住宅ローンの連帯債務、連帯保証について
どうも千日です。夫婦が協力するのは当然のことです。まして、マイホームは家族の最大のプロジェクトですよね。なので、夫婦が一枚岩で当たるのです。
そうした延長線上に住宅ローンの連帯債務や連帯保証というものが浮上してくるのは珍しいことではありません。特に首都圏の物件は高騰してます。共働き夫婦の収入を合算した場合に購入できる家のレベルは各段に上がります。
しかし、住宅ローンの連帯債務、連帯保証というのは、夫婦が協力体勢にあることだけを前提に決めることじゃないです。
夫婦は別れる可能性があるからです。
だって、もとは他人同士なのですから。
つまり、
別れた場合にどうなるのか?
ということをシミュレーションした上で、判断すべきことです。
『連帯債務』『連帯保証』のいずれも、婚姻があるからこそ負ってもいいと思うものですが『婚姻契約』とは別個の契約です。
- 住宅ローンの連帯債務、連帯保証について
住宅ローンの連帯債務、連帯保証、ペアローンの違いを理解しよう
夫婦が連帯債務又は連帯保証で住宅ローンを借りる方法には次の3つの方法があります。
- ①連帯債務契約
- ②連帯保証契約
- ③ペアローン
ともに、夫婦の年収をフルに使って借りられるという点では一緒ですが、
- 住宅ローン控除を受けられるか
- 団体信用生命保険(団信)に入れるか
この2点について、取り扱いが大きく異なるのでまず把握しておきましょう。
①連帯債務契約 | ②連帯保証契約 | ③ペアローン | ||
契約形態 | 夫 | 主債務者 | 債務者 | 債務者かつ連帯保証人 |
妻 | 連帯債務者 | 連帯保証人 | 債務者かつ連帯保証人 | |
住宅ローン控除 | 夫 | ○ | ○ | ○ |
妻 | △(※1) | × | ○ | |
団体信用生命保険 | 夫 | ○ | ○ | ○ |
妻 | ×(フラット35は、○※2) | × | ○ |
※1 「新規借入」は〇。借り換え(連帯債務型→連帯債務型)なら〇、借り換え(単独債務→連帯債務型)なら×
※2 「デュエット」(夫婦連生団信)に加入した場合
①連帯債務契約は住宅ローン控除は両方OK、団信は片方だけ
連帯債務契約では住宅ローン減税の恩恵を夫婦2人でフル活用できます。夫婦それぞれが住宅ローンの債務者になるからです。
しかし団信には片方の主債務者しか入っていません。上表のように夫が主債務者となっていて、夫が死亡した場合は団体信用生命保険で残りの住宅ローンは全額免除となりますが、連帯債務者の妻が亡くなった場合は、まったく免除されません。
夫はその後、妻の支払っていた分も支払わなければならず、負担が重くなります。
フラット35なら、「夫婦連生団信(デュエット)」を用意しているため、加入すれば、夫婦のどちらが亡くなっても住宅ローンは全額免除されます。民間金融機関で同様の団体信用生命保険を用意しているのは、三井住友銀行などに限られます。
②連帯保証契約は住宅ローン控除も団信も片方だけ
多くの民間銀行が取り入れている「連帯保証契約」は、住宅ローン控除をフルに活用できません。
夫が中心になって借りた場合、夫しか住宅ローン減税が認められず、妻は減税が適用されないのです。住宅ローン控除が使えるのは『債務者』だけだからです。連帯保証人ではダメなんですね。
また、「団体信用生命保険」についても、債務者である夫しか加入できません。
③ペアローンは住宅ローン控除も団信も両方OK
ペアローンは、住宅ローン減税を夫婦でフルに享受でき、さらに団体信用生命保険についても夫婦別々に加入できるというメリットがあります。
契約が2本になるので、事務手数料や印紙代が2倍になるものの、コストとしては10万円程度のアップですむことが多いので、減税分のメリットで十分に補えます。
連帯債務、連帯保証のデメリットを把握しよう
連帯して債務を負う、連帯して保証するという契約のポイントを理解しておきましょう。
特に連帯保証については、普通の保証と違う点が3つあり、とても重い負担となっているのです。
催告の抗弁が出来ない。 |
