千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える

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【2022年12月】米インフレ収束なら変動金利の上昇可能性はなくなる?住宅ローンの金利タイプ別お得な選び方

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2022年12月11日公開

どうも千日です。FRBパウエル議長は11月30日には利上げペースの鈍化に言及しており、12月のFOMCでは0.5%の利上げを織り込んで米株価と長期金利は下がり、ドル安円高基調になってきています。

そんな状況下で一部のネット銀行が変動金利を大幅に下げてきました。民間銀行としてはこの状況を見て日銀の利上げが遠のいたと考えたからではないでしょうか。変動金利を選ぶ人にとって後押しとなるような状況がそろってきていますね。

この記事は、最新の金利動向と住宅ローン金利から、今もっともお得な住宅ローンの選び方について分かりやすく解説します。

具体的には、金利タイプ別に…

  • 今どの金利タイプが割安になのか?
  • どんな人にどの金利タイプがお勧めか?(どういう返済計画で借りるべきか?)

普通のランキングサイトでは書かない内容が盛りだくさんなので、よろしければ参考にしてください。

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変動金利を下げた民間銀行の読みと変動金利の上昇可能性

変動金利を下げてきたのはPayPay銀行です。新規借入で11月の0.38%から12月には0.349%へと大幅に下げました。銀行というよりは、電子マネーPayPayのイメージが強いと思いますが、SMBCの三井住友銀行とヤフーが共同出資しているれっきとした銀行です。

単に電子マネーの利用者を増やすため、またネット銀行だからコストがかからないので変動金利を下げているんだと考えるのは不十分だと思います。ここ最近の市場を分析したうえで日銀利上げの可能性が遠のいたと判断して変動金利を下げてきているのです。

FRBが通常の3倍となる0.75%の利上げを連続して断行し、米長期金利が上昇し続けていた2022年10月から11月にかけては日米の金利差(金融政策の差異)から一時は1ドル150円台の記録的な円安となり、この円安が金融緩和政策を堅持する日銀に対して利上げを求める圧力となっていました。

しかし12月に入ってからFRBは利上げペースを鈍化しつつも長期化すると表明しており、2023年の金利見通しでは、5%台にまで上がるのではないかと観測がされており、米長期金利は下がり、ドル円相場も135円前後の円高水準に戻りました。

そもそも、日本のインフレは主としてドル高円安で輸入品の価格が上がっていたことによります。つまり2023年に見込まれるドル安円高の展開によって日本のインフレはかなりの部分で解消されることになります。また円高に戻ったことで、日銀の金融緩和政策に対して転換を求める声もほとんど聞かなくなりました。

2023年春には黒田総裁が任期満了となりますが、新総裁になっても日銀が政策を転換して利上げに舵を切る可能性は低そうです。住宅ローンの変動金利は日銀の政策金利の影響を受けるため、日銀が今の金融緩和を続ける限り変動金利も上がらないと言えるのですね。

メガバンクである三井住友銀行が共同出資しているPayPay銀行がこうした読みをしているということは、他のメガバンクやその子会社であるネット銀行も同様の見方をしている可能性があります。

変動金利を選択する人の心構え

これはあくまで現時点で入手可能な公開情報を参考にして、千日太郎個人の考える今後の予想です。その後の状況変化によって予想が変化していくものですし、そもそもこの予想が外れる可能性も大いにあります。

民間銀行としては、この予想が外れて日銀が利上げすれば、変動金利を上げるだけで確定した利ザヤを得ることができます。つまり、変動金利は民間銀行が金利上昇リスクを負わないのでこの予想が外れても全く痛くないのです。

変動金利は私たちが金利上昇リスクを負います。つまり、「将来金利が上昇することを想定して利用する」ものであり、「将来金利が上昇しないと信じて利用する」ものではありません。むろん変動金利が上がると予想しながら変動金利を選ぶ人はいないと思いますが、そうであっても金利上昇に備えた資金の確保やマイホームの売却相場の把握を行うことを前提に、変動金利を選ぶようにしてください。

