2020年7月14日更新
日本国債はもはや安全資産ではないと市場が判断した
どうも千日です。世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスを「パンデミック」と認定し、連日株価が乱高下しています。しかし、ここ数日は株価や米長期金利に対する日本の長期金利の動きにイレギュラーが発生しています。
- 日経平均株価は下がっても日本の長期金利は上がる。
- 米長期金利は下がったのに日本の長期金利は上がる。
通常ならば、株価が下がる(=リスク資産の株が売られる)と長期金利が下がる(=安全資産の国債が買われる)ということになります。
またこれまでは、米長期金利は日本の長期金利とおおむね連動してきました。
従来のセオリーから外れているということは、このコロナショックによって、日本国債が安全資産だという投資家の認識が変容していきているからです。
住宅ローンの金利は長期金利に影響を受けると言われます。コロナ不況で住宅ローンの金利が上がってしまったら、まさにダブルパンチです。
今日は、コロナショックによるイレギュラーな長期金利の動向と、住宅ローンの金利動向、コロナショックで損しないための住宅ローンの借り方を解説します。
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コロナショックで金利が上がる⁈住宅ローンの金利動向と損しない方法|千日太郎youtube動画
また、最新の日米金利動向については下記ページで毎日更新しています。
- 日本国債はもはや安全資産ではないと市場が判断した
日本の長期金利の上昇の原因は東京五輪の開催リスク
まず、日経平均株価が下がっているのに、長期金利(日本の10年国債利回り)が上がっているということをわかりやすくグラフにしました。
2020年3月7日あたりまでは株価が下がると同じように長期金利が下がっていましたが、長期金利が最低の-0.2%となった直後から、株価の下落とは逆方向に長期金利が上昇しています!こんなことは今までありませんでした。
投資家たちが「株を売り日本国債も売っている」ということです。
理由は実にシンプルです。しかし日本人の我々にとっては受け入れがたいことなので、あまり言及していないんですよ。
コロナショックで長期金利が上がる仕組み
公表されている長期金利は10年国債の利回りをいいます。利回りとは投資した元本に対する成果として得られる利益が年に何パーセントかという割合を言います。
そして、債券の価格と利回りは逆に動くのです(負の相関関係)。早い話が以下のような法則です。
- 債券の価格が上昇すると利回りが下落する
- 債券の価格が下落すると利回りが上昇する
つまり今、日本の長期金利が上がっているのは金融市場で取引されている日本国債の価格が下落しているからです。
日本国債の価格が下落するのは、投資家の多数派が日本国債を売りたがっているからです。
この仕組みを説明しましょう。
- 10年国債
- 額面金額100円
- 券面利率2.0%
上記の前提で3つのパターンで解説します。小学校の算数の知識で理解できます。
国債の相場が100円の場合
券面利率は2%ですから、100円に対して毎年2円の利息が貰えます。10年後の満期には100円の元本が返ってきます。
100円投資して毎年2円の利益ですから、運用利回りは年2%です。
国債の相場が95円の場合
額面100円の国債が95円に値下がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰える上に満期で額面どおり100円で償還されます。購入価格との差額である5円が値上り(キャピタルゲイン)として手に入ります。
95円投資して毎年2.5円の利益ですから、2.5÷95で運用利回りは2.6%です。
国債の相場が105円の場合
額面100円の国債が105円に値上がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰えますけど、満期で返って来るのは額面の100円だけです。購入価格との差額であるマイナス5円を値下がり(キャピタルロス)として被ることになります。
105円投資して毎年1.5円の利益ですから、1.5÷105で運用利回りは1.4%です。
債券の価格と利回りは逆方向に動いていますよね。
-
債券価格95円の利回りは2.6%
-
債券価格100円の利回りは2%
- 債券価格105円の利回りは1.4%
東京五輪が開催できなかった場合のリスクに注目
つまり、日本の長期金利が上がっているということ=日本国債の価格が下がっていることを意味します。
普通はリスクオフに動くと皆が安全資産として日本国債を買いに走るのですが、今回のコロナショック局面において日本国債は安全資産ではないという評価が市場によって下されたということですよ。
それは東京五輪の開催にイエローシグナルが点灯したからです。これまでの歴史で、オリンピックの開催国がその直前になって不開催になったことはありません。その経済的ダメージは計り知れないのです。
そのため、投資家はリスク資産の株式を売り、新型コロナウイルスのパンデミックによる五輪中止(ないし延期や興行的失敗)という空前絶後の損失リスクを負っている日本国の債券も売っているわけです。
今後の長期金利の動向は?どこまで金利は上がるのか?
