事業に支障なくかつフェアに生産性を上げる方法を考えろ
どうも『口を開けばカネの話』千日です。この「無理難題」を社長に仰せつけられた人が居ます。
社長から「現状の給与や待遇を維持しつつ、現在8時間の所定労働時間を7時間へ短縮するための研究をしろ」と指示が出た。
フミコフミオ(id:Delete_All)さんは、私と同じブログサービスで人気を誇るブロガーです。長年ブラック企業に勤めた体験から、今のホワイトにあっても時おりPTSDに苦しめられているそうです。
件の社長の指示のウラに、かつて彼の目にしてきたブラック体質『現有戦力としての社員を限界まで使い切る』を垣間見て、ウッ頭が…!となったそうなんです。
そこで、ワタシがこの宿題を少し手伝ってみようと思います。
別に頼まれたわけでは無いんですけどね、たまに『お題』と称して、私はこういうことをやります。
これが達成できなければ日本国民に未来は無い
まずこの命題を、単に自分の勤めるいち企業が存続してくためのものである、とは捉えない方が良いと思います。もちろん、そういう側面が無いわけではありません。現にこのように社長も言ってます。
予算や数値目標は最低の目標であって、これをクリアするのは当たり前であり、たとえ労働時間を削減しても、必達しなければならない。
しかし、これから日本がむかえる人口減少社会では、働き手となる生産人口は減っていきます。少ない若者におんぶされる老人の数が、当面の間は増えていきます。人手が減る中で成果を維持していかなければ日本全体が沈んでいくわけです。
- 自分たちの生活がギリギリなのに子どもなんて…と思うでしょう。
- そうなると、さらに少子化に拍車がかかっていくでしょう。
テクノロジーが発達することで効率性が上がり豊かな生活が手に入るなんていうのは、今は昔の幻想ですよね。むしろテクノロジーの発達に伴って皆が仕事に追われるようになってしまった。
つまり、
- 今よりも少ない延べ労働時間で競争力を維持する。
これはいち企業の存続のための課題というより、日本全体の課題です。
今後やってくる環境下では、その賃金を安く買い叩く対象となる労働人口そのものが希少となるんです。
ブラック企業の経営者が使う伝家の宝刀『オマエの代わりはいくらでもいる』に流れるとどうなるか?競争力を維持できず退場することになるでしょう。
パフォーマンスの高い人の労働時間を多く確保する
まず、ゴールは何か?ですけど、おそらくそこのところが社長にもまだ分かってないです。だって、そういう環境はいままで人類が経験したことの無いものだからです。人類レベルで未知の命題です。
しかし、どんな世界があるべきなのか?ということを、リアルに、的確に、イメージする、比喩的に表現すると目視することが求められているんです。そこがモヤにかかっていると、迷走する。
当たり前といえば当たり前です。なので、この目標を的確に目視しましょう。
今回の私のエントリーはその目標を目視するためのものです。そこまでです。そこから先のやり方はそれぞれの会社や部署によっても違いますからね。
フミコ氏はその分かりやすい文章で社長の指示のポイントを3つ挙げています。
- 会社全体同時に
- 事業に支障なく
- 速やかに(来期)
それぞれに意味があります。
例えば2つ目の『事業に支障なく』の真意は前述しましたね。人口減少時代に競争力を維持するためには、今よりも少ない延べ労働時間で今以上の競争力を維持しなければならないからですね。
私の回答はシンプルです。
パフォーマンスの高い労働者に対する競争力を上げる
- パフォーマンスの高い労働者はより長時間会社の業務に専念してもらう。
- パフォーマンスの低い労働者は短時間でリリースし拘束レベルを下げる。
このような職場環境を作り出すことが目標です。
- 1時間で100の成果を出す労働者と、
- 1時間で10の成果を出す労働者がいます。
前者にはいくら超過時間に対して給料を払ってもいいですよね。そして後者に関してはいくら時間を減らしても不都合はないです。
また、実質的には所定労働時間の半分しか働いてない人もいます。半分の時間で人並の成果を出している人には、もっと働いてもらえば二人分の成果になるかもしれません。
パフォーマンスの高い人にはより会社の仕事に専念してもらうようにするんですよ。
例えば、氏が預かっているのは営業開発部門です。
新規開発のベースになる訪問数や見込み客数といった「数」は、原則、営業にかける時間に比例して増えていきます。そして、過去に氏がわずか入社8カ月で部長職を得るために達成した営業開発部の効率化とは「営業にかける時間を増やすための効率化」でした。
つまり、
- 時間を増やすパフォーマンスの高い社員
- 時間を減らすパフォーマンスの低い社員
この2つに分けてトータルで時間を減らすのです。
フェアである必要があるが公平とは違う
社長が指示した『会社全体同時に』というのは、言い換えると『フェア』ということです。
即座に出た「会社の管理部門だけであれば速やかに実施が可能」という意見に対しては、社長はフェアではないと却下した。「経理や総務に携わる人間から導入したら、他の部署は面白くないと思わないか?」「出来ることから取り掛かるのは大事だが、その前提にはフェアさがなければならない。管理部門から導入はフェアではない」と社長。すげえ。
つまり不公平感があると社員のやる気が阻害されて、『競争』に勝てなくなるということなのです。