変動金利をお勧めする人=金利上昇を想定できる人

そのため、わたしが変動金利を勧めるタイプの人は「金利上昇を想定できる人」です。具体的には次のどれか1つ以上にバッチリ当てはまるという人は変動金利に向いています。

  1. 毎月返済額にかなり余裕のある人
  2. 繰り上げ返済資金が潤沢にある人
  3. 物件のリセールを想定して物件選びをしている人

3つのうち1.毎月返済額にかなり余裕があるというのは、毎月の元利均等返済額が手取り月収の3割以下という人です。最近は夫婦共働きが増えてきており、夫婦二人ならば3割以下だけども、夫単独だと4割を超えるという人が多いです。このような場合は、「かなり余裕がある」のは夫婦共働きが維持できている間だけであり、片方の収入が無くなると、全く余裕がなくなるので変動金利が向いているとまでは言えません。

次の2.繰り上げ返済資金が潤沢にあるというのは、金利が上昇したときに即座に繰り上げ返済して金利上昇を相殺できれば良いという考え方です。金利がどれだけ上がったら、いくら繰り上げ返済しなければならないか?は下記のシミュレーションでやってみてください。

ここで出ているレベルの金額を繰り上げ返済する資力が現時点であるなら、お勧めできます。ただしこの金額を見て大きなプレッシャーを感じるならば、それは金利上昇リスクが無視できない心理的な圧力になるということです。変動金利はお勧めしません。

最後の3.物件のリセールを想定して物件選びをしている人は、将来の状況によっては売却することで住宅ローンを清算することを選択肢として持っている人だとも言えます。資産の処分について一つでも選択肢が多いということは、具体的な金額として換算はできなくても、経済的な資産と同等に捉えることができます。つまり、1.の収入や2.の資金に代替しうると言えます。

金利が上昇して維持が困難と判断したら、比較的ためらうことなく任意売却を実行に移すことが出来る人です。現実的に変動金利をお勧めすることが出来ます。

3つに共通するのは現実的に「金利上昇を想定できる人」なのです。

お勧めする変動金利は5年ルールと125%ルールのあるもの

金利が上昇した場合、すぐに毎月の返済額が増えるとは限りません。これが5年ルールと125%ルールです。

  • 5年ルール:金利が上昇しても5年は従前の毎月返済額を維持する。
  • 125%ルール:6年目から毎月返済額を増加させる場合、直前の1.25倍を上限とする。

この2つのルールが適用されると、変動金利がどんなに急上昇しても5年間は毎月の返済額が増えません。ただし利息は増えますので、元金が予定どおりに減らないということになります。そのため6年目から帳尻を合わせるために毎月返済額を増やすのですが、その場合の上限は直前の1.25倍までに制限されるというものです。

この2つのルールはすべての銀行の変動金利に適用されるものではありません。例えばPayPay銀行はこの適用がないので、12月に変動金利を大幅に下げた銀行ですがこれに飛びつくとちょっと危ないということです。

5年ルールと125%ルールの適用がない銀行は毎月更新コロナ禍の利上げ金利先読み住宅ローンランキング - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答えるの「デメリット」で注意を喚起していますので確認してください。

また、5年ルールと125%ルールの適用がある銀行でも、「元金均等返済」方式を選択すると、5年ルールと125%ルールの適用がなくなるのでこれも注意が必要です。

5年ルールと125%ルールの適用があり、低金利で他のサービスも充実している銀行は三菱UFJ銀行です。

フラット35が上昇した理由

フラット35(買取型)は長期金利が0.25%で横ばいであるのに11月の1.54%から12月の1.65%へ0.11ポイントもの大幅上昇となりました。しかし、10月と12月で比較すると、機構債の表面利率は0.58%から0.76%に0.18ポイントの上昇であり、フラット35の金利が1.48%から1.65%へ0.17ポイントの上昇であることを鑑みると、機構債の上昇率とおおむね近似した上昇であるとも言えます。

2022年 9月 10月 11月 12月
長期金利 ↓0.20% ↑0.25% →0.25% →0.25%
機構債(参考) ↓0.50% ↑0.58% ↑0.74% ↑0.76%
フラット35(買取型) ↓1.52% ↓1.48% ↑1.54% ↑1.56%

フラット35は住宅金融支援機構が取り扱う公的融資ですが、毎月発行する機構債によって資金を調達して貸しているため、市場の金利を反映して機構債の表面利率が決まり、機構債の表面利率によってフラット35の金利が決まるというスキームになっています。

しかしここ最近の傾向としては、市場の金利である長期金利は0.25%前後でほぼ横ばいになっているのに、機構債の表面利率は大幅に上昇しフラット35の金利も上昇しています。

