千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える

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【金利予想】フラット35の新団信制度メリットデメリットと2017年下半期の金利動向

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10月からフラット35の機構団信が安くなるが、メリットばかりではないという事実

どうも千日です。2017年10月1日の申し込みからフラット35の団体信用生命保険(団信)の仕組みが変更になり、団信に加入する場合には10月以降に申し込んだほうが得になるそうです。

  • 保険料の総支払額が減る。
  • 保障の範囲が広がる。

団信とは、取扱金融機関が住宅ローン利用者を被保険者として生命保険に加入するものです。利用者に万が一のことがあった場合には保険会社から金融機関にその時点での借入残高相当額の保険金が支払われて、住宅ローン残高はゼロになります。

新制度では保険料の負担が減り、従来は高度障害と死亡が条件だったのが、今後は身体障害(身体障害者福祉法1級or2級)についても保障の範囲に含まれることになりました。

一見、メリットしか無いように思えますよね?

しかし、10月からの申し込みがメリットばかりとは限らないのです。

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フラット35の団信はどう変わるのか?

民間金融機関の住宅ローンでは団信への加入が必須の条件です。健康面などの問題から団信に加入できない場合には住宅ローンの審査に通りません。民間住宅ローンでは団信への加入が義務である半面、保険料は金利のなかに含まれ、利用者は別途保険料を負担する必要がないというメリットがあります。

フラット35では団信加入は任意で、健康上の理由その他の事情で団信に加入出来ない人でもフラット35の利用は可能です。しかし、任意に加入する場合には、年に1回ローン残高の0.358%の保険料を毎年支払わなければなりませんでした。

新制度では、2017年10月1日申し込み分から、フラット35の団信を民間ローンと同様に金利に含めて、毎月返済額のなかに保険料を含めて引き落とす仕組みに移行することになり、上乗せされる利率は0.28%に軽減されることになりました。

団信に加入しない場合はそこから0.2%の金利引き下げになります。

団信に加入する場合⇒総支払額では得だが毎月の返済は重くなる

実際にシミュレーションしてみましょう。まずは軽減される団信に加入する場合です。

《前提条件》

  • 物件価格:3000万円
  • 住宅ローン:2700万円(頭金300万)
  • 融資手数料:ローン借入額の2.2%
  • 金利:1.08%(9月のフラット35金利)
  • 返済期間、方法:35年元利均等返済、ボーナス払いなし

9月の金利は1.08%です。10月も同じ金利だったとすると、これに団信の保証料0.28%が上乗せとなりますね。

  • 9月旧制度の金利:1.08%
  • 10月新制度の金利:1.36%=1.08%+0.28%

(単位:円)

 

9月旧制度

1.08%

10月新制度

1.36%

差額
毎月返済 77,228 80,831 -3,603
頭金 3,000,000 3,000,000 0
融資手数料 583,200 583,200 0
返済額 32,435,731 33,948,893 -1,513,162
団信保険料 1,846,060 0 1,846,060
住宅ローン控除 -2,376,452 -2,390,073 13,621
返済合計 35,488,539 35,142,019 346,519

毎月の返済では金利の低い9月の旧制度の方が3603円少ない金額で済みますよね。

なので返済額では旧制度の方が151万3162円少ないです。しかし団信保険料が184万6060円かかります。

返済合計では34万6519円新制度の方が少ない支払いになるということです。

 

年間支払と毎月返済どっちを取る?

ポイントは、返済合計では安くなるけど、毎月の返済は高くなるということですね。

住宅ローンとは何か?と訊かれたら、私は『毎月銀行に35年なら420回、決まったお金を払うことだよ』と答えます。これが正確な定義でないことは百も承知ですが、これが途中で家を手放さない人にとっての『住宅ローンのリアル』です。

従来の団信は年に1回の支払いでした。またこれが払えなかったら無保険にはなりますが、それによって家を取り上げられるようなことはありません。別の収入保障の保険に加入して代替する事も可能です。

新制度では、利息に上乗せとなったことで、毎月の支払い額のハードルがあがります。これが払えないと債務不履行となる、絶対に越えなければならないハードルが(わずかですが)上がるということです。

我々の収入は月収単位であり、家計は月単位で行いますよね。実感として感じる毎月の家計負担は増えますが、それを我慢すれば年単位では得になり、我慢のご褒美は35年で35万円弱(2700万円を35年払いで借りた場合)ということです。

諸手を挙げて『得だ!』と考えていると、その期待は裏切られることになりますよ。

 

フラット35Sの優遇は0.25%に減ってしまう!

