2024年7月19日公開
どうも千日です。日銀は7月30日31日の政策決定会合で国債の買い入れ減少計画を決定することを予定しており、国債買い入れの減額計画について市場関係者から意見を聞いています。
植田総裁は会見で7月の追加利上げの可能性も否定していないため、もし追加利上げとなれば8月から住宅ローンの変動金利が上がる可能性があるため、7月31日の会合後の会見に注目が集まっています。
千日のブログでは、毎月最新の金利動向と住宅ローンの選び方について分かりやすく解説しています。
具体的には金利タイプごとに…
- 今どの金利タイプが割安になのか?
- どんな人にどの金利タイプがお勧めか?(どういう返済計画で借りるべきか?)
普通のランキングサイトでは書かない内容が盛りだくさんなので、よろしければ参考にしてください。
また、最新の日米金利動向については下記ページで毎日更新しています。
- 日銀は7月利上げを見送り国債減額でアピール
- メガバンクが変動金利をなかなか上げない理由
- 植田日銀は2028年までに最低4回の利上げを目指す
- マイナス金利解除によるリスクをヘッジするお勧め住宅ローン
- これから変動金利を選択する人の心構え
日銀は7月利上げを見送り国債減額でアピール
千日太郎個人の予想としては、日銀の追加利上げは2025年までズレ込む可能性が高いと見ています。直近2024年1~3月のGDPは前年比-0.7%のマイナス成長となっており、すでにドイツに抜かれただけでなく、インドにも抜かれる可能性が出てきています。
前期比には為替の影響もありますが、他国に抜かれるということは相対的に日本の経済力が低下しているということに他なりません。金融政策正常化に軸足があるうちは利上げできる状況には無いと見ています。
ワンチャン追加利上げに踏み切る可能性としては、日米金利差を原因とする円安への対抗措置です。しかし、こちらも財務省による為替介入にトランプ氏暗殺未遂からの確トラ、そのトランプ氏のドル高けん制などから円高に振れており、従来の円安基調から為替の潮目が変わる可能性が浮上しています。
国債の買い入れ減額幅は月間MAX6兆円もある
一方で国債買い入れの減額計画に関しては、思い切った水準にしてくる可能性があります。これは植田総裁が会見でも示唆していたことです。
現在は月に約6兆円の買い入れをしているのですが、これは国債の満期償還のペースとほぼ同じです。日銀が国債の買い入れを減らすと、市中に流通するお金の総量(マネタリーベース)が減っていくことで、ジワジワと金融を引き締める(金利を上げる)効果が期待できるわけです。
7月に利上げできない状況下では、国債買い入れの減額にインパクトを持たせることで投機筋への対策として円安をけん制する効果もあるのです。
日銀が聴取した市場関係者からの情報によると、月4兆円程度から最終的にはゼロまで、かなり幅のある意見が出ているとのことです。インパクトを持たせることであるならば、月に最大6兆円の減額という数字を提示することもあり得ますね。
あくまで「減額計画」ですから、後からデータや状況を見て修正していくことも可能なわけです。数字にインパクトを持たせるなら最大6兆円の減額も視野に入るでしょう。
メガバンクが変動金利をなかなか上げない理由
3月の会合で日銀が行ったマイナス金利政策解除、そして6月の会合では国債の買い入れ減額を決めたことで、事実上の金融引き締めへ舵を切ったということになります。
しかし、住宅ローンの変動金利を上げた銀行は住信SBIをはじめとする一部のネット銀行でその上げ幅もMAX0.1ポイント、メガバンクをはじめとする多数派の銀行は横ばいとしており、影響があるほどの変動金利の上昇は未だありません。
その背景には、いわゆる銀行業ならではの思惑もあるのです。
銀行業では預金業務で預かったお金を融資業務で貸し出す、その利ザヤが銀行業の利益の源泉です。既存の融資金利だけ上げても早い段階で頭打ちになると考えます。預金が無ければ貸すお金がないわけですからね。銀行としては、まずは預金利息に魅力を感じてもらって多くの預金を集め、しかる後に伸びる事業をやっている会社にどんどんお金を貸すことでドンドン儲かると考えるわけです。
また三菱UFJ、三井住友、みずほの3大メガバンクは令和5年度の決算は極めて好調で、三菱UFJと三井住友では過去最高益を計上していますが、円安によって海外子会社の利益が大きくなったことも要因として挙げられています。つまり実力以上の利益が上がっているとも言えるわけです。
