日本の住宅ローンの金利を上げるFRBと食い止める日銀
どうも千日です。アメリカの利上げでフラット35の2017年1月金利は約0.07ポイント上がるでしょう。カッコ内は12月の金利です。
- 15年〜20年 1.10%(1.03%)
- 21年〜35年 1.17%(1.10%)
12月16日満期までの期間が10年の国債の利回りは一時0.10%という、およそ11カ月ぶりの水準まで上昇しました。
この国債金利の上昇の理由は、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が、追加の利上げを決定しアメリカの長期金利が上昇したことにつられる形で日本の国債の長期金利も上昇したためです。
これに伴って、住宅金融支援機構がフラット35の貸付財源として発行する機構債の利回り(表面利率)も上昇しました。
フラット35の金利はこの表面利率と連動するのでほぼ確実に来月の金利を予測することができるのです。
トランプ減税とフラット35
【金利予想】フラット35の2018年2月金利は少し上がって1.38%~1.40%でしょう←1.4%確定! - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える
目次
アメリカFRBの利上げとは
利上げとは「市場に出回ってるお金を引き上げて、景気に少しブレーキをかける」ということです。 つまりアメリカの中央銀行(FRB)は景気にブレーキをかけるために利上げをしたんです。
景気にブレーキをかける必要なんてあるの?
って思いますよね。分かりやすく解説します。
利上げの理由は過度なインフレの防止
景気が上がって人々の購買意欲が上がっている時に大量のお金が市場にあるとその国の貨幣の価値がどんどん下がってしまいます。同じモノを買うのに必要なお金の量が上がる状態です。
これをインフレと言います。
- 給与上昇=物価上昇となっていれば「正常なインフレ」です。上がった価格が人々の労働に分配されています。
- 給与上昇<物価上昇となった時が「過度なインフレ」で原材料や税金など、労働者の所得以外の部分が上がり、人々の生活を圧迫してしまいます。
あまりに景気の上昇スピードが速いと、過度なインフレになってしまい却って国民の生活を脅かしてしまうからなんです。
中央銀行が金利によって景気を操作する仕組み
各国には必ず一つ、自国の金融システムの中心を担う銀行があります。それが中央銀行です。日本の場合は日銀、アメリカの場合はFRBです。
中央銀行は政策金利の上げ下げを通じて、市中に出回るお金の量を調整しています。
景気が悪いときは利下げと量的緩和
景気が悪いときには、金利を引き下げてお金の流通量を増やします。金利が下がれば、みんなお金を借りて設備投資や住宅購入しますよね。
今の日本はゼロ金利政策といって、日銀はこれ以上金利を下げられないレベルまで政策金利を下げてます。そして物価上昇率を2%というインフレ目標を掲げているんです。
ゼロ金利というのは、これ以上景気が悪くなっても金利を引き下げることによって、景気の調整ができない最底ラインにいるという事です。
そこで日銀が打ち出したのが量的緩和という金融緩和政策で、国の発行する国債を大量に買い取り(代金は自分で印刷した貨幣)市中にお金を増やす方法なんです。
アメリカもついこないだまでそうしてました。
景気が良くなれば利上げ
逆に景気が良くなれば金利が高くします。みんなお金を借りることを控え、市場のお金の流通量が減る。これを通じて、過度なインフレ(物価上昇)を防ぐことができるのです。
これを金融緩和の反対で「金融引き締め」と言います。
つまりアメリカの景気はドン底から急激に良くなって来ていて、ブレーキをかけなきゃいけないレベルに来たと中央銀行が判断したということです。
さじ加減の難しい利上げ
利上げつまり「金融引き締め政策」というのは、景気の上昇に対してブレーキを踏むわけですから、慎重にならざるを得ません。すごくタイミングとさじ加減が難しいんです。
少しタイミングを間違えば、失敗します。
- 遅ければ、また、利上げが少なければ価格の上昇にブレーキがかからず過度なインフレになる。
- 早すぎると、また、利上げしすぎるとせっかく上向いた景気が減速し、不景気に逆戻り。
市場は生き物です。唯一完全な野生動物である人間による自然現象です。
どんなタイミングでどれくらい上げればベストかというのは、やってみないとわからないんですよ。
ともあれ、アメリカのFRBは今、このタイミングで利上げに踏み切ったという事です。
日本の住宅ローンへの影響
お待ちかね、日本の住宅ローン金利にどんな影響があるの?という話をしましょう。金融に国境はありません。
アメリカの利上げは日本の住宅ローンの金利に多いに影響するんです。
円が売られドルが買われる
アメリカの金利が低かったときはドルや米国債を持っていても、あまり旨味がなかったわけです。
企業や投資家は、多少リスクを取ってでも金利の高い新興国の通貨や国債に投資しそれが南米やアジアを中心とした新興国の経済成長にもつながってました。
しかし、アメリカが利上げをすると、危険を冒して新興国へ投資するより、ドルや米国債を持っていたほうがいいとなるわけです。
新興国からアメリカにお金が引き上げられ新興国は大きなダメージを被ります。もともとトランプ氏の政策はアメリカ国内経済を保護する事を強く掲げてましたから、大統領に就任後はさらに追い討ちとなるでしょうね。
人民元相場は急落し、中国人民銀行(中央銀行)は16日、人民元取引の対ドル基準値を1ドル=6.9508元と、前日の基準値より0.32%元安に設定しました。これは8年7カ月ぶりの元安水準だそうです。
みんなドルを欲しがり、ドルが強くなりドル高が進んでいます。
当然、日本に投資されているマネーの一部もアメリカに引き上げられるわけですから、円安ドル高が進むと言うことです。
