2023年8月11日公開
どうも千日です。植田日銀は7月28日の会合でYCC(イールドカーブ・コントロール)政策を修正しました。従来は長期金利の上限を0.5%としていたのですが、今後は0.5%を目途としつつある程度は超えることを容認し、1%を超えそうになったら指値オペで上昇を食い止めるというものです。
シンプルな上限の引き上げではない、というのがミソで後で詳しく解説します。利上げというよりはその下ごしらえのための微調整なのですが、一部では「事実上の利上げ」と捉えられ、長期金利は9年ぶりに0.6%台まで上昇しましたが、案の定、再び下がってきていますね。
結果として、植田日銀は利上げへ向けて微妙な匙加減のアクセルワークをやってのけたと思います。今回は植田日銀の7月会合の内容を分かりやすく読み解き、金利上昇リスクを踏まえた上でお勧めする住宅ローンを探っていきます。
千日のブログでは、毎月最新の金利動向と住宅ローンの選び方について分かりやすく解説しています。
具体的には、金利タイプ別に…
- 今どの金利タイプが割安になのか?
- どんな人にどの金利タイプがお勧めか?(どういう返済計画で借りるべきか?)
普通のランキングサイトでは書かない内容が盛りだくさんなので、よろしければ参考にしてください。
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また、最新の日米金利動向については下記ページで毎日更新しています。
緩和継続しつつYCC政策をフェードアウトさせる狙い
7月の会合ではYCC(イールドカーブ・コントロール)政策を修正して1%という上限の引き上げが行われたことで、事実上の利上げであるかのような見方をする人もいます。
しかし、植田氏は就任会見から現在まで一貫し、異次元緩和から軌道修正して正常化していくにしても細心の目配りをし、出口戦略(金融引き締め)それ自体を目的とするような拙速な利上げはやらないという姿勢は維持しています。
8月7日に決定会合の「主な意見」が公表されており、0.5%から1%へ長期金利の上限を引き上げる案に対し、多くの委員が、大規模緩和を続けることを前提に「運用の柔軟化」「副作用の抑制」といった理由で賛成しているのです。
おそらくは大規模緩和を維持しつつYCC政策をフェードアウトさせたいというのが日銀の考えです。
ギャンブル性が強く2年の短期決戦を予定していた異次元緩和
日銀が7月31日に公表した、今から10年前の2013年上半期の金融政策決定会合の議事録が報道されています。
当時の黒田総裁は就任初の2013年4月会合で「量・質ともにこれまでと次元の違う金融緩和を行う必要がある。できることは全てやる」と発言し、日銀は異次元緩和の効果に賭けることとなりました。
具体的には、マネタリーベース(市場に流通させるお金の量)を2年で2倍にするという数字を示し、市場の期待に働きかけて実際の物価上昇につなげる考えでした。
しかしどの程度お金を増やせば2%の物価上昇を達成できるか?過去の経験がまったく役に立たないので判断が難しく、「ギャンブル性の強い政策になることを覚悟すべき」(佐藤審議委員)と半信半疑の意見表明が記録されています。
YCC政策はこの異次元緩和政策で一時マイナスになってしまった長期金利(10年国債利回り)を0%程度とするように日銀が市場に介入するという、これも前例のない政策でした。
これによって「デフレでない」状態に持って行けたのは、一つの成果ではあるのですが、2%の物価上昇は達成できませんでした。本来は2年程度で2%を達成して、引っ込めたかったのですが、そのタイミングを逸してしまい10年続けてしまったというのが本音のようです。
異次元金融緩和のYCC政策は一度始めたら引っ込めるのが極めて難しい政策だったのです。
これまで、日銀が国債の価格を下がりすぎないように買い支えていたのですが、それをやめる(やめそうだ)ということになると、その情報自体が投機の対象となってしまい、国債価格が暴落し、長期金利が大きく上がってしまい、為替や実体経済に大打撃を与えてしまうリスクがあるのです。
昨年12月に黒田日銀がYCC政策の長期金利の上限を0.25%から0.5%に上げた際には、ヘッジファンドによる大規模な日本国債の空売りが行われ、0.5%を上限にしているのにもかかわらず0.5%超で取引が成立してしまうという異常事態が発生したのは記憶に新しいですね。
少し上限を上げただけでこれだけの影響があるのです。まして撤廃するとなると、その影響は計り知れないわけです。
自転車を補助輪なしでこげるようにする
