2026年3月2日公開
どうも千日です。3月に入って、変動金利が動きました。しかも動かしたのはメガバンクで、しかも本来の見直し月より前倒しです。
これを見て、今後は変動がどんどん上がっていくのではないかと身構えた人も多いはずです。判断の軸は、表面的な上下ではなく、銀行側の動機とルール変更の有無です。ここを外すと、致命的な判断ミスにつながります。今日の要旨は以下の3つです。
- 三菱UFJと三井住友が前倒しで上げてきた理由
- その動きは利上げが打ち止めになることを恐れた動き
- フラット35はこの3月から新しいベンチマークに切り替わった
- まずはダイジェスト。3月に起きたことを数字で押さえる
- 三菱UFJと三井住友の利上げ幅の中身を詳細解説
- 前倒し利上げの背景。首相と日銀総裁の会談が示す空気の変化
- フラット35が0.01しか下がらなかった理由はベンチマークの変更
- 保証型と子育てプラス。固定の見え方はここで変わる
- まとめ~3月の利上げは打ち止めサインの可能性もある
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まずはダイジェスト。3月に起きたことを数字で押さえる
大きなニュースは2つです。三菱UFJ銀行と三井住友銀行が変動金利を上げてきたこと、そしてフラット35の引下げ幅が極端に小さかったことです。 この3月は、変動も固定も、転換点に入った月だと私は見ています。
変動金利

三菱UFJ銀行は、変動金利が0.67から0.945へ上昇しました。上げ幅は0.275です。三井住友銀行は、0.925から1.175へ上昇し、上げ幅は0.25です。昨年12月の日銀利上げ幅が0.25でしたから、三井住友は日銀の利上げ幅をそのまま反映した形です。一方、三菱UFJは日銀の利上げ幅以上に上げてきたことになります。
フラット35

そしてフラット35です。機構債の表面利率は0.13下がっているのに、フラット35は0.01しか下がりませんでした。こういう小さな下げ幅は、これまであまり見たことがありません。
まだ機構債より低い金利で提供してくれていること自体は事実ですが、どこまでも下げ続けるのは難しいのだろうという限界も同時に見えてきます。
三菱UFJと三井住友の利上げ幅の中身を詳細解説
多くの銀行では、変動金利は横ばいでした。これは実は当たり前で、変動金利には見直しのタイミングが決まっているからです。通常は4月、もしくは5月に基準金利の反映が行われ、そこで初めて昨年12月の日銀利上げ分が効いてきます。
その前提があるのに、メガバンクが3月に動いた。 まず、三菱UFJです。ここは変動金利の見直しについて、年2回型と毎月型という2つの枠組みがありました。従来、新たに借りる人は年2回型が中心だったのですが、今回、規定の改定が入っています。住宅ローンの商品説明書では2026年2月16日現在として更新されており、変動金利の見直しについて、短期プライムレート連動の長期貸出金利を基準に毎月見直すという前提が明確に書かれています。
つまり、三菱UFJは2月の時点で、いつ上げてもおかしくない状態になっていたわけです。そういう前提で3月に上げた。やってくれましたね、という話になります。
次に上げ幅です。今回、基準金利は2.875から3.125へ0.25上げています。これは既存の借り手にも効く上げ方です。
さらに、新規の適用金利については、0.67から0.945で上げ幅が0.275になっている。ここで0.025分は、基準金利ではなく、引下げ幅の縮小です。
つまり、三菱UFJは基準金利を上げ、さらに新規に対しては引下げ幅を削ってもう一段上げた(0.25%+0.025%=0.275%の引き上げ)ということです。
一方の三井住友は、基準金利の上昇幅と同じ0.25を、変動・借り換えに一律で反映しています。こちらはシンプルです。
重要なのは、どちらも、本来の見直しタイミングである4月より前に、基準金利を上げる動きを見せたことです。引下げ幅の調整ではなく、基準金利を上げる。これは銀行の収益に直結します。既存の膨大な借り手の利息がベースアップするからです。
前倒し利上げの背景。首相と日銀総裁の会談が示す空気の変化
ここから先は、報道と私の見方を分けて話します。
今回の前倒し利上げの背景には、少し前に報道された、首相が日銀の利上げに難色を示したという情報が関係している可能性があると私は見ています。これはリーク情報として出てきた形で、マーケットにも銀行にも、利上げの継続性に疑問符が付くきっかけになりました。
私の見方としては、今回の2メガバンクは、利上げにストップがかかる可能性が出てくると見たのだと思います。そうなると、4月まで待っているわけにはいかない。上げられる時に上げておかないと、次がいつ来るかわからない。だから先手を打って上げてきた。これが今回の流れだと見ています。
そして、ここが今回いちばん重要な部分です。日銀の植田総裁と首相の会談について、去年12月と今では状況が違うという点です。
去年12月にも、植田総裁と首相の会談が行われました。その際は、日銀の利上げに対して比較的肯定的な話があった、という報道が出ていて、その後に12月利上げが実行されました。
ところが今回は違います。首相自身が違っているという意味で、同じ人物ではないと思った方がいいと私は見ています。完全に民意を得た首相という状況になり、経済政策に対して強い影響力を行使しようとしている。
そういう変化がある中で、日銀としては、何が何でも利上げをしないと立ち行かない、という状況に置かれているわけではありません。
アメリカのようにインフレが止まらず、利上げしないとどうにもならないから断行する、という局面とは違うわけです。
日本の利上げは、将来的に困る状況にならないように、前倒しで少し上げておきたい、という側面が強いさらに、中立金利の推定値には幅があり、今の0.75という水準は、あと1回上げれば推定の下限に達するという微妙な位置にあります。
ここで政治側から利上げに難色が示されると、日銀としても無理はしにくい。 今回の会談について、報道された「難色」は単なる意見表明でしょうか?それだけのために、日銀総裁を官邸に呼びつけるでしょうか?私はそうは思いません。
私の見方としては、完全に民意を得た首相の言葉は重く、日銀の従来ペースでの利上げが難しくなってきている可能性は高いと見ています。
2つのメガバンクは利上げ後退の微妙な空気を察知した
ここにコインを置いたのが2つのメガバンクで、本来の見直しタイミングである4月よりも前倒しで基準金利を上げ、確実に利益を確保する方策に出た。
目の前にぶら下がった人参があり、場合によってはそれが遠くに行ってしまうかもしれないなら、大急ぎで取りに行く。今回の動きは、そういう読み方ができます。
変動金利が上がったこと自体は事実ですが、銀行が今後の利上げができなくなるかもしれないという警戒感から前倒しで上げたのであれば、借り手からすると、今回は上がったが、その後の天井はそこまで高くないかもしれない、ここで打ち止めになるかもしれない、というサインでもあるわけです。
フラット35が0.01しか下がらなかった理由はベンチマークの変更
次にフラット35です。今回、ふたを開けると引下げ幅は0.01で、金利は2.25でした。
これは直感的に違和感があります。機構債の表面利率は0.13下がっています。通常なら、それなりに下がってもおかしくないのに、ほぼ動きませんでした。
私は今回の予想を外したのですが、機構債と10年国債利回りを基準として、過去の趨勢に沿って予想を立てています。
ここから大きく外れてきたということは、機構側が参照する基準、つまりベンチマークが変わったということです。
2.25という数字は、きわめてキリがいいですよね。私は、機構が2.25を新たな基準として置きにいったのではないか、という見方をしています。
機構債2.65に対して、フラット35は2.25で、差は0.40です。2月の段階では0.52の差で、逆ザヤが大きすぎた。そこから3月は0.40というキリのいい差に仕切り直した。
逆ザヤ0.40でも十分大きいですが、これ以上は下げ続けるのが難しい、という限界がここに表れています。3月は新しいベンチマークがスタートした月として見ています。
保証型と子育てプラス。固定の見え方はここで変わる
ただし、フラット35は2.25だけを見て終わってはいけません。保証型には銀行の裁量があり、ここで実効金利の見え方が変わります。

