ガンと正式診断されたら住宅ローンが半分になるスピードに加え全疾病保障も金利上乗せ無しで付帯する
どうも千日です。民間の住宅ローンで家を買うときは団体信用生命保険(以下「団信」)への加入が必須になります。
団信とは住宅ローンの返済中に主債務者が死亡、または高度障害になった場合、保険会社が変わって住宅ローンの残金を払ってくれる保険です。加入が必須になる代わりに銀行が保険料を負担します。
つまりこっちの負担はゼロ円です。
その中でも最近注目されているのが、「ガン50%保障」タイプで、ガンと医師に正式診断されるとローン残高がその時点から半分になります。これも保険料が無料かとても低い負担で加入できる住宅ローンが増えています。
良いところばかりではなく、いくつか注意点がありますので、整理しておこうと思います。
注意点①:本当は「無料」ではなく利息に含まれている
ガン50%団信はもちろん、一般団信もなんですが「無料」というのは言葉のアヤなんです。
銀行が保険会社に払う団信保険料込みでちゃんと銀行に利益が出るような住宅ローンの金利にしているのです。でないと赤字になってしまうじゃないですか。
つまり、こういうことです。
- 団信保険料としてはお金をもらいません。しかし…
- 銀行が団信保険料を払ってもちゃんと利益が出るような住宅ローンの利率にする。
これが、本当のことです。
これが団信というものの本質です。なので、フラット35などの公的融資については団信は必須になっていません。
ただ、借りる側にも一定のメリットがあり、貸す側にはメリットしか無いので、日本の商慣習として定着しているだけのことなのです。
だったらガン50%保障なんて無しでいいからもっと金利を安くしてよ。
そう思う人も居ると思います。もし団信というのが銀行の良心から来るサービスだったとしたら、そういう商品があってもよさそうなものですよね。
しかし、団信無しを選択できるのは公的融資のフラット35だけです。
つまり、団信保険というのは銀行にとってもメリットがある、というか銀行のメリットのためにあるからなんです。
注意点②:あくまで銀行が住宅ローンを確実に回収するための保険
団信を銀行の立場から見ると「債務者にもしものことがあっても保険で住宅ローンを回収できる」という保険です。
銀行が団信で回収したいのはその時の住宅ローンの残高までなのです。
当初は住宅ローンの金額が大きいですが、返済していけばどんどんその金額は小さくなっていきます。
ありがちなのは、こういうケースです。
子どもの大学入学直前に夫が病気になり亡くなった。そのときには住宅ローンの残高はわずか数十万円。団信の保険金によってわずか数十万の住宅ローンがゼロ円になっただけだった。
住宅ローンを組む時期は、住宅ローンの残高は高いですけど、死亡や病気のリスクは低い。
死亡や病気のリスクが高くなって、よりカバーしないといけない時期には住宅ローンの残高は少なくなっている。
金貸しは、貸したカネさえ返ってくればそれでいいのです。
お金を借りている間は、その借りた金額についてだけ、銀行と利害が一致しているだけなのです。
注意点➂:住宅ローンで家を買ったからといってリスクは増えない
住宅ローンの金額は見たことも無いような多額の金額になりますよね。そして、その期間は自分の年齢に近い、それこそ未知の期間です。
そういう未知のもの、どう対応していいのかわからないものを目の前にすると、人は不安に駆られます。
しかし、病気になるリスクというのは、住宅ローンで家を買う以前から既にあったものなんですよ。
住宅ローンの契約として、具体的な金額、期間が目の前に提示されたことによってそれが目に見えるようになっただけのことです。
青色の部分が一家の大黒柱として負う責任の大きさだとしましょう。その責任の大きさというのは家を買う前も買った後も同じですよね。
家を買った後は、住宅ローンの残高についてだけ、銀行と利害が一致します。それが黄色の矢印と青の矢印が重なる部分です。
