統一的な基準による地方公会計のポイント
どうも千日です。
平成27年度から平成29年度までのわずか3年間で全ての地方公共団体が統一的な基準による財務書類等を作成することとされています。
その統一的な基準による財務書類等とは民間企業と同じ複式簿記によるものとされています。
統一的な基準による地方公会計マニュアル
総務省は平成27年1月に『統一的な基準による地方公会計マニュアル』を公開してます。
前回の記事では『上手くいくのかな?』という所で終わってました。是非とも上手くいって欲しいです。
- 少子高齢化
- インフラの老朽化
今後確実に働き手が減って税収は減り、老人の医療費、インフラを維持するためのコストは増加していきます。
先細りとなる税収でインフラを維持していくことが喫緊の課題になっているんです。
今後、シリーズとして『統一的な基準による地方公会計マニュアル』の中から制度の重要な部分を中心に記事を書いてみたいと思います。
まずはマニュアルの財務書類作成にあたっての基礎知識より、1.単式簿記と複式簿記からです。
公会計の複式簿記=ストック情報の蓄積です
- 単式簿記では取引の記帳を現金の収支として一面的に行う=官庁会計
- 複式簿記では取引の記帳を借方と貸方に分けて二面的に行う=企業会計
従来の地方公共団体の会計は単式簿記でした。その年度の納税額を何に幾ら使ったのかという公金の適正な出納がなによりも優先されたからです。
1億円を使って建物を増築した
単式簿記では現金△1億円という記録になります。建物増築によって建物の価値が増えたことは帳簿上無視されるんです。
複式簿記では現金△1億円と建物+1億円という記録になります。取引には常に表裏二つの面があるという考え方です。原因と結果でも良いです。
複式簿記によって税金を1億円使ったというフロー情報だけでなく、建物が1億円増えたというストック情報も記録出来ます。
- フロー情報=税金を1億円使った
- ストック情報=建物が1億円増えた
フロー情報はその年度の現金出納です。フローとは流れです。翌年にはまた新たな現金の出納があるのでゼロスタートです。これが今までの官庁会計です。
ストック情報は建物の+1億円です。ストックとは蓄積です。これは翌年はゼロになりませんよね。複式簿記ではストック情報も記録出来るのです。
新公会計制度の複式簿記は大きな変革です
ここ迄の説明で従来の官庁会計からとても大きな変革がされるんだということがお分かり頂けたでしょうか。複式簿記によるストック情報。これが大きなポイントで、ストック情報の為にやっているようなものです。
ストック情報の把握=固定資産台帳
例として挙げた建物は『固定資産』です。地方公共団体では道路や水道管などのインフラが大部分を占めるでしょう。
先に挙げたインフラの老朽化に対して適切な時期に適切な金額でメンテナンスをしていく為に、
- 何を(固定資産の種類)
- どこに(住所や位置)
- いつ(年月日)
- いくら(金額)
使ったのかという情報を蓄積していく必要があるのです。この機能を有する情報が『固定資産台帳』というものです。
ストック情報による検証機能
また、複式簿記によって作成される財務書類等の一つに貸借対照表があります。貸借対照表は会計年度末の資産、負債及び純資産の一覧表です。
例えば、貸借対照表の建物の金額と固定資産台帳の建物の合計額は一致するはずですよね。
このように相互を照合することでどちらかの誤りを発見して修正するという検証機能も期待されているんです。
従来は公有財産台帳等と現物を照合していたのですが、公有財産台帳には金額情報が無かった。
一方、固定資産台帳には金額情報があるので、現物の照合に加えて金額の照合も行えるんです。
住民として理解しておきたい部分
このような取り組みを読者様のお住まいの地方公共団体(都道府県、市町村)で平成29年度までに行うことと決まってます。
複式簿記によって蓄積されるストック情報を上手く活用出来るか、無用の長物となってしまうか……なにぶん初めてのことですので誰にもわかりません。
しかし、私達の住んでいる地域の今後10年後、20年後の街並みを、良くも悪くも変えて行くかもしれない動きの一つです。
大阪市の梅田地下道拡幅工事によって退去の決定した串カツ『松葉』。昭和17年の地下道開通後60年を超す歴史に幕を閉じた。
あまり一般ウケするテーマではありませんが、誰にも無関係ではないのでボチボチ更新して行こうと思います。
以上、千日のブログでした。
ピックアップ
新地方公会計制度カテゴリー