「借入残高が多いほどおトク」の落とし穴に注意
どうも千日です。住宅ローン控除は借入から10年間の12月31日の住宅資金借入残高に対して1%がその年の所得税と翌年の住民税からマイナスされる減税措置です。
この低金利ですから、金利が1%を下回る商品も多く、このように言われます。
- 当初の10年は住宅ローン控除があるから借入残が多い程トク。
- 同じ理由で繰上げ返済したら損。
さも常識、一種の法則のように言われます。しかし、どんな場合でもこれに当てはまるかというと、そうではありません。
見落としがちな注意点は2つあります。
- 住宅ローン控除は納める税金以上に控除されず、納税額によって一定の上限がある。
- 住宅ローン金利が1%を超える場合は、当初10年間も借入残高が少ない方がトク。
では、はじめます。
目次
納める税金以上は控除されない
住宅ローン控除は「税額控除」という括りの減税制度です。つまり、納める税金から控除(マイナス計算)しますよという仕組みです。
税金の対象は以下の2つで、上限がそれぞれ決められています。
- その年に納めた所得税で上限は納めた額。
- 翌年に納める住民税(都道府県民税と市町村民税)で上限は136,500円。
購入する住宅によって最大40万円(一般の住宅)か50万円(認定長期優良又は低炭素住宅)かという上限もあります。
しかし多くの人はそれよりも納税額の上限が先に来ます。
税込みの年収と控除上限額、対応する住宅ローン借入残高上限の目安は下記のようになります。
- 税込年収⇒控除上限(住宅ローン残高上限)
- 年収300万⇒17.3万(1,730万円)
- 年収350万⇒20.6万(2,060万円)
- 年収400万⇒22.3万(2,230万円)
- 年収450万⇒24.4万(2,440万円)
- 年収500万⇒27.9万(2,790万円)
- 年収600万⇒34.3万(3,430万円)
- 年収700万⇒45.8万(4,580万円)
自分の所得税と住民税の調べ方
上記は、あくまで目安ですので正確には源泉徴収票(所得税)と納税証明書(住民税)でご自身の納税額をチェックし、上限額を計算して下さいね。
配偶者控除とか扶養控除など、同じ年収でも税額は人によって違って来ます。
直近の所得税は源泉徴収票の「源泉徴収税額」の欄の金額です。
直近の住民税は役所で「納税証明書」を発行してもらえば確認出来ます。各自治体によって書式は違いますけど「住民税合計」が書かれている欄が下の方にあるはずです。
金利が1%以下の場合のシミュレーション
では、金利が1%以下の場合はどうなるか?ですよね。変動金利や当初固定金利ならば1%未満です。但し変動金利は6カ月ごとに金利が見直されますし、当初固定は当初固定期間が終わると金利が上がります。
それを踏まえ、当初10年固定でシミュレーションしました。住宅ローン控除の期間は少なくとも、固定されますので確実ですので、千日のブログでも(条件付きで)お勧めする方法です。
例えば2016年12月の三井住友信託10年固定の0.45%で元利均等返済、ボーナス払いなし。10年後は1.35%になると仮定します。
同じく借入額は1,500万円から100万円刻みで2,200万円までです。
借入残高が多いほど差引費用が多くなりました。しかし、期間が違いますし、10年後に金利がどうなるかわかりませんから、この表はあまり意味がありません。
そこで10年後に一括返済する場合のシミュレーションをします。10年間は固定ですから、これは確実ですよね。
例えば、1,500万円借りた場合、10年後の残高である10,986,988円を一括返済出来れば、利息は585,373円、住宅ローン控除は1,285,648円で逆に700,275円儲かる計算になります。
借入残高が多いほど得になります。
つまり10年後の金利にリスクを取って繰上げ返済したり、借り換えたりする前提なら頭金は温存するべしということになります。
金利が1%を超える場合のシミュレーション
では納税額の範囲内なら「借入残高が高いほうがお得」かというと、それは借入金利が1%未満の場合に限られます。
金利1.17%で35年、元利均等返済、ボーナス払いなしで借りた場合でシミュレーションしました。
借入額は1,500万円から100万円刻みで2,200万円までです。
差引費用(=利息費用−住宅ローン控除)は借入額が多い程多いですね。
- 1,500万円の差引費用は198万円。
- 2,200万円の差引費用は290万円。
35年間の利息と10年の控除を比較するのはフェアではありませんので、当初10年の利息と10年の住宅ローン控除を比較します。
10年間に期間を揃えても、借入残高が少ない方が得なんですよね。
つまり、住宅ローンの金利が1%を超える場合は借入は少ない方が得ということです。
損得だけではなく資金繰りという面からも考えよう
じゃあ、住宅ローンの金利が1%を超える場合は、最初から積極的に繰上げ返済していった方が良いのでしょうか?
わたしは、違うと思っています。
家を買うには家の代金以外に税金や仲介手数料、住宅ローンの手数料などで数百万円単位のお金が必要ですよね。ですから、家を買った直後というのは貯蓄が最も少なくなり、想定外のアクシデントに対してとても弱くなるタイミングじゃないでしょうか。
ですから、家を買ってからしばらくの間というのは、むしろ貯金に専念すべき時期だと思いますよ。
繰上げ返済すれば、それによって利息を節約することが出来ます。しかし、繰上げ返済したお金は返ってきません。
急にまとまったお金が必要になったときや、想定外の事態で収入が大幅に減ってしまったときに頼りになるのは、貯蓄です。
こちらは繰上げ返済についての千日メソッドをまとめた記事です。
こちらは変動金利のケースで説明してますけど、固定金利であっても同じことですよ。住宅ローンの固定金利が1%を超えている。これを高い、と思われるかもしれません。しかし、カードキャッシングなら15%前後、ケタが一つ違ってきますよね。
繰上げ返済とは「銀行から利益を奪うこと」です。繰上げ返済しないことを勧めている千日は、銀行の儲けを応援していると思われるかもしれません。が、そうじゃありません。金利が低いということは、銀行の儲けが少ないということです。少ない儲けを奪っても、当然見返りは少ないのです。
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まとめ〜利息の節約より大事なのは資金繰りの安全度
いかがでしたでしょうか。住宅ローン控除で得をするには、その上限と金利に注意が必要です。
じゃあ沢山借りたら損なの?
実はそんなに単純な話ではないですよ。借入が多かった場合は、本来ならもっと沢山の利息を払わないといけないところが、その分助かるという事でもあります。
「借金は良くない」と教えられてきた人が大半だと思いますが、住宅ローンは「良い借金」です。
- 生活の基盤になる住宅の調達資金。
- 利息が桁違いに安い。
あくまで前向きなものです。
なので、利息を節約しようと、多額の繰上げ返済によって貯金が極端に減ってしまうのであれば、本末転倒ですよ。住宅ローンをあえて借りておいた方がトクですよね。収入のある間は借りておいた方が、リスクに対しては強いんですよ。
これが資金繰りの安全度からの千日の提案です。
- 2017年10月9日に資金繰りの安全度について追記しました。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
この記事は、千日のブログに寄せられたご質問を基に書きました。
現在は、相談専門サイトを立ち上げて、相談を募集しています。
任意にお名前を名乗られる方もおられますが、個人情報保護の観点から匿名のままの方がむしろ助かります。例えばイニシャルなどでお願いします。
皆さまのご質問をお待ちしております。
2016年12月20日
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ランキング | 年齢 | |||
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20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 | |
新規借入 | 20代800未満 | 30代600未満 | 40代600未満 | 50代1000未満 |
30代600~1200 | 40代600~1200 | 50代1000以上 | ||
20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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