もう一つ忘れてはならないのが、認定低炭素住宅・長期優良住宅など、基本性能の高い住宅を対象に、当初5年間または10年間の金利を0.30%引き下げるフラット35Sという補助金制度です。

10月からの新制度では、このフラット35Sの金利引き下げ幅(当初5年又は10年)が現行の0.3%から0.25%に減ってしまうんです!

これによってどんな変化があるか、シミュレーションしてみましょう。 

《前提条件》

  • 物件価格:3000万円
  • 住宅ローン:2700万円(頭金300万)
  • 融資手数料:ローン借入額の2.2%
  • 金利:1.08%(9月のフラット35金利)
  • 返済期間、方法:35年元利均等返済、ボーナス払いなし

9月の金利は1.08%です。旧制度では0.3%引き下げですので、最大10年間は0.78%の金利になります。

10月も同じ金利だったとすると、これに団信の保証料0.28%が上乗せとなり1.36%ですね。新制度では0.25%の引き下げですので、最大10年間は1.11%の金利になります。

  • 9月旧制度の金利:当初10年0.78%その後1.08%
  • 10月新制度の金利:当初10年1.11%その後1.36%=1.08%+0.28%

(単位:円)

 

9月旧制度

0.78⇒1.08

10月新制度

1.11⇒1.36

差額
10年毎月返済 73,480 77,609 -4,129
その後毎月返済 76,185 79,950 -3,765
頭金 3,000,000 3,000,000 0
融資手数料 583,200 583,200 0
返済額 31,673,078 33,298,149 -1,625,070
団信保険料 1,827,805 0 1,827,805
住宅ローン控除 -2,361,471 -2,377,928 16,457
返済合計 34,722,612 34,503,420 219,192

毎月の返済では金利の低い9月の旧制度の方が最大4129円少ない金額で済みますよね。普通のフラット35よりも差が大きくなりました。

なので返済額では旧制度の方が162万5070円少ないです。団信保険料は普通のフラットと同じ位で182万7805円かかります。

返済合計では21万9192円新制度の方が少ない支払いになりました。普通のフラット35では35万弱のメリットでしたので、3分の2くらいにメリットが減ってしまったということです。

フラット35Sで借りるのであれば、新制度のうま味は少なくなってしまいますね。あえて旧制度で借りるというのも現実的な選択だと思います。

 

団信に加入しない場合⇒毎月の返済、総支払額とも高くなる

団信が金利に込みになって0.28%上乗せ、団信に加入しない場合はそこから0.2%引き下げということは、差し引き0.08%金利が高くなるということですよね。

ですから、団信に加入しないのであれば、10月1日からの新制度じゃない方が得になります。実際にやってみましょう。

《前提条件》

  • 物件価格:3000万円
  • 住宅ローン:2700万円(頭金300万)
  • 融資手数料:ローン借入額の2.2%
  • 金利:1.08%(9月のフラット35金利)
  • 返済期間、方法:35年元利均等返済、ボーナス払いなし

9月の金利は1.08%です。10月も同じ金利だったとすると、これに団信の保証料0.28%が上乗せとなりますね。団信に加入しないのであれば、そこから0.2%の引き下げとなります。

  • 9月旧制度の金利:1.08%
  • 10月新制度の金利:1.16%=1.08%+0.28%-0.2%

(単位:円)

 

9月旧制度

1.08%

10月新制度

1.16%

差額
毎月返済 77,228 78,247 -1,019
頭金 3,000,000 3,000,000 0
融資手数料 583,200 583,200 0
返済額 32,435,731 32,863,736 -428,006
団信保険料 0 0 0
住宅ローン控除 -2,376,452 -2,380,380 3,928
返済合計 33,642,478 34,066,556 -424,078

