地震や水害などの大規模災害でマイホームが被害を受けたらどうする?
どうも千日です。今朝北海道で震度7の大地震が発生しました。昨日までは台風21号の甚大な被害あって、立て続けの大規模自然災害です。過去に阪神淡路大震災に遭い家を失ったことのある私としても、とても他人ごととは思えません。
そして、自然災害は前触れもなく身に降りかかってきます。天災でマイホームが無くなってしまっても、契約に基づく住宅ローンは残ります。
私は住宅ローンの専門家ですので、この未曾有の大災害に住宅ローン返済中に自宅に被害を受けた方の役に立つ情報を発信したいと思います。
- 地震や水害などの大規模災害でマイホームが被害を受けたらどうする?
火災保険は水災もカバーするが地震による火災はカバーしていない
火災保険は住宅ローンを組むときに加入が義務付けられる保険です。そして多くの火災保険は洪水や土砂崩れなどの「水災」もカバーの対象としてます。火災ではないからとあきらめず、必ず契約内容を確認してください。
ただ地震による火災については火災保険ではカバーされません。なぜかというと、地震がエリア災害だからです。
- 震災は天変地異でありエリア災害、被害の範囲はどこまでも広範囲になる。
- 火災は人災であり個別災害、延焼があったとしても範囲は限られる。
大規模な地震が発生した場合に払う保険金を、民間の保険会社は用意することが出来ませんので、そもそも保険会社が販売する商品として成立しないのですよ。
例えば東日本大震災で支払われた地震保険の保険金は東北、関東、北信越などで75万件以上、1兆2,000億円を超える金額となりました。
小さな国の国家予算レベルです。
そんなお金がいつ必要になるか予測できないですし、もし発生した時に払えなければ倒産してしまいます。民間には無理なのです。
地震保険は保険商品ではなく国のセイフティネット
地震保険は、地震等による被災者の生活の安定を目的として、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を政府が再保険することで成り立っています。
1回の地震等により政府が支払う再保険金は、毎年度、国会の議決で限度額を設定しています。
2016年4月現在、その金額は10兆9,902億円、民間保険責任額と合計した1回の地震等による保険金の総支払限度額は11.3兆円です。
これは東日本大震災10回分の金額ですね。
それを国家予算からほとんど出している、つまりこれはセイフティネット(社会保障)なんです。
地震保険以上に安い保険はない
地震保険の保険料は損害保険料率算出機構 HOMEが算出した料率を適用します。保険料の内訳は以下のようになっています。
保険金の支払に充てられる『純保険料率』と事業経費に充てられる『付加保険料率』で成り立っています。
そして『付加保険料率』は契約の事務処理や損害の調査などに充てられる『社費』と契約の募集を行う代理店に支払う『代理店手数料』に分けられます。
つまり、地震保険で保険会社に儲けはありません。
これは保険会社が地震保険の事務を代行しているだけで、それで儲けるという仕組みではないからです。
マンションなどの区分所有の場合は地震保険に加入しても意味ないって?
ただ、地震保険で払われる保険金は建物時価の30%~50%くらいです。つまり、地震で家が全壊して、保険金のみによって再建するということは出来ません。
さらに、マンションの場合は管理組合の意思決定に時間がかかるという問題があります。立て替えたいという人も居れば、そんなお金ない(地震保険では足りないから)という人も居て、なかなか話がまとまらないんですよ。
だから(特にマンションの場合は)地震保険に入っていても意味ないよ。貯金の方がマシ。
したり顔でこんなことを言う人がいますが、それは誤解です。
地震保険は建物の再建の為に入る保険ではありません。生活を再建させ家族が路頭に迷わなくて済むようにするセイフティネットなんです。
家が壊れても住宅ローンは減らないというごく当たり前の厳しい現実です。もはや住めない家の住宅ローンを払い切らなければなりません。賃貸物件に住むにしても家賃が必要ですから住居費は2重にかかってくるのですよ。
そもそも地震によって心理的にも打ちのめされている上に、この状況はキツイです。地震保険は生活を再建させる自助努力の手立てとなるのが、地震保険なんです。
マンションであろうと、戸建てであろうと、それは同じです。入る意味はあります。
知ってる?自然災害債務整理ガイドライン
今回の北海道大地震などの大規模自然災害の場合、住宅ローンの返済については期限を待ってくれるケースもあります。
銀行のホームぺージなどでそうした相談窓口の開設が公開されています。
しかし、いつか支払は再開しなければなりません。完済しなければ住宅ローンは終わりません。
そこで、自然災害債務整理ガイドラインで債務を整理して生活を再建するという選択肢があることをご紹介します。
自己破産せずにローンの免除や減額ができる!
