消費税の増税が延びたことで住宅ローンの金利の引き上げも延期
どうも千日です。安部政権による消費税の増税(8%→10%)延期が今後の住宅ローンの金利にどう影響するか?住宅ローンの固定金利に深く係わりのある10年国債金利の低迷が続くので、
住宅ローンの金利は当分の間上がらないだろう
というのが、大方の見方です。だいたいどのサイトを見ても書いてますね。
それは良かった?
そうでもないですよ。金利が上がらない理由は、景気が上がらないからです。手放しに喜んでもいられません。
政府は景気を上げたいんですが、上げようと思っても上げられないので色々やってるわけです。
一方で、政府が自分で上げたり下げたり自由に出来るのは住宅ローンの変動金利の指標になる政策金利です。
固定金利と変動金利は連動する金利の種類が違いますので、今後の動向を予想するにはそれぞれ違ったアプローチが必要なんですよ。
結果として結論が同じでも、です。今日はその違いと予想について分かりやすく解説していきます。
また、2016年8月24日の閣議決定閣議 | 首相官邸ホームページで消費税率の10%への引き上げを2年半延期することに伴い、税率の引き上げで住宅市場が冷え込むのを抑える目的で実施している住宅ローン控除の適用期間を2年半延長し、親から住宅資金の贈与を受けた人の贈与税を非課税とする措置も2年半延長し、2021年12月まで続けることとしました。
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目次
固定金利が当分上がらない理由
固定金利は長期金利によって決まります。長期金利はその時点の金融政策の影響も受けますが、それとは別の次元で、長期資金の需要と供給の市場メカニズムの中で決まるという色合いが強いです。
将来の物価変動(インフレ、デフレ)や将来の短期金利の推移(やこれに大きな影響を及ぼす将来の金融政策)などについての予想がダイレクトに金利に反映されます。
固定金利は当分上がらないでしょう。その理由は、今年になって固定金利が大幅に下げた理由を紐解けば分かります。
つまり、日銀のマイナス金利政策です。
マイナス金利とは、銀行が今まで日銀に預けている余剰資金に逆に利息を払わせることです。
銀行は自分が預けている預金に利息を払うなんて嫌なので、日銀に預けた預金を引き落とす。その資金は投資や融資に向けられて、経済を刺激するだろう。
これが日銀の描いた絵です。つまり、銀行から引き落とした資金は住宅ローンにも向けられるはずであり、銀行間の住宅ローン争奪戦を激化させるだろう、ということです。
しかし、このマイナス金利政策は劇薬でした。
日銀のマイナス金利発表によって、銀行は当然日銀から預金を引き出します。ではお金をどうします?金庫に保管しておきますか?
銀行のビジネスは金利で儲けるビジネスです。現金をそのまま置いておくというのはロスなんです。そんなもったいないことはしません。
- 何か利息の付く投資
- 日銀なみに安全な投資
- すぐに投資できる銘柄
そういう投資先として脊髄反射的な反応で日銀から引き揚げてきた資金を国債の購入に充てたんです。
全ての銀行がこぞって国債の購入に走れば、当然国債の価格は上がりますよね。国債価格の上昇によって長期金利の大幅下落に繋がり、現在も10年国債金利はマイナスとなっています。
国債の価格が上がると金利が下がるのはなぜか
国債の価格と長期金利の関係は逆方向に動く理由を説明しておきましょう。
- 債券の価格が上昇すると長期金利は下落する
- 債券の価格が下落すると長期金利は上昇する
新聞やニュースは当たり前の前提として言ってますけど、その理由をちゃんと答えられる人は意外に少ないです。
ここで言う金利とは利回りを言います。投資した元本に対して投資の成果として得られる利益が年に何パーセントかという割合です。
例を挙げて説明します。
- 10年国債
- 額面金額100円
- 券面利率2.0%
国債の相場が100円の場合
毎年2円の利息が貰えますね。10年後の満期には100円の元本が返ってきます。
100円投資して毎年2円の利益ですから、運用利回りは年2%です。
国債の相場が95円の場合
額面100円の国債が95円に値下がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰える上に満期で額面どおり100円で償還されます。購入価格との差額である5円が値上り(キャピタルゲイン)として手に入ります。
95円投資して毎年2.5円の利益ですから、2.5÷95で運用利回りは2.6%です。
国債の相場が105円の場合
額面100円の国債が105円に値上がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰えますけど、満期で返って来るのは額面の100円だけです。購入価格との差額であるマイナス5円を値下がり(キャピタルロス)として被ることになります。
105円投資して毎年1.5円の利益ですから、1.5÷105で運用利回りは1.4%です。
債券の価格と利回りは逆方向に動くことが分かりますよね。
- 価格95円の利回りは2.6%
- 価格100円の利回りは2%
- 価格105円の利回りは1.4%
債券の価格と利回りが逆方向になるのはこういう理由です。では今の国債のマイナス金利はどのようにして起こったか?例を挙げて説明します。
国債の相場が130円になった場合
額面100円の国債が130円に値上がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰えますけど、満期で返って来るのは額面の100円だけです。
購入価格との差額であるマイナス30円を値下がり(キャピタルロス)として被ることになります。
130円投資して毎年▲1円の利益ですから、▲1÷130で運用利回りは▲0.77%ということです。
つまり、長期金利がマイナスということは、国債の価格が限界を超えて上がり過ぎて、買った時点で損が確定するほどまで価格が上がったということなんです。
固定金利の指標となる長期金利の動向を予測する
では、この国債の価格が今後どうなるか?
