モデルハウスとして貸し出す場合の注意点と最大限の値引きを引き出す交渉方法とは?
どうも千日です。大手のハウスメーカーではなく、中小の工務店の注文住宅を建てる場合、完成後に一定の期間、モデルハウスとして貸し出してもらえないか?という申し出を受けることがあります。
中小企業ですと、宣伝だけのために住宅展示場にそれ専用の家を建てることが難しいです。その点施主が完成した家を提供してくれれば、まさに現物でアピールできるまたと無い機会ですからね。
自分もまたそのモデルハウスを見て、こんな家を建てられるならと契約に至った部分も少なからずあるでしょうし、モデルハウスとして貸し出すことで、いくらか値引きを受けることもできます。
安くなるならば、モデルハウスとして貸し出しても良い。どうせならば少しでも多く値引きしてもらいたい。
と考える人も居るでしょうし、
せっかくの新築なんだから、いくら安くなっても他人に入られるのはイヤ!
という人も居るでしょう。
後者の人はキッパリ断れば良いと思います。新築の注文住宅なのですから、未使用で引渡してもらうのが原則ですからね。
今日は千日の住宅ローン無料相談ドットコムに寄せられたご相談事例でどんな注意点があるのか?を解説したいと思います。
相談:現在見積中です約1年間モデルハウスとして貸し出しますがこのような事例の値引きは?
家族の年齢と年収 | 自分34歳。歯科医師。去年の年収は1100万。 妻33歳。妊娠中。パート勤務ですが退職予定。 |
自己資金の額 | 250万。(頭金には100万+親からの援助100万予定)引渡しまでにさらに200万の貯蓄を予定。 |
物件価格 | 土地1800万円+住宅(見積もり中) |
物件のタイプ | 地元工務店の注文住宅 2019年4〜6月完成で1年間のモデルハウス貸し出し予定で2020年4月頃引き渡し予定。 |
借入予定額 | 4500万〜5000万 |
相談内容 | モデルハウス貸し出しで値引きありとのことですが現時点ではいくらの値引きかは不明です。このような事例の値引きはどれくらいなのでしょうか? |
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回答①:完成後の所有権と費用負担と危険負担をしっかり確認すべし
完成が2019年4月でそこから1年後の2020年4月に引渡しというのは、モデルハウスとしては、かなりの長期間貸し出すことになりますね。
ここで「貸し出す」という言葉になっているのですが、「貸す」というのは自分の所有物を相手に使用させるということです。
一方で「引渡し」を受けるまでの間、その家は工務店の所有物です。自分のものでは無いんですよ。
ならば引渡し前に貸すということは矛盾しているんですよね。
なので、「モデルハウスとして貸し出す代わりに値引き」というケースではモデルハウスとして利用する期間に、その家がどっちの所有なのかということをハッキリさせておく必要があります。
それによって値引きの考え方だけでなく、その期間にかかる費用はどっちが負担するのか?(費用負担)、その期間の建物のリスクをどっちが負担するのか?(危険負担)が決まるのです。
モデルハウス期間の所有権はどっちか? | 自分の所有 | 工務店の所有 |
---|---|---|
費用負担=火災保険料や固定資産税はどっちが払うか? | 自分で払う | 工務店が払う |
危険負担=火事や自然災害によって家が滅失した場合 | 自分の家なので、全て自分がリスクを負う。 | 工務店が仕事を完成させる前のアクシデントという扱いになる。契約どおりの完全な家を引渡してもらえる。 |
値引き交渉のポイント | 自分の所有物を工務店に賃貸するので、その賃貸料を交渉する。 | 引渡しを受ける家がモデルルームとして使用されることによる、仕上がりの劣化分(中古になる)を交渉する。 |
ここをハッキリさせておかないと、後からこんなつもりじゃなかったのに…という後悔に繋がってしまいます。
回答②:「工務店の所有」という前提でモデルハウス利用させるときの値引き交渉ポイント
そして通常のモデルハウスは完成したばかりで、施主が入居する前の段階で行われることが多いですので、通常の請負契約において、家がまだ工務店の所有の段階というケースが多いですね。
なので、「工務店の所有」という前提でモデルケースを見ていきましょう。
数日程度の短期間のケースは謝礼程度
外構以外の部分がほぼ完成していて、施主に引き渡される直前の土日に完成発表会としてお披露目しませんか?というようなセレモニー的な位置づけです。
実質的に家が出来ていたら、すぐに入居になるとは限らないです。もちろん、すぐに入居したいですけどね。
住宅ローンの手続きを実行して、代金を払わなければなりませんが、銀行で融資の手続きと工務店への入金を行い、物件に抵当権の設定を行う日については、工事の遅れも加味してすこし余裕を見て設定するのが普通です。
その期間に土日を跨いでいる場合にその2日程度だけ予約制でモデルハウスとして利用させるというような使い方です。どちらかというと、施主側の厚意に甘えるような位置づけです。
- 20万~30万程度の謝礼
- 家具家電などのサービス
このくらいが相場で原則水回りは使用不可ということになります。