これは自然災害の影響を受けたことによって住宅ローン等の債務を弁済できなくなり、自己破産するしかない状態になった個人が、破産手続等によらずに、ローンの免除や減額を銀行に申し出て債務整理を行う際の準則として取りまとめられたものです。
対象となる自然災害は2015年9月2日以降に災害救助法の適用を受けた自然災害です。直近では2018年7月の西日本豪雨も対象となっています。まだ指定はされていませんが、今回の北海道大地震も間違いなく対象となるでしょう。
被災された皆さまへ | 一般社団法人自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関
このガイドラインで債務整理するメリットは3つあります。
1.手続き支援は無料!
債務免除の法律上の書類作成について、弁護士などの「登録支援専門家」による支援を無料で受けられます。
2.財産の一部を手許に残せる!
生活必需品や一定の現預金、被災者生活再建支援金、災害弔慰金・災害障害見舞金については手元に残せます。
3.ブラックリストに登録されない!
このガイドラインで債務整理した場合は個人信用情報(ブラックリスト)に記録されないので、その後生活を再建すれば、クレジットカードも作れますし、住宅ローンだって組めます。
自然災害債務整理ガイドラインによる債務整理の手続きの流れ
このガイドラインを利用した債務整理の手続きの流れを簡単に解説しますね。
①債権者に対してガイドラインの手続着手を申し出る
住宅ローンを借りている金融機関等へガイドラインの手続着手を申し出ます。その際に金融機関から借入先、借入残高、年収、資産(預金など)の状況などを聞かれます。
②専門家による手続支援を依頼する
金融機関等から手続着手について同意が得られたら、地元弁護士会などを通じて「登録支援専門家」による手続支援を依頼します。「 登録支援専門家」は、弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士などです。
③債務整理(開始)を申し出る
金融機関等に債務整理を申し出て、申出書のほか財産目録などの必要書類を提出します。この債務整理の申出後は、債務の返済や督促は停止します。
④「調停条項案」を作成する
金融機関等との協議を通じて、債務整理の内容を盛り込んだ書類(「調停条項案」)を作成します。調停条項案には原則として以下の事項を含むとされています。
- 債務の弁済ができなくなった理由(災害による影響の内容を含む。)
- 財産の状況
- 債務弁済計画(原則5年以内)
- 資産の換価・処分の方針
- 対象債権者に対して債務の減免、期限の猶予その他の権利変更を要請する場合はその内容
⑤「調停条項案」を提出し説明する
金融機関等へガイドラインに適合する「調停条項案」を提出・説明します。金融機関等は1カ月以内に同意するか否か回答します。
⑥特定調停を申立てる
債務整理の対象にしようとする全ての借入先から同意が得られたら、簡易裁判所へ特定調停を申し立てます(申立費用は債務者負担)。
⑦調停条項が確定すれば債務整理が成立する
特定調停手続により調停条項が確定すれば、晴れて債務整理成立です。
地震保険で保険金を受け取るまでに知っておきたいこと
地震保険は一生に何度も利用するものではありませんよね。
というか、そう願います。
なので経験者として「あの時知ってれば…」となりがちな保険金の受取についての知識をまとめておきます。
片づける前に被害状況を写真に撮影する!
家の中も外もがぐちゃぐちゃになってしまって、一刻も早く片づけたいという気持ちになるのですが、着手するまえにスマホなどで写真撮影しておきましょう。
片付けてしまってからだと被害が少なく査定される可能性があります。
保険金の支払いは受付順なので速やかに第一報を!
そして、早めに保険会社に第一報を入れておきましょう。
各保険会社のサポートセンターは24時間365日受付しています。事務処理は先着順ですから、連絡が遅くなるとその分保険金の受け取りが遅れることになります。
罹災証明の発行を待たずに保険金を貰える!
保険金請求には原則として自治体が発行する「罹災(りさい)証明」(発行に数週間かかる)が必要ですが、罹災証明の発行前に保険金の支払いが行われる特例措置が取られることがあります。
2018年7月の西日本豪雨では2016年の熊本地震以来の「特定非常災害」に指定され、その特例措置が取られました。
北海道大地震でも同様の措置が取られると思われますので契約先の代理店や保険会社に問い合わせてください。
保険証券を紛失しても大丈夫!