また、直近では政権が国民の資産を「貯蓄から投資へ」シフトさせようとしてきており、記録的な株高も後押しとなって預金の獲得競争が厳しくなる心配もあるのです。預金をアピールしたい銀行としては、変動金利を上げるのは他行よりも1日でも遅らせたいと考える状況にあるわけですね。
年度末の直前か年度明けに変動金利を上げるシナリオ
銀行としては社内的に変動金利を上げない理由があるうちは、変動金利を上げにくいでしょう。それには日銀が政策金利の追加利上げを行うことに加え、短期金利を引き続き上げつづけるというメッセージが必要だろうと見ています。
植田日銀がそこまで姿勢を転換するまでには、まだ少し距離があるだろうと見ています。
もう一つは決算月です。現時点の住宅ローンの申し込みの多くは2025年3月の決算月に実行を予定しています。実行を前にベースとなる金利水準が大きく上がってしまうと、審査を見直さなければならなくなるケースが出てくるわけです。
場合によっては、本審査に通った人を断らなければならなくなるケースも出てくるでしょう。できればそこは避けたいわけです。むろんそれでも金利を上げなければならない状況となれば上げますし、金利を上げた結果、貸せない人には貸さないのが金融機関です。
そうしたことを勘案すると、年度末の2025年3月から年度初めの4月にかけての変動金利上昇が一つのシナリオとして考えられると思います。
植田日銀は2028年までに最低4回の利上げを目指す
植田日銀は現在はゼロ%としている短期政策金利を、コントロール可能で景気を冷やしもせず加熱もさせない自然利子率の水準(=中立金利)にしたいと考えていると見ています。中立金利は計算方法によってかなりの幅があるとはいえ、日銀をはじめ多くの専門家による中心的な推計値は「1~2%」に収まると言われています。
通常、中央銀行が短期政策金利を操作する場合の最少単位は0.25%です。現在のゼロ%から1段階上げれば0.25%、2段階上げれば0.5%ということになります。中立金利の下限である1%までにはあと4回の利上げが必要になるという計算ですね。
できれば、上げられるうちに2段階(0.5%)くらい上げておきたいというのが本音ではないかと思います。
日銀総裁の任期は5年でちょうど1年経ちましたが、残り4年(2028年まで)の間にできれば複数回の利上げを行いたいと考えているでしょう。
過去の日銀による利上げ事例と今後の利上げ予想
ちなみに過去の利上げ事例は下記のとおりです。
- 2000年8月(ITバブル時):0%→0.25%
- 2006年7月(リーマンショック前):0%→0.25%、2007年2月:0.25%→0.5%
リーマンショック直前には2006年7月から2007年2月の8か月間で2回の利上げを行い、ゼロ%を0.5%に上げています。変動金利を選択するなら、少なくとも0.5%くらいの利上げはあるものと考えておくべきでしょう。
しかしこれはあくまで過去の実績を引き合いにして将来も同じだろう、という無難な予想です。こんなに簡単に将来を予想できるなら誰も苦労はしませんよね。そこで上振れした場合の金利水準でも計算をしてみる必要があります。
上振れした場合の予想としてはさらに2段階上昇するとして、1.0%くらいと考えています。日米の金利差は今のような異常な金利差になる前は長らく3%~3.5%で推移していました。
現在の米国の政策金利は5.5%ですが、今後の利下げによって4%台に下がったときに過去の金利差が維持されるなら日本の政策金利は1%前後というのも妥当な水準になるためです。(これも過去のデータを基準にした予想ではありますが。)
マイナス金利解除によるリスクをヘッジするお勧め住宅ローン
では、利上げに伴う長期金利の急上昇のリスクを踏まえてどんな住宅ローンがリスクヘッジになるのか?解説します。
メガバンクの変動金利でリスクヘッジ
三菱UFJ銀行はメガバンクでありながらネット銀行並みの低金利であり、金利動向については他行をリードするポジションにあります。
三菱UFJ銀行が金利を上げるタイミングは、他行も同様に上げるタイミングであり、三菱UFJ銀行が金利を上げる幅は、他行も金利を上げる幅になるだろうと見ています。横並びの基準になる銀行の一つです。
さらに1日の入院でも住宅ローンがゼロ円になる疾病保障付団信が魅力です。sennich.hatenablog.com
フラット35は金利上昇を抑えるのでリスクヘッジできる
