変動と固定どっち?数字を知り尽くしたプロが勧める選び方
どうも千日です。住宅ローンの金利タイプを変動金利・固定金利のどちらにすべきか?実に悩ましい問題です。住宅ローンの契約は引渡しのタイミングで金利が決定するので、ギリギリまで悩むんですよね。
下手したら住宅を選ぶよりも悩むのが住宅ローンの金利タイプ、変動か固定かです。住宅ローンを借りるのは最長35年、短い人でも15年位の期間です。
10年以上先の未来はまず誰も予測できません。
例えば、初代iPhoneの発売開始は2007年6月29日、現在から遡ること10年以上前です。iPhoneが出てくるまではパカパカのガラケーが席巻してました。
スマホが出る前の2007年に誰が現在のスマホ社会を予想出来たでしょうか?
住宅ローンの金利タイプを決めるのは、高さがわからず、下がどうなってるかもわからない崖から飛び出すのに似ています。
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変動金利と固定金利の本質的な解説
変動金利と固定金利、いったい何が違うのか?もちろん金利が違いますけど、決断するときの軸にするべき違いということを知らない人が多いです。
- 変動金利は銀行が必要に応じて金利を変動させることが出来る金利タイプ
- 固定金利は借入期間に亘り金利を固定する金利タイプ
例えば10年固定なんていうローンの金利タイプがありますが、これは変動金利です。
当初の10年間は金利が固定され、10年経過後は変動金利になるか、改めてその時点の金利水準で固定金利を選択するかを選ぶタイプですね。
10年固定は正確な表現ではありません。借入期間に亘ってずーっと金利が固定しているものだけが固定金利なんです。あえて千日流の表現をするなら10年経過後変動金利です。
金利変動リスクをどちらが負うか?
- 変動金利=金利変動リスクを自分が負う
- 固定金利=金利変動リスクを銀行が負う
債務者と銀行のどちらが金利変動リスクを負うかがポイントです。
変動金利は、銀行は自分が借りる時の金利よりちょっと高く住宅ローンの金利を設定して、リスク無く確実に利ザヤを得る(儲ける)ことが出来るのです。
これに対して、固定金利は最後まで金利を変えない金利タイプです。
銀行が貸す金利は一定ですから、場合によっては銀行が逆ザヤになる(損する)可能性もあります。
先に述べた「10年固定は変動金利だ」という理由はこのリスクの側面から斬ると明らかですよ。
- 予測出来る始めの期間は現在の金利水準で銀行が利ザヤを取れるような金利で固定する。
- 予測出来ない後半の期間はその時になってから銀行が利ザヤを取れるような金利を決める。
ね?金利変動リスクはどちらにあるかは自明ですね。利用者である我々がリスクを負っているのです。だからこれは変動金利なんです。
固定の期間にリスクをヘッジできますが、それが終わった時点のリスクに対しては、利用者が準備しておく必要があります。
今さら聞けない2018年までの金融緩和政策と住宅ローンの金利
住宅ローンの変動金利は、日銀が民間銀行に貸す短期金利の影響を受けると言われています。これは銀行の銀行である日銀が短期金利を操作することによって景気を操作する(金融調節)ということが伝統的に行われてきたからです。
- 不況の時は短期金利を下げてみんながお金を使いやすくする。
- 景気が良くなったら短期金利を上げてお金の使い過ぎにブレーキをかける。
政府は景気を良くするために投資や消費を促進したいときは政策金利を下げます。これが金融緩和というものです。反対に景気の過熱を抑制したいときには投資や消費をしにくくするために政策金利を上げる(金融引き締め)というものです。
今の激安の変動金利は、この2008年のリーマンショックの金融緩和からスタートしているんです。
リーマンショックからずっと今まで金融緩和政策が続いている
赤い矢印のところがリーマンショックの2008年9月15日です。それまでずっと0.5%だった政策金利はこれを境に0.1%になり、2018年の現在までずっと0.1%なのです。
何を隠そう千日もこの時期に変動金利で住宅ローンを組みました。その当時で0.975%です。
安くなったといっても今の倍位の金利ですよね。 リーマンショックのデフレ不況は根が深く、短期金利を0.1%まで下げても全く浮上する兆しが見えませんでした。
これ以上短期金利を下げたらゼロ%になってしまいますから、もはや短期金利で景気を操作するという伝統的な方法では、にっちもさっちも行かなくなってしまったわけです。
そこで登場したのがアベノミクスです。
アベノミクス、リフレ派政策の成果
アベノミクスとは、安倍首相の名前とエコノミクスとかけ合わせた造語です。
- 財政出動
- 金融緩和
- 成長戦略
という「3本の矢」で、長期のデフレを脱却し、経済成長を目指すものです。
3本の矢のうち、住宅ローンの金利に直結する「金融緩和」を担うのが日銀の黒田総裁です。
アベノミクスの理論的な柱になっているのが経済学で『リフレ派』と呼ばれる人達の考え方です。リフレ派は、緩やかな物価上昇を継続することで、デフレの不況を脱して経済成長を達成できるという立場の経済学者のグループです。
日銀の黒田総裁は、緩やかな物価上昇率(年に2%)の目標を定め、それを達成するまで世の中に出回るおカネの量(マネタリーベース)を増やすために行ったのが「国債の大量買入れ」「マイナス金利政策」「イールドカーブ・コントロール政策」という3つの金融緩和政策です。
国債の大量買入れによって物価が上昇に転じ、長く続いたデフレを脱却出来たという分析結果が出ています。
アベノミクス、リフレ政策の限界
しかし、なかなか目標の物価上昇率2%には達しなかったのです。日銀が市中に送り込んだお金の大半が金庫で眠る、タンス預金になっていたからです。
それを打破しようとして、民間銀行が日銀に預けている預金の一部にマイナス金利を適用するというマイナス金利政策を打ち出しましたが、裏目に出て長期金利がマイナス金利になってしまった。
その対処療法として日銀が金融市場に介入し長期金利を0%に誘導するイールドカーブ・コントロール政策が打ち出され、今に至るのです。