黄色い矢印は住宅ローンを完済したら終わりです。 つまり、「カネさえ返してくれたら、それでエエんや。」ということです。
この銀行と利害が一致する部分で団信保険料を銀行が負担しているんですよね。ただし、前述したように実質的には利用者が負担しているんです。
注意点を理解した上でメリットを確認する
ここまであまり他のサイトには無い注意点を書いてきました。それを踏まえたうえで、どんな部分がメリットなのかを知っておけば、合理的な決定ができるでしょう。
- 「ガンと診断された時点」という明確な保険金支払いの条件と早さ。
- 通常のガン保険では数千万円単位の診断一時金のでる商品は無い。
- 50代から60代でガンへのリスクは上昇し始める。
メリット①:保険金の条件が明確かつ保険金の支払いが最も早い
大きなメリットとしては、保険金が支払われるのが診断確定日ということですから、とても明確なんですよ。医師の診断という明確な基準なので、審査がどうこうということは無いです。
すぐに支払われます。
また、ガン以外の8大疾病も保障する団信がありますが、「就業不能状態」という条件が付きます。抽象的ですし、約1年間その状態が継続しなければなりません。
メリット②:診断一時金が数千万円という破格の保険
前半では、住宅ローンの返済がすすんだ、ある程度の年齢になってからガンになった場合のケースを書きました。
しかし、中には若くしてガンに罹患してしまう人が居ることも確かです。住宅ローンを組んでから間もなくガンにかかってしまった場合には、数千万円もの保険金が支払われることになります。
普通のガン保険でガンと診断されたときの見舞金として数千万もの保険金が出る保険なんてありません。
住宅ローンをスタートしてすぐにガンにかかりたくはないですけど、そういう最悪のケースにこそ大きな保障があるというのは、間違いなく他には無いメリットです。
メリット➂:ガンのリスクが高くなる50代から60代に住宅ローンが多く残っている人にはメリットあり
住宅ローンを組んだからといってガンになるリスクは上がらないですが、加齢によってガンのリスクは上がっていきます。
こちら、厚生労働省による「患者調査(2014年)」のガンで入院している患者数の統計数値から千日が抽出した表です。
(単位:万人)
年齢 | 性別 | ~39歳 | ~49歳 | ~59歳 | ~69歳 | ~79歳 | 生涯 |
全ガン | 男性 | 0.9 | 2.4 | 7.5 | 20.1 | 39.6 | 60 |
全ガン | 女性 | 1.8 | 5.2 | 10.3 | 17.6 | 27.5 | 44.9 |
折れ線グラフにしました。
特に男性は50代から60代にかけてグンと上がってますよね。なので、40代後半あたりから住宅ローンをスタートする人にとって考えてみると、まだまだ50代60代ではローン残高が多いですからメリットがあるのです。
最近は若者の人口が減っていますので、定年が延長される傾向があります。将来的には60歳定年ではなく65歳定年、70歳定年が普通になっているかもしれません。
50代から60代で1千万円超の住宅ローン残高が予定される人にとって、ガン50%保障のメリットは大きいです。
ガン50%保障がほぼ無料で付帯する住宅ローン
最後にガン50%保障の団信がほぼ無料で付く住宅ローンを2つご紹介しておきましょう。
- 変動金利:auじぶん銀行のがん50%保障
- 固定金利:アルヒのスーパーフラットでがん50%保障を付ける
auじぶん銀行の変動金利は最低金利でがん50%保障が無料+全疾病保障も無料
auじぶん銀行は三菱UFJ銀行とKDDIの戦略子会社です。
全疾病保障のSBIに対して、ガン50%保障(ガンと診断されたら住宅ローンが50%になる)のauじぶん銀行という様相だったのですが、auじぶん銀行がガン50%に加えて全疾病保障団信を追加したのです!
