住宅ローンの途中で家を売却することをプロの視点から分析します
どうも千日です。住宅ローンは完済しなければ終わりません。
しかし家を売却したお金で終わらせることもできるのは確かです。
- 住宅ローン控除によって10年間は1%のキャッシュバックがあります。
- 今は特に変動金利が低金利であり、逆に利息が儲かるような状態です。
- ローン残高が多いうちは団信の生命保険が割安に受けられます。
その代わり、売却したときに売却価格で住宅ローンの残債を完済できなければ追加でお金を払って一括返済しなければならないというリスクを負います。
- 左側が資産です。マイホームですね。
- 右側が負債です。住宅ローンです。
- 差額が純資産
もしも家に誰も買い手が付かなければ、値下げしないと売れません。値下げした結果、この差額がマイナスとなってしまったら、自分の持っている貯金でもって完済しなければならないのです。
逆に言えば、そのリスクを込みで考えるのであれば、アリということになりますよね。この是非と注意点についてお話しましょう。
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生涯収入とリスクの配分から考える
私は損得勘定の専門家ですから、ここでお話するのは経済的な側面です。
- 自分が受け取る生涯収入をどう配分するか?
- 人生のリスクをどっちで取るか?
例えば、賃貸か持ち家かの違いはこの生涯収入と人生リスクをどう配分するのかで、区別することが出来ます。
ちょっとやって見せます。
賃貸とは生涯賃金とリスクを定年退職後に持ってくる戦略
賃貸 | 現役時代 | リタイア後 |
生涯収入 | 家族の人数に合う広さと立地に見合った家賃を払う。 | 夫婦二人だけジャストサイズの家賃だが年金は減る。 |
人生リスク | 払えなければ安いところへ引っ越せばいい、低リスク。 | 長生きすればするほど、住居費がかかる。高リスク。 |
戦略 | リタイヤ後の住居費がかかる分だけ、現役時代に老後資金の蓄えをしていかなければならない。 |
定年退職すると、毎月のサラリーの代わりに年金と貯蓄が生命線となります。賃貸ということは、そういう収入の仕組みがガラッと変わる、また年金で貰える金額に期待できない、という状況下で、定額の家賃を払い続けるということです。
収入面はどうなるかわからない、でも支出はある程度固定されている。 このリスクを和らげるのは、老後の貯蓄ですね。
つまり、賃貸というのは、定年退職後にリスクを取り、生涯賃金を定年後のためにより多く配分していくという戦略をとることになります。
毎月の家賃が減っても、いつまでそれが必要か読めないのですから、実際よりも多めに配分しておかなければならないのですね。
持ち家とは生涯賃金とリスクを定年前の現役時代に持ってくる戦略
持ち家 | 現役時代 | リタイア後 |
生涯収入 | 頭金と経費、420回ノーミスで続ける住宅ローンの元利均等返済額。 | 住居費の分は必要なくなるが年金は減る。 |
人生リスク | 住宅ローンを払えなければ家を取り上げられ、ゼロスタートになる高リスク。 | 長生きしても住居費は必要無くなる。低リスク。 |
戦略 | リタイヤ後の住居費がかからない分だけ、老後のリスクは減る。しかし年金のリスクは見えない。食費や維持費も払えなくなるリスクもゼロではない。 |
今の家族構成でジャストサイズの家というのは、定年後に持て余す広さの家です。その後半に不要となるスペースを購入するために毎月のキツい支払をやっていかなければならない。
最長35年、420回のミッション(元利均等返済)に失敗すると家を取り上げられ、その時点からゼロスタートを強いられます。 その代わり、定年後は維持費(管理費、修繕積立金、固定資産税)だけで住居を維持し続けることが出来ます。
つまり、持ち家というのは、現役時代にリスクを取り、生涯賃金を現役時代により多く配分していく戦略です。
ただ、今後我々が直面する少子高齢化社会においては、年金がどこまで減るか全く見えません。
