人間はわりと簡単に壊れる
向上心はある方がいいが、ありすぎると自分で自分を壊してしまう
向上心のベクトルはプラス方面ですけれど、そのB面としての『不充足感』をバネにする側面もありますよね。
- 現状に満足するな
- 今のままでいいのか?
- 現状に満足するな
- 今のままでいいのか?
なのに、若い人たちは答えを単純化したがります。
「私には無限の可能性があるのかないのか、どっちなんです?」と訊いてきます。
そういうとき、ぼくはこう答えることにしています。
「君の可能性は無限だし、同時に、有限である」
自分の可能性を最大化するためには、自分の可能性には限界があるということを知っておく必要があります。(疲れすぎて眠れぬ夜のために P14~15)
向上心と同時に不充足感を刺激するインターネットやSNSの発達
向上心を持つな、というようなことを書くと、おそらく反論したい人が出てくると思うんです。特に私位かそれ以上の年代の人だと思います。
しかし、最近は昔と比べると、自分と他人を比較する情報が容易に手に入るというか、勝手に入ってくるようになっているんですよね。インターネットやfacebookなどのSNSです。
かつて、自分と大して変わらない少年少女時代を送っていた友人や知人にかなりの差をつけられてしまった…というような事がつぶさにわかるようになっているんです。
とかく、そういうところに公開される情報というのは、その人のピークであったり、良い面だけを前面に出した情報だったりするんですが、見る方からすると羨望の対象となるんです。
「よし、自分も頑張ろう!」
と思っているうちはいいです。しかし、そうなれないということが分かってくると…
「なんで自分だけはダメなんだろう…」
という不充足感に悩まされるようになるんです。そこで、休んでしまえばいいんですけど、目標にするワンランク上の自分に取りつかれた人は身体や精神が悲鳴を上げても休みません。
疲れて立ち止まると、そういう弱い自分を責めるんです。
もちろん、昔からそういうことはあったでしょうが、インターネットやSNSの発達によって、より他人の成果が身近に感じられることで増幅されている感があるように思います。
ダメな『自分』を許せない壊れた人
前に書いたブログ妻が旦那にイライラする理由に答えます - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答えるでこんな絵をかきました。イライラする仕組みです。
- 中心の赤は絶対に譲れないこと
- 周辺の黄色はちょっと嫌だけどまあ許せること
- その外は自分とは違うけれど、別に気にならないこと
このときは妻がイライラする夫の行動についての図としましたが、こういったストレスを溜めやすい人というのは、自分に対してもこのような構造を持っているのではないでしょうか。
- 中心の赤はあるべき自分の姿
- 周辺の黄色はそれを邪魔する怠惰な自分
- その外は自分ではない
赤はあるべきと思っている自分の姿なんですが、実のところ自分とは違う人間でこうなりたいと思っている架空の自分なんです。
そして周囲の黄色は、怠惰であっても、まぎれもない自分なんです。しかし、それは自分として認識していません。自分が自分として認めるには値しない、排除すべき欠点だとして認識されているんです。
- 自分の中で自分を分断してしまっている
- あるべきと考える架空の自分を中心に据えている
- 本来の自分の一部を要らないものとして排除しようとしている
見るからに酷な精神状態ですよね。内田樹氏は、こういう状態を『壊れる』と表現しています。
典型的なのは、「自分とは違う人間、こことは違う場所、今とは違う時間」の方に「今、ここにいる自分」よりも強いリアリティを感じてしまうことです。
(疲れすぎて眠れぬ夜のために P13)
しかし、自分がこうなっているということは、なかなか自分では気づけないんだそうですね。言われてみると千日自身も思い当たる節があります。
疲れすぎて眠れぬ夜のために
強いて言えば、この本のタイトルがヒントではないでしょうか。このような状態になってきたということは『壊れそうだ』という、心と身体からのサインなのかもしれません。
以上、千日のブログでした。
文庫版 内田樹『疲れすぎて眠れぬ夜のために』
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/09/25
- メディア: 文庫
- 購入: 30人 クリック: 347回
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