住宅ローンを借りる我々としては、コロナショックでただでさえ景気が悪くなるのですから、せめて住宅ローンの金利は下げてもらわないと辛いわけです。
もちろん、下げてほしいと言って下がるものではありませんが、今後の動向がどうなるか?解説しておきましょう。
日銀マイナス金利深堀りには期待できない
まずは、この異常事態に対して日銀がどう動くか?というところに注目が集まるわけです。少し前には「マイナス金利政策の深堀り」が意識されていました。
しかし、欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利の深堀りを見送ったことにより、日銀がマイナス金利をさらに深堀りするという見込みが後退しています。
そもそも論として日本国が直面するであろうリスク回避から日本国債が売られているのだとすれば、日本銀行が何かしたところで、しょせんは焼石に水なのです。
今後も長期金利が上がり続けたとしても0%が上限
では指を咥えて見ているしかないのか?ということになるのですが、まあ、もともと金利の動向ってそういうものです。いわば自然現象なので、どうこうできるものではありません。
ただし、上がるにしても自ずと現時点での上限というものがあります。その上限は0%です。コロナショックによって大きなリスクを負っているとはいいながら、まだ日本国債といえば安全資産というイメージは残っています。
それがプラスの利回りになるほど債券価格が下がってくれば、割安感から購入する投資家が出てくるでしょう。
そのため、今の環境であれば0%が上限になると思います。
長期金利が上がると住宅ローンは上がってしまうのか?
住宅ローンの金利は金融市場の長期金利の影響を受けます。つまり、長期金利が上がるということは、住宅ローンの金利が上がることを意味するのですが、その金利タイプや取り扱い金融機関によっても個々の対応に違いが出ます。
変動金利は上がらない
まず、変動金利については直接的に長期金利の影響を受けません。
その金融機関が決める短期プライムレートと同一幅で変動するというルールが一般的です。短期プライムレート(以後「短プラ」という。)その短プラは、日銀の政策金利(日本銀行が民間金融機関に対して当座のお金を融資するときの金利)の影響を受けます。
つまり、今の状況で変動金利が上がることはありません。
民間銀行は固定金利を上げたい
固定金利の基準金利は、長期金利の影響を受けます。例えば金融機関が10年固定金利の商品を販売する場合は、「金融機関が10年固定金利で調達した金利に利益を乗せて10年固定金利を融資している」という建前をとっています。
つまり今後、長期金利がさらに上がっていけば、たとえそれが景気の実態を反映したものでなくても、民間銀行にとっては固定金利を上げる大義名分となります。
ただし、状況が状況ですから金利を上げる銀行と上げない銀行が出てくるなど、対応が分かれるかもしれません。今までもそういうケースはありました。
公的融資のフラット35と民間の固定金利はちょっと違う
フラット35を融資する債権者は住宅金融支援機構という国の機関です。住宅金融支援機構が住宅ローンとして貸すお金は、フラット35の債権を証券化した「機構債」を販売して金融市場から調達しています。
典型的な例として「買取型」というフラット35のスキームを図にすると以下のようになります。
この「機構債」は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を国が取り扱う安全資産という考えで購入します。そのため、表面利率は毎月20日前後の長期金利=10年国債の利回りに連動する傾向があるのです。
日本国債が安全資産ではなくなってきているという状況であれば、当然に「機構債」に対して投資家が要求する表面利率は高くなります。つまり、フラット35の金利も上がってしまうということですね。
税金を投入して金利上昇を抑える
しかし、フラット35については、金利の上昇局面において金利の上昇が低く抑えられるということがあります。これはフラット35が公的融資だからです。民間ではまずこういうことはありません。
民間金融機関であれば、金融市場と同じように金利を上げないと儲けがなくなってしまうという判断をします。
これに対して公的融資においては、利用者=国民の金融円滑化という面がより重要視されるのです。
そのため、金利上昇局面では保険としてフラット35にも審査に出しておくことが経済的に合理的な選択となるでしょう。税金で住宅ローンの金利を安くしてくれる商品などフラット35以外にはあり得ないからです。
コロナショックで損しないための住宅ローンの借り方
この記事の公開時点(2020年3月13日)で日本の長期金利は上昇傾向にありますが、再び日本国債が安全資産に返り咲けば、すぐさま反転して下がるでしょう。
このように不安定に日々変動する金利に対して、住宅ローンを借りる私たちはどう対応すればいいのでしょうか?