毎月の返済では金利の低い9月の旧制度の方が1019円少ない金額で済みますよね。

なので返済額では旧制度の方が42万8006円少ないです。団信保険には加入しません。ほぼ返済額の違いがそのまま合計に反映し、返済合計では42万4078円旧制度の方が少ない支払いになるということです。

毎月の返済額でも、年間の支払い額でも旧制度の方が負担が少ないという結果になります。団信に加入しないのであれば、10月まで申し込みを待つ理由は無いということですね。

 

住宅ローンの実行日ではなく申し込み日で決まる

住宅ローンの実行のタイミングではなくて、申し込みのタイミングで振り分けられていることですね。10月に融資実行でも9月に申し込みをすれば従前の団信となります。

ですから、10月の融資実行のために少し早めに手続きを進めておこう、ということで9月に申し込みをすると、値下げになった団信ではなく前の高い団信保険料を払わなければならなくなります。

注意が必要ですね。

  2017年9月までの申し込み 2017年10月以降の申し込み
民間銀行 金利に込み何%か不明 金利に込み何%か不明
フラット35 年1回ローン残高の0.358% 金利に込み0.28%

 

保障の範囲が障害者手帳で明確になり、死亡や高度障害だけでなく人工透析やペースメーカーなども含まれるように充実

単なる数字だけでなく、保障内容についても注目しましょう。10月1日以降の新団信では保障の範囲が明確化し、内容も充実します。

項目 備考
死亡 住宅ローンがゼロ円  
身体障害 身体障害者福祉法に定める障害等級(1・2級)の「身体障害者手帳」を交付されれば住宅ローンがゼロ円になる。保障の要件が具体的。 高度障害よりも軽い障害であっても保障される。
高度障害 非常に重い障害状態でその後の生活に重大な支障をきたす状態になると住宅ローンがゼロ円になる。保障の要件が抽象的。 高度障害の一部については、新団信では保障対象ではなくなるものもある。

現在の制度では、保険金の支払い対象になるのは高度障害と死亡の場合です。高度障害とは何か?共通の定義はありませんが、例えば次のようなケースだと『生命保険文化センター』が例示しています。

  • 両目の視力を全く永久に失う。
  • 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失う。
  • 中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要する。
  • 両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失う。
  • 両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失う。
  • 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失うか、またはその用を全く永久に失う。
  • 1上肢の用を全く永久に失い、かつ1下肢を足関節以上で失う。

保障の明確化と充実

非常に重い障害ですが、この高度障害の定義が保険会社によってまちまちだというのが実態です。利用者としてはどう考えても高度障害だと認識している場合、他の保険会社では高度障害にあたる場合でも、たまたま自分の加入している保険会社では対象外だった…ということもあるのです。

これは思わぬ落とし穴ですよね!

10月からの新機構団信制度では、死亡以外の保障の範囲がこの「高度障害」から「身体障害保障」に変更され、高度障害以外でも、身体障害者福祉法に定める障害等級(1・2級)の「身体障害者手帳」を交付されれば保険金の支払い対象になります。要件は障害者手帳の障害等級ですから、非常に明確です。

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新制度では、保障内容を身体障害者手帳の交付や介護認定等公的制度と関連付けることにより、利用者とってわかりやすく『え?これが保障されないの!?』なんていうことが無くなります。また同時に保障内容も充実するんですね。

具体的な例としては、ペースメーカーを植え込んだり、人工透析が不可欠になって日常生活活動が極度に制限される状態で1・2級の身体障碍者手帳が交付された場合などが当てはまります。なお、一定の保険料の上乗せを行って3大疾病保障団信に加入する場合には、3大疾病のほか、介護保障も保険金支払いの対象に加わることになりました。

ただし、高度障害の一部については、新団信では保障対象ではなくなることもあるそうです。

新団信で保障対象外となる高度障害とは?

障害者手帳の障害等級は一つ一つが軽度の障害であってもそれが累積することで障害等級が上がる仕組みになっています。

10月からの新機構団信制度では、身体障害者福祉法に定める2つ以上の障害に重複して該当したことにより、1・2級の身体障害者手帳の交付があった場合も、残りの住宅ローンはゼロ円になります。

しかし、一つの障害に該当した原因が保障開始以前に既にあった場合、その後に事故や病気などで、もう一つの障害を負ったことで累積で2級の身体障害となった場合はどうでしょうか?

