2026年6月15日公開
どうも千日です。日銀が政策金利を1%へ引き上げるという観測が出ています。1%になれば1995年以来、約31年ぶりの水準です。ただし、今回考えたいのは、政策金利1%で終わるのかということです。
今の経済金融環境を見ますと、1%で終わると思っている人は少ない。そして1%は通過点に過ぎないという見方の方が強い。
では、もし政策金利が2%になったら、住宅ローン、預金、企業、そして賃金はどう変わるのか?
今回は政策金利2%時代を一つのシナリオとして置いたうえで、政策金利2%時代に住宅ローン利用者がどう考え、どう備えるべきかをお話しします。
- 政策金利1%で何が変わるのか?みずほ総研レポートを解説
- 住宅ローンの負担増と知りつつ日銀が利上げする理由
- 政策金利2%はあり得るのか?
- 政策金利2%で住宅ローン金利はどうなるか?
- 政策金利2%で預金、企業、賃金はどう変わるか
- 変動か固定か。2%への途上でどう判断するか
- 政策金利2%に備える3つの判断
- まとめ~住宅ローン選択への提言
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政策金利1%で何が変わるのか?みずほ総研レポートを解説
まず、政策金利が0.75%から1%へ上がった場合を見ていきましょう。下表はみずほ総研のレポートを編集したものです。

出典:みずほ経済EXPRESS 日銀利上げ影響の試算アップデート | みずほ銀行
利上げ前の住宅ローン金利を補足しますと、変動金利については、りそな銀行や三菱UFJ銀行のように低いところで0.95%前後、固定金利については2026年6月のフラット35はすでに3.21%まで上がってきています。
変動金利は1.2%、固定金利は3.34%
政策金利が1%になると、単純には0.25%の利上げです。変動金利も基本的にはその分だけ上がると見て、低いところで1.2%前後、高いところでは1.5%近くというのが、まず目先の到達点になります。
固定金利(フラット35)の利上げ後が3.34%というのは、直前の3.21%からさらに上昇するということですね。
ただし、これはあくまで住宅ローンの入り口の話です。政策金利1%の社会では、住宅ローンだけでなく、預金金利、企業の借入金利、企業の資産運用利回りも変わります。
家計全体では年間1.0兆円、世帯当たり同2万円のプラス
みずほ総研のレポートでは、政策金利1%の経済効果として、家計全体では差し引きプラスになるという試算がされています。普通預金や定期預金の金利が上がるため、預金を多く持つ家計にはプラスになります。
負債保有世帯では世帯当たり年間1.2万円のマイナス
しかし、住宅ローンを抱えている負債保有世帯では話が違います。特に30代のように、住宅ローン残高が大きい世帯では、預金金利のプラスよりもローン金利上昇のマイナスの方が大きくなります。
定期預金金利が上がると言っても、住宅ローン残高と同じだけ定期預金を持っている人はほとんどいません。もし住宅ローン残高と同じだけ預金を持っているなら、そもそもそこまで借りる必要がないという話にもなります。
ですから、住宅ローンを抱える世帯にとっては、政策金利1%は明確に負担増です。
企業の経常利益は1.0%下押し1.1兆円の減益圧力
これは企業も同じです。借入金利が上がれば、利益は下押しされます。特に資本金の小さい中小企業ほど影響が大きい。
大企業は資産も多く、金利上昇による受取利息の増加もありますが、中小企業は借入負担の方が効きやすい。政策金利1%は、金融正常化という意味では前進ですが、負債を多く抱える若年層と中小企業に負担が集中する政策であるのです。
住宅ローンの負担増と知りつつ日銀が利上げする理由
では、そこまで負担があると分かっていて、なぜ日銀は利上げをするのか。ここを説明しないと、日銀が住宅ローン利用者を苦しめるために利上げしているように見えてしまいます。
もちろん苦しめようとしているわけではありません。日銀が見ているのは住宅ローン金利ではなく、物価です。
中東情勢による物価高への警戒
中東情勢の緊迫による原油高、円安による輸入物価上昇、そして幅広い品目への価格転嫁。こうした要因が、一時的な変動を除いた基調的な物価上昇率を押し上げるという見方が強まっています。
このタイミングを逃すと、後からもっと大幅な利上げを迫られる可能性があります。今のところ、中東情勢によって日本経済が深刻な不況に陥るリスクはそこまで強くないと見られているため、景気後退をケアするよりも、物価の上振れリスクに先に手を打つという判断になっているわけです。
円安と長期金利の高騰
もう一つは円安です。他国と比べて日本の政策金利が低すぎる状態が続けば、円売りにつながりやすい。円安は輸入物価を押し上げ、生活コストをさらに上げます。住宅ローン金利が上がることも家計には痛いですが、食料、電気、ガソリン、日用品が上がり続ける方が、生活全体への打撃はもっと大きくなることがあります。
さらに、日銀の利上げが後手に回っていると市場に見られると、日本国債が売られ、長期金利が急上昇する可能性もあります。国債価格が下がれば利回りは上がり、政府の利払い負担も増えます。
つまり、日銀が適切なタイミングで利上げを進めることは、長期金利の上がりすぎを抑えるという意味もあるわけです。
日銀の利上げは変動金利を上げるための政策ではありません。目的は物価の安定です。ただし、その結果として政策金利が上がり、短期プライムレートを通じて、住宅ローンの変動金利にも波及する。ここを分けて理解する必要があります。
政策金利2%はあり得るのか?