金庫ががれきに埋まってしまって、保険証券が無くなってもちゃんと保障を受けることが出来ます。
被災家屋が災害救助法適用地域にあれば、以下の番号に電話をすれば調べてくれます。
- 火災保険:自然災害等損保契約照会センターフリーダイヤル(0120-50-1331)
- 生命保険:災害地域生保契約照会センターフリーダイヤル(0120-00-1731)
地震保険に入ってなくても最大300万円の支援金がある!
地震保険に入っていなかった場合にも、また、その被害が保険の対象でなかった場合でも、被災者生活再建支援法によって公的な支援を受けることが出来ます。
この制度の対象になる被災世帯は以下の4つのどれかに当てはまる世帯です。
- 住宅が「全壊」した世帯
- 住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯。
- 災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯。
- 住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯。
その支給額は最大で300万円です。けして小さな金額ではありませんよね。
支援金の支給額
支援金の支給額は住宅の被害程度(家がどれくらい壊れたか)による基礎支援金と住宅の再建方法(これから家をどうするのか)による加算支援金の合計額になります。
①住宅の被害程度に応じて支給する支援金(基礎支援金)
住宅の被害程度 | 支給額 |
全壊 | 100万円 |
解体 | 100万円 |
長期避難 | 100万円 |
大規模半壊 | 50万円 |
②住宅の再建方法に応じて支給する支援金(加算支援金)
住宅の再建方法 | 支給額 |
建設、購入 | 200万円 |
補修 | 100万円 |
賃借 | 50万円 |
支援金支給までの手続き
- 都道府県が被災者生活再建支援法を適用する。
- 都道府県から国、支援法人、市町村に適用を報告し公示する。
- 市区町村が罹災証明を交付する。
- 被災世帯が支援金の支給申請をする。
- 市区町村で受け付けし、都道府県がとりまとめて、支援法人に送付する。
- 支援法人から被災世帯に支援金が支給される。
申請期間は基礎支援金で災害発生日から13カ月以内、加算支援金は災害発生日から37カ月以内となっています。
申請に必要な書類は以下のとおりです。被害と再建の実態を証明する最低限のもので申請できます。
- 支援金支給申請書
- 住民票等
- 罹災証明書等
- 預金通帳の写し
- その他関係書類、契約書(住宅の購入・補修、借家の賃貸借契約など)
まとめ~多くの人に知ってほしいセイフティネットの知識と情報
特に自然災害債務整理ガイドラインについては、まだまだ知名度が低いので、多くの人に知ってほしいです。
多くの金融機関は地震や水害が発生すると一時的に債務の支払いを猶予する窓口の設置を行い、その告知をHPでやってくれるのですが、このガイドラインについては全くやらないです。
支払の猶予は利息をちゃんと取れますけど、債務整理をされてしまうと銀行にとって大きな損失になるからです。
しかし、国がこのようなガイドラインを作っている以上、合理的な理由なくそれに応じない訳にはいかないのです。
もちろん、この方法を取れば絶対に債務免除されるということではありませんが、無料で、財産を残しつつ、ブラックリストにも載らない債務整理の方法があるということを知っているか、知らないかだけで全然世界が違ってくると思いますよ。
実際に被害を受けると、頭が真っ白になってしまってそれどころではなくなってしまいます。
親戚や友人知人で被害を受けた人がおられれば、是非こうした方法があるということを教えてあげてください。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
ここのところ大規模災害が本当に多いです。
この日本に住んでいる限り、地震や水害のリスクというのは、完全には避けられない感を受けています。
こうしたリスクがあるので家を買うのが怖くなった人も居るでしょう。しかし、それでも欲しいと思うのが家なんですよね。なんででしょうね、不思議です。
人間の性みたいなものかもしれません。しかし最近は昔と比べても自然災害に対するセイフティネットが充実しています。
これから家を買う、建てる人には是非知っておいて欲しいですし、まさに今被害を受けている人に届いて欲しいです。
2018年9月6日
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ランキング | 年齢 | |||
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20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 | |
新規借入 | 20代800未満 | 30代600未満 | 40代600未満 | 50代1000未満 |
30代600~1200 | 40代600~1200 | 50代1000以上 | ||
20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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