地震保険は住宅をキャッシュで買う人を除き必要です
どうも千日です。6月18日午前7時58分ごろ、大阪府北部で震度6弱の地震がありました。
震源地は大阪府北部で、震源の深さは約10kmマグニチュードは5.9。京都府、奈良県、滋賀県、兵庫県でも震度5を観測しました。この地震による津波の心配はないそうです。
地震保険の必要性を再認識しました。中には火災保険のオプションのように考えている人もいます。そういう人はそんな保険に入るなら貯金した方が良いなどと言います。
しかし『地震保険より貯金の方が良い』のは『住宅をキャッシュで買う』ような極めてレアな人のケースです。
必ず入ってください。
火災保険と地震保険の根本的な違い
地震保険とは、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失する損害を補償する地震災害専用の保険です。
火災保険に付帯する方式での契約となりますので、火災保険への加入が前提となります。そして住宅ローンを借りるには火災保険への加入が必須です。
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火災保険 |
地震保険 |
補償される損額 |
火災・落雷・爆発・台風などの災害による損害 |
地震、噴火またはこれらによる津波による損害 |
保険の対象 |
居住の要に供する建物および家財 |
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保険金額 |
建物(家財)の評価額 |
火災保険金額の30%~50%の範囲で建物は5000万円、家財は1000万円が限度 |
ポイント |
比較的可能性が高く、建物を再建築できる保険金が支払われる |
比較的可能性は低く、建物を再建築できる保険金は支払われない |
多くの人が地震保険を『保険商品』のように考えています。が、しかしそれは誤解です。地震保険はそもそも商品としては成り立たない保険なのです。震災と火災では被害の規模に大きな違いがあります。
- 震災は天変地異でありエリア災害、被害の範囲はどこまでも広範囲になる。
- 火災は人災であり個別災害、延焼があったとしても範囲は限られる。
大規模な地震が発生した場合に対応できる保険を、民間の保険会社はつくることが出来ません。ビジネスとして成立しないんです。
例えば東日本大震災で支払われた地震保険の保険金は東北、関東、北信越などで75万件以上、1兆2,000億円を超える金額となりました。
1兆円というと、スーダン、シリアなどの小さな国の国家予算レベルです。大規模な地震が発生した場合に支払う保険金を、民間の保険会社は支払うことが出来ません。そんなお金がいつ必要になるか予測できず、保険金を払えなければ倒産するのです。
- そんなお金がいつ必要になるか予測できない
- もし発生した時に払えなければ倒産する
どうです?全く割に合わないというより、民間には無理です。
ですから、火災保険の保険約款では通常、地震・噴火・津波によって生じた火災による損害を免責事由としているんです。
でないと、保険商品として成立しないんです。
つまり、地震保険は損害保険会社の保険商品ではなく、セイフティネット=社会インフラだということです。
なお、余談ですけど戦争による被害も同じで火災保険ではカバーされません。
免責には必ず『戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動』が規定されています。その被害が測定不能なほど大規模かつ広範囲に及び、それをカバーする保険は商品として成り立たないからです。
つまり、北朝鮮のミサイルは外国の武力行使にあたりますから火災保険ではカバーされないことになるのです。これをカバーする保険商品は今のところありません。
政府が再保険して大規模災害の補償をカバーする
地震保険は、地震等による被災者の生活の安定を目的として、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を政府が再保険することで成り立っています。
こうすることで、民間の保険会社では対応できない巨大地震発生の際には、再保険金の支払いを行うために地震再保険特別会計で区分経理(お金を別にしておくこと)しています。
そして1回の地震等により政府が支払う再保険金は、毎年度、国会の議決で限度額を設定しています。
2018年現在、その金額は11兆1,268億円、民間保険責任額と合計した1回の地震等による保険金の総支払限度額は11.3兆円です。つまり殆ど国ですね。