債権者がいきなり保証人に対して請求をしてきた場合、保証人であれば「まずは主債務者に請求してよ」と主張することができますが(催告の抗弁といいます)連帯保証人はそのような主張を出来ず、返済しなければなりません。 |
検索の抗弁が出来ない。 |
主債務者が返済できる資力があるにもかかわらず返済を拒否した場合、保証人であれば主債務者に資力があることを理由として主債務者の財産に強制執行をするように主張することができます(検索の抗弁といいます)。しかし連帯保証人はこのような主張をすることができず、債権者に対して返済しなければなりません。 |
何人いても一人一人が債務全額の責任を負う。 |
保証人が複数いる場合,保証人はその頭数で割った金額のみを返済すればよいのに対して、連帯保証人はすべての人が全額を返済しなければなりません。 |
- 夫婦が一枚岩のときには、こうしたことは関係ないです。
- 問題は夫婦が一枚岩であるという前提が無くなった場合です。
離婚をしても住宅ローンが残っている限りは、住宅ローン全額の債務について上記の重い責任を負い続けるということです。
離婚したら家は売却して、住宅ローンを清算する。
こうならなかった場合には、自分が住んでいない家のローンを負い続けなければならなくなるかもしれません。別に自分が住むための家を買おうと思っても、住宅ローンを組むことは難しくなります。
夫婦それぞれがキャパシティを超えた債務を負うことになる
つまり、夫単独の収入では返済が困難な住宅ローンを夫婦で借りた場合、夫婦それぞれが自分の許容範囲を超えた債務を負っていることになります。
自分ひとりでは返済できないのですから。
特に妻の方が負うリスクが高くなる傾向にある
特に出産によって生命のリスクを負い、育児によってキャリアが中断しやすい妻の方がより高いリスクを負うことになります。
同居期間別の離婚件数で特に離婚件数が多いのは結婚2年目です。この期間というのは第一子の生まれるタイミングとも重なっているのです。
離婚した場合のシミュレーション
ですから、
離婚した場合にどうなるのか?
これをちゃんと把握してください。
それでも問題無さそうだ。
という結論になったのなら、連帯債務(連帯保証)やペアローンで住宅ローンを組んでも後悔することは無いと思います。
売却しローンが完済できれば問題なし
まずは「売却するケース」を考えてみましょう。
不動産が高く売れて、住宅ローンをすべて返済できれば、さほど問題はないですね。残ったお金を半分づつ分ければいいんです。財産分与は通常半々です。
連帯債務やペアローンで住宅ローン控除を受けるために不動産の所有持ち分というものを決めると思うのですが、それは関係ありません。結婚した後の夫婦の財産は半分に分けるのが原則です。
妻も連帯保証や連帯債務による支払い責任がなくなるので後腐れ無いですね。
面倒なのは、家の売却価格が残りの住宅ローンより安い場合です。その差額分を現金で用意しなければ住宅ローンを完済できません。お金を用意できなければ、完済まで継続しなければならないことになるのです。
売却できなければとりあえずは賃貸に回すことになるでしょう。しかし毎月の支払いが賃料よりも少なければ、持ち出しが続くことになります。しんどいです。
万が一、支払いが滞れば、元パートナーに支払いの督促が行くことになるのは、前述のとおりですね。なるべく資産価値が落ちにくい、売りやすい不動産であれば、比較的このリスクを下げることが出来るでしょう。
離婚して住み続けたい場合は借り換える
離婚後に、住宅を売却せずに、「夫婦のどちらかが住み続ける」という場合は次の2つの関門が待ち構えています。
- 連帯保証・連帯債務外し
- 所有権の買い取り
連帯保証・連帯債務外しはなかなか応じてもらえない
例えば、離婚後に元妻が家を出て、元夫が住み続ける場合でも、債務者である元夫が支払いを滞らせれば、元妻に支払い請求が行きます。
ペアローンはもっと厄介です。お互いに連帯保証しているので、元夫と元妻のどちらが住宅ローンの支払いが滞っても、相手に請求が行くことになります。
離婚しても、借金だけで繋がる夫婦です。どうなのコレ?