現役時代に多く配分しすぎて、定年後の最低限の貯蓄すら無くなってしまうというリスクに対してもケアしなければなりません。家を買って安心ということはなく、基本的にリスクは後半に上がっていかざるを得ない世の中、それが少子高齢化社会です。
賃貸と持ち家どっちを選ぶか?それは損得ではなくポリシー
私は公認会計士です。いわば、損得勘定のプロですが、そのプロの目から見て、どちらかが圧倒的に得とか損ということで簡単に割り切れるものではありません。
家を買う決断というのは、ファイナンシャルプランナーであろうが公認会計士であろうが決して簡単なことではありません。
普通の人であればなおの事です。
- 年収の何倍もの見たことのないようなお金が必要です。
- 何十年という住宅ローンの期間は未知の期間です。
たまたま、住宅ローンという形でそれが目に見えるようになっているのです。 賃貸なら安全ということも無いし、持ち家なら安心ということもありません。
どちらにするか? これはどちらが正解か?という問いではなく、自分がどういうポリシーで今後の収入とリスクを配分していくのか?という問いなんです。
住宅ローンの途中で売却するときにローンが残るリスク
わたし達のマイホームは持っていても1円も『儲け』はありません。なのに負債の住宅ローンを負い、利息というコストを払って所有しているものなんです。
マイホームには資産の利回りというものは存在しません。少子高齢化の人口減少によって基本的に土地の市場価格は下がっていきます。そして建物の価値も経年劣化によって下がっていきます。
これを動的に表現すると、こんな感じですね。
資産の価値が下がるより早く住宅ローンの元本を減らしていけば、債務超過にはなりません。
ちなみにこれについて詳しくはこちらで書いていますので、ご一読ください。
もう少し突っ込んだ話をすると、債務超過になってもいいんです。
というか、住宅ローンを組んでいるほとんどの人は初めは特に債務超過です。
住宅ローンの途中で売却したら1割から2割くらいの損は覚悟する
購入するのが新築住宅だとすると買った瞬間に価値が2割から3割下がりますから、フルローンであったら、最初からこのバランスシートは債務超過なんです。
なので住宅ローンの途中で売却するということは、そのタイミングにもよりますけど、1割から2割の残債が残ることは覚悟しておいた方が良いでしょう。
もちろん、不動産は一つ一つ全て違います。一律に絶対ローンが残ってしまうとは限りません。また、その残る残債が1割や2割で済むとも限りません。
買いたい人が居ればまだマシです。だれも買い手が付かない可能性だってあります。もちろん値段を下げればいずれ売れるんですが、その時の自分がどこまで下げられるのか?
それは現時点ではわかりません。
住宅ローン途中で売却する生涯収入と人生リスクの配分とは
ではこの住宅ローン途中で売却するということを生涯収入と人生リスクの側面から確認しておきましょう。
図にするとこうなります。
生涯収入の配分は『賃貸型』
まず、生涯収入の配分は賃貸に良く似ています。現役の間の元利均等返済を賃貸と同等にしようとすれば、賃貸と同じ支払ですよね。
そして、家を売却して住宅ローンを返すのですから、老後は家賃が必要になりますね。
ですから、住宅ローン途中でマイホームを売却する場合の生涯収入の配分は賃貸とよく似たものになるのです。
現役時代は意外と低リスク
毎月の返済が滞ってしまったらダメなのはダメなんですが、完済しなくていいです。つまり定年退職までに完済するための繰上げ返済資金などを貯めておく必要がありません。
年数を最長にして、金利を変動金利にしておけば、毎月の支払を小さくできますね。
変動金利には5年ルールと125%ルールがありますので、当初10年は最大でも最初の125%までしか支払は増えません。
5年ルール125%ルールと住宅ローン控除がある(低リスク)
5年ルールとは、金利が上昇しても5年間は直前の元利均等返済額を維持するというものです。つまり、急に金利が上がったからといって毎月の支払いが急に増えるわけでは無いんですよね。
125%ルールとは、金利が上昇してから5年経過して毎月の元利均等返済額を増やす時には、直前の125%までを上限にするというものです。つまり大きく金利が上がっても毎月の支払いは125%までしか上がらないということです。
