最新予想!
どうも千日です。令和4年度税制改正大綱では、住宅ローン控除の控除率と上限が引き下げられることとなり、このことが民間銀行の営業方針(住宅ローンの金利)に影響してくる可能性があると見ています。機構債の表面利率は0.04ポイント下がりましたので、フラット35の金利は0.04下がると予想しています。
また直近では南アフリカで発見された新型コロナウイルスの変異型であるオミクロン株が感染拡大を続けており、これによる経済活動の制限を警戒する動きから長期金利は再び下がりましたが、直近では警戒感が和らぎ再び金利上昇の兆しを見せています。
今回はこうした動向と民間金融機関の営業方針から、2022年1月の住宅ローン金利動向を金利タイプ別(変動、固定、当初固定)に予想します。
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また、最新の日米金利動向については下記ページで毎日更新しています。
住宅ローン控除の改正が住宅ローン金利に与える影響
令和4年度税制改正大綱では住宅ローン控除率が1%から0.7%に引下げられ、対象となる住宅ローンの借入残高についても上限が引き下げられ、住民税からの控除上限も引下げられました(代わりに控除期間は原則10年から13年に延長)。
一見すると減税の恩恵が減ってしまう改悪なのですが、実のところ改正前の住宅ローン控除を上限まで使いきれる人は高所得の富裕層であり、中間層では上限いっぱいまで使いきれていなかった現状がありました。
そのため、年収と借入額によっては改正後の住宅ローン控除の方が減税額が大きくなるひとも居ます。下表はその一例です。
1年あたりの控除上限額が引き下げられることによるデメリットよりも、10年が13年に延長されるメリットが勝つためです。
- 一部の富裕層にとっては大幅な改悪
- 中間層以下にとっては変化なしorわずかに改善
というのが令和4年度の住宅ローン控除です。
民間金融機関の住宅ローンに与える影響
民間金融機関の住宅ローンの戦略は、低金利で属性の高い住宅ローン利用者を取り込んでメインバンクとなり、保険や投信などを売って儲けるという考え方です。
そのため、高年収の富裕層を取り込むために財テク的に多額の住宅ローンを組ませるというインセンティブが強く働いており、ライバル銀行間で低金利を競い合っていたのです。
しかし、令和4年度の改正によって控除率が下がったことに加えて、控除上限も下がったことで、富裕層が多額の住宅ローンを組むというメリットが減ってしまったことは今後の民間金融機関の住宅ローン戦略に影響する可能性があります。
頑張って金利を下げて中間層を多く取り込んでも、その見返りは小さいだろう。
このように考えたとしたなら、各民間金融機関は横並びで適用金利を上げていく可能性があります。既に11月から12月にかけてその兆しが見えています。10年固定などはこれまでのパターンでは長期金利が下がって適用金利が下がっていたのですが、多くは横ばいとし、一部には金利を上昇させたネット銀行もありました。
2022年1月の住宅ローン金利については、12月10日に税制改正大綱が公表されて、その内容が確定的となったことでより確定的に分かりやすく動く可能性があります。今後の住宅ローン金利を読むうえで注目すべきタイミングですね。
金利タイプ別の住宅ローン金利推移と予想
住宅ローンは金融機関の商品です、民間の金融機関は調達金利と融資金利の差益によって儲けを得ています。お金を商品にしていると考えれば、調達金利は商品の原価であり、融資金利は商品の売価です。
公的融資のフラット35などは、住宅ローンの資金を金融市場から直接調達しているため、その時の金融市場の影響をダイレクトに受けます。
長期金利と超長期固定金利(フラット35など)の動向
フラット35は超長期固定金利の代表格です。買取型は住宅金融支援機構が民間金融機関から住宅ローン債権を買い取って証券化し機関投資家に機構債という形で販売する仕組みになっています(後半で図解しています)。
そのため、住宅ローン控除の改正に伴って金融機関が金利の方針を変えることはできないので影響はほとんどありません。
投資家は機構債を安全資産という認識で購入するため、グラフのように長期金利(新発10年国債利回り)の動向とフラット35の金利は連動する傾向があります。
これまでの機構債の表面利率、フラット35(買取型)の金利推移を表にしています。
2021年推移 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
長期金利 |
0.06% |
0.01% |
0.01% |
0.03% |
0.09% |
0.07% |
機構債(参考) |
0.36% |
0.31% |
0.31% |
0.33% |
0.38% |
0.36% |
フラット35 |
1.33% |
1.28% |
1.28% |
1.30% |
1.33% |
1.33% |
2021年推移 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
長期金利 |
0.04% |
% | % | % | % | % |
機構債(参考) |
0.32% |
% | % | % | % | % |
フラット35 |
1.30% |
% | % | % | % | % |
