仕訳を考える時間を短縮する秘訣
どうも千日です。簿記3級の検定試験で時間が足りなくなるという人は多いですね。特に試算表や精算表の問題ではこんな悩みをかかえていませんか?
- 貸借が合わなくて、時間がかかってしまう
- 電卓のミスで集計に時間がかかってしまう
- 仕訳を下書するのに時間がかかってしまう
実のところ、時間が足らなくなる原因は、圧倒的に仕訳に時間がかかっているからです。電卓での集計や下書きじゃありません。
仕訳で悩んでいる時は脳は全力で仕訳を考えていますから、時間の経過を感じていません。
これに対して、電卓を叩いて集計している時は脳を使っていませんから、時間の経過を感じるんです。
電卓を速く正確に打つより、仕訳を速く正確に切る方が合格の近道です。
今日は、仕訳のスピードアップさせる(簡単に切る)コツとその重要性についてお話ししますね。
仕訳をスピードアップする会計的な思考とは
まずどうして仕訳に時間がかかるか?に答えます。簿記の初心者が仕訳を切るまでの思考プロセスは以下のように、2段階になっています。
- 問題を読んで理解する。
- それから仕訳を考える。
簿記の試験問題って、国語の問題みたいなところがありますよね、言い回しが独特で。しかし、文章表現にはパターンがありますのでそこは慣れです。
ここで、会計の実務家が仕訳を切るまでの思考プロセスは、以下の1段階です。
- 取引を理解する=仕訳
つまり思考と仕訳が一致すれば、今の半分以下の時間で仕訳を切れるんです。経理担当者にとって、取引を理解したということは、仕訳が切れたということを意味します。
取引を理解するということは、貸借対照表と損益計算書にどんな増減をもたらすか、を理解するということです。
もう少し分かりやすく説明しましょう。
常に頭の中にB/SとP/Lをイメージ
まず、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)についてお話ししておきましょう。下図のような会社の決算資料です。
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)とは財政状態を表す書類です。英語ではバランス・シート(Balance Sheet)、略してB/Sと呼ばれます。
- 左に資産=現金や債権や備品の一覧
- 右に負債=借金や義務の一覧
- 差額としての純資産
- 左に費用=経費など純資産を減らす事の発生の一覧
- 右に収益=売上など純資産を増やす事の実現の一覧
仕訳=B/SとP/Lの数値を増減させること
そして、仕訳とはこの貸借対照表と損益計算書(B/SとP/L)の各数値に取引の効果を反映させることを意味します。
つまり、取引に応じて数値を増加させたり減少させたりするんです。
金額の増加と減少は左と右で表現します。左は借方(かりかた)、右は貸方(かしかた)と呼ばれます。
- 借方項目を増やすなら借方に
- 貸方項目を増やすなら貸方に
- 借方項目を減らすなら貸方に
- 貸方項目を減らすなら借方に
増やしたければ同じ方向に記帳し、減らしたければ、逆方向に記帳するんです。
ここまでは、少しでも簿記をかじった人にとっては当たり前の常識です。しかし仕訳をするときにB/SとP/Lへの影響を都度イメージ出来ている人は意外と少ないです。
いくつか例を示してやってみせますね。
5万円のパソコンを現金で購入した
ここではパソコンは資産とします。現金は資産です。
『会社の現金という資産がパソコン(備品)という資産に姿を変えた』と考えるんです。
B/SとP/Lをイメージするとこうなります。
資産の内訳が変わるだけで、その他の項目には全く影響しないですね。
増加と減少を借方と貸方で表します。
- 貸借対照表の現金が5万円減→貸方
- 貸借対照表の備品が5万円増→借方
- (備品)5万円 /(現金)5万円
電気代1万円の請求を受けた(翌月払い)
電気使用による費用の発生です。この費用を翌月に払わなければならない義務があります。
『電気代(水道光熱費)という費用が1万円発生し、負債となっている』と考えるのです。