12月16日の円相場は一時1ドル=118円台後半まで円安ドル高が進み、午前の東京株式市場で日経平均株価は9営業日続伸したそうです。
そして日本への投資と言えば、もちろん国債も含まれるんですよ。
日本国債が売られ国債価格が下がり長期金利が上がる
投資家が日本国債を売ってアメリカ国債を買うといつことになると、日本国債の価格が下がりますよね。
国債の価格が下がると国債の利回りが上がります。
債券の価格と利回りは逆方向に動くのです。
そしてフラット35の金利は国債の利回りに連動しますから、フラット35の金利が上がった訳です。
分かりやすく説明しますね。
金利とは利回りを言います。利回りとは投資した元本に対して投資の成果として得られる利益が年に何パーセントかという割合です。
- 10年国債
- 額面金額100円
- 券面利率2.0%
上記の前提で小学校の算数の知識で理解できるように、説明します。
国債を100円で買った時の利回り
券面利率は2%ですから、100円に対して毎年2円の利息を受け取ります。10年後の満期には100円の元本が返ってきます。
100円投資して毎年2円の利益ですから、運用利回りは年2%です。
国債を95円で買った時の利回り
額面100円の国債が95円に値下がりしている時に買えば、毎年2円の利息を受け取る上に満期で額面の100円が返ってきます。購入価格との差額である5円が値上り(キャピタルゲイン)として手に入ります。
95円投資して毎年2.5円の利益ですから、2.5÷95で運用利回りは2.6%です。
国債を105円で買った時の利回り
額面100円の国債が105円に値上がりしている時に買えば、毎年2円の利息を受け取れますけど、満期で返って来るのは額面の100円だけです。購入価格との差額であるマイナス5円を値下がり(キャピタルロス)として被ることになります。
105円投資して毎年1.5円の利益ですから、1.5÷105で運用利回りは1.4%です。
つまり債券の価格が下がると利回りは上がる関係にあるのです。
- 価格95円の利回りは2.6%
- 価格100円の利回りは2%
- 価格105円の利回りは1.4%
ただでさえトランプ氏への期待からアメリカのリスク投資が進み日本国債の人気が下がったところへ、アメリカFRBの利上げが拍車をかけたということですね。
さらに日本国債の人気は下がり、つまり価格が下がり、利回りが上昇したという訳です。
利上げを食い止める日銀の金利操作政策
アメリカの中央銀行はアメリカの国益を見ています。別に日本の住宅ローンを上げてやろうなんて考えていません。
中央銀行というのは、それぞれ自国の金融(景気)をコントロールすることが第一なんですよ。
そこで日本の中央銀行、つまり日銀ははどう動くのか?という問いへの答えが長短金利操作付き金融緩和政策です。イールドカーブコントロール政策ともいいます。
これは長期金利をおおむね0%で推移させるというものです。日本の景気は全く上がってませんから、アメリカの煽りを食って長期金利が上がって景気を悪化させてしまうことを何としても防がなくてはならないんです。
まさに今、千日のブログを読んでいる方は住宅ローンの金利が上がってしまうの?という不安からこの記事にたどり着いたのですから。
日銀の指値オペによる金利上昇抑制
日銀による金利操作(イールドカーブコントロール)は主に二つの方法で行われます。詳しくはこちらで分かりやすく解説しています。
要点だけ書き出しますと以下のようになります。
- 長期金利については10年物国債金利がおおむね0%で推移するように長期国債の買い入れをする。
- 長短金利操作のために日本銀行が指定する利回りによる国債の買い入れ=指値オペをする。
国債金利は週の初めに一時0.08%に上昇しましたが、日銀が14日に指値オペで10年超を増額し、次回のオペ実施日を予告する異例の措置を取ったことを受けて、いったん0.05%まで下がりました。
その後、米長期金利が2.6%台と2年3カ月ぶりの高水準を付けると、16日には一時0.10%と1月29日以来の高水準を付けるというシーソーゲームです。
このように、急速な金利上昇局面では日本銀行が抑制に動き、金融市場とのせめぎ合いになっているんですね。
黒田総裁には頑張って欲しいですね。
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まとめ〜ドル売り要素もある冷静な判断を
このように、一般論としてはアメリカの利上げは円安(ドル買い)⇒長期金利上昇となります。
しかし、
日銀のイールドカーブコントロールで急激な上昇は食い止められています。それに、実際に利上げが実施された今後ということで考えると、円高(ドル売り)⇒長期金利下落という事も考えられます。
- トランプ氏への失望と景気減速の懸念
- 反動の確定売り
第一はトランプ氏への失望と景気減速の懸念です。
今のアメリカ景気は期待先行なんです。トランプ氏への期待が失望に変わると景気は失速します。
また過熱している景気にブレーキを掛ける役割がある利上げですが、タイミングを間違えると上向いた景気が失速するんですね。
この懸念から株安・ドル売りに動くことも考えられます。
第二は利上げ観測からドル買いが進んだことによる確定売りです。「アメリカが利上げしそうだ」と伝わると市場では買いムードが広がり、その思惑からドル買いに振れます。
そしていざ利上げが実行されると思惑が結果に変わるため確定売りが殺到します。
トランプ氏への期待先行の米国景気ですから今のところは張り子のトラですし、実際に利上げが実施されたことで、ドル売りに傾斜することも十分考えられるということです。
必ずしも一方的なトレンド形成にはならないということです。
以上、千日のブログでした。
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