2021年9月から11月にかけて大幅に長期金利が上昇しており、フラット35の金利も上昇していますが、公的融資であることからその上昇は抑えられ、その分11月から12月にかけては長期金利が少し下がりましたがフラット35の金利は横ばいとしています。
今後もオミクロン株への警戒感が完全には解けず、低い水準で国内金利が推移していくとすれば、2022年1月のフラット35の金利は前月よりも下がる可能性があります。
今月の機構債発表のタイミングに長期金利がどのあたりになるのか?ピタリと予想することは難しいですが、金利上昇時に1.33%を上限としたことに鑑みれば、概ね1.3%前後の水準まで下がる可能性が高いと予想しました。機構債の表面利率が0.04下がりましたので、今のところほぼ的中しています。
フラット35買取型
フラット35買取型2022年1月 | 団信込み | 団信抜き | 頭金 |
返済期間10年~20年 | 1.18% | 0.93% | 1割 |
返済期間21年~35年 | 1.30% | 1.05% | 1割 |
フラット35保証型
あくまで、更新時点の公開情報に基づく、千日太郎個人の予想です。実際の金利と異なってくる可能性は大いにあります。
民間の超長期固定金利の予想
令和4年度の税制改正で控除率が1%から0.7%に引き下げられましたが、もともと1%前後の水準であった銀行については住宅ローン控除の改正が営業方針に与える影響は少ないでしょう。
そのため民間の超長期固定金利についてはオミクロン株の影響によって金利が下がれば、さらに適用金利を下げる可能性が高いと見ています。
長期金利と20年固定金利の動向
住宅ローンの10年固定や20年固定、30年固定などの固定金利の商品を貸すための資金は金融市場から10年から30年の長期金利で調達している建前があります。しかし20年固定金利には前述の超長期固定金利ほどの連動性はありません。
2021年3月のコロナ後からは、長期金利が上がっても変わらず概ね1%前後の低金利で推移しています。これは長期金利よりも、住宅ローン控除の控除率が1%であることを意識した、民間金融機関の営業方針によるものです。そのため、令和4年度の税制改正によってそのメリットが大幅に減ることになります。
これまでの長期金利と20年固定のその時点の最低金利を表にしています。
2021年推移 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
長期金利 |
0.05% |
0.02% |
0.02% |
0.05% |
0.09% |
0.07% |
20年固定 |
0.895% |
0.845% |
0.865% |
0.905% |
0.965% |
0.975% |
2022年推移 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
長期金利 |
% |
% | % | % | % | % |
20年固定 |
% | % | % | % | % | % |
2021年12月の最低金利については、こちらから確認してください。
毎月更新コロナバブル金利先読み住宅ローンランキング - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える
20年固定金利の予想
令和4年度の税制改正によって、20年固定金利は民間金融機関の主力商品から外れてしまう可能性があります。
そのため、20年固定金利については長期金利の動向とは別に銀行の営業戦略によって上げる銀行と下げる銀行に分かれる可能性があります。
長期金利と10年固定金利の動向
10年以下の固定期間となると民間金融機関の営業方針によって決まる傾向が強くなります。ただしマーケットの金利情勢と乖離した値付けはしないようにしているという位のニュアンスです。
2019年7月の米中貿易対立や2020年3月のコロナショックによっても10年固定金利に変化はなく、一貫して下がり続けてきました。しかし、2021年11月には米国の早期利上げ観測を反映して0.05ポイントから0.1ポイントの大幅上昇となり、12月はそこから横ばいで推移しています。
10年固定金利は0.5%前後の金利水準としている銀行が多く、令和4年度の税制改正によっても住宅ローン控除の恩恵は続くこととなりました。
10年固定金利の予想
10年固定などの比較的短期の固定期間の住宅ローンは年間を通じて長期金利にかかわらず低金利を維持する傾向がありましたが、2021年11月からは潮目が変わっています。
ただし令和4年度税制改正後も10年固定は主力商品として継続する可能性はあり、期待含みではありますが10年固定金利については再び金利が下がる可能性があります。
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日米政策金利と変動金利の動向
変動金利は日銀が民間金融機関に融資するときの政策金利の影響を受けると言われます。長期金利は市場の投資家によって債券がいくらで取引されるかによって日々変動していますが、日銀の政策金利は、文字通り日本銀行が政策として決める金利です。
政策金利とは中央銀行が民間銀行に融資するときの金利であり、景気後退時には政策金利を下げ、好景気時には政策金利を上げます。グラフはリーマンショックから直近までの日米政策金利の動向です。
リーマンショックで日米ともに政策金利を引き下げゼロ金利政策を開始しました。その後米国では景気が回復し2016年から金利を上げましたが、日本は金利を上げられず2016年にはマイナス金利政策に突入しています。
