長期金利上昇にもかかわらず10年固定金利を据え置く理由
どうも千日です。三井住友信託銀行と三菱UFJ銀行がいち早く来月の2016年12月から適用する住宅ローンの金利を据え置くと発表したそうです。
これに対して、みずほ銀行は0.1%上げることとなりました。
2016年12月の10年固定金利(報道発表)
- 三井住友信託銀行10年固定 0.45%
- 三菱UFJ10年固定 0.60%
- みずほ銀行10年固定 0.8%
基本的にはトランプ氏の大統領当選以降、日本でも長期金利が9カ月ぶりの高水準を付けるなど金利が上昇しているため、特にフラット35などの超長期固定金利は0.07から0.1ポイント上昇しました。
フラット35の12月金利(住信SBI発表)
- 15年から20年 1.03%
- 21年から35年 1.1%
フラット35の金利は機構債の表面利率でほぼ決まるんですけど、銀行は利用者の獲得も考えて金利を決めているんです。
12月は4半期決算です。
3月の本決算に次ぐ売り時でもあることから、三菱UFJ銀行としては戦略的に金利を据え置いたのだと思います。
通常は月初に発表する金利をこの時期に発表したのには、そういう思惑があると考えて間違いないでしょうね。
一方、15年や20年といった長期の固定金利はそれぞれ年0.05%ずつ引き上げるそうです。つまり10年固定に誘導しようという意図です。
はたして、
私たちはこの金融機関の『誘導』に従ってよいのでしょうか?
10年固定を選ぶチャンス?
そんな10年固定金利タイプが良いか悪いかは、人によります。どんなタイプの人にマッチする(良い)かについてお話ししましょう。
そのポイントは10年固定のリスクです。
- リスクでメリットの方が多い人
- リスクでデメリットが無い人
こういう人が10年固定で得をする可能性が高いのです。
10年固定のリスクがメリットになる人
- 経済の動向や住宅ローンの金利情報を抜け目なく収集する情報にマメなタイプ。
- 今後の仕事でのキャリアアップ、収入アップに強いモチベーションがあるタイプ。
どちらかに当てはまるなら、10年固定のリスクをメリットに出来る人です。
当初固定金利とは、その一定期間は固定金利で、期間が終わるとその時点の金利水準で変動金利か固定金利になる金利タイプです。
一般的に当初期間が終わると優遇金利が大きく減ってしまいます。だいたい0.7%~1.1%のレンジで減ってしまいます。つまり、適用金利が上がるということです。
0.7%~1.1%上がるって、まさに今アメリカの長期金利の上げ幅位なんですよね。
ですから借り換えたり、金利の交渉をしたりするんですが、そういう時に自分の利益を最大化出来るような情報収集と交渉力が鍵になるんです。
今、銀行と交渉するのに気おくれしてしまうという人でも10年といえば10歳の少年が成人する期間です。
今よりも銀行に対する信用力は上がっていて、電器屋さんで家電を値切るような感覚で銀行と交渉出来るようになっているかも知れません。
値下げしないんだったら他行を利用するからイイよ。
てな感じです。
- 他行に借り換える。
- 他行への借換をちらつかせて優遇金利の交渉をする。
- 繰上げ返済して残高を減らし利息負担を減らす。
- 家を買い替える(一括返済)。
あえてリスクを取る金利タイプです。
トランプリスクを先延ばしにできる
また、同時に『今限定』でのメリットは、トランプショックで借りる当初固定金利の良い点は、トランプ大統領の不透明なリスクを一旦回避できることです。
大統領の任期は4年ですね。
5年以上の当初固定金利であれば、トランプ大統領の任期中の金利変動の影響を受けずに済むということですね。
三井住友信託と三菱UFJが12月に据え置いた10年固定金利ならば、変動金利と同じか、むしろ安い水準です。
10年固定のリスクにデメリットが無い人
- お金持ち。
リスクが高いというのは、あくまで一般的なサラリーマンの資産を前提にした結論です。例えば1億円の現金を持っている人が3千万円の住宅ローンを10年固定で組んだら?