フラット35は独立行政法人である住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。
この機構債はフラット35の融資を実行する前月の20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家は機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する建前となっています。つまり融資実行月の前月に実質的な住宅ローンの金利が決まるということです。
特にお勧めはARUHIスーパーフラット8、7、6です。5月から7月にかけては、長期金利が0.07ポイント上昇したのに、住宅ローンの金利は0.01ポイントの上昇に抑えられています。
フラット35買取型 | 5月 | 6月 | 7月 | 動き |
ARUHIフラット35(買取型) | 1.83% | 1.85% | 1.84% | ▲0.01% |
フラット35保証型 | 5月 | 6月 | 7月 | 動き |
ARUHIスーパーフラット9 | 1.54% | 1.56% | 1.55% | ▲0.01% |
ARUHIスーパーフラット8 | 1.42% | 1.44% | 1.43% | ▲0.01% |
ARUHIスーパーフラット7 | 1.41% | 1.43% | 1.42% | ▲0.01% |
ARUHIスーパーフラット6 | 1.40% | 1.42% | 1.41% | ▲0.01% |
住信SBI保証型90% | 1.82% | 1.84% | 1.83% | ▲0.01% |
住信SBI保証型80% | 1.75% | 1.76% | 1.78% | +0.02% |
さらにフラット35の金利は2024年2月の資金受取分から新しい金利引き下げ制度、子育てプラスがスタートします。金利引き下げの上限が年1%まで引き上げられており、子育て世帯はポイントの獲得によってさらに金利引き下げを得られます。
つまり、公的融資のフラット35は、金利が決まるタイミングと国の少子化対策の両面から長期金利の上昇リスクをヘッジできる住宅ローンなのです。
今のところ、ARUHIの保証型であるスーパーフラットは買取型よりも低金利を維持しています。子育て世帯には特にお勧めします。
ウェブで手続きすれば融資手数料が割引となります。また、団信不加入とすることで団信込みの金利から0.28%引き下げられます。千日太郎がARUHIに取材したときのブログがこちらです。
変動と固定の折衷案としてのミックスローンはNG
現在の金利を取り巻く環境は、非常に不安定なため、金利が大きくうごきやすいタイミングです。複数の金利タイプで審査を通しておき、直前に特定の金利タイプが高騰した場合には別の金利タイプで実行できるようにしておくことをお勧めしています。
その延長線上の考え方で、固定金利と変動金利をミックスしようと考える人もいます(複合型ローンやミックスローン)。しかし、そうしたリスクヘッジの動機で金利タイプをミックスすることはお勧めしません。
支払額が安くなるように変動をミックスするならば、おのずと変動金利で借りる金額も大きくなり、結局のところ金利上昇リスクへのケアが必要になります。固定金利だけを選んでいたら不要なタスクを今後自分に課すことになります。こういうタスクは貨幣単位で測定できませんが、まぎれもなくコストです。
金利タイプを固定にするか変動にするかは住宅の所有ポリシーによって最終的には一つに決めることをお勧めします。変動か固定かを決められないのでミックスに逃げようとしていないか?ご自身の胸に手を当てて考えてみてください。
これから変動金利を選択する人の心構え
民間銀行としては、日銀が利上げすれば、変動金利を上げるだけで確定した利ザヤを得ることができます。そのため、民間銀行の多数派は変動金利を低金利で据え置き、変動金利へ誘導しようとするでしょう。
ただし、変動金利は私たちが金利上昇リスクを負います。つまり、「将来金利が上昇することを想定して利用する」ものであり、「将来金利が上昇しないと信じて利用する」ものではありません。むろん変動金利が上がると予想しながら変動金利を選ぶ人はいないと思いますが、そうであっても金利上昇に備えた資金の確保やマイホームの売却相場の把握を行うことを前提に、変動金利を選ぶようにしてください。
変動金利をお勧めする人=金利上昇を想定できる人