ちょっと乱暴な例えですが、これまで補助輪を付けて自転車に乗っていた子どもが、補助輪なしでこぐまでのプロセスを思い浮かべてください。これまでつけていた補助輪、後ろで支える親の手が言ってみれば日銀のYCC政策です。
実際には補助輪や親の支えが無くても自転車に乗れるポテンシャルがあっても、支えが無いことを認識すると、自らバランスを崩してしまって自転車をこぐことができませんよね。
日銀が急にYCC政策をやめると、国債市場がバランスを崩し、国債価格が乱高下して実体経済に大ダメージとなってしまうということです。いったん日銀の介入ありきで形成された市場のバランス感覚は、自転車の補助輪ありきでやっと自転車に乗れる子どもに似てます。自転車でコケるだけなら擦り傷程度で済みますが…。
だから、親はどうするかというと、「後ろでちゃんと持ってるよ」と言いながら、徐々に添える手を緩め、放す時間を増やしていき、支えがあっても無くても同じだという感覚を子どもに植え付けるようにするわけです。
緩和継続の丁寧な説明と0.5%を目途として残す
7月の日銀会合で植田総裁がやったことは、まさにこれなんですよね。実態としては利上げ(引き締め)ではないのか?という質問に対しては、まだその時期ではなく大規模緩和を継続すること、また、緩和を継続しなければならない理由を丁寧に説明しました。つまり、自転車の支えを外さないということを丁寧に言ったわけです。
また、これが驚きなのですが、現時点では2024年度の物価上昇率見通しの達成に「あまり自信がない」とも述べました。ここまで率直な態度というのは、歴代の日銀総裁にはまずなかったものです。
普通に考えれば「自信がない」などと言ったら信用されないだろうと考えるので、あえてそういうネガティブな表現は避けるでしょう。しかし、そうした率直な言葉が、「大規模緩和を継続する=自転車の支えを外さない」という言葉の信頼性を高めることにつながっているのです。
またYCC政策の修正については、単に上限を1%に引き上げるのではなく、従来の0.5%上限を目途として維持する(超えることは容認)というものです。1%に上がることは植田総裁としても想定しておらず、念のためのキャップとして設定するというものになっています。
つまり「これから手を放すタイミングはある(嘘はつかない)しかし、倒れてしまわない程度には支えるよ」というメッセージになるわけです。植田日銀の狙いとしては、最終的にYCC政策があっても無くても変わらない状況を作り出してから手を放そうとしているわけですね。
植田日銀の政策正常化は成功しつつある
このように考えると、植田日銀の政策修正は今のところ、かなり成功していると言ってよいと思います。こちらは、7月会合から現在までの日本の長期金利の推移です。
会合の直後には旧上限の0.5%を上回り、一時は0.6%を超えましたが再び0.5%台に下がってきていますね。
YCC政策修正というサプライズによって若干金利は上がったものの「0.5%を目途としつつある程度は超えることを容認する」という想定の範囲を超えないものとなっています。
今回の植田日銀の政策修正は上手くいっていると評価してよいと思います。氷の上を走る車を微妙なアクセルワークでスピンさせずに減速させる、非常に難しい微調整をやってのけた感があります。
日銀は2024年に2%を達成できるか?
植田総裁の象徴的な言葉が『インフラを整える』です。経済活動において一般にインフラとは道路や通信などを指しますが、それと同列に『物価の安定』というものを位置づけており、それを整えるのが日銀の使命であると言っています。
この物価は広い意味での物価であり、賃金(従業員が企業に提供する労働の対価)も含まれます。
賃金のゆるやかな上昇とともに、物価もゆるやかに上がっていく、物価の上昇によってまた賃金も上がっていくという経済の好循環を作り出すということです。これが物価目標2%ですね。
そして金利もまたカネの価格ですから、利上げは植田総裁の選択肢としてあるものです。しかし、「利上げする」と決めてかかって利上げするのではなく、物価の安定的な上昇のために、という点がポイントになるわけですね。
日銀の7月会合では2023年の物価上昇率は2.5%と予想しており、2%をクリアしているのですが2024年は1.9%と予想しており、安定的な2%は達成できていないと表明しています。しかし、うがった見方をすれば1.9%も2%もほとんど変わらないと言えますし、予想よりもほんの少し上振れすれば2%を達成することになります。
2024年に利上げされる条件とは?