ですから、住宅ローンを変動で借りる人は、以下の条件を満たせることをお勧めしてます。
- 毎月の返済額の4分の1を貯蓄する。
- 貯蓄込みで手取り月収の4割以下に抑える。
詳しくは、住宅ローンを変動金利にする人は必見!2つの『四』=返済額の4分の1と収入の4割 - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答えるをご一読下さいね。
住宅ローン控除は住宅ローンの利息を国が肩代わりしてくれる減税制度です。 家を購入した年の年末から数えて10回、年末の住宅ローン残高の1%を上限として税金を還付する(キャッシュバック)するものです。
例えば年末の住宅ローンの残高が4000万円であればその1%は40万円ですね。結構デカいです。そういうキャッシュバックが10回あるのですから数百万円単位のお金が返ってくるものです。
変動金利で当初の10年間はローンの金利が上がっても1%まではキャッシュバックされるのですから、負担は相殺されるということです。
また、ローン残高が多い前半10年には住宅ローン控除があります。1%は利息が返って来ますから、金利上昇によるコストの増加は緩和されるんです
住宅ローン残高が多いうちは団信の保険が厚い(低リスク)
それと、住宅ローンを完済しないということは、ちょろっと払うだけで大部分の残高を残しておくということですね。
だったら、団信(団体信用生命保険)の恩恵が多く受けられるうちだけ、住宅ローンを借りるということになります。
団信とは銀行が保険金の受取人になり、債務者であるわたし達に掛ける生命保険です。保険金は銀行に入ります。遺族には入りません。ですがそれによって遺族はその後の住宅ローンを払う必要が無くなるので、メリットがあるんです。
- この団信はローン残高が大きい前半のうちはメリットが大きいですよね。
- そしてローン残高が少なくなる後半はメリットが少なくなります。
なのでローンを借りている間、高額の生命保険にほとんど無料で加入できるというメリットがあります。
つまり、住宅ローンを払っている間は、大黒柱の死亡によるリスクは賃貸よりも低くなります。
売却時とリタイヤ後に跳ね上がるリスク
その代わり売却時にリスクが上がるというのは前述のとおりですね。
これによってローンをゼロにするために、老後資金に手を付けなければならなくなるかもしれません。
そうなると、老後のリスクは、賃貸よりも高くなります。
家を手放してしまいますから、その後はずっと家賃が必要になります。つまり老後資金が幾らになるのか分からないのに、長生きすればするほど長く家賃を払い続けなければならない。
- 貯金の額にリスクあり。(最初から賃貸ならある程度計画できたのに…)
- 老後に必要な住居費の金額にもリスクあり。(賃貸特有のリスク)
こういうダブルのリスクがやって来るということです。このリスクを吸収できる方法があるなら、悪い方法ではないと思います。
しかし、ここがノープランなのであれば、極めて危険な、プランとも言えないようなシロモノであると思います。
疾病保障が無料で付帯し変動金利が低金利なネット銀行がおすすめ
この方法で住宅ローンを借りる場合にオススメは前述のように、変動金利です。5年ルールと125%ルールがあれば、当初10年は125%までしか上がらないことが確実です。
さらに上がっても住宅ローン控除がありますので、利息費用の負担はかなり(1%まで)相殺されることになります。
そして、ネット銀行の中でも団信に疾病保障特約が無料で付帯するものがお勧めですね。どうせ保険が付くのであればそれを充実させた方が良いです。しかも無料ならば、願ったりかなったりです。
auじぶん銀行はガン50%保障+全疾病保障で死角なし
auじぶん銀行 は三菱UFJ銀行とKDDIの戦略子会社です。
全疾病保障のSBIに対して、ガン50%保障(ガンと診断されたら住宅ローンが50%になる)のauじぶん銀行という様相だったのですが、auじぶん銀行がガン50%に加えて全疾病保障団信を追加したのです!