そこでお勧めするのが以下の2つの切り口から複数の住宅ローンで審査を通しておいて実行日に臨むことです。
- 金利が決まるタイミングが異なる住宅ローンで審査を通す
- 異なる金利タイプで審査を通す
1.金利が決まるタイミングが異なる住宅ローンで本審査を通す
住宅ローンの金利は長期金利を反映して決定されますが、その金利が決まるタイミングという切り口からリスクヘッジ方法をご紹介します。
あまり知られていないことですが、債権者となる金融機関によって金利が決まるタイミングが違うのです。
つまり、タイミングの異なる金融機関の取り扱う複数の住宅ローンで本審査を通しておくことで不安定な金利変動のリスクをヘッジすることが可能となります。
融資の申込月と実行月で低い方の金利を適用する地銀
住宅ローンの金利は月初に発表され、月間の融資実行は当該金利が適用されます。
しかし、一部の地銀や信用金庫などでは住宅ローンの申込月の金利と、融資実行月の金利のどちらか低い方の金利を適用してくれるというサービスを行っています。
今後、4月に金利が上がったとしても、3月にすでに発表されている低金利で住宅ローンを借りられるので、リスクヘッジになるというわけです。
20日に金利を決めるフラット35と月末に金利を決める民間銀行
また民間融資の固定金利を第一候補に考えている人はフラット35でも審査に出しておくことをお勧めします。
長期上昇時に税金を投入して住宅ローンの金利上昇を抑えるということは前述したとおりですが、金利の決まるタイミングも違います。
- フラット35:前月の20日前後に決まる
- 民間住宅ローン:前月の末ごろに決まる
つまり、前月の機構債の発表(20日)以降にさらに長期金利が上がったとしても、翌月のフラット35金利には影響せず上がりませんが、民間金融機関の住宅ローン金利はそれを反映してさらに上がることがあります。
もちろん逆もあって、20日以降に金利が下がった場合に翌月のフラット35金利は下がりませんが、民間金融機関の住宅ローンは下がることがあるのです。
2.異なる金利タイプで本審査を通す
住宅ローンは銀行が販売する商品であり、その金利=商品の価格であるとするならば、それをどんな価格(金利)にするかは金融市場のみならず銀行の営業方針によっても変わってくるのです。
特定の金利タイプだけが下がることがあれば、その逆で上がってしまうこともあります。早くから一つの金利タイプに決めてしまい、それだけで複数の銀行に審査に出すのではなく、異なる金利タイプでも審査に出しておく方が良いです。
本審査では一つの金融機関で一つの金利タイプしか審査に出せませんから、必然的に複数の金融機関に審査に出すことになるでしょう。
ただ複数の金融機関に本審査に出すにしても、多くの書類を提出しなければならないので、ある程度は絞って計画的に行うべきですね。
まとめ~金利動向の予想とリスクヘッジ
前半では、あくまで千日太郎個人の予想として今後の金利動向を予想していますが、実際の金利動向が異なってくる可能性は大いにあり得ることです。
また、最近は日本国債の海外投資家保有率が増加傾向にありますので、日本で生活している我々の感覚と違った動きをすることもよくあります。日本国債をリスク資産視するというのは、その最たるものですよね。
今後、住宅ローンの実行までの間に、どんな事件が起こり、それに金利がどう反応するのか?正確に予想することは非常に困難です。後半に書いているリスクヘッジをぜひ実践してください。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
千日太郎の本が絶賛発売中です!タイトルは住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本です!
住宅ローンの金利がどうやって決まっているか?など、住宅ローンを組む人が本当は知っておくべきなのに、知らされていないことを一冊の本にまとめました。
時代や環境によって変わらない住宅ローンの本質的な部分があります。多くの人が、どういうものかを知らず、または少し誤解して住宅ローンを借りている現状があります。
どういうものかを理解し、その正しい使用方法を理解するための、いわば「住宅ローンの取り扱い説明書」として書きました。
ぜひご一読いただけましたら嬉しいです。
2020年3月13日
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