長期金利はフラット35の金利の指標としては、あまり機能しなくなってきていると思います。

金利引下げ制度を利用すれば金利上昇の影響なし

金利は大きく上がったものの、2022年10月からフラット35の金利引下げ制度が拡充されています。フラット35S(ZEH)では、当初5年間0.5%引下げとなり6年目から10年目まで0.25%引下げとなります。

そして、従来わかりにくかった異なる金利引下げ制度の併用が整理され、ポイント合計制となったことで、多くの人が複数の制度を併用できるようになっています。

フラット35金利引下げ制度 ポイント

最大の4ポイントを効率的にゲットすれば、最長10年にわたり最大0.5%の引き下げとなります。フラット35の金利は10月から12月にかけて0.18%の上昇ですが、金利の上昇よりも制度改正による引き下げ効果の方が大きい状態なのです。

2022年12月のお勧めフラット35(保証型)

フラット35(保証型)は各銀行の独自性が出せることから、買取型よりも低金利となることが多いのでお勧めしています。特にARUHIのスーパーフラットと住信SBIネット銀行の保証型がお勧めです。

下表の金利から当初10年間は最大0.5%下がるということですから、35年固定としてはかなりの低金利です。

フラット35保証型2022年12月 団信込み 団信抜き 頭金
ARUHIスーパーフラット9 1.60% 1.32% 1割
ARUHIスーパーフラット8 1.52% 1.24% 2割
ARUHIスーパーフラット7 1.50% 1.22% 3割
ARUHIスーパーフラット6 1.48% 1.20% 4割
住信SBIフラット35保証型 1.63% 取扱なし 1割

住信SBIフラット35保証型

1.50% 取扱なし 2割

フラット35の最低金利はARUHIスーパーフラット

フラット35で最低金利を提供しているのは上表のとおりARUHIです。

ARUHIは団信に加入しないことで金利が0.28%引下げとなり、さらに頭金を多く入れることで金利が下がります。30代ならば団信の代わりに掛け捨ての生命保険の方が手厚い保障でコストが安くなるので、ARUHIがお勧めです。

ARUHIは共働きの場合は連帯債務による収入合算も可能ですので30代までの共働き夫婦にお勧めです。

全疾病保障の団信付きで低金利の住信SBI

住信SBIネット銀行のフラット35保証型は頭金を1割以上とするか、2割以上とするかで金利が異なります。頭金1割ではARUHIスーパーフラット9の方が有利となります。しかし、住信SBIネット銀行はフラット35保証型で全疾病保障が金利上乗せなしで付けられるというメリットがあります。

なお、住信SBIネット銀行のフラット35保証型は団信抜きにはできません。また、連帯債務による収入合算もできません。しかし、団信込みの金利ではフラット35のなかで最低金利となります。40代以上で単独で住宅ローンを組む人にお勧めです。

固定金利は上がってきているのか(割高なのか)?

固定金利は上昇傾向にはあるものの、しばらくは日銀が政策を転換する可能性は無いと見られているため、長期金利は0.25%で頭打ちとなるでしょう。

少なくとも年度内の黒田総裁のもとでは大きく上がることは無く、少し上がったと思われるかもしれませんが、全体的にまだ割安な範囲内です。

  • 10年固定は年度の下半期に入ったことで銀行間の競争で下がることが期待できます。
  • 20年固定については銀行間の競争が乏しくなっており、唯一低金利を出しているauじぶん銀行が上昇傾向にあるため、かなり割高です。
  • 35年の超長期固定金利については、フラット35の金利引下げ制度が拡充されることで割安となっていくでしょう。

35年固定をお勧めする人

35年固定の代表格といえばフラット35ですが、2022年4月から新たな金利引下げ制度として、フラット35維持保全型がスタートしています。この維持保全型は従来からあるフラット35Sとの相性が良く、併用できるケースが多いです。

そして2022年10月からフラット35S(ZEH)が開始されますが当初5年間年0.5%、6年目から10年目まで年0.25%引き下げとなります。

また併用ルールがポイント制に整理されることで従来よりも複数の引下げ制度を利用できる人が増えることが予想されます。

拡大された金利引下げ制度を併用することで実際にフラット35で借りる人の適用金利としては下がる人が出てくるでしょう。特にフラット35の金利引下げ制度に多く当てはまる人については35年固定がお得になります。