両行の団信の特約内容をザックリ比較してみました。
団信の特約 | auじぶん銀行 | 住信SBIネット銀行 |
---|---|---|
ガン | 医師にガンと正式診断されたらその時点のローン残高が50%になる。 | なし |
全疾病 | 全てのケガ、病気で入院が継続180日以上となった場合、住宅ローンがゼロ円になる。 | 8疾病で12カ月継続して働けなくなったらローン残高がゼロ円になる。8疾病以外の病気やケガの場合でも入院により12カ月継続して働けなかったら、ローン残高がゼロ円になる。 |
まず、ガンと診断された時点で住宅ローンが半分になるのはauじぶん銀行だけですね。
そして、全疾病保障については、どちらも「全疾病」には精神障害は含まれません。
しかし、入院や就業不能となる期間については、住信SBIは12か月に対してauじぶん銀行は180日なので、auじぶん銀行の方が早く保険金が支払われるので有利だと言えます。
このリニューアルによって、団信の保障という面ではauじぶん銀行が完全に頭一つ抜けたと言えます。
auじぶん銀行は金利を下げるのではなく、団信の保障を厚くするという面でアピールしているのですね。
変動金利はもうかなり低いです。これ以上下げたらゼロパーセントになっちゃいますよね。これはなかなか上手い戦略だと思います。
住信SBIネット銀行はキャッシュバックと全疾病保障の団信
変動金利で業界最低金利は住信SBIネット銀行です。三井住友信託銀行のグループ会社で、ネット銀行として国内初で東証に上場しています。
また、全ての病気とケガをカバーする全疾病保障団信が金利上乗せ無しで付帯するのも魅力です。
住信SBIのキャンペーンと全疾病保障
実店舗での相談サービスあるSBIマネープラザ
また、SBIマネープラザが販売する「MR.住宅ローンREAL」は、住信SBIネット銀行の商品です。ネット銀行の商品でありながら、実店舗での相談を受け付けており、実店舗から申込を受け付ける商品です。金利も全疾病保障も手数料も全く同じです。
ネット銀行には書類の記入に不備があるとその都度手戻りとなるなど、ネットならではのデメリットがありますが、そのデメリットが無くなるという点だけでも魅力的です。
店舗予約は最小限の情報で30秒で完了
まとめ~定年時にスパッと売る気になるか…?『自分リスク』にも注意
この方法、頭ごなしにダメとは言いません。
例えば実家を相続するのでそっちに戻るため、リタイア後の住居費は要らなくなるなど、後半に跳ね上がるリスクを抑えられることが前提だと思います。
じゃあ、そういう見込みのある人は、売却できそうな人気の高い物件で積極的に住宅ローンを組んで家を買えばいいのか…?というとそうでも無いように思います。
- もちろん、売却できれば住宅ローンは無くなります。
- その後に住居のめどが立っていれば、それほど危険は無いかもしれません。
でも、なんだかんだで10年以上住んで慣れ親しんだ家、です。リタイアしてスパッと売る気になるかなあ?と思うんですよね。無理して完済を目指してしまうんじゃないでしょうか。
そうなると、老後資金を使い果たして、老後破産に繋がってしまうというリスクもあると思うんですよね。
- 金利がどうなるか?
- 不動産の相場はどうなるか?
- 年金は?
色々気になるとは思うのですが、なんだかんだで、『自分リスク』というものが一番高く、厄介なんだと私は思います。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
今日の内容は住宅ローン無料相談ドットコムに寄せられたご相談をもとに書いています。
実際の回答はこちらです。
この基本的な考え方について、それだけでかなりの字数になってしまうので、スピンオフとして千日のブログで書くことにしました。
マイホームの購入と住宅ローンのノウハウについて、こうした基本というか、土台となる考え方を一冊にまとめたのがこちらの本です。
全国の大型書店と通販で発売中です。目先の損得勘定に左右されない決断の秘訣や住宅ローンの選び方について、専門家の理論を知識ゼロから理解できるようにまとめています。
今回のブログもそうですけど、他の本には無い踏み込んだ内容になっていると自負しています。ぜひお手に取ってみてくださいね。
2018年3月19日
毎月更新!年齢、年収別の最適住宅ローンランキング➤姉妹サイト「千日の住宅ローン無料相談ドットコム」へ
ランキング | 年齢 | |||
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20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 | |
新規借入 | 20代800未満 | 30代600未満 | 40代600未満 | 50代1000未満 |
30代600~1200 | 40代600~1200 | 50代1000以上 | ||
20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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