では、本当に政策金利2%まで行くのか。結論から言うと、確実に行くとは言えませんが、想定しておくべき水準ではあります。
無担保コール翌日物が政策金利になってから2%は未経験
現在の政策金利は無担保コール翌日物金利です。担保なしでお金を借り、翌日には返す取引に適用される金利です。この無担保コール翌日物が政策金利として使われるようになった1998年以降、日本で政策金利が2%になったことはありません。
そういう意味では、政策金利2%は日本にとってかなり久しぶりというより、今の政策金利の枠組みでは未経験の水準です。
海外では2%は普通の水準
ただし、海外を見れば政策金利2%は珍しくありません。欧州、英国、米国、カナダ、ニュージーランドなど、2%を超える国は普通にあります。むしろ主要国で2%に届いていない国を探す方が難しい状況です。
日本だけがずっと1%台で止まるという前提の方が、むしろ説明しにくくなってきています。
日銀の推計範囲は1.1%から2.5%の間
日銀が想定している中立金利の推計範囲は、おおむね1.1%から2.5%の間とされています。中立金利とは、景気を過熱も冷やしもしない金利水準です。政策金利2%は、この範囲の中ではやや引き締め寄りではありますが、十分に推計範囲内に入っています。つまり政策金利2%は極端なタカ派シナリオではなく、現実的に考えておくべき未来の一つです。
1%が通過点になるという見方は、かなり共有されてきていますが、2%まで行くかについては、まだ共通認識とまでは言えません。
しかし、各国の金利水準、日銀の中立金利レンジ、物価と円安の状況を踏まえると、住宅ローンを考えるうえでは政策金利2%を一つのシナリオとして置いておくべきです。
政策金利2%で住宅ローン金利はどうなるか?
では、政策金利2%の世界で住宅ローン金利はどうなるのか?みずほ総研の政策金利1%試算に千日太郎の2%試算を並べてみました。

変動金利は2%前後
千日太郎の試算では、新規で借りる人向けの変動金利は2%前後になると見ています。政策金利が1%から2%へ上がるなら、単純には1%分上がりそうですが、新規向けの住宅ローン変動金利については、銀行が少し抑える可能性があります。
住宅ローンは銀行にとって、預金者を集めるための入り口でもあるからです。広告商品としての意味があるため、本来の水準より少し低めに出してくるという見方です。
ただし、すでに借りている人は別です。既存借入者については、基準金利が上がれば、基本的には日銀の利上げ幅に近い形で上がります。たとえば今1.2%で借りている人は、政策金利が1%上がれば2.2%になるという見方が基本です。
フラット35は3.5%~4.1%
次に固定金利、特にフラット35については、政策金利2%の世界で3.8%前後を想定しています。長期金利は3.3%から3.5%前後、その上に固定期間に対するリスクプレミアムが乗るという見方です。
ただし、固定金利の予想には幅があります。変動金利との差をどの程度取るのか、その時点で長期金利がどこまで上がっているのかによって、3.5%から4.1%程度まで幅を見ておいた方がよいと思います。
2年半前の予想に近付いてきている
ちなみに2年半前の2023年12月10日公開したYouTubeのメンバーシップ動画で、私は今後の住宅ローン金利の上昇ポテンシャルとして、変動金利2%前後、フラット35で3%台後半という見方を示していました。

当時は高すぎると思われたかもしれません。しかし現在、フラット35はすでに3.21%まで上がり、変動金利も1%台前半から1.5%近い水準に入りつつあります。今見ると、その予想が決して高すぎるものではなかったという状況になっています。
政策金利2%で預金、企業、賃金はどう変わるか
政策金利2%時代になると、住宅ローンだけでなく預金も変わります。普通預金金利は今より上がりますが、政策金利の上昇幅ほどは上がらないと見ています。
預金金利の上昇は限られる?
銀行にとって普通預金は低コストで安定した資金調達手段ですから、政策金利が1%上がったからといって、普通預金金利をそのまま1%上げるとは限りません。
定期預金はもう少し大きく上がる可能性があります。ただし、ここにも天井があります。定期預金金利は長期金利との兼ね合いがあります。長期金利を大きく超えるような定期預金金利は持続しにくいです。
したがって、政策金利2%時代でも、預金金利の上昇は住宅ローン金利ほど家計を救うものにはなりにくい。住宅ローン残高の方が預金残高より大きい世帯では、受取利息の増加より支払利息の増加の方が大きくなります。
企業へのマイナス影響は?