団信なしにすることで、団信ありより0.28下がるケースがあります。さらに頭金を増やせば段階的に金利が下がる。例えば2割頭金で、団信なしにすれば、1.85%という水準で借りられるケースが出てくる。
ここに子育てプラスが乗れば、ポイント1につき5年間0.25換算で、最大で1下がる。つまり、条件が整えば、当初の固定金利が1%未満に入る可能性がある。
借り換えについても、3月実行から子育てプラスが使えるようになり、これも大きいですね。
ただし借り換えの場合は住宅性能や住宅の維持保全にかかるポイントがもらえません。子どもの数のみが対象になるという点が注意です。
それでも2人以上の子どもがいる世帯にとっては、固定の選択肢として旨味が出てくるでしょう。 ここまで踏まえると、3月のフラット35は、表面上は0.01しか下がっていなくても、合理的に選ぶ余地が残っています。
まとめ~3月の利上げは打ち止めサインの可能性もある
三菱UFJと三井住友が、見直し月より前倒しで変動金利を上げてきたことは事実です。
三菱UFJは日銀の利上げ幅よりも大きく、新規については引下げ幅縮小まで乗せてきました。これには私も驚きました。
ただし、今回の前倒し利上げを、今後も利上げが続くという強気のサインとして読むのではなく、銀行が利上げできなくなることを恐れて急いだ動きとして読むなら、見方は大きく変わってきます。
今回は上がったが、天井はそこまで高くないかもしれない。つまり打ち止めになるかもしれないのです。わずか1か月待てば上げられる金利をあえて前倒しにした理由はそこにあると見ています。
一方で、フラット35は3月からベンチマークが変わったと見ています。ここは、今後の予想を立てる上で最重要のポイントになります。
機構債が下がったのにほとんど下げないという動きは、逆ザヤの限界が見えてきたこと、そして2.25を新たな基準として置き直したことを示しています。
この3月は、変動も固定も、どちらかが明確に勝ちだと決めつけられる局面ではありません。
だからこそ、ニュースで一喜一憂するのではなく、銀行の動機とルール変更の有無を見て、落ち着いて次の月を待つのです。これからも千日太郎のコンテンツを、どうぞご活用ください。
以上、千日のブログでした。
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