両行の団信の特約内容をザックリ比較してみました。
団信の特約 | auじぶん銀行 | 住信SBIネット銀行 |
---|---|---|
ガン | 医師にガンと正式診断されたらその時点のローン残高が50%になる。 | なし |
全疾病 | 全てのケガ、病気で入院が継続180日以上となった場合、住宅ローンがゼロ円になる。 | 8疾病で12カ月継続して働けなくなったらローン残高がゼロ円になる。8疾病以外の病気やケガの場合でも入院により12カ月継続して働けなかったら、ローン残高がゼロ円になる。 |
月次返済保障 | 全てのケガ、病気で入院が連続31日以上となった場合、継続して30日に達するごとにローン返済額が保険金として支払われる。 | 3か月の待機期間後、全ての傷病で就業不能となり約定返済日が到来した場合、ローン返済額が保険金として支払われる。 |
まず、ガンと診断された時点で住宅ローンが半分になるのはauじぶん銀行だけですね。
そして、全疾病保障については、どちらも「全疾病」には精神障害は含まれません。
しかし、入院や就業不能となる期間については、住信SBIは12か月に対してauじぶん銀行は180日なので、auじぶん銀行の方が早く保険金が支払われるので有利だと言えます。
団信の保障という面ではじぶん銀行が完全に頭一つ抜けたと言えます。
アルヒのスーパーフラットでもガン50%保障がほぼ無料
ガン50%団信が無料で付くのはネット銀行だけではありません。フラット35でも、ほぼ無料で付けることが出来ます。
アルヒが取り扱っている「スーパーフラット」は、通常のフラット35に比べて金利を0.1%、または0.05%引き下げています。
従来は、頭金が2割以上必要な「スーパーフラット8」だけでしたが、2017年10月に、頭金が1割以上必要な「スーパーフラット9」も投入しました。
概要は以下の通りです。
商品名 (通常のフラット35との金利差) | 頭金(手持金) | 返済負担率 |
スーパーフラット8 (金利▼0.10%) | 2割以上 | 30%以内(年収400万円未満) 35%以内(年収400万円以上) |
スーパーフラット9 (金利▼0.05%) | 1割以上 | 20%以内 |
このアルヒのスーパーフラットは従来は新規借入の時だけ利用できるものだったのですが、2018年4月からは借り換えの場合にも利用できるようになっています。
年収 | 返済負担率 |
スーパーフラット借換(金利▼0.05%) |
30%以内(年収400万円未満) 35%以内(年収400万円以上) |
このスーパーフラットでフラット35を借りる場合は、アルヒのガン50%団信を付けることが出来ます。
アルヒのガン50%団信の保険料は金利にして0.05%ですので、実質的にフラット35の金利に追加の金利なしで加入できるというわけです。
また、アルヒは本審査のスピードが早いことでも有名です。最短3日です。
例えば千日のフラット35金利予想を見て急きょフラット35が下がることが分かり、フラット35で借りたい!となったときに、唯一間に合う可能性があるのがアルヒです。
また、ネット銀行は店舗が少なく、電話と郵送での対応となりますが、アルヒは全国175の店舗があり、対面で相談できるのがネット銀行には無い魅力ですね。
まとめ~住宅ローンの不安と保険にかけるコストのバランス
住宅ローンを借りるのは、だれもが不安です。だからといって手当たり次第に保険に加入すると、家計を圧迫してしまいます。
家計が圧迫されるとローン返済の難易度が上がってしまいます。
それに、銀行が住宅ローンとセットで提供する保険というのは、あくまで銀行の利益を担保するためのものです。ごく一部のリスク=住宅ローンの残高しかカバーできないものです。
なのに、自分としては手厚く保険をかけてリスクをカバーできている、と思い込んでしまうと、いざその事態になって、後悔してしまうことになります。
- 本当のリスクは?
- それにどう対処したらいい?
私のブログや本がそうしたことに気づき、また、最適な方法を見つけるヒントになればと思います。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
ここのところずっと住宅ローンの話ばかり書いてますね。
たまに違うことも書こうと思ったりもするんですが、今はこういうことばっかり思いつくので、そんな感じです。
2018年9月8日
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ランキング | 年齢 | |||
---|---|---|---|---|
20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 | |
新規借入 | 20代800未満 | 30代600未満 | 40代600未満 | 50代1000未満 |
30代600~1200 | 40代600~1200 | 50代1000以上 | ||
20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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