米利下げで当分の間は住宅ローンは変動で大丈夫か?
どうも千日です。2019年7月31日に米中央銀行は景気減速に備えるため政策金利を0.25%引き下げることを決めました。
アメリカの政策金利の利下げは2008年末のリーマンショック以来なので実に10年半ぶりということで、大きなニュースになっています。
千日が初めて住宅ローンを組んだのは2008年のリーマンショック直後で日米ともに政策金利を大きく下げた直後でした。
当分の間は金利が上がることは無いと判断して変動金利を選択しました。
10年住宅ローンを借りて、2019年前半に住み替えのために売却しましたので、結果論として変動金利という選択は正しかったという答えあわせとなりました。
では、今回の利下げにあたっては、市場関係者は口をそろえて「当分の間金利が上がる要素は無い」とコメントしていますが、住宅ローン利用者としてはどういう判断をすべきか?思うところを書いておこうと思います。
パウエル氏「長期的な利下げ局面の始まりではない」
今回FRB(米連邦準備制度理事会)が行ったのは「予防的利下げ」と呼ばれるものです。これは、景気の落ち込みが経済データに表れる前に先手を打って金利を下げるものです。
米国の景気は堅調に推移していて、失業率も3%台の低水準なのですが、米中貿易摩擦、物価上昇率が目標に達しないことなどの下方リスクに対応するために、予防的に利下げをするというものです。
FRBは会合後の声明で追加緩和の可能性を示唆していましたが、一方のパウエル議長は「長期的な利下げ局面の始まりではない」として小幅で短期の利下げ局面を想定していることを明らかにしています。
どうやら、これが市場の失望と混乱を招いたようですね。
まるで初心者ドライバーのような政策金利の操作
- 利下げ(金融緩和):アクセル
- 利上げ(金融引き締め):ブレーキ
このように例えられることが多いですが、今回の米政策金利の低下をドライブに例えますと、次のような感じでしょうか。
これまではともすると過熱しがちな景気の上昇にブレーキをかけるために利上げをしていたんだけど、このままいくと車が停まってしまいそうな気配があるので、アクセルに足をのっけてみた(踏み込むまでにはなってない)。
これを読んでどう思いますかね?私はまるで初心者ドライバーだなと思います。
そもそも、なぜ景気の上昇にブレーキをかけなければならないの?という人もいるでしょうから、簡単に解説しましょう。
政府は景気の過熱を抑制し、投資や消費をしにくくするために政策金利を上げる。つまり、景気にブレーキをかけるのです。
あまりに景気の上昇スピードが速いと、給与上昇<物価上昇となってしまい、原材料や税金など、サラリーマンの収入以外の価格が先に上がり、生活を圧迫してしまうからです。
これまでの米国金利政策はこの利上げ(金融引き締め)だったのですが、そこから利下げ(金融緩和)へとシフトしようというタイミングになっているということです。
不透明さだけが浮き彫りとなった
利下げによって景気のアクセルを踏むということは、これからどんどん投資を促進して景気を上げようということです。つまり先行きの視界はクリアだというメッセージを込めなければ、意味がないのです。
市場としては「利下げならば、継続的に利下げしていくものだろう」という期待がありました。
だって、チョコンと0.25%金利を下げて終わりになるのなら、そもそも人は動きませんよ。
確かに、政策金利の操作は車のアクセルとブレーキに例えられますが、全くイコールではないです。チョコンとアクセルを踏みたいときに、本当にチョコンとアクセルを踏んでも、思ったようには動かないのです。
今回の混乱は、そうしたイケてないドライビングテクに対する市場の失望ということではないかと思っています。
10年単位の将来予想はまず不可能
ではこれから住宅ローンを組む人として、どういう捉え方になるか?整理しておきましょうか。
- 今後もし金利が上がらなければ変動金利の方がトク
- 今後もし金利が上がったら底の水準である固定金利の方がトク
そこで現在の状況はというと、米国が10年半ぶりに利下げに動き、国内では10月には消費増税を控えています。まず今の状況を前提として金利が上がるという要素は見当たらないです。
しかし、住宅ローンを借りるのは最長35年、短い人でも15年位の期間です。
例えば、初代iPhoneの発売開始は2007年6月29日、現在から遡ること12年前です。iPhoneが出てくるまではパカパカのガラケーが席巻してました。2007年の時点で誰が現在のスマホ社会を予想出来たでしょうか?