そして2020年3月には新型コロナのパンデミックから米国の緊急利下げがあり、再び米国はゼロ金利政策に突入しています。これに対して日本は既にマイナスとなっており、これ以上下げられずに今に至ります。
2021年9月22日には米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でゼロ金利の解除時期を2022年に前倒しする可能性を示し、一時的に長期金利が上がる事態を招きました。
2021年11月30日に高インフレを一時的とする表現を事実上撤回し、量的緩和縮小(テーパリング)を急ぐ意向を表面しました。早期利上げを視野にインフレ対応へシフトし始めています。ただし南アで発生した変異株、オミクロン株の影響によっては軌道修正の可能性もあります。
変動金利の予想
日本についてはまだ利上げするような状況にはありません。そのため変動金利については引き続き横ばいでしょう。変動金利のお勧め住宅ローンについては、こちらから確認してください。
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2022年1月の住宅ローン金利に影響する長期金利の動向
こちらは2021年5月20日~2021年12月10日までの日経平均株価と長期金利の推移をグラフにしたものです。
オレンジの折れ線グラフは日経平均株価、青い折れ線グラフは長期金利を表しています。
株価が大きく動いているのは、自民党総裁の交代と衆院選の期待と失望が交錯したためであり、一時的なものです。
国内長期金利は米長期金利上昇の波及を受けて10月末まで上昇してきました。米国のインフレ懸念と、米連邦準備理事会(FRB)パウエル議長の発言から、市場関係者の間で利上げの時期が前倒しとなると受け止められたためです。これによって米国債を売る流れが日本国債を売る流れにも波及し、日本の債券価格が下がり、日本の長期金利も上昇したのです。
債券価格と金利(利回り)の間には負の相関関係があり、逆方向に動きます。債券価格が上がると利回りが下がり、債券価格が下がると利回りが上がるというセオリーですね。米国債を売ろうとする投資家は日本国債も保有しており、米国債を売る流れは日本国債を売る流れにも波及します。またその逆も然りです。
その後、12月の上旬にかけては新型コロナウイルスのオミクロン株への警戒感から下がっています。しかし最近では世界保健機関(WHO)がオミクロン株について、従来のデルタ株よりも感染力は強いが、重症度は低いとの見方を示しました。これに反応した投資家が債券を売って株式を買う動きに転じ、株価と金利が再び上昇していく可能性もあります。
債券価格によって長期金利が決まる仕組み(おまけ)
長期金利とは、具体的には10年国債の利回りをいいます。利回りとは投資した元本に対する成果として得られる利益が年に何パーセントかという割合を言います。
その利回りは債券価格によって決まります。
- 債券価格が上昇すると利回り(長期金利)が下落する
- 債券価格が下落すると利回り(長期金利)が上昇する
投資家は今後のマーケットの先を読んで売買を行いますので、潜在リスクに対してはより過敏に反応し、それが顕在化した時点ではすでに債券価格(金利)に反映されます。
国債は国に対する債権ですから、米国債や日本国債は投資家にとって安全な投資先です。つまり、米国債が売られるタイミングでは同じく日本国債も売られることが多く、債券価格が連動し、結果的に日米の長期金利も連動するということなのです。
長期金利とフラット35金利が連動する仕組み(おまけ)
そしてフラット35の金利がどうやって決まっているのか?について、5分ほどのYouTube動画にしました。動画での図と言葉での解説が理解しやすいと思います。
機構債の表面利率から翌月のフラット35金利が予想できる|youtubeへ
「買取型」は住宅金融支援機構が金利を決める
フラット35の「買取型」は、住宅金融支援機構が金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債」という形で販売するという仕組みになっています。
マーケットの投資家は国債のような安全資産として機構債を購入しているので、機構債の表面利率は、それを発表する時点の長期金利=国債の利回りとほぼ連動するのです。
そして、住宅金融支援機構は国の機関なのでほぼ固定した経費を上乗せしてわたしたちに貸すフラット35の金利を決めます。
融資のときに窓口になるのは民間金融機関ですが、その債権を買い取り、最終的に債権者となるのは住宅金融支援機構ですから、フラット35の金利を決めるのは住宅金融支援機構なのですね。
「保証型」は民間金融機関が金利を決める
フラット35の「保証型」は民間金融機関が貸す住宅ローンの債権を住宅金融支援機構が保証するという仕組みになっています。
上図のように、買取型と同じく金融マーケットから資金を集めていますが、住宅ローンの債権者は民間金融機関のままです。つまり、金融機関は住宅金融支援機構に保証料を払ったうえで儲けが出るようにフラット35の金利を決めているのです。
そのため、保証型のフラット35は取り扱う金融機関の裁量によって決められるということです。
以上、千日のブログでした。
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