  • 高い環境性能の住宅を取得する人(Sやリノベ)
  • 維持保全に優れた住宅を取得する人(維持保全型)
  • 特定のエリアで住宅を取得する子育て世帯(地域連携型)

20年固定をお勧めする人

20年固定は、20年で完済する計画でかつ、後述のauじぶん銀行に付帯しているガン50%保障の恩恵が高い人にお勧めです。具体的には40台から50歳未満で住宅ローンをスタートする人ですね。

しかし、11月には最低金利を出しているネット銀行よりも35年固定やフラット35の方が低金利となっているため、事実上お勧めできません。

10年固定をお勧めする人

変動金利に当てはまるほど、売却を考えてはいないけれども、10年程度で転居する可能性が高い人には10年固定が向いています。

また、50歳くらいから住宅ローンを組む人で住宅ローン控除のためにあえてローンを借りる場合には約10年間にわたって低金利で固定できれば良いので10年固定がお勧めです。

また、変動金利に当てはまるほど資金が貯められていないけれど、10年の間に貯蓄して大幅な繰り上げ返済を検討する人にも10年固定はお勧めです。PayPay銀行の10年固定は11年目からの金利引下げ幅が大きいので、お勧めしやすいです。

長期金利とフラット35金利が連動する仕組み(おまけ)

そしてフラット35の金利がどうやって決まっているのか?について、5分ほどのYouTube動画にしました。動画での図と言葉での解説が理解しやすいと思います。

機構債の表面利率から翌月のフラット35金利が予想できる|youtubeへ

「買取型」は住宅金融支援機構が金利を決める

フラット35の「買取型」は、住宅金融支援機構が金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債」という形で販売するという仕組みになっています。

フラット35買取型の仕組み

マーケットの投資家は国債のような安全資産として機構債を購入しているので、機構債の表面利率は、それを発表する時点の長期金利=国債の利回りとほぼ連動するのです。

そして、住宅金融支援機構は国の機関なのでほぼ固定した経費を上乗せしてわたしたちに貸すフラット35の金利を決めます。

融資のときに窓口になるのは民間金融機関ですが、その債権を買い取り、最終的に債権者となるのは住宅金融支援機構ですから、フラット35の金利を決めるのは住宅金融支援機構なのですね。

「保証型」は民間金融機関が金利を決める

フラット35の「保証型」は民間金融機関が貸す住宅ローンの債権を住宅金融支援機構が保証するという仕組みになっています。

フラット35保証型の仕組み

上図のように、買取型と同じく金融マーケットから資金を集めていますが、住宅ローンの債権者は民間金融機関のままです。つまり、金融機関は住宅金融支援機構に保証料を払ったうえで儲けが出るようにフラット35の金利を決めているのです。

そのため、保証型のフラット35は取り扱う金融機関の裁量によって決められるということです。

方向性が見えるまで複数の金利タイプで審査を通すべし

一方で、政策金利が上がらなくても民間銀行が損をすることはありません。「上がる可能性が高い」という大義名分のもと、横並びで固定金利を上げてその間に固定金利を選択した住宅ローンの利用者から高めの金利を獲得することが出来ているからです。

金融市場によって決まる建前となっている住宅ローンの金利は、最終的に債権者となる金融機関が決めるものです。金利動向の読みで勝負したところで、金融機関の方が圧倒的に有利なのです。

日銀の動向が見えるまで時間のある方は、変動金利だけでなく固定金利でも審査を通すことでリスクヘッジすることをお勧めします。後述する35年固定金利は、複数のメガバンクが金利競争をしているため、現在でも比較的低金利です。

さらに35年固定であれば、民間と公的融資のフラット35の両方で審査を通しておくことをお勧めします。民間と公的融資では金利決定の考え方が異なるので、片方が上がっても、片方は上がらないということもあるため、リスクヘッジになるのです。

以上、千日のブログでした。

こちら去年発売の「住宅破産」は最近になってkindleで購読が増えてきています。経済紙や新聞の取材を受ける際に本書について聞かれることが増えてきました。

12月10日の日経新聞朝刊では本書で推奨している定年時の貸借対照表が紹介されています。

現在のリスクと老後破産のリスクを軽減するために、資産と負債を突き合わせて現状把握し、老後を見える化する方法について分かりやすく解説しています。

是非よんでみてください!

2022年12月11日千日太郎

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