順当に考えるなら、次の段階ではYCC政策を撤廃し、さらに次の段階で政策金利の利上げということになります。巷ではこの7月会合でYCC政策の撤廃ではなく、修正という段階を刻んだことで、その分利上げ時期は後ろ倒しになるだろうと見る人もいます。
また、植田総裁の時間軸政策(一定の条件が整うまで金融緩和を続けると宣言することで、市場に安心感を与え中長期金利を安定させる政策)を根拠として、数年はこの政策修正の影響を評価するという考え方もあります。
しかし、今回の政策修正後に指値オペを行う機会が無く、長期金利が正常なイールドカーブを描いていくならば、7月の修正≒撤廃と捉えても大差ないという状況が生まれる可能性があります。
これに加えて2024年の物価上昇率が上振れして2%をクリアし、2025年はさらに上がる見込みということになれば、2023年から連続して3年間にわたり2%をクリアする(見込み)ということになります。
そうなると2024年度中の利上げということが現実味を帯びてくるのですね。現時点で2024年の物価上昇率を1.9%という微妙な見込みにしている理由は、2024年の利上げ可能性を確保しておくための布石ではないかと見ています。
日銀政策修正を踏まえた8月のお勧め住宅ローン
住宅ローンの固定金利は長期金利の影響を受けます。植田日銀が大規模緩和政策を継続するにしても、YCC政策では旧上限の0.5%を超えることを容認するのですから、長期金利は従来よりも上がりやすくなってきます。
ということは、住宅ローンの固定金利も上がりやすい環境になっていくでしょう。
これに対して変動金利は短期政策金利の影響を受けますので、日銀が利上げしない限りは上がりません。
しかし、前述のように水面下では日銀の利上げ可能性が上昇してきています。そのため手放しで変動金利を勧めるのも難しい状況ですね。
これらを踏まえて、8月のお勧め住宅ローンについて詳しく解説していきます。
長期金利が上がってもフラット35は下がる
公的融資のフラット35は7月から8月にかけて小幅な低下となっています。これはフラット35の金利が決まるタイミングが月末ではなく、20日前後の機構債の表面利率で決まるためです。
フラット35買取型 | 6月 | 7月 | 8月 | 低下 |
ARUHIフラット35 | 1.76% | 1.73% | 1.72% | 0.01% |
フラット35保証型 | 6月 | 7月 | 8月 | 低下 |
ARUHIスーパーフラット9 | 1.47% | 1.44% | 1.43% | 0.01% |
ARUHIスーパーフラット8 | 1.40% | 1.37% | 1.36% | 0.01% |
ARUHIスーパーフラット7 | 1.39% | 1.36% | 1.35% | 0.01% |
ARUHIスーパーフラット6 | 1.38% | 1.35% | 1.34% | 0.01% |
住信SBI保証型90% | 1.83% | 1.75% | 1.73% | 0.01% |
住信SBI保証型80% | 1.75% | 1.67% | 1.65% | 0.01% |
フラット35の買取型は、住宅金融支援機構が金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債」という形で販売するという仕組みになっているため、長期金利の動向を反映しやすいと言われます。
8月のフラット35の機構債が発表となったのは、7月21日であり日銀会合の28日よりも前の段階であるため、今回の政策修正による長期金利の上昇を反映していないのですね。今のように、日銀の動向によって長期金利が不安定に動く状況下では、民間金融機関だけでなく、フラット35でも審査を通しておくことでリスクヘッジになるのです。
さらにフラット35の金利は政府が子育て世帯を対象としてフラット35の金利引き下げを行う議論をスタートしたことで、ベースとしての金利が下がり続けています。既にフラット35の金利引き下げ制度の中には「子育て支援」というカテゴリーが設けられているのですが、これが拡充される見込みです。
しかしこの制度がスタートする前は子育て世帯であっても金利引き下げにならないのですね。住宅購入のタイミングによって生じる不公平を和らげるために政策的にフラット35の金利のベースを下げている可能性があると見ています。
つまり、公的融資のフラット35は、金利が決まるタイミングと国の少子化対策の両面から長期金利の上昇リスクをヘッジできる住宅ローンなのです。
今のところ、ARUHIの保証型であるスーパーフラットは買取型よりも低金利を維持しています。子育て世帯には特にお勧めします。
ウェブで手続きすれば融資手数料が割引となります。また、団信不加入とすることで団信込みの金利から0.28%引き下げられます。千日太郎がARUHIに取材したときのブログがこちらです。
三菱UFJ銀行がリードする10年固定金利
