超低金利時代の住宅ローンと銀行の選び方
どうも千日です。日銀のマイナス金利政策で銀行間の住宅ローン争奪戦が激しくなっていますね。今日はこの超低金利時代の住宅ローンの借り方、銀行の選び方についてです。
住宅の買い時かどうかはさておき、住宅ローンは借り時であると言えます。
千日がこのようなまどろっこしい言い方をする理由は、住宅の購入には以下の二面性があるからです。
資産の取得はプラス面だと思います?ところがどっこい保有し続けるためのコストと価値の減少リスクが伴います。
住宅を維持するには固定資産税、管理費や修繕(修繕積立金の支出)という定額のコストが発生します。ごく稀に手抜き工事で修繕積立金が嵩む場合もありますが、基本的には固定のコストです。
そして、もし住宅を手放さなければならなくなった時に住宅の価値が下がり、売却代金よりもローン残高の方が高く、借金だけが残ってしまうリスクがあるんです。逆に儲かる場合もあります。時と場合によって変動するリスクです。
住宅を持ってるだけでローンの返済とは別個のコストとリスクを負うということです。
くれぐれもこの事を忘れないようにして下さいネ。
目次
住宅ローンのセオリーは負債のコストを下げ、リスクを固定すること
資産の側のコストとリスクは『住宅を買う』という事を決めた瞬間に負わざるを得ない種類のリスクです。
そして、資産側の価値の変動リスクはマイナスからプラスまであり得るので大きな振れ幅があります。このような場合のセオリーは、負債側のコストを下げ、リスクを固定させることです。
- どうすれば負債のコストを最も下げられるか
- どうすれば負債のリスクを固定できるか
このセオリーをわかりやすく説明します。
住宅ローンのコストを最も下げる方法
住宅ローンのコストとは、利息です。まず最も分かりやすいのは低い利率で住宅ローンを借りることですが、利息のコストは利息のリスクとトレードオフの関係にあります。
トレードオフの関係とは、こちらが立てばあちらが立たずの関係を意味します。
つまり
- 変動金利(一定期間固定も含む)は利率が低いが金利変動リスクがある
- 全期間固定金利は利率が高いが金利変動リスクが無い
当初10年間の利率が1%未満の人
借入期間は最長の35年とし当初の10年間は繰上げ返済しない
これは住宅ローン減税の恩恵を100%受けるための方法です。
借入残高を早く減らす事は利息の減少になるでしょ?
確かにその通りです。しかし当初10年間は住宅ローン控除を受けられます。各年末の借入残高の1%の所得税等から税金をマイナスする効果があります。
借入残高が少なく利息が減る<借入残高が多く税金が減る
- 借入残高が少ないことで利息が減る効果
- 借入残高が多くて税金が減る効果
どちらも費用を減らす効果です。しかし後者の方が効果が高いんです。つまり住宅ローン控除を受けられる10年間はローン残高を高く維持しておく方がお得です。
借入期間は可能な範囲で短期にし可能な範囲で随時繰上げ返済
当初10年間は住宅ローン控除を受けられますが、利率が1%未満の人とは大小関係が逆になります。
借入残高が少なく利息が減る>借入残高が多く税金が減る
- 借入残高が少ないことで利息が減る効果
- 借入残高が多くて税金が減る効果
どちらも費用を減らす効果なのは同じですが、後者の方が効果が高いんです。つまり住宅ローン控除を受けられる10年間であっても、借入残高を少なくした方が費用を抑える事ができます。
当初10年間の金利が1%未満か1%超かによって全然セオリーが違ってきますので注意が必要です。
今の超低金利時代では当初10年間は繰上げ返済しない事がどんな場合もおトクかのように言われていますが、必ずしもそうじゃないということですね。
住宅ローンのリスクを一定以下に固定する
さてここからが本題です。住宅ローンのリスクを一定以下にするにはどうしたら良いか?コストと違ってリスクの方は数値に表せません。
リスクを抑える方法としては、以下の2つについて書きますね。
変動金利と固定金利で違う銀行の選び方
住宅ローンの銀行選びとは、債権者を選ぶという事です。誰からお金を借りるかを決めるということですね。
変動金利は銀行の店頭金利によって上下します。店頭金利とはいわば利率の定価みたいなものです。もしも、銀行の経営が危なくなったら銀行の一存で随時引き上げる事が出来ます。
固定金利は借入時点で固定した金利でずっと変わりません。銀行の経営が危なくなっても引き上げる事は出来ません。
つまり固定金利では、銀行の経営リスクは利用者のリスクになりませんが、変動金利では銀行の経営の健全性に注目するべきということです。
変動金利で借りる銀行の格付けを参考にする