リスクは低いです。
それだけ現金があるなら、借りなくてイイじゃん。
と思うかも知れませんが、住宅ローン控除があるので住宅ローンを借りた方がお金が儲かるという理由でそうしているお金持ちも多いのです。
銀行の思惑は10年後への布石
では三井住友信託と三菱UFJが10年固定に誘導したい理由は何でしょう?つまり、銀行にとってもメリットがあるという事です。
固定期間は銀行にとってはリスクです。
10年固定はその固定期間が10年あるんです。その間はハッキリ言って赤字覚悟です。
10年固定には5年ルール、125%ルールという規制が無い
変動金利には金利変動リスクがありますよね。しかし5年ルールと125%ルールで、量の面では固定されています。
法律によって規制されている、変動金利返済の共通のルールです。変動金利は金利が上昇したらすぐに毎月の返済額が増えるんじゃありません。
- 5年ルールとは、金利が変動しても5年は元利均等返済額を変えないというルールです。
- 125%ルールとは、1度に上げる元利均等返済額は125%を上限とするというルールです。
10年固定は、変動金利じゃないですから、当初期間が終わった時点でその時の金利による支払いを請求出来るんです。
ですから、11年目からが銀行にとっては、やっと儲けられる期間ということですね。
ちなみにですが、新生銀行の変動金利(半年型)という金利タイプは、要注意です。『変動金利』といいながら、千日のブログでいう一般的な変動金利とは違い、5年ルールと125%ルールがありません。
また、新生銀行の「当初借入金利」および「住宅ローン基準金利」は、指標とする市場金利があるものではなく、特定の市場金利には必ずしも連動しません。
毎月見直しを行い、ローンの貸出資金を銀行が調達するために必要な資金コスト、当商品の審査・販売に必要な営業コスト、収益および金融情勢等を勘案し、独自の判断で決定されます。
早い話が、本当に銀行が自由に変えることが出来るタイプなんです。
新生銀行は手数料が安いことで目が行きがちですが、こういうちょっと普通とは違う金利タイプの設定なんですよ。
高い金利を払い続ける利用者を囲い込む
むろん11年目で一括返済されたり、他行に借り換えられたらまるまる損です。
しかし、
- 10年後に一括返済する金持ちは少ない。
- 借換にはコストがかかるので、他行の金利が少し安い位では借換えない。
だいたい借換に50万円位かかるとします。
50万円というと、残り20年で残高1000万円だった場合は金利で0.5%位に相当します。
ということは、他行と0.5%を超える差をつけられなければ乗り換えられないんですよね。
まだ借換はできないな…
そして、時期を待っているうちに、初めは金利動向に敏感だった利用者も、住宅ローンの支払いに慣れていく。
つまり銀行にとっては、高い金利で払い続けてくれる利用者の囲い込みに成功する。というのが、銀行の描いているシナリオです。
Sponsored Link
まとめ
いかがでしたでしょうか。12月に引渡しの人は結構多いと思います。当初から10年固定にしようと考えていた人にとっては朗報ですね。
ただ、気を付けたいのは、15年固定や20年固定、フラット35にしていた人が安い10年固定に流されることです。
- 15年固定を10年固定にする=5年間の金利変動リスクを新たに負う。
- 20年固定を10年固定にする=10年間の金利変動リスクを新たに負う。
こういうことですよね。
0.05%の金利の増加がそれに十分に見合うものなのか?ということをシミュレーションしてじっくり考えることをお勧めします。
- 3千万円を20年借りて0.05%金利が上がると約15万円(月平均625円)です。
- 3千万円を30年借りて0.05%金利が上がると約23万円(月平均638円)です。
当初の計画を変更するほどの金利上昇だとは、思えませんよ。
- 2016年11月30日にフラット35の12月金利に更新しました。
- 2018年4月1日に三菱東京UFJ銀行が三菱UFJ銀行に行名を変更したのに伴い行名を更新しました。
以上、千日のブログでした。
トランプ特集
お勧め記事
- 住宅ローン金利タイプの決め方〜素人が白紙から住宅ローンを選ぶ方法を解説します
- 住宅ローンを借りるなら引渡しと融資実行日は月末にすべきたった1つの理由
- トランプ相場中の住宅ローン本審査は複数の銀行で通しておくべきたった1つの理由
今後の住宅ローン金利の動向について
- トランプ後の住宅ローン動向~今後の借換の考え方、固定か変動かを決める考え方に答えます
- 2017年〜2018年度の住宅ローンは固定か変動か?
- 住宅ローン金利の本当の決まり方について誰よりも分かりやすく解説します
住宅ローンを借りる銀行の選び方
住宅ローンのリスクに備える
- 住宅ローンの火災保険に地震保険は必要か不要か?に答えます
- 住宅ローンで破産する人が増えている?ので破たんしないコツを教えます
- ペアローン、収入合算、クロスサポート 住宅ローンの連帯保証の重い責任
- 住宅ローンの団信に疾病保障を付ける?きれいごと抜きに答えます