マイホームの購入を財務的に捉える
どうも千日です。家は恐らく人生で最大の買い物です。そして一度きりという人が殆どでしょう。最大の買い物ですが、ほとんど皆が家の購入に関しては初心者です。
不安になるのが当たり前です。かく言う千日も不安でした。
今日は住宅の購入の財務面のポイントと殆どの人が漠然と抱く不安について、クリアにしたいと思います。
注意すべきポイントをちゃんとおさえれば、思った程は恐くないんですよ。
目次
千日が家を買う時に不安を整理したのは、貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)の考え方です。これは会社の財政状態を表す書類です。英語ではバランス・シート(Balance Sheet)、略してB/Sと呼ばれます。
家を買った人の貸借対照表は上の図のようになりますよね。
- 家は資産
- 住宅ローンは負債
- 差額が純資産
家>住宅ローン
あらゆる時点でこういう財政状態を維持しておけば、必要以上に不安を感じる事はありません。ちなみにこれが逆になると、債務超過といって、会社ならば倒産してしまいます。
そんなの知ってる?
知っていれば良いんですが、この考え方の重要性をちゃんと理解している人は少ないです。
資産としての家の価値とは
家の価値は使用や時間の経過とともに下がっていきます。例えば、新築マンションを例にすると以下のようなプロセスで価値は下がっていきます。
- 売り出し価格をスタート
- 完成引き渡し時点で30パーセント下がる
- その先は経年劣化で少しずつ下がる
これは何となく皆んなが頭に描くグラフですが、消費財としての住宅の価値には2種類の価値があるんです。
使用価値と市場価値
- 使用価値は住むことによって所有者が享受する価値です。
- 市場価値はその住宅が住宅市場でいくらで売れるかという価値です。
使用価値と市場価値のそれぞれの推移は下のグラフのようになります。
使用価値の推移
- 経年劣化と修繕費増によって完成から徐々に下がる。
- 最後は取り壊しコストの分だけマイナス。
市場価値の推移
- 始めに3割ダウンする。(新築マンション一般に言われます)
- 途中で使用価値を上回るのは買手視点からの立地の価値が残るため。
住宅ローンの残高が市場価値を上回らないようにする
購入の時は使用価値だけ見ていれば良いのですが、収入が減って住宅ローンが払えなくなるリスクを考えると、市場価値にも十分目を配る必要があります。
- 頭金30%と仮定
- 元利均等払いだと最初の頃は元金が減らず、後の方で元金が減る
上記のようなグラフにすると、購入から住宅ローンの完済まで住宅ローンの残高が住宅の市場価値を上回ることはありませんね。
住宅ローンの頭金として最低2割は必要と言われるのは、新築住宅の場合、初めに3割は市場価値が下がると言われるからです。
銀行に返済条件の変更を交渉できる
計画的に住宅ローンを組んでいても病気になってしまったり、失業してしまう可能性はゼロではありません。
これは家を買うことに関係の無いリスクですが、大きな負債があるときに収入が減ると心配になりますよね。
日弁連の統計調査によると、破産や私的整理になる人が多いのは借入から5年以降だそうです。
何もアクシデントが無ければ当初の予定通り返済出来たのに、その後に起こった出来事によって収入が減少したり財政が悪化して破綻するケースが多いのです。
もしローン返済が難しくなったり滞りがちになったりした場合、早めに借入先に相談することです。返済方法や返済額の変更など、意外と柔軟に対応してくれます。
月々の返済でお困りになったとき:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)
債務残高<担保価値であること
しかし、銀行が条件変更に応じるのは『家を取り上げたらかわいそうだ』なんて理由ではありませんよ。
そんな理由でいちいち条件変更してたら銀行は倒産してしまいます。
住宅を売却してローン残高を返済してもらうよりも、長く利息を払い続けてくれる方が得だと判断した場合にだけ条件変更に応じるんです。
ただし、確実に返すことが出来るなら、です。
では、確実に返すことが出来るという保証は何か?
ローン残高<住宅の担保価値です。
もしも債務者が返済計画どおりに返済を継続できなかった場合は、その時は住宅を売却すれば、確実に元本を回収できる。
こういう判断がある場合に条件変更に応じやすいんです。
資産を家の担保価値、負債を住宅ローンの債務残高という考え方で債務者の貸借対照表を想定して判断しています。
これが債権回収に懸念が生じた時の金融機関の自己査定の考え方の基本です。
住宅ローンを家の担保価値未満に維持することはこうした思わぬ不運に見舞われた時の保険にもなるんです。
住宅ローン控除との兼ね合い
とは言え、住宅ローン控除の恩恵を享受するには、当初の10年間は住宅ローンの残高は高く維持しておきたいですよね。
住宅ローン控除の正式名称は住宅等借入金特別控除といいます。
各年の12月31日のローン残高×1%をその年の所得税からマイナスする効果です。
新築、中古住宅の購入又は要件を満たすリノベーションやリフォームをして、6カ月以内に住み始め、住宅又はリフォームローンを借りている人は、以後10年間の各年分の所得税から年度末の借入金残高の1%の額を控除することが出来ます。
ということは、始めの10年間は住宅ローン残高は高めに維持しておいた方がオトクなんです。
繰り上げ返済資金は返済せずに貯金
繰り上げ返済用の資金はあえて返済せずに温存しておけばいいです。貸借対照表で考えると、以下の図のようになります。
- いざという時はローンの残高をいつでも減らせる。
- 住宅ローン残高は高い金額を維持できる。
早い話がいいとこ取りです。
政府の思惑としてはそれで貯金ばかりが増えてしまうと景気が減退するんですが、それ以前に家を買っているわけです。
十分日本の景気に貢献してますよね。
まとめ
大事なことですので断わっておきますが、この記事を通じて家を『買うべき』とか『買うべきじゃない』とかを言うつもりはありません。
そんなの人によって違いますし、それが正解かどうかなんて永遠に分からないからです。
正解は最後まで分からない。
これが家を買うか買わないかの決断の大前提です。これをクールに(冷静に)受け入れた上で、家を買う上での注意点を正しく理解するのが目的です。
- 住宅ローンで破産したくない。
- 住宅ローンに縛られたくない。
これらは実は漠然としたイメージです。
住宅ローンだけで破産することは稀です。銀行は普通に住宅を売れば回収できるような条件でしか融資しません。
また、住宅ローンが縛っているのは自分ではなく担保を設定している住宅の方なんですよね。こういうことは、家を買うという事を財務的に捉えることで分かって来るんです。
以上、千日のブログでした。
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