日銀の金融政策決定会合と今後の住宅ローンフラット35金利の読み方
どうも千日です。8月発行の機構債の表面利率が本日発表されました。前月の0.44%から0.02%上昇して0.46%ですね。なので基本的には7月の金利よりも上がりそうだというのが大方の予測です。
ただ、一方で本日20日は日銀の金融政策決定会合が開かれており、今後の住宅ローン長期金利の動向を予測する上で見過ごせない情報が出ています。
いつになく、前置きが長くなりましたが、8月のフラット35は案外横ばいもあり得るな…と思っています。機構債の表面利率はあくまで機関投資家を相手に幾らの利回りで債券を販売するかという値段なんですよね。
そうやって集めた資金でフラット35を貸すのですが、その金利を幾らにするかというのは住宅金融支援機構の思惑、ひいては国の政策が影響してくるのです。
こちらでは、当面の間はフラット35(21年~35年)の金利を1.1%以下に抑えたいという国の思惑があるのではないか?と推測しています。だとするならば、上がったとして0.01%増位に抑えられるのではないでしょうか。
- 10年~20年:1.03~1.04%(7月は1.03%)
- 21年~35年:1.09~1.10%(7月は1.09%)
大方の予想には、反してますけどね。
結果はこちら、10年~20年は的中しましたが、21年~35年は外してしまいました。
- 10年~20年:1.04%(7月は1.03%)
- 21年~35年:1.12%(7月は1.09%)
予想というよりは期待に近かったものですが、これより後に書いている政府の「調整」が入らなかったということかなと思います。
青字は2017年7月29日追記
7月20日の金融政策決定会合では物価上昇予測を下方修正
日銀は7月20日の金融政策決定会合で、物価上昇2%達成時期を2018年度ごろから1年延長して2019年度ごろに先送りしました。物価目標達成時期を先送りするのは昨年11月の会合以来のことだそうです。
日本銀行は2013年1月に、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するという約束をしてるのですが、目標とする時期はここのところ年々先延ばしになっているんです。
今回、2019年度となったことにより、黒田総裁の任期中には達成できないということになります。金融緩和政策に対して、物価上昇が思うように進まない原因としては、人々の間にデフレマインドが根強く残っており、企業が価格引き上げに動きにくいことを挙げています。
2%の物価上昇率なんて、そもそも実現不可能な目標じゃないか?
専門家の中には、2%の物価目標そのものが、日本経済の実力や国民の物価観との対比で明らかに高すぎると指摘している人もいます。
出来もしない目標の早期実現を目指している。
目標達成見込みのタイミングはエンドレスに先延ばしされるだろう。
こんな皮肉を言ってるんです。市場関係者の見方も大方がそんな感じだとすると、当分の間は日本の景気は上向かないという見方が優勢だということですね。
加えてこれまで黒田総裁の案に反対してきた佐藤、木内両委員が今回の会合を最後に退任することで、今後の金融政策を巡る議論が一層盛り上がりを欠き、形骸化してしまうのではないかと警告しています。
また、2018年4月2日の黒田東彦総裁の退任後は日銀が柔軟な物価目標に転換してくる可能性があるという予測もされているようです。
つまりもっと実現可能性のある目標に下げてくる可能性があるということです。
金融緩和政策は現状維持
これに対して、金融緩和政策については今後も現状を維持していくことが決定されました。
- 長期金利の操作目標は「ゼロ%程度」で据え置き。
- 金融機関から預かるお金の一部につけるマイナス金利は年-0.1%で据え置き。
- 国債を買い増すペースも従来通りの年約80兆円をめどに据え置き。
現在日銀が採用している金融緩和政策はイールドカーブ・コントロール政策です。イールドカーブっていうのは、期間(横軸)と利率(縦軸)の関係をグラフのカーブで表したものです。
- 長期間の金利は高く
- 短期間の金利は低く
こうした、適切な金利だとグラフがイイ感じのカーブを描くということなんですよね。ちなみに日銀が頭に描くイールドカーブは下グラフの点線の曲線です。
- 短期金利は-0.1%
- 長期(10年)の金利は0%
こんな感じになるように、国債市場に介入して国債の価格をコントロールしようとしているんです。
イールドカーブ・コントロール政策の副作用
このイールドカーブ・コントロール政策で金利の変動が乏しくなり、債券や金利先物での取引が減少しているそうですね。収益のうまみがなくなったことで取引を仲介する金融機関が事業を縮小しており、市場のプロたちの間にもリストラの不安が広がってきたそうです。
黒田総裁の政策に批判的な専門家というのは、つまりは市場のプロでもあります。自分たちの仕事の場と利益を奪う日銀の政策に対して、面白く無いという感情があるのは確かでしょう。
イールドカーブ・コントロール政策によって金利をコントロール出来てはいても、同時にそのことが市場と日銀との間の溝にもなっている。なんとも皮肉な状況ですね。
また、市場関係者が日銀の目標に対してケチをつけたところで、彼らには一銭の得にもならず、かえって今のこの閉塞感を助長しているだけのように見えます。
フラット35金利の推移と8月の予想
では、ここまでのフラット35金利の推移と8月の予想を行いましょう。
住宅ローンのフラット35は住宅金融支援機構という国が運営する団体が債権を買い取る又は返済を保証するという形になっています。
そして、住宅金融支援機構は金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債(RMBS・住宅ローン債権担保証券)」という形で販売します。