B/SとP/Lをイメージするとこうなります。
資産はそのままで、未払金という負債が1万円増えると差額としての純資産が1万円減ります。純資産を1万円減少させた理由は、水道光熱費1万円の発生ということです。(赤の点線矢印)
増加と減少を借方と貸方で表します。
- 損益計算書の費用が1万円増→借方
- 貸借対照表の負債が1万円増→貸方
よって仕訳は
- (水道光熱費)1万円 /(未払金)1万円
いかがでしょうか?面倒だと思われるかもしれませんね。面倒だと思うのはまだ会計的に取引が理解出来ていないからです。
B/SとP/Lで取引を把握出来ていれば『仕訳で迷う』ということは無くなります。また間違えたとすれば、それは仕訳のミスではなく、取引を勘違いしたということです。
下書きはT勘でなく仕訳を書くのが実務向き
試算表や精算表の問題を解く時に仕訳を下書きしますけど、そのやり方には2通りありますね。
- 仕訳を順番に書いていく方法
- あらかじめT勘を書いて記入していく方法
仕訳を順番に書いて行けば、後から間違いないか検証するのに向いてますが、電卓で科目ごとの集計をする時に科目があちこちに分散してますからやり難いです。
あらかじめT勘を書いて記入していけば、電卓の集計はスムーズです。しかし仕訳がバラバラになりますので後から検証するのには向きません。
それぞれ一長一短あるのでどちらか自分のやりやすい方で、というのが定説ですが、千日の考えは違います。
きょうび、集計作業は会計ソフトがやってくれるんですよ。人間に求められる技能とは何か?を考えれば自ずとどちらで習得するべきかが決まります。
下書きは仕訳を順番に書いて行く方法で慣れましょう。
例では勘定科目をフルに書きましたが、下書きでは売掛金なら『売×』、受取手形なら『受手』など簡略して書いて時間短縮します。でなければ、手の方が頭に追い付きません。
暗記ではなく思考と仕訳を一致させるトレーニング
重要なことは、仕訳のパターンを暗記することではなく、思考と仕訳を一致させることです。
3級も2級も1級も仕訳のルールは同じです。取引の種類が一般的なものから特殊なものになっていくだけです。
千日がかつて簿記を勉強していた頃、長い間、暗記してましたね。そしてそのまま1級の勉強まで進んでしまいました。
1級は90分の制限時間ですが、やはり時間が足らなかったです。しかし、このような思考を手に入れてから1級を受けた時は、僅か30分で解き終わってしまいました。
世界が変わります。もっと早くこういうことを分かって勉強していたら…と思いましたが後の祭りです。まあ結果的には出来たのでヨシとしましょう。
同じように反復して試算表の練習問題を解いても、脳にそういうトレーニングをさせている人とただ暗記している人では雲泥の差が生じるんですよ。
まる暗記したことはいつか忘れます。
しかし思考方法として身に付けたものは忘れません。普段和食中心の日本人でもナイフとフォークを逆に持つ人は少ないですね。
実務家の脳を手に入れて、ビジネスマンとしての思考をバージョンアップさせるのが、簿記を学習する目的です。結果は後からついてきます。
まとめ
時は金なり
という言葉がありますね。検定試験の勉強は多少なりとも時間を使います。
限りある人生です。簿記の勉強などよりもっと楽しいことや、好きなことをして過ごした方が満足度は高いでしょう。つまり時間は命そのものでもあります。
そんな時間を使って簿記を勉強することは、2通りの仕訳に表すことが出来ます。使うのは時間という資産ですから貸方ですね。
では、借方は?
- 費用=暗記して検定試験の後忘れてしまう
- 資産=身に付けて実務家の脳を手に入れる
借方を費用にするか、資産にするかは自分のやり方にかかっているんです。一般的に言われる3級の学習時間を50時間とすると、こうなります。
(実務家脳)∞/(時間)50h
以上、千日のブログでした。
簿記3級の学習法については、こちらの記事も参考になると思います。
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テキストや専門学校では教えないシビアなエピソードも。