10年間ずっと上がっていない、というのは今までに無かった異常事態なんです。アメリカや欧州などは既に利上げに踏み切っていますからね。日本だけが取り残されている状況です。
変動金利は相対的に止まっている
好景気でインフレの時は政府は投資や消費を抑えるために政策金利を上げますが、不景気でデフレの時は政策金利を下げます。
好景気でインフレの時は収入も増えてますので金利が高くても負担は大きくありません。
逆に不景気でデフレの時は収入は減りますが、金利が低く抑えられているので負担は軽減されています。
今は不景気でデフレ、住宅ローンの変動金利は0.5%を切ってますね。一方で日本がインフレでバブル期だった頃の住宅ローンの金利は7%位でしたがかえって現在の方が閉塞感がある分だけ負担が大きいともいえます。
変動金利は景気と連動する傾向があるので、収入が景気の影響を大きく受ける人にとっては負担を一定にする効果があるのです。
金利は変動してますが、結果的に自分の収入も連動しているので、相対的に自分の目から見たら止まっているんです。
5年ルールと125%ルールで支払額は固定している
また、変動金利は金利は毎月変動しますけど、元利均等返済額は固定しているというのがポイントです。
変動金利が上がるとすぐに毎月の返済が増えるわけではありません。5年ルールと125%ルールがあるからです。
- 5年ルール:金利が変動しても5年は元利均等返済額を変えないというルールです。
- 125%ルール:1度に上げる元利均等返済額は125%を上限とするというルールです。
なので、千日は著書(家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本)では、変動金利で借りる人は2つの「4」をクリアすることを推奨しています。
- 毎月の返済額の4分の1を繰上げ返済資金として貯蓄すること。
- 毎月の返済額と上記の貯蓄を合わせて手取り月収の4割以下にすること。
住宅ローンを借りた直後に金利が上がったとしても5年ルールで5年間は毎月の返済額は変わりません。
そして5年後に上がる金額は最初の125%までが上限です。
そしてその金額がまた5年間維持されます。つまりどんなに金利が上がったとしても、当初の10年間は最初に決まった月返済額の125%までしか上がらないということです。
なので、変動金利の場合は、毎月の返済額の125%を払えるようにしておけば、どんなに金利が上がっても10年間は持ちこたえることが出来るのですね。
固定金利は相対的に動いている
好景気のインフレ時には収入は増えても住宅ローンの金利は一定ですから負担は軽くなります。しかし不景気のデフレ時には収入が減っても住宅ローンの金利は一定ですから負担は重くなります。
収入が景気の影響を大きく受ける人にとっての負担を変動させるのが固定金利なのです。
逆に公務員のように、収入が景気の影響をあまり受けない人にとっては、負担を一定にする効果があるということです。
借りる月によって毎月変動している
代表的な固定金利であるフラット35は住宅金融支援機構という国が運営する団体が債権を買い取る(買取型)又は返済を保証する(保証型)という形になっています。
買取型の場合、住宅金融支援機構は金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債(RMBS・住宅ローン債権担保証券)」という形で販売します。
図の青い矢印がお金の流れです。機構債の利率は住宅金融支援機構にとってはフラット35の貸付資金を調達するための必要経費ということですね。
ですから、以下の式でフラット35の金利が決まるのです。
- フラット35金利=機構債の表面利率+機構の利益率(必要経費)
この機構債は市場へ向けて毎月発行されています。この売買を成立させるには、他の長期の債券の価格と連動させなければなりません。つまり、代表的な債券である国債の価格と連動するのですね。
なので、たまたま大きな経済事件があって長期金利(国債の価格)が激動すると、それにつられてフラット35の金利も激動してしまうのです。
家を購入する人にとっては全く関わりの無いところで起こったことで、長期金利が変動し、今後35年間の住宅ローン金利に影響してしまうということが起こるので注意が必要なんですよ。
まとめ 最適な住宅ローンの答えはその時々によって相対的
なので千日は住宅ローンを決める際には、早い段階で変動か固定かを決めてしまうのではなく、複数の金融機関、金利タイプで審査を通しておくことをお勧めしています。
2018年の金利情勢でお勧めはこちら
また、住宅ローンをスタートするときの年齢によっても、オススメする金利タイプは変わってきます。
なので、千日は年齢別の住宅ローンの借り方、返し方という記事も投稿しているんですよ。こちらです。
30代
例えば年齢が30代で若くても、住宅ローンはできるだけ早く完済してしまいたいと考える人も居ます。住宅ローン控除がある10年間はローン残高が多い方が純粋にお得なので、返済を急がなくても良いのですが、10年が終わったら早期に完済するというのも一つの考え方です。
また、定年まであと10年を切る状況になったら3年固定へ借り換えるということが今ならお勧めです。
その時々によっても違ってきますし、自分が年齢的にどの位置にあるかによってもベストな選択は変わってくるのです。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
2018年上半期までの状況を振り返りつつ、住宅ローンが変動か固定か?について最新の状況を踏まえた記事を書きました。
千日の姉妹サイト『千日の住宅ローン無料相談ドットコム』では日々色んな方から寄せられる相談に、千日が回答し記事にしています。
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2018年7月4日
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20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
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