トランプ新政権での長期金利の上昇リスクに対応する住宅ローンの戦略
どうも千日です。2017年1月20日にトランプ新政権が誕生します。トランプ大統領が掲げる経済政策が実現した場合、日本は金利の上昇というリスクに晒されます。
2017年1月に入って住宅ローンの固定金利がじりじり上がってきているのは、それを既に織り込んでの動きです。
アメリカの景気の好転は日本にとって追い風にもなりますが、日本の景気が追いつかないまま、金利だけが上がってしまうとかなりキツい状況になるんですよね。
さしあたり2017年3月はマンションや戸建ての引き渡しが集中する時期です。それまでに金利にどれだけの動きがあるか?目と鼻の先のことですけど、誰にも読めないというのが現状なんです。
トランプ減税とフラット35
【金利予想】フラット35の2018年2月金利は少し上がって1.38%~1.40%でしょう←1.4%確定! - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える
トランプ経済政策の功罪
トランプ氏は経済政策に関して2つの公約を掲げています。
- 巨額のインフラ投資
- 大型減税
これには日本経済にとってのメリットA面とデメリットB面があります。
トランプ政策のA面
総額1兆ドルのインフラ投資が米国のGDPにもたらす直接的な効果は1%にも満たないそうです。しかし、米国のインフラ資産は1960年代~に作られたものが多く、老朽化が進んでいてこれを新しくすることによる今後の成長への起爆剤として期待されているんですね。
もちろん労働者の所得も増加し個人消費にプラスに働きます。
さらに大型減税(法人税率を35%から15%に下げる)が拍車をかけることになります。
半額以下ですよ!
企業の資金繰りは飛躍的に上がるでしょう。個人だけでなく企業も投資を拡大させる要因になります。
もちろんこれらの政策を実現するには、議会を通さねばなりませんので完全に実行されるかは不透明です。
しかし、こうしてアメリカの景気が良くなると、日本の自動車産業など北米市場を中心としている産業については業績の拡大が見込めます。
トランプ政策のB面
こうしてアメリカの景気が拡大すると、同時にドル高円安が進みます。詳しくはこちらをご一読ください。
黒田総裁はドル高円安を歓迎していると言っているんですけど、良いことばかりではないんですよね。
輸入品は高くなりますので、輸入企業、そして庶民の生活は苦しくなります。輸出企業に引っ張られて成長できるかどうか?というと、その間に一つハードルがある感じです。
また、トランプ氏はアメリカ・ファーストを掲げています。米国市場で企業業績が拡大しても、その利益が日本国内に還元されない可能性があるんです。
アメリカだけが良くなればイイじゃん。
この極端な主張が「支持されて」大統領に当選したことをゆめゆめ忘れてはなりません。
日本の景気が上がらないうちに円安が進行するとどうなるか?
日本の労働者の実質賃金はずっとマイナス成長が続いています。ブラック企業のベストランキング(ワースト?)なんてしょうもない企画が話題になるような状況なんですね。
こんな中で円安傾向が強くなれば、輸入食品を中心に値上げが相次ぎ、国内消費はさらに冷え込んでしまうでしょう。
さらに厳しいのが長期金利の上昇です。
既に住宅ローンの金利が上がり始めていますよね。まだ今は小数点第2位あたりの微増ではありますが、これが加速度的に上がって行くと、唯一といっていいほど好調だった住宅や設備投資も冷え込んでしまいます。
日銀によるイールドカーブコントロール政策の効果
その金利の上昇を抑えるために日銀は長短金利操作付き量的質的金融緩和政策を取っています。別名イールドカーブコントロール政策というものです。
日銀が長期金利を操作して、10年国債利回りを0%で安定させるというのが一番の特徴です。
- 短期金利については民間の金融機関が日銀に預けている当座預金の一部に-0.1%のマイナス金利を適用し続ける。
- 長期金利については10年物国債金利がおおむね0%で推移するように長期国債の買入れをする。
- 長短金利操作のために日本銀行が指定する利回りによる国債の買い入れ(指値オペ)をする。
- 民間金融機関に低利の固定金利で資金を貸し出す期間を従来の1年から10年に延長する。
太字の部分が、特に長期金利を操作するための施策です。
今のところ、上手く操作出来ていると日銀の黒田総裁は評価していますけど、それはまだまだトランプ相場というものが「期待先行」という側面が強く、本調子で上がろうとしているわけではないからです。