「自分は予想できていた」
と素で言える人を除いては、10年単位の金利予想をすることはお勧めしません。
変動金利か固定金利かの決断方法
- 変動金利は銀行が必要に応じて金利を変動させることが出来る金利タイプ
- 固定金利は借入期間に亘り金利を固定する金利タイプ
例えば10年固定なんていうローンの金利タイプがありますが、これは変動金利です。
当初の10年間は金利が固定され、10年経過後は変動金利になるか、改めてその時点の金利水準で固定金利を選択するかを選ぶタイプですね。
10年固定は正確な表現ではありません。借入期間に亘ってずーっと金利が固定しているものだけが固定金利なんです。あえて千日流の表現をするなら10年経過後変動金利です。
自分と銀行のどちらが金利変動リスクを負うかがポイント
銀行間で資金を融通しあう金利を短期プライムレートと言い、変動金利はこの短期プライムレートに連動して銀行が金利を上下させることが出来る金利タイプです。
- 銀行が他の銀行からお金を借りる時の金利が低い時は住宅ローンの金利は低くする
- 銀行が他の銀行からお金を借りる時の金利が高い時は住宅ローンの金利は高くする
銀行は自分が借りる時の金利よりちょっと高く住宅ローンの金利を設定して、リスク無く確実に利ザヤを得る(儲ける)ことが出来るのです。
固定金利は短期プライムレートが何%になろうが、最後まで金利を変えない金利タイプです。
銀行が貸す金利は一定ですから、場合によっては銀行が逆ザヤになる(損する)可能性もあります。
- 変動金利=金利変動リスクを自分が負う
- 固定金利=金利変動リスクを銀行が負う
このように覚えておきましょう。だから10年固定なんていうのは、以下のような解釈になります。
- 予測出来る始めの期間は現在の金利水準で銀行が利ザヤを取れるような金利で固定する。
- 予測出来ない後半の期間はその時になってから銀行が利ザヤを取れるような金利を決める。
金利変動リスクはどちらにあるかは自明ですね。自分の方です。だからこれは変動金利なんです。
しかも固定金利期間は変動金利よりも高くなるのが普通ですので、一方的に銀行に有利な変動金利です。
固定の期間にリスクをヘッジできますが、それが終わった時点のリスクに対しては、利用者が準備しておく必要があります。
変動は止まっており、固定は動いている
変動金利は金利が変動するものだ、固定金利は金利が固定しているものだ、というのは確かにその通りです。
しかし、切り口を変えてみると、また違った解釈になってくるのです。
変動金利は相対的に止まっている
好景気でインフレの時は政府は投資や消費を抑えるために政策金利を上げますが、不景気でデフレの時は政策金利を下げます。
前述の政策金利の操作を思い出してください。 金融政策が上手く機能すれば、好景気でインフレの時は収入も増えてますので金利が高くても負担は大きくありません。
逆に不景気でデフレの時は収入は減りますが、金利が低く抑えられているので負担は軽減されています。
今は不景気でデフレ、住宅ローンの金利は1%を切ってますね。
一方で日本がインフレでバブル期だった頃の住宅ローンの金利は7%位でしたがその負担は同じなんです。 かえって現在の方が閉塞感がある分だけ負担が大きいともいえます。
収入が景気の影響を大きく受ける人にとっては負担を一定にする効果があるのです。 金利は変動してますが、結果的に自分の収入も連動しているので、相対的に自分の目から見たら止まっているんです。
固定金利は相対的に動いている
ならば、固定金利は相対的に動いているというのは、もうお分かりでしょう。
好景気のインフレ時には収入は増えても住宅ローンの金利は一定ですから負担は軽くなります。
しかし不景気のデフレ時には収入が減っても住宅ローンの金利は一定ですから負担は重くなります。
収入が景気の影響を大きく受ける人にとっての負担を変動させるのが固定金利なのです。 逆に公務員のように、収入が景気の影響をあまり受けない人にとっては、負担を一定にする効果があるということです。
収入が景気の影響を受けやすい人にとっては、今の固定金利で大丈夫なように家計を構築しておけば、今後好景気になったときには、今よりもっと住宅ローンが楽になるということになりますね。
まとめ~金利動向よりも自分のポリシーで決める
変動と固定どっちにするか?というのは、今後の金利動向を見て決めるというよりは、自分のポリシーで決めるのが一番後悔しにくい方法だと思います。
私は、ポリシーとしては固定金利でしたが、変動金利を選び、たまたま正解だったというだけのことだと思っています。
変動、固定でそれぞれおトクな住宅ローンについては、こちらもどうぞ。金利タイプごとに毎月一番おトクな住宅ローンを更新しています。
https://sennich.hatenablog.com/mortgage-ranking/201903
https://sennich.hatenablog.com/mortgage-ranking/refinance-2019
以上、千日のブログでした。
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2019年11月18日
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