- 不正を働く自己の正当化
フラット35の不正融資については、見事にこの3つが揃っているんですよ。
動機はカネ儲け
まずは動機ですが、もちろんカネです。
賃貸してお金を儲けるための投資用不動産を購入する場合の融資利率は変動金利でも3%前後の金利となることが多いです。その点、フラット35ならば35年の長期固定金利で1.3%前後ですから半分以下の金利になるんですよ。
不動産投資で儲けたい人には、少しでも低い金利で融資を受けたいという誘引が常にあります。
業者が不正をお膳立てする環境
しかし、今回のような20代~30代の人にとっては生まれて初めてのことです。金融機関を騙して不正に融資を引っ張ろうなんて大それたことが出来る人は少ないですよ。
しかし、不動産を売る販売業者がリードして「私が言ったとおりにやれば大丈夫」と手取り足取りやれば可能なんですね。
まずバレないし誰にも迷惑はかけてない→正当化
賃貸していることが絶対にバレないなら、やってもいいのでしょうか?建前では誰もが「ダメでしょ」と答えます。あくまで建前ではね。
そもそも、購入当初から賃貸する目的だったのか?ということは内心のことですから外からは判断しにくいのです。今回の不正はその弱点を突いた手口で、不動産業界では「なんちゃって」と言われるそうですね。軽い感じが罪の意識の薄さを物語っています。
一見したところ、誰にも迷惑がかかっていない(ように見える)のがミソなんです。だって隠して賃貸していても、ちゃんと毎月の約定返済を続けていれば、誰にも迷惑をかけませんよね?
「何が悪いねん?誰にも迷惑かけへんで?」
そんな顔が目に浮かぶようです。
不正融資の多くは焦げ付くことで発覚している
そもそも、なぜこれが問題になるのか?というと、結局これでお金を返せなくなる債務者が多いからなんですよね。
数年で返済が滞り、お金を払えない理由を金融機関が調査をしてみると、一度も住まずに賃貸に出していて返済が継続出来ずに「ごめんなさい」というケースが多いからなのです。
誰にも迷惑はかけていない。
と正当化しながら、返済できなくなって迷惑をかけている人が多いのが事実です。
なぜ返済できなくなるのか?これは業者の不正に乗ってしまった時点で宿命づけられていることでもあるんですよね。
- 動機・誘引=楽をしてカネ儲けがしたい。
- 環境=自分でやる知識も度胸も無い。
- 自己正当化=罪を犯している意識も薄い。
放ったらかしで儲かるという誤解
不動産を持ってさえいれば、ほったらかしで家賃収入が約束されると思ってるんです。不動産業者は売ってその差益で儲けたいですし、仲介業者なら仲介手数料で儲けたいので、良い話しかしません。
- 空き部屋になってしまうと、収入は途切れますが、返済義務は続きます。
- 設備が故障したら修繕義務は大家にあります。
- 納税していないと、税務署が調査に来ます。
大家業のリスクや手間、必要な運転資金、税務リスクなどを過小評価してスタートしているのです。
業者が売るのは、その業者としては利回りが低くてうま味が少ないと判断しているような物件です。利回りが良ければ自分で貸して儲けますよ。
大家としての経営能力も無い
フラット35の場合、金融機関は住居として使うという前提で審査をして融資しています。
その能力も無いのに、まさか大家業をやろうとしているとは思っていないのですね。業者がお膳立てしたコースに乗ってるだけなのですから。
向こうからやってくる儲け話にはウラがあり、周囲にカモが見当たらなければ、カモは自分自身なのですよ。
罪を犯してる意識の薄い犯人
そして、返済できなくなった場合は「業者に騙されてハズレ物件をつかまされた」などと、むしろ自分を被害者だと思っていたりするのです。
確かに業者にも騙されているのですが、自分自身も金融機関を騙して不正に融資を受けていることは間違いの無いことなんですよね。
詐欺罪の成立には以下の4要件が必要です。
- 犯人が騙すつもりで騙し
- 被害者が錯誤したことで
- 被害者が財産を処分し
- その処分した財産を犯人又は第三者に交付した
これを、この不正融資に当てはめると…
- あなたが本当は賃貸目的なのに居住目的と騙し
- 金融機関が居住目的と錯誤したことで
- 金融機関が融資を行い
- 融資したお金を売主に交付した
つまり、詐欺罪で訴えられる不正融資の犯人は住宅ローンを借りた人ということになるのです。
まとめ〜こっちは「なんちゃって」では済まない
冒頭でも書きましたが、本当は賃貸目的なんだけど、金融機関には自己居住用と偽って融資を引っ張ることを不動産業界では「なんちゃって」と言うそうですね。
てへペロ
って感じです。確かに不動産屋にしたら「なんちゃって」で済む話なんでしょう。
もしバレても詐欺罪なるのは、口車に乗って金融機関に「居住目的です」と言って融資を受けた債務者ですからね。
不動産屋からしたら「当然お客様が居住されるものと思っていました」と言えば済むわけです。今回は、不動産業者がやり玉に上がっていますが、それはその営業マン本人が自らそれを認めて新聞社の取材にも答えているという稀有なケースだからなのですよ。
普通はそんなことしません。しらばっくれます。
また、不動産業者がそそのかしたことを認めたからといって、住宅ローン利用者が金融機関を騙した事実が無くなるわけではないということを肝に銘じておく必要があります。
不動産屋にとっては「なんちゃって」ですが、我々は「なんちゃって」では済まないのですよ。最初から契約に違反しているのですから、一括返済を求められたらそれを拒むことは出来ないのです。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
今回の不正融資では、ちょっと異常な感じを受けました。
不動産販売会社は既にその営業マンを解雇しているので独り勝ちですね。名前も表ざたになっていません。
営業マンもクビになったとはいえ「このしくみでトップセールスマンになれた」などと言ってますし、報奨金などもたっぷりもらったんでしょうね。反省はしていないでしょう。
しかし、だからといってここまでペラペラと新聞社の取材に応じるのはどうなんでしょうかね?身の危険は感じないのでしょうか?
この営業マンを通してフラット35で物件を買った人は全員が徹底的に調べられるでしょう。
住宅金融支援機構は通報分だけでなく、全融資を対象に疑わしいケースを調査するそうです。
調査の結果、最初から賃貸目的だったことが客観的な証拠で判明した場合、一括返済を強いられることになります。
2019年5月8日
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団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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