しかし、トランプ大統領の政策が実行された場合には、もはや日銀が介入してコントロールできないレベルの大きな流れになってしまうことは十分に考えられます。
フラット35の金利動向とメリット
2017年1月のフラット35の金利と10年固定金利が発表されました。15年~20年の短いフラット35の金利は0.01%下がり、21年~35年の長いフラット35の金利は0.02%上がりましたね。
これに対して10年固定金利は大手3行で0.05%上がりました。
フラット35の2017年1月金利
- 15年~20年 1.03%⇒1.02%
- 21年~35年 1.10%⇒1.12%
10年固定の2017年1月金利
- 三井住友信託銀行 0.45%⇒0.50%
- 三菱UFJ銀行 0.6%⇒0.65%
- みずほ銀行 0.775%⇒0.825%
主要銀行が金利を上げる中で、短い期間ではありますけど、下がったんですよ。全く逆方向に動いているのは驚くべきことです。
明らかに、これまでと違う動きになっているのです。
表面利率とは住宅金融支援機構がフラット35の貸出資金を集める機構債の利回りです。この表面利率と連動してフラット35の金利は推移してきました。
詳しくはこちらをどうぞ。
しかし、2016年12月から2017年1月にかけてはこの動きが逆なんですよね。
- 機構債の表面利率は12月0.41%から1月0.48%に上昇
- フラット35金利は12月1.03%から1月1.02%に下降
つまり資金の調達金利が上がったのに貸出金利は下げた訳です。
フラット35は国の出先機関である住宅金融支援機構が取り扱う住宅ローンです。つまりは国が損をかぶっているということですよね。
ですので、これからの先行きが不透明であるという状況では、フラット35も審査を通しておくことが保険になると私は考えています。
フラット35と銀行の固定金利の差
フラット35と銀行の固定金利ではどんな差があるか?を確認しておきましょう。
- 銀行の場合は団信保険料が無料ですけど、かわりに保証料が必要です。
- フラット35は保証料が無料ですけど、かわりに団信保険料が有料です。
ちょっとこれを比べてみたいと思います。
下記の表は1千万円借りた場合の団信保険料と保証料(三井住友信託銀行HP)の比較表です。
団信保険料よりも保証料の方が安いですよね。
団信保険料は借入残高に応じた元利均等分割払いで、保証料は一括前払いという違いはありますけど、保証料の方が安いのは明らかです。
この差額を金利に置き換えると0.2~0.3%です。
つまり、同じ金利であれば、フラット35よりも銀行の長期固定金利の方が金利にして0.2~0.3%おトクであるということになります。
ただし、それはあくまで同じ金利だった場合の話です。
今後のトランプ政権の動き、アメリカ長期金利の動きによってはこの位の金利差は軽く超えてくる可能性は十分にあり得る話だと思いますよ。
トランプ氏の就任は1月20日ですので、その後の金利の動きからは目が離せない状況です。
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まとめ~日本の財政に与える影響にも注意
トランプ景気の波及による長期金利の上昇ということを中長期的に見た場合、日本の景気回復のペースを上回る金利上昇は日本の財政に悪影響をもたらします。
フラット35の金利を低く抑えることは、税金で差額の損を賄うということです。また、さらに金利が急騰すると、国債の年間の利息費用の負担が重くのしかかります。
税収のほとんどが利払いに消えてしまい、事実上、政府は予算を組めなくなってしまうんです。景気が拡大せず、税収が増えない中での金利上昇は、日銀や財務省にとって最悪のシナリオになります。
国には『固定金利』なんていうオプションはありませんからね、しょうがないです。
ただし、政府が発行する国債には様々な償還期間のものが混在していて、金利が急に上がったからといって、すべての国債が高金利のものに入れ替われるには数年の時間的猶予があります。今の時点ですぐ困るということではありません。
でもこうした事情が背景にある限り、日銀や市場関係者は金利の上昇に対して神経質にならざるを得ないのです。
黒田総裁はそのあたりのことをどう考えているんでしょうね。ちなみに黒田氏の任期は2018年、来年です。まだもう一仕事残っている、というところでしょうか。
すんなり退任とはいかなさそうです。
- 2018年4月1日に三菱東京UFJ銀行が三菱UFJ銀行に行名を変更したのに伴い行名を更新しました。
以上、千日のブログでした。
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