企業については、借入金利の上昇がより直接的に効きます。中小企業の多くは変動金利で借りているため、政策金利の上昇は企業の有利子負債利子率にそのまま近い形で波及します。住宅ローンの新規金利は銀行が広告的に抑える可能性がありますが、企業向け融資にはその意味合いが薄い。
したがって、企業の借入負担は政策金利の上昇にかなり素直に反応すると見ています。 そうなると、企業利益は下押しされます。特に資本金の小さい中小企業ほど負担は重くなります。
政策金利2%時代は、金融正常化の時代であると同時に、企業経営にとっては借入コスト上昇の時代でもあります。
賃金の世代間ギャップ広がる
一方で、賃金は重要な調整弁になります。住宅ローンを多く抱える20代から30代は、負担増の対象であると同時に、賃上げの対象にもなりやすい年齢層です。人手不足が進む中で、若年層の賃上げが進めば、住宅ローン金利の上昇をある程度吸収できます。
逆に、賃上げが十分でないまま金利だけが上がると、家計への負担は一気に重くなります。今後の日銀の利上げペースと政府の減税、補助金、子育て支援、住宅ローン控除の見直しなどは、両輪で見ていく必要があります。
変動か固定か。2%への途上でどう判断するか
今後の住宅ローン選択でいくと、基本的には固定金利(フラット35)が先に金利上昇を織り込んで上がってきています。下グラフはリーマンショック直前の2008年4月から2026年6月までのフラット35、変動金利(適用金利と基準金利)の推移です。

フラット35は2008年9月のリーマンショック直前の3%から3.5%の水準にかなり近づいています。一方で変動金利はまだそこまで上がっていません。
リーマンショック前の変動金利は1.5%前後でしたが、今は低いところで1%前後、高いところでも1.5%近くという段階です。
変動は割安だが上がり代、フラット35は適正だが下がり代
つまり、変動金利はまだ過去の金利ある世界より0.5%ほど割安な水準に残っています。 そのため、現時点の数字だけで見ると、変動金利が有利になりやすい。
ただし、変動金利には上がりしろがあります。政策金利が1%に上がり、その後2%に向けてのペースが議論される時代に入りますから、金利上昇に耐えられるかを見ていく必要があります。
一方、フラット35はすでに急ピッチで上がりました。だからこそ、今後半年から1年の間に一時的に下がるタイミングが出る可能性もあります。長期金利は上がり続けるだけではなく、途中で上下します。
固定金利は先に上がっている分、実行時期によっては想定より低い水準で借りられる可能性もあります。
したがって、半年以上先に実行予定の人は、変動とフラット35の両方で審査を通しておくのが合理的です。どちらかに決め打ちせず、実行時点の金利を見て選べる状態にしておく。これが金利上昇局面での現実的な対応です。
政策金利2%に備える3つの判断
政策金利2%を一つのシナリオとして置くなら、確認しておきたいことは3つです。
- 政策金利2%でシミュレーション
- 変動とフラット35の両方で審査を通す
- 将来的な賃上げ可能性
①変動金利2.5%でも返済継続可能か?
まず、住宅ローンシミュレーターなどを使って、変動金利が2.5%前後になっても返済できるかを確認することです。
新規の変動金利は2%前後に抑えられる可能性がありますが、既存借入者や銀行によっては2.5%近くまで見る必要があります。ここで毎月返済額、総支払額、定年時残高を確認しておくべきです。
②フラット35の低下タイミングを活かせる?
次に、フラット35も含めて審査を通しておくことです。今はフラット35が非常に急ピッチで上がっていますが、正常化の過程で一時的に下がるタイミングが出る可能性もあります。変動と固定の両方に動ける状態を作っておくことは、かなり大事です。
③金利上昇を賃上げで帳消しにできる?
最後に、自分が賃上げの対象になりやすい層にいるかどうかを見ることです。20代から30代で、今後の収入上昇が見込める人であれば、変動金利の上昇を賃上げで吸収できる可能性があります。
一方、収入が頭打ちで、今後の賃上げ余地が小さい人は、変動金利の上昇をそのまま受けることになります。この場合は、固定金利の安心感をより重く見るべきです。
まとめ~住宅ローン選択への提言
政策金利2%は、まだ確定した未来ではありません。ただし、遠い話でもありません。実際に2年半前の想定が、今現実に近づいてきています。
重要なのは、政策金利2%が当たるか外れるかではなく、そのシナリオを置いたときに住宅ローン破綻しないかどうかです。
金利予想は外れることがあります。しかし、家計の耐性を確認しておくことは外れません。住宅ローンは金利を当てるゲームではなく、生活を守るための長期契約です。今はその心づもりをしておく局面だと思います。
以上、千日のブログでした。
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