不平不満を抱えた人間はパフォーマンスが落ちますよね。さらに言うと、パフォーマンスの高い労働者が不平不満を感じて、自社の労働から離れていってしまうことを危惧しているのです。
出来る人が辞めてしまい他社に流れてしまう、ということだけではありません。労働環境が面白くないと全体としてクサる、サボる傾向にあります。そもそも、公平である必要はありませんが、公平感を感じる必要があるのです。
つまり、時間を長くするにしても、時間を短くするにしても、それが自分自身の選択の結果であった場合には人間は公平感を感じます。
つまり、会社にとって労働時間を長くしたい人に対しては、自身の選択の結果、労働時間を長くしたということが必要であり、会社にとって労働時間を短くしたい人に対しても、自身の選択の結果、労働時間を短くしたということなんですね。
パフォーマンスの高い人に対してより多く働きたいという誘引を増加させるのです。
副業・兼業を促進する流れ
また政府の働き方改革では『副業』が脚光を浴びています。自らの選択として、会社の労働時間を短くして、その分を副業に充てるという選択肢がクローズアップされているんです。
神戸市では、市職員が休日に一定の報酬を得ながらNPO法人など公共性のある組織で活動し、ソーシャルビジネスを起業するなどを認めてます。外部での経験を公務に生かして市民サービス向上につなげるのが目的です。
ロート製薬では、休日や終業後に副業を認める「社外チャレンジワーク」と社内の各部門や部署の仕事も担う「社内ダブルジョブ」で副業を認めています。副業を容認した理由はもっと先の成長のため視野を広げ、自社の成長につなげたいためだそうです。
サイボウズでは、副業の推進で社外の人脈が広がって多彩な働き方や価値観を認め、社員の意欲向上や離職率の低下へつなげています。さらに、副業の解禁で全従業員が経営者感覚を身に付けるメリットがあるということです。
つまり、やりがいや生きがいを副業に求める人に対して副業を認め、その代わりに労働時間が短くなるということは本人の選択としてあり得るということです。
また、副業によって得た人脈や能力が本業に生かされるようになれば、『時間を増やすパフォーマンスの高い社員』へシフトする可能性もあるのです。
能力の高い人は副業でもそれなりに儲けるでしょう。個人でも今から頑張ればアフィリエイトで儲けられる!の嘘 - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答えるのブックマークコメントに自分なら簡単にウン万円儲けられるよ、というコメントを書く人も居ました。
そうですね、金銭面や達成感、トータルで副業よりも魅力ある職場、仕事でなければ逆に労働力の流出を招くでしょうね。
高度成長期と人口減少期の転換点
既存のやり方というのは、能力に様々な差異のある人達を一定のレベル以上のパフォーマンスで働かせることでした。
どちらかというと『人並以下』くらいのレベルを想定して、それを『人並』『一人前』までに仕事ができるようにしていくことが求められたわけです。
戦後の高度成長期の成長戦略は、同質性の高いマスを形成することで達成されました。企業も若く、インフラもまだ未整備、そして人間だけは増加する傾向にあるのです。その方が作業効率が良いですし、組織管理もやりやすい。
しかし、今後の人口減少社会ではどうか?
そもそも仕事への意欲が低い人間に一定のパフォーマンスを出させようとする戦略はそろそろ賞味期限を迎えようとしているのです。個人に注目し、パフォーマンスの高い人に対して魅力のある環境を用意して、生産性を高め、競争力を維持する戦略だというのが私の仮説です。
まとめ~同質性の高い組織からバラけた組織へ
同質性の高い組織はトップダウンで即座に統一的な行動を取ることには向いているんですけれど、トップが舵取りを誤ると海に飛び込むネズミの群れのように、一斉に自滅してしまうんですよね。
今回の氏の会社のトップは、この今後の会社の命運を左右するかもしれない舵取りにおいて、具体的なビジョンまでは持って無いように思います。
数値と期限だけはハッキリしてますが、何をどうすれば?というのはぼんやりしてますよね。この群れを間違って海中に導いてしまったらマズいと思ってるからです。
自分の頭で考えられる人というのは意外と少ないです。トップが『こっちだ』と言って海を指さしたら、そのまま海中に殺到していってしまうのが、多くの現代組織の特徴なのです。
人口減少社会という人類が初めて経験するこの危機的な状況では、多様な素質をもった個人がいて、トップからの指示がなくとも臨機応変の判断を行う個人にばらけている方が適してると思いますよ。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
フミコさんのブログはすごく面白いですよ。読者数なんて私の10倍ですからね。ブロガーとしては雲の上のような存在なんですけど、勝手に私は親近感を感じてます。
最近は再就職した会社で出世されまして、デキる男だったということがバレてしまい、ちょっと遠い存在に感じるようになりましたけど、じじいになってからモンハンとかプレイしたいですね。
彼が大剣で溜めている隣でおもむろに肉とか焼きたいです。
2018年6月9日
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