関東大震災クラスの地震と同等規模の巨大地震が発生した場合においても対応可能な範囲として決定されています。
地震保険以上に安い保険はない
地震保険の保険料は、保険対象である建物および家財を収容する建物の構造、所在地により算出されます。保険期間は短期、1年および長期(2年~5年)です。
耐火建物は安くなりますし、所在地でも地震の少ない地域は安く、地震の多い地域は高くなります。
目安としては、保険金額1,000万円あたり保険期間1年につき以下のようになっています。
- 耐火 6,000~20,200円
- 非耐火 10,600~32,600円
地震保険の保険料は損害保険料率算出機構 HOMEが算出した料率をそのまま適用する仕組みになっています。保険料率は保険金の支払に充てられる『純保険料率』と事業経費に充てられる『付加保険料率』で成り立っています。
そして『付加保険料率』は契約の事務処理や損害の調査などに充てられる『社費』と契約の募集を行う代理店に支払う『代理店手数料』に分けられます。
つまり、地震保険で保険会社に儲けはありません。
地震保険以上に安い保険料は無いということです。これは、社会インフラとして政府が行う地震保険の事務の代行をしているという位置づけだからです。
保険金についてよくある誤解
補償内容は居住の用に供する建物および家財(生活用動産)です。土地は壊れませんので補償の対象にはなりません。
火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で地震保険の保険金額を決めることが可能です。ただし、建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度です。
地震保険では、保険の対象である建物または家財が全損、半損、または一部損となったときに保険金が支払われます。
- 全損 契約金額の100% (時価が限度)
- 半損 契約金額の50% (時価の50%が限度)
- 一部損 契約金額の5% (時価の5%が限度)
『全損』というのを見て、完全に崩れ落ちてしまわないと保険金が貰えないのかと思う人がいますが、それは間違いです。
- 全損とは主要構造部の損害の額が建物時価額の50%以上
- 半損とは主要構造部の損額の額が建物時価額の20%以上50%未満
- 一部損とは主要構造部の損額の額が建物時価額の3%以上20%未満
見た目でちゃんと立っていても、主要な梁や柱に損害が生じ、その修復に建物時価額の50%以上のお金がかかるものは全損です。
実際に修繕してから保険金を請求するのでは意味がありませんから、東日本大震災の時には航空写真・衛星写真による『全損地域』の認定や契約者の自己申告による損害調査が行われました。
法律の趣旨が地震で罹災した被災者の生活を安定させることだからです。普通の保険では無いんです。火災保険の趣旨が建物の再建である、というのとは全然違うんです。
また、地震保険に関する法律施行令の改正(平成29年1月1日施行)によって、『半損』が『大半損』と『小半損』に分割されて、さらにきめ細かく補償が受けられるようになります。
損害保険料率算出機構 HOMEホームページより
マンションが被害を受けても住宅ローンは残る
マンションの管理組合では建て替えの意思決定に時間がかかるので地震保険に入ってもしょうがない
建物時価の30%〜50%ぽっちの補償では家を再建できないから意味ない
なんて言う人がいますが、それは誤解です。
先ほど述べたとおり、地震保険は建物の時価をベースに保険金を計算しますけど、建物の再建の為に入る保険ではありません。
地震で被害を受けた建物を再建させる保険は、そもそも保険として成立しないんです。
それよりも、生活を再建させ家族が路頭に迷わなくて済むようにするセイフティネットなんです。
そして再建よりもクリティカルな問題があります。家が壊れても住宅ローンは減らないというごく当たり前の厳しい現実です。
もはや住めない家の住宅ローンを払い切らなければなりません。賃貸物件に住むにしても家賃が必要ですから住居費はダブルです。
これ、かなりキツいです。
そんな局面で私的整理や自己破産にならないように、地震保険は生活を再建させる助けになるのです。
貯蓄を増やしておくこと、借入額を抑えることも重要ですが、あわせて自助努力の手立てとなるのが、地震保険なんです。
地震保険以外の支援制度も知っておこう
地震保険以外にも地震の被災者を支援する制度はあります。