格付けは本来は、債券を発行する組織の債務の支払い能力を評価するものですが、転じて金融機関の健全性を判断する目安としても活用されています。
つまり債務者である住宅ローンの利用者にとっても有力な判断材料になり得ます。
それに、銀行の決算書を読みこなすのは専門家でも大変なんです。まして素人の住宅ローンの利用者が銀行の決算を見てその経営内容や財務状況を判断するのはまず無理です。
格付けならA、B、Cやプラス、マイナスなどの記号で表されるので素人でも簡単に格付け機関の判断を利用出来ます。
主な格付け機関と格付け記号の見方
記号の見方は次の通りです。
- AAA:信用力は最も高く、多くの優れた要素あり
- AA:信用力は極めて高く、優れた要素あり
- A:信用力は高く、部分的に優れた要素あり
- BBB:信用力は十分であるが将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素あり
- BB:信用力は当面問題ないが将来環境が変化する場合、十分注意すべき要素あり
- B:信用力に問題があり、絶えず注意すべき要素あり
- CCC:債務不履行に陥っているか又はその懸念が強い
- CC:債務不履行に陥っているか又はその懸念が極めて強い
- C:債務不履行に陥っており、債権の回収も殆ど見込めない
AA格からCCC格について、上位格に近いものをプラス(+)、下位格に近いものをマイナス(−)で表示することがあります。
今銀行は大きな変化の中にいる
現時点で格付けを見る時に気を付けたいのは、今まさに環境が大きく変化している時だということですね。
ということは、今の環境でBBB格以下の銀行を変動金利で利用するのには、それなりの理由が必要ですね。
また、A格の銀行でも今後何十年というスパンで考えた場合、1つ落ちるとBBB格になる可能性もありますよね。リスクがあります。
変動金利についてリスクを抑える観点から行けば、少なくともAA格以上の銀行であることが望ましいと言えるでしょう。もちろんAA格以上なら絶対大丈夫という事ではありません。
繰上げ返済は貯金残高を考えてから
リスクを下げるなら、以下の方法です。
- 最長35年でローンを組み
- 一切繰上げ返済せず浮いたお金は貯金
確かに、繰上げ返済すればローン残高を減らし、利息というコストを減らす事が出来ます。しかし、繰上げ返済した現金は戻って来ません。
今の住宅ローンの利息はそもそも十分に安いんです。住宅ローン以外の目的で借りると3%〜6%の高い利息を払わねばなりません。
ローンと同額の貯金があれば、低金利である限り、そんなに大急ぎで返済する必要はありませんよね。
ボーナス払いは『絶対に』ダメ
他のサイトでも散々書いてあることですからアッサリ書きますが、やはりダメです。ボーナスは変動するものです。出ない事も十分あり得ます。
期日に決まった額を確実に支払わなければならない住宅ローンの返済の原資として、変動要因の多いボーナスをぶつけるのはいつか自分の首を絞めることになります。
大事な事なのでもう一度言います。『絶対に』ダメですよ。
変動金利なら余裕が必要
変動金利は金利が安いので毎月の元利均等返済額が低く抑えられますね。なので、マンションのチラシで良くアピールされています。
しかし、変動金利には金利上昇リスクが常にあります。もしも金利が上がっても無理なく返済出来る余裕が必要です。
過去記事のように、返済額が少ない分は余分に貯金を増やして、金利上昇局面に備えることでリスクを抑えることが条件です。
変動金利でカツカツの返済計画は『計画』とは言えません。
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10年固定は10年後の準備(余裕)が必要
銀行は固定費を回収出来ない赤字覚悟の金利です。しかし11年目からはその時の店頭金利をベースにした金利に変わります。
つまり10年後に変動金利になるというのが正しい見方です。
理想的な形としては固定の10年間に住宅ローン控除を満額受けて、かつ、一括返済出来る程の十分な貯金を貯めておくことです。
一括返済は極端な例ですが、その位の気持ちで貯金をしておけばリスクを十分に低く抑える事が出来るでしょう。
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フラット35の全期間固定は2017年10月からの新団信制度もあっていま最もオススメ
フラット35の全期間固定金利も十分に低い水準ですね。加えて、2017年10月1日の申し込みからフラット35の団信が大幅にリニューアルていて、この制度変更の骨子は2つです。