そのため、わたしが変動金利を勧めるタイプの人は「金利上昇を想定できる人」です。具体的には次のどれか1つ以上にバッチリ当てはまるという人は変動金利に向いています。
- 毎月返済額にかなり余裕のある人
- 繰り上げ返済資金が潤沢にある人
- 物件のリセールを想定して物件選びをしている人
3つのうち1.毎月返済額にかなり余裕があるというのは、毎月の元利均等返済額が手取り月収の3割以下という人です。最近は夫婦共働きが増えてきており、夫婦二人ならば3割以下だけども、夫単独だと4割を超えるという人が多いです。このような場合は、「かなり余裕がある」のは夫婦共働きが維持できている間だけであり、片方の収入が無くなると、全く余裕がなくなるので変動金利が向いているとまでは言えません。
次の2.繰り上げ返済資金が潤沢にあるというのは、金利が上昇したときに即座に繰り上げ返済して金利上昇を相殺できれば良いという考え方です。金利がどれだけ上がったら、いくら繰り上げ返済しなければならないか?は下記のシミュレーションでやってみてください。
ここで出ているレベルの金額を繰り上げ返済する資力が現時点であるなら、お勧めできます。ただしこの金額を見て大きなプレッシャーを感じるならば、それは金利上昇リスクが無視できない心理的な圧力になるということです。変動金利はお勧めしません。
最後の3.物件のリセールを想定して物件選びをしている人は、将来の状況によっては売却することで住宅ローンを清算することを選択肢として持っている人だとも言えます。資産の処分について一つでも選択肢が多いということは、具体的な金額として換算はできなくても、経済的な資産と同等に捉えることができます。つまり、1.の収入や2.の資金に代替しうると言えます。
金利が上昇して維持が困難と判断したら、比較的ためらうことなく任意売却を実行に移すことが出来る人です。現実的に変動金利をお勧めすることが出来ます。
3つに共通するのは現実的に「金利上昇を想定できる人」なのです。
お勧めする変動金利は5年ルールと125%ルールのあるもの
金利が上昇した場合、すぐに毎月の返済額が増えるとは限りません。これが5年ルールと125%ルールです。
- 5年ルール:金利が上昇しても5年は従前の毎月返済額を維持する。
- 125%ルール:6年目から毎月返済額を増加させる場合、直前の1.25倍を上限とする。
この2つのルールが適用されると、変動金利がどんなに急上昇しても5年間は毎月の返済額が増えません。ただし利息は増えますので、元金が予定どおりに減らないということになります。そのため6年目から帳尻を合わせるために毎月返済額を増やすのですが、その場合の上限は直前の1.25倍までに制限されるというものです。
この2つのルールはすべての銀行の変動金利に適用されるものではありません。例えばPayPay銀行、SBI新生銀行、ソニー銀行の変動金利にはありません。
5年ルールと125%ルールの適用がない銀行は毎月更新コロナ禍の利上げ金利先読み住宅ローンランキング - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答えるの「デメリット」で注意を喚起していますので確認してください。
また、5年ルールと125%ルールの適用がある銀行でも、「元金均等返済」方式を選択すると、5年ルールと125%ルールの適用がなくなるのでこれも注意が必要です。
以上、千日のブログでした。
5月31日に発売となりました千日太郎のマンガでわかるシリーズです!各章の導入部のマンガで理解しやすい構成になっていますので、初心者の方には特におすすめします。
2024年7月19日千日太郎
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新規借入 | 20代800未満 | 30代600未満 | 40代600未満 | 50代1000未満 |
30代600~1200 | 40代600~1200 | 50代1000以上 | ||
20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
共働き夫婦 | 20代共働き | 30代共働き | 40代共働き | 50代共働き |
独身 | 20代独身 | 30代独身 | 40代独身 | 50代独身 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
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