私たち施主の都合によって引渡しを遅らせることもあります。住宅ローンの金利は前の月からある程度予想が出来ます。特にフラット35の金利については前の月の20日前後に0.01%くらいの誤差の範囲で予定金利が分かるようになっています。
千日のブログでは毎月その金利を予想して、公開しています。
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もしこの金利予想で翌月の方がかなり金利が安くなると分かったらどうします?引渡しをリスケジュールして翌月にして欲しいと思いますよね。
そうなると、完成しているけどまだ引き渡されていない期間というのがもう少し長くなってきますし、工務店に対しては支払が遅れますので、資金繰りにちょっとストレスをかけることになります。
なのでその交渉材料として、モデルハウス利用や日数の延長を認めるという方法も考えられます。
1年近い長期間のケースは新築と中古の差額
ご相談者のケースは約1年で、これはかなりの長期間ですね。あまり一般的なケースではありませんので、なかなか事例は無いと思います。新築の注文住宅を選ぶ場合「未使用」ということは結構大事な部分ですよね。
2日3日のモデルハウスなら、まあいいかと思っても1年となるとほぼ中古です。硬い物を落としたフローリングの凹み、樹脂製の部分などには日焼けや、ある程度の使用感が出てきてしまいます。
1年なら基礎や構造についてはほぼ新品と言えますけど、内装に使用感が出てしまうのはしょうがないですね。とはいえ、内装を全部やり直すまではしないでしょう。
ですので、このような場合は新築住宅と中古住宅の差額というのが値引き交渉のポイントとなります。新築の戸建ては中古となると、途端に3割くらい下がってしまいますが、実際に住んでいたわけでは無いのでそこまで下げるということは無いです。
ということは、物件価格の1割~2割というのが妥当な範囲ですね。
ただ、現在は最初の見積の段階であり、細かな仕様などが決まっていない状態です。
- 最初の見積よりも安くなる場合は、値引き金額として固定していた方が有利です。
- 最初の見積よりも高くなる場合は、値引き率として割合を固定した方が有利です。
なので、最初の段階でどちらにしても値引き金額がこちらに有利になるように、詰めておくことをお勧めします。
今回のご相談者は、現時点の自己資金が少ないので、このモデルハウスの期間に貯蓄をするということで、施主の側にもモデルハウスに出すことについてのインセンティブが働いています。
工務店側の見方も知った上での引き際の決め方
もしも、こちら側の自己資金が足らず、モデルハウスに出してでも少しでも安くしたいと考えているならば、それが工務店側に伝わっていると、かえって値引き交渉は少し厳しくなるでしょう。
基本的にモデルハウスなどには出したくないけど、家づくりのパートナーとして信用しているあなたの頼みだから。
こうしたスタンスで交渉に臨むことが重要です。
また、前述した相場の金額は放っておいても値引きしてもらえる金額ということではありません。
そもそも一対一の交渉において、画一的な線引きはありません。
工務店側の考え方としてモデルハウスにかけられる費用は、それによって得られる利益の範囲内になります。それを超えて値引きすることはあり得ません。
従って、こちら側としてこのくらい値引きしてもらえなければ、という金額が出なかった場合はモデルハウスには出さないようにするべきです。
でないと少々安くなったところで、こちら側にとって一方的に不利なだけの取引となってしまうからです。
まとめ~値引きに釣られないように注意!
私の著書の家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本では業者選びでは『坪単価相場』のことは一旦忘れることをお勧めしています。
業者が出してきた見積書の金額で一番安いところに決めるような方法で家づくりのパートナーを決めるなんておかしいですよね。
トータルで安くしていても目に見えない部分で安いものを使っていて実は割高になっているのかもしれません。
そういうことをされても、技術面で素人の私たちには目の前でやられていても、まず分かりません。
ましてや見積書だけで家を構成する全てを把握したうえでコストパフォーマンスを判断するなんて、プロであっても無理ですよ。
導入の段階で金額面でのお得度をアピールする業者というのは、まだ、そういうことを分かっていない人を取り込んで、その後…
なのかも知れませんよ。リンク先の記事も是非読んでみてくださいね。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
ご相談は随時受け付けています。
最近は本を読んで千日太郎を知り、ご相談して下さる方が増えてきました。嬉しいことです!
全国の大型書店と通販で発売中です。
監査法人の元同僚の奥様のご両親が住宅関係の仕事をされているのですが、興味をもって読んでいただき『すごく分かりやすく、面白かった』と感想を頂きました。
むしろ、業界の方にこそ読んでいただきたい本です。
ある程度知識のある人からどうすれば信頼を勝ち取れるのか?
このヒントが得られると思います。
2018年10月8日
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