どうも千日です。固定金利から変動金利への借り換えシミュレーションをやってくれる無料のサービスとして有名なのがモゲチェック ですね。
スライダーを動かして、だいたいいくらの借り換えメリットがあるか手軽にわかります。また登録すれば、無料で最も低金利の借り換え先を案内してくれます。
しかし、固定金利から変動金利へ借り換える場合は、シミュレーション上で借り換えメリットが出て当然なのです。変動金利は上がらないという前提で行うのですからね。
そこで今日は「固定から変動という金利タイプの変更を伴う住宅ローンの借り換え」を行う人が、金利変動リスク込みで借り換えるべきかを判定する方法について解説します。
なお借り換えの決断にあたっては、外部要因(外部環境)と内部要因(自分の状況)、二つの側面からアプローチします。
二つのアプローチはいわば車輪の両輪の関係にあります。どちらかを無視してもいけません。両方をしっかり検討する必要があります。
- 外部要因:コロナショック前に固定金利で借りた人は、コロナショックを理由として変動へ借り換えるべきなのか?
- 内部要因:自分の収入or資産に対する金利変動リスクの大きさと借り換えメリットの大きさを知る
外部要因については、前回のブログで解説していますので、併せて読んでくださいね。
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もし金利が上がったら自分の総支払額がいくら増えるか(内部要因)
どの時点でどれだけ金利が上がるのか?そもそも上がらないのか?それを予め知ることはできないのですが、その金利変動リスクを取るのが変動金利です。
ですから、今の時点のローン残高と残期間でどのくらいのリスクになるのか?金額で把握しておく必要があります。
冒頭のモゲチェック では金利が上がらないものと仮定して、現時点のローン残高と残期間でいくら借り換えメリットがあるのか?を試算したわけですね。
ここでは、その逆をやります。
変動金利で金利が上がったらいくら繰り上げ返済すればいいか?という物差し
現時点の変動金利を0.5%、ローン残高を1000万円とし、そこから金利が上がったらいくら繰り上げ返済すれば、これまでと同じ毎月返済額で完済できるか?という表です。
これが金利変動リスクの物差しです。
(単位:万円)
残高1000万のときに金利上昇したら繰上返済すべき金額 | ||||
---|---|---|---|---|
残期間 | 30年 | 25年 | 20年 | 15年 |
毎月返済 | 2.99 | 3.55 | 4.38 | 5.77 |
0.5%→1.0% | 71 | 59 | 48 | 36 |
0.5%→1.5% | 134 | 113 | 93 | 71 |
0.5%→2.0% | 192 | 163 | 135 | 104 |
0.5%→2.5% | 244 | 209 | 174 | 135 |
0.5%→3.0% | 291 | 252 | 211 | 165 |
0.5%→3.5% | 335 | 291 | 245 | 193 |
0.5%→4.0% | 374 | 328 | 278 | 220 |
0.5%→4.5% | 410 | 362 | 308 | 246 |
0.5%→5.0% | 444 | 393 | 337 | 271 |
例えば一番左上の『71』の意味はどういうことか?を説明しましょう。
残期間30年の段階のローン残高が1000万円だとすると、毎月の返済は2.99万円です。そこから、金利が1.0%に上がったとしたらどうなるでしょうか?
- 5年ルールと125%ルールが無い場合:翌月から毎月の返済額が増えます。
- 5年ルールと125%ルールが有る場合:5年は毎月の返済額は変わりませんが、返済額に占める利息が増える分、元本が減らず底だまりに溜まっていきます。
そうならないようにするには、繰り上げ返済すればいいのです。
金利が1.0%に上がっても毎月返済を増やさず、元本も底だまりにならないようにいくらか繰り上げ返済すればいい?の答えが71万円ということなんです。
なお、5年ルールと125%ルールの詳細については、こちらで詳しく解説していますので読んでみてください。
住宅ローン変動金利の5年ルールと125%ルールの全ての疑問に答えます - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える
借入金額に比例して金利変動リスクも大きくなる
金利変動リスクの大きさは借り入れ残高に比例して大きくなります。例えば今の残高が4000万円の人は上記の表を4倍すれば、自分の金利変動リスクを知ることができます。
試しに作ってみました。結構な金額です。
(単位:万円)
残高4000万のときに金利上昇したら繰上返済すべき金額 | ||||
---|---|---|---|---|
残期間 | 30年 | 25年 | 20年 | 15年 |
毎月返済 | 11.96 | 14.2 | 17.52 | 23.08 |
0.5%→1.0% | 284 | 236 | 192 | 144 |
0.5%→1.5% | 536 | 452 | 372 | 284 |
0.5%→2.0% | 768 | 652 | 540 | 416 |
0.5%→2.5% | 976 | 836 | 696 | 540 |
0.5%→3.0% | 1164 | 1008 | 844 | 660 |
0.5%→3.5% | 1340 | 1164 | 980 | 772 |
0.5%→4.0% | 1496 | 1312 | 1112 | 880 |
0.5%→4.5% | 1640 | 1448 | 1232 | 984 |
0.5%→5.0% | 1776 | 1572 | 1348 | 1084 |
金利はどこまで上がるか?
