千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える

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119番登録制度のすすめ 我が子は自分で救急車を呼んであなたの命を救うことができますか?

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119番通報 2012年1月24日午前11時1分

その119番通報を受けたのは、わたしが消防本部の通信指令課に配属されて間もないころのことだった。母は『女の子なんだから…』と反対したが、幼いころから父の仕事に憧れがあった。

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あの1995年の阪神淡路大震災の時、父は当直で家にいなかった。わたしたちの家は倒壊し、隣に住んでいた大工さんが助けてくれなければ、母も私もその後に発生した火災で命は無かっただろう。

それでも父が帰ってきたのは、発生から1週間も経ってからだった。

わたしも母もとても心細い思いをしたし、なんで家をほっぽり出してまで、他人を助けるんだろうと父を恨めしく思ったこともあったが、蛙の子は蛙ということなのだろうか。

通報者はまだ小さな子供だった

119番には火事と救急の二つの通報が来る。なので、通報を受けたら最初に『119番です。火事ですか?救急ですか?』と聞くことになっている。

 

「モシモシ…」

 

聞こえてきたのは、5歳くらいの少女の声だった。落ち着いた声だ。発番を見ると市内の固定電話だ。

家や公衆電話などの固定電話で通報すると、基本的に電話がある地域を管轄する消防本部の通信指令室につながる。

最近はスマートフォンで子守りをする親が増えたので、たまに子供がイタズラで119番通報してくることがある。しかし、その口調を聴いて直感的に『イタズラではない』と確信した。

 

同じ質問を少しゆっくりと繰り返した。

 

「こちら119番です。火事ですか?救急ですか?」

 

「ママが…てんかんの発作が起きたの」

 

119番通報は固定電話がより確実

やっぱり、本物だ。家からだろうか?ちなみにスマートフォンは電波で通信しているため、どこのアンテナにつながるか分からない。つながったアンテナがある都道府県の119番通報を代表して受信する消防本部の通信指令室につながるのだ。

そこで住所を聞き、通報者の住所を管轄する消防本部の通信指令室へ転送する。携帯電話やスマホで通報すると、途中でワンクッション入るのだ。携帯やスマートフォンで通報する場合は、住所をしっかり把握したうえで通報する必要がある。

今回のケースは固定電話なので、直で市内を管轄する消防本部に繋がったのだ。不幸中の幸いである。番号から、すぐに住所を割り出すことが出来る。

わたしは、努めて優しくゆっくりと聞いた。

 

「ママはてんかんの持病があるのね?まだ発作は起きてる?」

 

「起きてないの、寝ちゃってるの」

 

「息はしている?動いている感じはある?」

 

「息…してないみたい」

 

心肺停止は一秒を争う

最後の方は涙声になっている。呼吸が停止すれば意識を失い、チアノーゼを起こす。そして数分以内に心肺停止となる。心肺停止は酸素の供給と血液の循環が途絶えた状態で一分どころか一秒を争う危険な状態だ。

意識の消失時点から極めて危険な状態と言えるが、一般的に脳に重大な障害が残る可能性は3~4分から加速度的に増幅する。近くに大人は居ないのか?

 

「近くに大人はいる?お父さんは?」

 

「いないの。パパは会社」

 

「パパの会社の電話番号はわかる?」

 

「わからない」

 

既に、救急通報が発信された固定電話の住所へ救急車が向かっている。救急隊員が到着するまでに、何か出来ることは無いのか…?

 

「ママはいつ倒れたの?」

 

「わからない」

 

すると、受話器の背後から火のついたような赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

 

「赤ちゃんがいるの?」

 

「うん、赤ちゃん、妹なの」

 

その情景が脳裏に浮かんだ。

 

気が付いたら倒れている母親。

 

息をしていない。

 

父親は留守。

 

火が付いたように泣く、まだ赤ん坊の妹。

 

幼い彼女の小さな双肩には、今まさに、母親の生命と、まだ乳飲み子の妹の未来がのしかかっているのだ。どんなに心細いことだろうか。

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「ママを、助けて」

 

「大丈夫、あなたが電話を掛けてくれたからね。ママはきっと大丈夫。いま救急車がそっちに向かっているわ」

 

受話器の向こうからサイレンが聞こえてきた。

 

「ほら、ね。救急隊員があなたの家に来るから、ドアを開けてね。それとこの電話は切らないでそのままにしてね」

 

子どもにあなたの生命が救えますか?

その後すぐに救急隊員が駆けつけ、母親に応急処置を施し、病院に搬送することが出来た。赤ちゃんも少女も皆無事だった。母親は癲癇の持病があることから、日ごろから子どもに救急電話のかけ方を教えていたそうだ。

持病がなくても、このような状況が起こる可能性はゼロではない。

誰もがそんな状況を想像したくは無いものだが、今回のように子供が119番通報することで救われる命もあるのだ。

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119番登録制度への登録のすすめ

この話はイギリスの5歳の少女が救急車を呼び、母の命を救った実話をイギリスの子育て応援サイト「Mumsnet」がCMにしたものを元に千日が創造したフィクションです。

このエピソードでは運よく助かりましたが、一分一秒を争う重篤な傷病に迅速に対応するための119番登録制度というものが日本にはあります。

特別な支援が必要な場合に、その支援に必要な情報を事前に登録することにより、災害や事故あるいは急病等の発生時に消防車や救急車等を迅速に配備できる制度です。

  • 高齢者
  • 障がい者
  • その他緊急時において支援を必要とする人

上記にあたる人で個人情報の提供に同意し、支援情報として活用することを承諾すればお住まいの自治体の消防に情報が登録され、自宅や携帯電話からの発信情報を受けた時点ですぐに消防車や救急車等を現場に急行させることが出来ます。

まだ住所を言えない小さなお子さんが電話をしても、予め登録した住所へ救急車を向かわせることが出来ます。この場合は自宅で発生したことが条件にはなりますが。

今回のエピソードのような事態が起こる可能性があるのなら、登録しておくことをお勧めします。

以上、千日のブログでした。

《あとがき》

119番登録だけでなく、110番登録というものもあります。

たとえば、DVやストーカー被害を受けていて、重大な事件に発展するリスクがある事案についても、最寄りの警察署で同じように個人情報を登録することが出来ます。

自宅の電話や携帯番号を登録することで、110番通報からパトカーを迅速に現場に急行させることが出来ます。

自分の身を守るために、こういった仕組みは、躊躇わずに利用することをお勧めします。

2016年8月14日 

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