公的融資のフラット35がここまで下がると民間銀行としても、固定金利タイプの住宅ローンの金利を上げられない状況になってきます。
さらに、6月から7月にかけては多くの銀行が金利を下げましたが、7月から8月にかけては日銀の政策修正と長期金利の上昇に伴って上昇しました。
10年固定金利 | 6月 | 7月 | 8月 |
三菱UFJ銀行※ | 0.680% | 0.690% | 0.780% |
auじぶん銀行 | 0.935% | 0.885% | 0.915% |
住信SBIネット銀行 | 0.970% | 0.910% | 0.990% |
※申込内容と審査結果によって最大の引き下げ可能となった金利。
三菱UFJ銀行は金利を上げていますが、それでも最低金利です。日本における民間金融機関住宅ローン取扱残高No.1です。今後、長期金利が再び政策修正前の水準に戻っていけば再び下がる可能性もあります。
10年固定をお勧めする人(変動と固定の折衷案として合理的)
水面下で変動金利の上昇可能性が上がってきている中で、低金利で10年間固定できる10年固定金利は変動と固定の折衷案として合理的な選択となります。
例えば、住宅の売却を想定していないけれども、10年程度で転居する可能性がある人には10年固定が向いています。売却して完済すれば金利上昇リスクは負いません。
また、50歳くらいから住宅ローンを組む人で住宅ローン控除のためにあえてローンを借りる場合には約10年間にわたって低金利で固定できれば良いので10年固定がお勧めです。
また、変動金利に当てはまるほど資金が貯められていないけれど、10年の間に貯蓄して大幅な繰り上げ返済を検討する人にも10年固定はお勧めです。
ただしその場合、11年目からの金利引き下げ幅に注目してください。適用金利の低いネット銀行には11年目からの金利引き下げ幅がかなり減ってしまう銀行が多いのです。
変動と固定の折衷案としてのミックスローンはNG
現在の金利を取り巻く環境は、非常に不安定なため、金利が大きくうごきやすいタイミングです。複数の金利タイプで審査を通しておき、直前に特定の金利タイプが高騰した場合には別の金利タイプで実行できるようにしておくことをお勧めしています。
その延長線上の考え方で、固定金利と変動金利をミックスしようと考える人もいます(複合型ローンやミックスローン)。しかし、そうしたリスクヘッジの動機で金利タイプをミックスすることはお勧めしません。
支払額が安くなるように変動をミックスするならば、おのずと変動金利で借りる金額も大きくなり、結局のところ金利上昇リスクへのケアが必要になります。固定金利だけを選んでいたら不要なタスクを今後自分に課すことになります。こういうタスクは貨幣単位で測定できませんが、まぎれもなくコストです。
金利タイプを固定にするか変動にするかは住宅の所有ポリシーによって最終的には一つに決めることをお勧めします。変動か固定かを決められないのでミックスに逃げようとしていないか?ご自身の胸に手を当てて考えてみてください。
民間の35年固定はりそな銀行がトップ
超長期固定金利の35年固定も10年固定と同様に8月には上昇しました。
ただしその上昇幅は10年固定と同程度なので、固定できる期間が長いことを鑑みれば、割安であるといえるでしょう。
35年固定金利 | 6月 | 7月 | 8月 |
りそな銀行 | 1.275% | 1.255% | 1.295% |
みずほ銀行 | 1.440% | 1.390% | 1.480% |
三菱UFJ銀行 | 1.320% | 1.340% | 1.430% |
金利としてはりそな銀行が最低金利となっていますが、フラット35の金利引き下げ制度を加味すると、当初10年は利息負担がほとんどなくなるアルヒスーパーフラットの方がお得となります。
これから変動金利を選択する人の心構え
民間銀行としては、日銀が利上げすれば、変動金利を上げるだけで確定した利ザヤを得ることができます。そのため、民間銀行の多数派は変動金利を低金利で据え置き、変動金利へ誘導しようとするでしょう。
ただし、変動金利は私たちが金利上昇リスクを負います。つまり、「将来金利が上昇することを想定して利用する」ものであり、「将来金利が上昇しないと信じて利用する」ものではありません。むろん変動金利が上がると予想しながら変動金利を選ぶ人はいないと思いますが、そうであっても金利上昇に備えた資金の確保やマイホームの売却相場の把握を行うことを前提に、変動金利を選ぶようにしてください。
変動金利をお勧めする人=金利上昇を想定できる人
そのため、わたしが変動金利を勧めるタイプの人は「金利上昇を想定できる人」です。具体的には次のどれか1つ以上にバッチリ当てはまるという人は変動金利に向いています。
- 毎月返済額にかなり余裕のある人
- 繰り上げ返済資金が潤沢にある人
- 物件のリセールを想定して物件選びをしている人