地震によってマイホームが全壊した場合、公的給付としては基礎支援金の100万円、大規模半壊では50万円、これに再建方法に応じて最高200万円の加算支援金がプラスされます。
被災者生活再建支援法 : 防災情報のページ - 内閣府のホームページより
基礎支援金
基礎支援金とは住宅の被害程度に応じて支給される支援金です。
- 住宅が全壊した世帯 100万円
- 住宅をやむなく解体した世帯 100万円
- 長期避難している世帯 100万円
- 大規模半壊世帯 50万円
加算支援金
加算支援金とは住宅の再建方法に応じて支給する支援金です。
- 建設・購入 200万円
- 補修 100万円
- 公営住宅以外の賃借 50万円
その他各市町村の支援
各自治体によっても様々なので市町村役場に問い合わせて下さい。
一例
- 民間賃貸住宅の提供
- 住宅の応急修理
- 寝具その他生活必需品の配布
- 災害援護資金の貸付
- 国民健康保険料などの減免
どれも申請しないと受けられません。知らないと損ですよ。
自然災害債務整理ガイドライン
地震によって失った家に住宅ローンが残っている限り、住宅ローンは返済するのが原則です。そこでご紹介したいのが自然災害債務整理ガイドラインで債務を整理し、生活を再建するという選択肢です。
これは自然災害の影響を受けたことによって住宅ローン等の債務を弁済できなくなり、自己破産するしかない状態になった個人が、破産手続等によらずに、ローンの免除や減額を銀行に申し出て債務整理を行う際の準則として取りまとめられたものです。
対象となる自然災害は2015年9月2日以降に災害救助法の適用を受けた自然災害ですので、地震のみならず大雨や台風による洪水や山崩れも対象となります。まだ認知されていないこともあり利用状況は低調ですが、地震大国日本で家を購入する人は是非知っておくべき制度です。
これによって得られるメリットが3つあります。
(1)手続き支援を無料で受けられる
債務整理は法律上の手続きです。陳述書など法律上の書類作成が必要ですが、弁護士等の「登録支援専門家」による手続き支援を無料で受けられます。
(2)財産の一部を手許に残せる
生活必需品や現預金(上限あり)などの自由財産に加えて、被災者生活再建支援金、災害弔慰金・災害障害見舞金については基本的に手元に残すことが可能になると考えられます。
(3)個人信用情報として登録されない
このガイドラインで債務整理した場合は個人信用情報(俗にいうブラックリスト)に記録されないので、新たな借入に影響しません。その後生活を再建すればカードも作れますし、住宅ローンだって組めるのです。
まとめ
むろん、地震によって奪われたものが全て、保険や国の支援だけで回復できるはずありません。
でも、自分の身に降り掛かる最悪の事態の被害を少しでも小さく抑え、地震の後の家族の生活を守るのが地震保険なんです。
今まで自分がお世話になったことがなくても、世界中のM6以上の地震のうち約2割は日本列島周辺で発生してます。
この日本で暮らす以上、震災による経済的なダメージに備えることは必須です。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
わたしは無事です。いままでに無い強い揺れ方でしたので、生命の危険を感じました。マンションも家の中も被害はなく、冷蔵庫がズレた程度で済みました。テレビ台の上のパワースポットも無事。両親と安否を確認し合いました。両親も無事、ホッとしました。
このパワースポットのバンブーを挿した花瓶、結構不安定ですが持ちこたえました。この下にテレビがあるんで、水はヤバイかも、ちょっと考えた方が良いかもですね。
2018年6月18日
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ランキング | 年齢 | |||
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20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 | |
新規借入 | 20代800未満 | 30代600未満 | 40代600未満 | 50代1000未満 |
30代600~1200 | 40代600~1200 | 50代1000以上 | ||
20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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