景気が上がれば、利回りの低い国債よりもビジネスへの投資に資金が流れます。そうすると国債の価格は下がりますよね。国債の価格が下がる=長期金利が上がるということです。
しかし、消費増税を当初の2017年4月から2年半延期したことは政府が以下の判断を正式に示したことを意味します。
- 今、消費税の増税をすると経済に回復不能なダメージを与えてしまう。
- いつ回復するか分からないが、少なくとも2019年10月までは回復の兆しが見えることは無いだろう。
これは、千日の予想ではありません。そしておそらくですが、安部首相の予想でもありません。安部首相のブレーンの予想です。ブレーンの予想ですが、安部首相の判断です。
新しい判断である。
安部首相は殊更に「新しい判断である」と強調していましたね。かつて「絶対に上げる」としていた公約を反故にしたことに対する言い訳だという見方が大勢を占めています。
一方でよっぽどの根拠となるデータを出されたというのもあるでしょう。
とは言え通常の判断として、延期する期間は短い方が良いはずです。本当の予想よりも少し短かめに期限を設定しているのではないでしょうか。
そういうことから予測すると2020年の前半までは長期金利の低迷は続くものと見込まれますね。上がる要素としては東京オリンピックの開会式でしょうか。
変動金利が当分上がらない理由
金利が上がるかどうか?より切実なのは既に変動金利を選択した人ではないでしょうか。お待ちかね、変動金利の説明です。
変動金利は『短期プライムレート』に連動します。
『短期プライムレート』はどうやって決まるかというと、銀行間で資金を融通するときに指標となる『市中金利』に連動します。
そして、『市中金利』はどうやって決まるかというと、日本銀行(日銀)が金融機関(銀行)にお金を貸すときに設定している『政策金利』によって決まります。
赤い矢印のところがリーマンショックの2008年9月15日です。それまでずっと0.5%だった政策金利はこれを境に0.1%になり、2016年の現在までずっと0.1%です。
政策金利はマイナス金利政策の前後で何ら変わっていないんですね。
日銀は2013年1月に物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これを早期に実現することを目指しています。マイナス金利政策も元はといえば、この目標を達成するための布石だったんです。
物価安定の目標値に達して経済が予想どおりに改善すれば利上げする。
では今どうなのかというと、0.9%といったところです。実質的に2%のインフレ目標の達成は困難だというのが大方の見方ですね。
ということは、今のところ利上げできる要素が無いんです。「これじゃ永遠に利上げ出来ないんじゃないか?」なんて言う専門家もいます。
変動金利の指標となる政策金利への影響は
政府が消費増税を当初の2017年4月から2年半延期したことに対し、日銀の佐藤審議委員は「財政の信認を確保する観点から、引き続き慎重な財政運営を心掛けてもらいたい」とコメントしています。
千日もこれには同意です。
公約で掲げ、法律でも景気条項を撤廃して「景気に関係なく2017年3月に消費税を増税する」と断言しておきながら「不景気になりすぎたらヤバい」という理由で延期しているんですからね。
新しい判断だといえば何でもアリか?
なァんて思っちゃいます。
日銀の金融政策運営については政府の財政政策との歩調を合わせるべきですが、こういう「軽い」政府の財政運営に同調するのは、かえってデメリットの方が大きいかもしれません。
いずれにしても、消費増税の延期自体は政策金利に直接影響するものではないですし、あくまで日銀が見ているのは、物価安定の目標である消費者物価の前年比上昇率なんですね。
変動金利が上がらないのはいつまでか
今のところは、上がる要素が無いです。インフレと好景気が同時に来るならその時期は固定金利に準じて考えることになります。
とすれば「2020年の前半までは上がる要素がない」というのが、一応の答えになるでしょう。やはりキーワードは「東京五輪」ということでしょうか。
ちなみに、千日はリーマンショックの2008年にマンションを購入し25年の変動金利で住宅ローンを組んでいます。2020年はだいたい折り返し地点ですね。
この予想どおりに行けば、変動金利に賭けたことはおおむね正解だったということになるでしょう。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。久しぶりに長文となりました。結果として固定金利も変動金利も同じような影響になるとしても、考える要素は異なります。
今回の政府の消費増税の延期によって、増税の財源で拡充される予定だった社会福祉や少子化対策については、縮小せざるを得ないということです。
この延期は代替となる政策の無い、単なる保留です。つまりこういうことです。
今よりも悪くなる政策を避けて2年半様子を見ようか。
良くも悪くも金利にはあまり影響しないんじゃないでしょうか。暫くは静観しましょうかね
- 2016年8月24日の閣議決定により住宅ローン関連の減税措置が2年半延長されたことを追記しました。
以上、千日のブログでした。
千日のブログでは住宅ローンやその税金をはじめ、マイホームのお金についての様々なお役立ち情報を公開しています。
これ以外にも変動金利と固定金利の選び方や住宅ローン控除などについて、分かりやすい表現で丁寧に解説するよう努めていますので、よろしければ読んでみてくださいね。
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