3つのうち1.毎月返済額にかなり余裕があるというのは、毎月の元利均等返済額が手取り月収の3割以下という人です。最近は夫婦共働きが増えてきており、夫婦二人ならば3割以下だけども、夫単独だと4割を超えるという人が多いです。このような場合は、「かなり余裕がある」のは夫婦共働きが維持できている間だけであり、片方の収入が無くなると、全く余裕がなくなるので変動金利が向いているとまでは言えません。
次の2.繰り上げ返済資金が潤沢にあるというのは、金利が上昇したときに即座に繰り上げ返済して金利上昇を相殺できれば良いという考え方です。金利がどれだけ上がったら、いくら繰り上げ返済しなければならないか?は下記のシミュレーションでやってみてください。
ここで出ているレベルの金額を繰り上げ返済する資力が現時点であるなら、お勧めできます。ただしこの金額を見て大きなプレッシャーを感じるならば、それは金利上昇リスクが無視できない心理的な圧力になるということです。変動金利はお勧めしません。
最後の3.物件のリセールを想定して物件選びをしている人は、将来の状況によっては売却することで住宅ローンを清算することを選択肢として持っている人だとも言えます。資産の処分について一つでも選択肢が多いということは、具体的な金額として換算はできなくても、経済的な資産と同等に捉えることができます。つまり、1.の収入や2.の資金に代替しうると言えます。
金利が上昇して維持が困難と判断したら、比較的ためらうことなく任意売却を実行に移すことが出来る人です。現実的に変動金利をお勧めすることが出来ます。
3つに共通するのは現実的に「金利上昇を想定できる人」なのです。
お勧めする変動金利は5年ルールと125%ルールのあるもの
金利が上昇した場合、すぐに毎月の返済額が増えるとは限りません。これが5年ルールと125%ルールです。
- 5年ルール:金利が上昇しても5年は従前の毎月返済額を維持する。
- 125%ルール:6年目から毎月返済額を増加させる場合、直前の1.25倍を上限とする。
この2つのルールが適用されると、変動金利がどんなに急上昇しても5年間は毎月の返済額が増えません。ただし利息は増えますので、元金が予定どおりに減らないということになります。そのため6年目から帳尻を合わせるために毎月返済額を増やすのですが、その場合の上限は直前の1.25倍までに制限されるというものです。
この2つのルールはすべての銀行の変動金利に適用されるものではありません。例えばPayPay銀行、SBI新生銀行、ソニー銀行の変動金利にはありません。
5年ルールと125%ルールの適用がない銀行は毎月更新コロナ禍の利上げ金利先読み住宅ローンランキング - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答えるの「デメリット」で注意を喚起していますので確認してください。
また、5年ルールと125%ルールの適用がある銀行でも、「元金均等返済」方式を選択すると、5年ルールと125%ルールの適用がなくなるのでこれも注意が必要です。
35年、20年固定をお勧めする人のタイプ
最後に35年、20年の固定金利の金利タイプごとにお勧めする人のタイプについてまとめておきましょう。
35年固定をお勧めする人
35年固定の代表格といえばフラット35ですが、新たな金利引下げ制度として、フラット35維持保全型がスタートしています。この維持保全型は従来からあるフラット35Sとの相性が良く、併用できるケースが多いです。
またフラット35S(ZEH)が開始されていますが当初5年間年0.5%、6年目から10年目まで年0.25%引き下げとなります。
また併用ルールがポイント制に整理されたとで従来よりも複数の引下げ制度を利用できる人が増えています。
拡大された金利引下げ制度を併用することで実際にフラット35で借りる人の適用金利としては下がる人が出てくるでしょう。特にフラット35の金利引下げ制度に多く当てはまる人については35年固定がお得になります。
- 子育て支援のターゲットになる子育て世帯
- 高い環境性能の住宅を取得する人(Sやリノベ)
- 維持保全に優れた住宅を取得する人(維持保全型)
20年固定をお勧めする人
20年固定は、20年で完済する計画でかつ、後述のauじぶん銀行に付帯しているガン50%保障の恩恵が高い人にお勧めです。具体的には40台から50歳未満で住宅ローンをスタートする人ですね。
しかし、最近では最低金利を出しているauじぶん銀行などよりも35年固定やフラット35の方が低金利となっているため、事実上お勧めできません。
以上、千日のブログでした。
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2023年8月11日千日太郎
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