- 団信保険料は実質値下げ。従来年一回ローン残高の0.358%を払う方式だったが、今後はフラット35の金利に0.28%上乗せとなり毎月の返済と一緒に支払う。
- 住宅ローン残高がゼロ円になる保障の範囲は拡大。従来高度障害と死亡が条件だったが、今後は身体障害(身体障害者福祉法1級or2級)についても保障の範囲に含まれる。
新制度では、保険料が値下げになった上、保障内容を身体障害者手帳の交付や介護認定等公的制度と関連付けることにより、利用者とってわかりやすくなり、同時に保障内容も充実するんですね。
具体的な例としては、ペースメーカーを植え込んだり、人工透析が不可欠になって日常生活活動が極度に制限される状態で1・2級の身体障碍者手帳が交付された場合などが当てはまります。なお、一定の保険料の上乗せを行って3大疾病保障団信に加入する場合には、3大疾病のほか、介護保障も保険金支払いの対象に加わることになりました。
フラット35の金利の推移は以下のようになっています。2017年10月からは団信の0.28%の分だけ上がってますが、団信に加入する人にとっては実質値下げです。
年月 |
フラット35金利 |
表面利率 |
利益率 |
団信 |
2016年5月 |
1.08% |
0.34% |
0.74% |
0.00% |
2016年6月 |
1.10% |
0.36% |
0.74% |
0.00% |
2016年7月 |
0.93% |
0.23% |
0.70% |
0.00% |
2016年8月 |
0.90% |
0.19% |
0.71% |
0.00% |
2016年9月 |
1.02% |
0.33% |
0.69% |
0.00% |
2016年10月 |
1.06% |
0.37% |
0.69% |
0.00% |
2016年11月 |
1.03% |
0.34% |
0.69% |
0.00% |
2016年12月 |
1.10% |
0.41% |
0.69% |
0.00% |
2017年1月 |
1.12% |
0.48% |
0.64% |
0.00% |
2017年2月 |
1.10% |
0.46% |
0.64% |
0.00% |
2017年3月 |
1.12% |
0.47% |
0.65% |
0.00% |
2017年4月 |
1.12% |
0.46% |
0.66% |
0.00% |
2017年5月 |
1.06% |
0.40% |
0.66% |
0.00% |
2017年6月 |
1.09% |
0.43% |
0.66% |
0.00% |
2017年7月 |
1.09% |
0.44% |
0.65% |
0.00% |
2017年8月 |
1.12% |
0.47% |
0.65% |
0.00% |
2017年9月 |
1.08% |
0.42% |
0.66% |
0.00% |
2017年10月 |
1.36% |
0.42% |
0.66% |
0.28% |
なお千日のブログでは毎月の20日前後に翌月のフラット35金利を予測しています。
また、いままでの最新の金利推移はこちらの住宅ローン無料相談.comをどうぞ。
リスクも限りなく低い
さらに全期間固定金利ですから銀行の健全性リスクに気を配る必要なく、単純に一番安い銀行から借りれば最後まで金利は固定されます。
固定金利を選ぶだけで、他に何も考えなくてもかなりのリスクを減らすことが出来ます。
ここまで固定金利が安くなったのは史上初
このような固定金利は、通常は変動金利よりもかなり高いものでした。
しかし日銀によるマイナス金利政策の副作用で起きた国債金利のマイナスという異常な事態がトリガーとなって今までになく下がっているんです。
現在のような金利の低下局面は経済にとって決して良いものではありませんが、コレだけは例外です。
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まとめ
今回も長くなってしまいました。これまで千日のブログでは、マイナス金利の局面でそのメリットが取れるピンポイントな住宅ローンのノウハウを取り上げて来ました。
しかし、一方で基本的なセオリーについて書いていないというのが気にかかっていたのです。
今回のエントリーでは今の経済情勢を反映しつつ、住宅ローンの勘所を押さえました。千日のブログを読んで下さった方が住宅ローンの選択でも、後悔の無い選択をされる事を祈っています。
以上、千日のブログでした。
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