ですから銀行に交渉して、「連帯債務」や「連帯保証」を外してもらいたいところですが、銀行は簡単に応じませんよ、既得権ですからね。
毎年『どうにかなりませんか?』という相談が銀行に来るらしいですが、どうにもなりません。
財産分与や慰謝料については、離婚の当事者で話し合うことで解決できることです。でも、夫婦で借りた住宅ローンは銀行が絡みます。当事者の意思なんて関係ないのですよ。
借り換えればある程度確実に連帯債務、連帯保証を外せる
ではどうするか?
借り換えるのです。元夫の年収が増加していて、元妻の支払い分も十分に支払えるのであれば、借り換えで1本の住宅ローンにすることで、自動的に妻の連帯債務・連帯保証は外れることになります。
その分借り換え費用は必要になりますが、背に腹は代えられませんね。
妻の持ち分は夫に売却したとして、その部分は現金などで清算することになるでしょう。その家が幾らの価値があるのか?業者に査定してもらって夫婦で合意できなければなりません。
所有権の買取でまたひとモメあり
連帯債務やペアローンの場合、相手にも所有権があるため、その持分を買い取ってもらわなければ、いつまでも元夫婦で同じ物件を持ち続けことになりますよね。
持分は、数千万円になることもザラであり、買い取るのはかなりハードルが高いです。
もし持ち分について何もしない場合は、夫婦間で持ち分が贈与されたとみなされる可能性もあるので、税理士などの専門家に関与してもらう必要が出てくるでしょう。
特に高額物件では、夫婦のどちらかが住み続けるという選択肢は、かなり無理が出てきますよね。
- 夫婦で使わないスペースは持て余す…
- 返済の継続もしんどい…
なるべく資産価値が落ちにくくて、売りやすい不動産を購入しておき、いざという時は売却も選択肢に入れられるようにしておくのがいいと思います。
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まとめ〜夫婦が協力することと連帯債務(保証)は別モノ
基本的に千日のブログでは連帯保証を含む住宅ローンをお勧めすることはありません。
売却してゼロスタートするにしても。このように簡単に話し合いが付く場合ばかりとは限りません。
住宅ローン控除のためにペアローンにしようと思います。
こうした相談を受けることがありますが、『夫婦だから』という考え方だとするなら甘いと思います。
そもそも…
- 融資金額が足りないということは、離婚後の妻側のリスクが高くなるということです。
- 住宅ローン控除は夫の収入が増えていけば、何の問題もなく使いきれるものです。頑張ってもらいましょう。
夫婦でなくなっても住宅ローンの債務を負うことになる可能性は、3分の1です。
厚生労働省の人口動態統計によると平成27年の婚姻件数は635,096組、離婚件数は226,198組でした。
婚姻件数の約3分の1の件数で離婚しているということです。
おおむね3組に1組の割合、ということは、これはべつに特別なことではなく、普通に有りうることと考えておいた方が良いように思います。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
住宅ローンの連帯債務(ペアローン)についての相談は、夫からの場合と妻からの場合と両方あります。どちらも半々です。
私もどんな場合でもダメ!という訳ではなくて、全く妻側にもリスクは無いなと判断するケースもあります。
- 妻の方が年収が高く既に出産も終えており、大黒柱である。
- 親からの多額の贈与が予定として組まれていて10年後にはほぼ完済見込みである。
こうしたケースでは問題ないと思いますよ、とお答えしています。
最終的には自分での判断ということですから、『ダメ!』なんて頭ごなしに言うことではないと思っています。ただ、よく理解したうえで選択してください。
2018年2月20日
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ランキング | 年齢 | |||
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新規借入 | 20代800未満 | 30代600未満 | 40代600未満 | 50代1000未満 |
30代600~1200 | 40代600~1200 | 50代1000以上 | ||
20代800以上 | 30代1200以上 | 40代1200以上 | ||
借り換え | 20代借換 | 30代借換 | 40代借換 | 50代借換 |
団信 | 20代団信 | 30代団信 | 40代団信 | 50代団信 |
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