ただし、これは今スグ上がったら?という仮定ですし、かなり極端なパーセントも入れています。
この表を出すとたまに、「そんなに上がるわけないだろバカ」という人がいますが、ここまで上がるという予想をしているわけではないので、悪しからず。
ただし、今のメガバンクの変動金利の基準金利(引き下げ前の定価のようなもの)は2.475%です。2%くらいは現実的な金利として想定していてもよいと思います。
こうなると、例えば4000万の住宅ローンを変動金利で借りる人は700~800万くらいの支払い増リスクに耐えられなければならないということになります。
そういうことではありませんので、まだ結論を早まらないでくださいね。
売却するという選択肢もある
もう一つの金利変動リスクへの対応は住宅ローンを完済することです。上記のシミュレーションは、あくまで住宅ローンを当初の期間で完済するまで支払いを続行することを前提としています。
ローン残高とほぼ同額の貯金がある人なら、完済してしまえばその後の利息負担はゼロになります。
また、そこまで貯金がなくても、物件を売却してその代金で全額完済してしまえば、それまで享受してきた住宅ローン控除の分むしろトクをすることもあります。
多くの人にとっては後者が現実的ですね。私も過去そのように考えて変動金利を選びました。
売却を視野に入れる場合には以下の2点がポイントになります。
- 売りたいときに売れる人気物件を購入する(立地のいいマンションなど)。
- オーバーローン(ローン残高が物件の売却価格を超えてしまう)にならないようにある程度の頭金を入れておく。また、中古市場にも気を配る。
自分の収入or保有資産に対してどれだけの影響があるか?(内部要因)
意思決定するにあたり、以下のように考えます。
- 借り換えメリット(=支払いの節約メリット)
- 金利変動リスク(=支払いの増加リスク)
このように金額にしてみることで、同じステージで比較することができます。
私の本住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本でも住宅ローンを払うための収入は「円」なのですから、その判断も「円」で行うことをおすすめしています。よかったらぜひ読んでください。
そして、もう一つ大事なのがどちらも、つまり、借り換えメリットも金利変動リスクも、住宅ローンの完済までの長い期間にわたっての累積額だということです。
すぐさまそのお金がもらえるとか、必要になるというたぐいのものではありません。
そのため、比較する自分の収入や資産は、自分の月給や今ある貯金額ではないのですね。
年齢と年収によっても違う比較対象
つまり、自分の手取り年収×定年までの年数が住宅ローンを払う原資であり、それと比較するのです。退職金は不確定ですし、老後資金としてこの計算には入れないようにすることをお勧めします。
そのため、借り換えを考える時点の年齢と年収によってもかなり重要性は変わってくるものと思います。
また、50代になってくると、定年までの期間が短く、老後資金が喫緊の課題になってきます。定年までの手取り収入+現時点の貯蓄額と比較すると良いでしょう。
1%未満なら無視、10%以上なら熟考すべし
総収入に対する借り換えメリットの金額割合を見れば、かなり実態に近い形でメリットの大きさを把握できると思います。
同じく総収入に対する金利変動リスクの金額割合を見れば、かなり実態に近い形で金利上昇の脅威を把握できると思います。
判断の尺度は、人によっても違うと思いますが、おおむねの目安を示しておこうと思います。
- 1%未満なら無視
- 10%以上なら熟考
特に借り換えメリットという面で、1%未満であるというのなら、どっちでもいいという感じです。
そして特に金利変動リスクという面で、10%以上となったなら、これは立ち止まって考えた方がいいです。リスクは大きいですね。
売って完済するということを現実的に考えたくないなら、今のまま固定金利で行くことをお勧めします。
まとめ~金利変動リスクを取れるか?を冷静に判断しよう
前の記事でも書きましたが、固定金利から変動金利へ借り換えるということは、金利変動リスクへの対応方針を変えるということです。
- 固定金利:金利変動リスクを金融機関が負う、そのかわりに金利が高い。
- 変動金利:金利変動リスクを自分が負う、そのかわりに金利が安い。
コロナショックがどれだけ大きな経済事象であるにせよ、方針を変えるべきか?という問題とは分けて考えるべきですね。そこは冷静な判断が必要です。
金利変動リスクを取ってやっていけるのか?それは現時点のローン残高、自分の年齢、年収によっても変わってくるのです。
今回はその具体的な検討方法を解説しました。千日太郎と出会ったみなさまが住宅ローンの判断を正しく行い、ご家族と素敵な人生を送られることを祈っています。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》~借り換えの「内部要因」について
前回はコロナショックで固定から変動へ借り換えすべきか?ということについて解説しました。あわせてよんでみてくださいね。
コロナで当分住宅ローン金利は上がらない?固定から変動へ借り換えるのちょっと待った! - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える
借り換えることによってどれだけメリットがあり、今後の収入や老後資金にどう影響するか?という検討が必要です。
また、固定から変動のようにリスクが増える場合は、それに耐えられるかも重要です。両方を確認して、ゴーサインが出れば、借り換えしても良いと思います。
2020年3月22日
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ランキング | 年齢 | |||
---|---|---|---|---|
20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 | |
新規借入 | 20代800未満 | 30代600未満 | 40代600未満 | 50代1000未満 |
30代600~1200 | 40代600~1200 | 50代1000以上 | ||
20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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