その場合は、保障開始後に負った障害で1・2級の障害に該当しない場合は保障されないことになります。

また、身体障害状態を保障する公的制度には『障害年金制度』や『労働者災害補償保険』などがありますが、これら制度の受給資格があっても身体障害者手帳が交付されていなければ、保障の対象にはなりません。

  • 保障開始後の障害で1級2級でなければならない。
  • 身体障害者手帳を交付されてなければならない。

つまり『身体障害者福祉法』の障害ということに明確化したことの副作用として、従来の高度障害の一部が保障されないことも出てくるわけですね。

しかし、全体的には保障はグレードアップすると考えて良いと思います。毎月の返済は高くなってしまう分、病気やケガなどの保障については充実しますので、その保障目当てに、新制度まで待つという選択肢も合理的だと思います。

 

2017年10月以降のフラット35の金利はどうなる?

ここまで読めば、10月1日以降申し込みからスタートするフラット35の団信の新制度のポイントが不動産の営業マン以上に把握できたと思います。次に問題になるのが金利の動向ですよね。ここのところの長期金利は、上がったと思えば下がるを繰り返しています。

目下の8月から9月にかけては0.04%下がるということですが、9月から10月、11月にかけてはどうなっていくのでしょうか?

北朝鮮の地政学リスクで長期金利は低下傾向

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北朝鮮の大陸間弾道ミサイルがグアムを狙って日本の中国地方と四国の上空を通過する…

いよいよアメリカとの軍事衝突は避けられないかもしれない…

この不安材料が長期金利を引き下げ、同じく長期金利のフラット35の金利にも波及しています。このブログを書いている28日には、10年の長期国債利回りが0.01%と、実に4カ月ぶりの低金利になりました。

これまでの日本の長期金利の上昇はアメリカの長期金利に引っ張られていたんですが、トランプ政権の迷走もありアメリカの金利も低下していますので、長期金利の抑制政策をとっている日銀としては追い風です。国債の購入量を減らしながら金融緩和効果を維持できますので。

そして、これから住宅ローンを借りようという人にとっても追い風ということです。

9月から10月、10月から11月にかけてこの低下傾向が続けば、フラット35の新制度で毎月の返済額が増加してしまう…というデメリットが低く抑えられるという期待がありますよね!

 

まとめ~金利変動している時は融資の実行を月末にするべし

現在のような金利の変動時には状況を見て来月か今月かを選べる月末近くに融資の実行日を設定しておくことをお勧めします。

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フラット35をはじめとする住宅ローンの金利は月の初めに発表された金利がその月の間ずっと適用されますよね。フラット35の金利であれば上がるか下がるか、前の月の20日くらいに発表される『機構債の表面利率』で概ね予想が出来るからです。

詳しい予想方法はこちらに詳しく書いています。予想というよりは、予定に近いです。

その時になって来月の方が金利が下がることが分かれば、融資の実行を延期してもらい、来月の金利で融資を受けることが出来ます。ほんの数日遅らせることで今後35年にわたって払う額が変わってくるのですから、知らない人だけが損をしているんです。

今のような金利の下降局面では特に有効です。一回遅らせて、より安い金利で借りられる可能性が上がるからですね。

長期金利は全体的に低下傾向であると言われていますが、ほんの1カ月前までは上昇傾向だったんですよね。ですから今、千日が低下傾向だと予想しているのは、現時点で公開されている情報に基づいて予測しているに過ぎません。

ですから、実際の金利の動きは千日の予想通りにならない可能性も大いにあり得ます。用法用量を守ってご利用ください。

以上、千日のブログでした。

《あとがき》

記事中の9月のフラット35の金利は記事公開時点(8月28日)の予想に基づいて記載しています。金利が公表されたら、更新を予定していますが、大きく外れることは無いと思いますので、今後の目安としては十分に利用できるものと思います。

参考になれば幸いです。

2017年8月28日

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