図の青い矢印がお金の流れです。機構債の利率は住宅金融支援機構にとってはフラット35の貸付資金を調達するための必要経費ということですね。
ですから、以下の式でフラット35の金利が決まるのです。
- フラット35金利=機構債の表面利率+機構の利益率(必要経費)
そして、2016年5月から現在までのフラット35金利と表面利率と機構の利益率の推移は以下のようになっています。
年月 | フラット35金利 | 表面利率 | 利益率 |
---|---|---|---|
2016年5月 | 1.08% | 0.34% | 0.74% |
2016年6月 | 1.10% | 0.36% | 0.74% |
2016年7月 | 0.93% | 0.23% | 0.70% |
2016年8月 | 0.90% | 0.19% | 0.71% |
2016年9月 | 1.02% | 0.33% | 0.69% |
2016年10月 | 1.06% | 0.37% | 0.69% |
2016年11月 | 1.03% | 0.34% | 0.69% |
2016年12月 | 1.10% | 0.41% | 0.69% |
2017年1月 | 1.12% | 0.48% | 0.64% |
2017年2月 | 1.10% | 0.46% | 0.64% |
2017年3月 | 1.12% | 0.47% | 0.65% |
2017年4月 | 1.12% | 0.46% | 0.66% |
2017年5月 | 1.06% | 0.40% | 0.66% |
2017年6月 | 1.09% | 0.43% | 0.66% |
2017年7月 | 1.09% | 0.44% | 0.65% |
直前の7月については、機構債の表面利率が0.44%で利益率が0.65%でフラット35の金利は1.09%です。
ならば8月の機構債の表面利率が0.46%に上がったことで、利益率がそのまま据え置き0.65%ならば、フラット35の金利は1.11%ということになりますね。
国はフラット35の金利を1.1%以下に抑えたい
しかし、国債金利がマイナスだった2016年5月6月と最近の2017年6月7月で機構債の表面利率と機構の利益率を並べると以下のようになります。
機構債が上がっても機構の利益率を下げることで1.1%以下に維持させようとする「意思」が見て取れますよね。機構債の表面利率は次回債情報(月次)住宅金融支援機構で毎月中旬に公表されますので、こうした分析は誰でも出来るようになっています。
なので、機構債の表面利率が上がる局面では、フラット35の金利を1.1%以下に抑えようとする方向に働くという仮定がとれるわけです。
前半の日銀の政策に見るように、国として金利を低位に安定させて景気の上昇を目論む方針であるならば、機構債の0.02%の上昇に対して利益率を下げることでフラット35の金利は1.1%以下に抑えられるはずです。
つまり、こういう予測になるんです。
年月 | フラット35金利 | 表面利率 | 利益率 |
---|---|---|---|
2016年5月 | 1.08% | 0.34% | 0.74% |
2016年6月 | 1.10% | 0.36% | 0.74% |
中略 | 中略 | 中略 | 中略 |
2017年6月 | 1.09% | 0.43% | 0.66% |
2017年7月 | 1.09% | 0.44% | 0.65% |
2017年8月予想 |
1.09% ~ 1.10% |
0.46% |
0.63% ~ 0.64% |
結果どうなるのか?期待と不安で一杯ですが、来月、このエントリーで答え合わせをします。
10月以降のフラット35にも注目
知らない人も多いと思いますが、2017年10月1日の申し込みからフラット35の団信が大幅にリニューアルされることにともなって、フラット35の金利の表示も大きく変わります。
- 団信保険料は実質値下げ。従来年一回ローン残高の0.358%を払う方式だったが、今後はフラット35の金利に0.28%上乗せとなり毎月の返済と一緒に支払う。
- 住宅ローン残高がゼロ円になる保障の範囲は拡大。従来高度障害と死亡が条件だったが、今後は身体障害(身体障害者福祉法1級or2級)についても保障の範囲に含まれる。
団信が金利に上乗せとなるというのは、住宅金融支援機構のパンフレットにも書いてあるのですが、それが0.28%であるというのは、千日が機構に電話で聞いてやっと聞けた内容です。
あくまでパンフレットの時点の金利を前提にしたものです。
こんな説明でした。ちょっと奥歯にものが挟まったような言い方です。
団信がリニューアルしてからしばらくは、これまでの機構債の表面利率+利益率+団信0.28%という式で予測と実績を比較していくことになると思いますが、その過程で意外な事実が見えてくるかもしれませんね。
今後も、この千日のブログでフラット35の金利予想をしていきますので、たまにのぞいてみてください。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
たまにはエッセイ的なブログを読みたいというリクエストがあって、ぼちぼち書きましょうと答えた矢先の記事でございます(笑)。ごめんなさい。
今日はいつもの美容師さんのところで髪をカットしてきまして『もうフリーなんですから、ブログと同じ金髪にしてもイケるんじゃないですか?』なんて言われましたが、毛根に悪そうなので遠慮しました。
エッセイについては一つ温めているネタがあります。どうか気長にお待ちいただきますよう、お願いいたします<(_ _)>
2017年7月20日
フラット35のお勧め利用法のカテゴリー
千日の住宅ローン無料相談ドットコムで一般の方からのフラット35の質問に答えています