4月からアニメ化される和風ウエスタン、アドベンチャーグルメ、猟奇ホラーに伏流する心の再生の物語
どうも千日です。4月からあの「ゴールデンカムイ」が地上波でスタートします。いやーこれをアニメとはいえ、映像化して公共の電波にのせるとは、なかなかの英断です。
「こういう作品」が求められる世の中になってきたということでしょう。ゴールデンカムイとは、ヤングジャンプで連載中の漫画作品(野田サトル著)で、明治後期、日露戦争後の北海道を舞台とした…
- 和風+ウエスタンで、
- アドベンチャー+グルメで、
- 猟奇+ホラーで
- エロ+コメディな
娯楽要素を全て詰め込んだような作品です。全てガチなので、特に「猟奇+ホラー」の面ではかなりのグロ注意ですが、その根底にはいちどは壊れてしまった人たちの再生のストーリーがあります。
日露戦争で人間性を失った「不死身の杉元」
まず、この作品が大丈夫なのか?第一話の冒頭でだいたいわかります。本作品の主人公である杉元佐一(すぎもとさいち)が旅順で白兵戦で敵の塹壕に突っ込み、鬼のような凄まじさで敵を圧倒するのですが…
口の中に銃剣を突き立てたり、両親指を相手の眼窩に突っ込んだりと、まあ、人間の肉体と生命に対する苛烈な表現がキマス。
この段階で、すうっと血の気が引いてしまうひとは、そっ閉じしてテレビ放送もチェックしないで、一切かかわらずに生きていくことをお勧めします。
本当に序の口ですので。
アイヌの少女「アシリパ」と隠されたアイヌの金塊を探すロードムービー
日露戦争から返ってきた杉元は戦死した親友の妻の治療費を稼ぐために北海道で砂金をとりにやって来るのですが、そこで、アイヌの金塊のウワサを偶然知り、金塊を探すことにするのです。
そのパートナーとなるのがアイヌの少女「アシリパ」です。正式にはリはちっちゃいリです。どんな発音になるのかアニメ化では楽しみです。
アシリパは金目的ではなく、父をその金塊が原因で殺されたという過去を持つことから、父の仇討ちのために杉元に協力します。はじめはお互いの利害のみで一緒にいたのが、だんだんと絆が深まっていくのが見どころです。
こういうオッサンと少女の組み合わせのロードムービーって結構ありますよね。最近ではゲームですけど、ラストオブアスがそうでしたし。
物語の構造としては西遊記だと思った
私は見ていて孫悟空と三蔵法師のような感じを受けたんですよね。杉元が孫悟空でアシリパが三蔵法師です。
物語当初の杉元は戦争によって人間性をかなり失っています。しかし、一緒に旅をしながら寝食をともにし、アイヌの考え方や信仰に触れるうちに徐々に人間らしさを取り戻していくんですよ。
- 三蔵法師はお釈迦様の仏教です。
- アシリパはアイヌの教えです。
アイヌは狩猟民族です。自分たちの獲物となるヒグマなどの動物を「カムイ」として自分たちと同等またはそれ以上の存在として敬い、畏れ、自然とともに生きるための道義を体現する存在として描かれています。
鹿は死んで杉元を暖めた
鹿の体温がお前に移ってお前を生かす
私達や動物たちが肉を食べ
残りは木や草や大地の生命に置き換わる
鹿が生き抜いた価値は消えたりしない
(ゴールデンカムイ3巻 アシリパのセリフより引用)
アイヌのジビエグルメ漫画の側面もある
ヒトと獣の境があいまいなんですよ。作中では多くの人が死にますが、 彼らもまた、生きるために動物を殺して食べます。
杉元ウサギの目玉食べていいぞ
…
何だその顔
目玉はその獲物を獲った男だけが食べていいものなんだぞ
うまいか?ヒンナか?(食事に感謝する言葉)
よしよしもう一個あるぞ
こんな感じで杉元に獲ったウサギの目玉を生で食べさせます(あくまで、本人は良かれと思って)。もちろんその後にご褒美もあって、ウサギの肉をひき肉にしたつみれ汁を作ります。
これが本当に美味しそうで、ジビエ料理のグルメ漫画の側面もあるんですよ。
金塊をめぐる人間同士の争いや、最強の生物であるヒグマとの戦いの合間にこうした心温まるシーンが入るので読み進めていける面もありましたね。
壊れてしまった人達の物語が自分にも投影される
杉元と金塊を巡って対立する鶴見中尉の存在感がすごいです。
日露戦争の奉天会戦で砲弾の破片の直撃を受け、頭蓋骨の前面を吹き飛ばされたため、額に固定具を装着してます。興奮すると変な汁が出てくると言ってハンカチで拭うのですが、ぶっ飛んでます。
分かりやすく「壊れてしまった人」なんですが、不思議な求心力で同志を集め、アイヌの金塊を使って北海道独立をもくろんでいるんです。
日露戦争で勝利した日本ですが、アメリカの介入によってロシアから賠償金をもらえることはありませんでした。鶴見中尉は、それについて不満を持つ兵士たちや戦死者、その遺族たちの生活を保障すると宣言しています。
こうしたことって、最近の我々にも投影されることじゃないでしょうか?
死ぬほど働いても報われることがない
マンガの中では、日露戦争ですから「国のため」に働いて死んだ人が沢山いるんですよ。また、戦争によって杉元のように心が壊れてしまったひとも多いです。鶴見中尉の周囲にはそうした…
- 裏切られた、
- 傷を負った、
- 心が壊れてしまった、
そんな男たちが集まってきます。鶴見中尉もまた「まだ戦争は終わっていない」という壊れた人間なんです。
そして金塊を奪い合う、奇人、変態、超人ぞろいの登場人物たちもまた、その時代や運命に翻弄され、傷を負った人間なんですよ。
最近だと森友問題で国有地売買を担当する部署に所属していた近畿財務省の担当職員が自ら命を断つという痛ましい事件がありました。
野村不動産では違法な裁量労働制で働いていた50代の男性社員が過労を苦にして自ら命を断ちました。
多かれ少なかれ、我々日本人には自分を犠牲にしても、体制の方を守ろうとする、そういうところがあるんです。
壊れてしまっても前を向いて生きていく強さ
ゴールデンカムイの登場人物って、奇人、変態、シリアルキラーのオンパレードです。
でもどこか、憎めないところがあったり、自己を投影してしまったりするのは、壊れてしまった理由がちゃんと描かれていて、それでも彼らが必死に運命と戦い、前向きに生きる道を探そうとしているからなんですよ。
彼らは、最後まであきらめることをしません。
ストーリーの中では命を落としてしまう人もいますし、何とか生き延びる人もいます。
どの登場人物にも共通することは、死ぬまで生きることに前向きなんです。それが多くの人に勇気を与えているんじゃないかと思うんですよ。
まとめ~とはいえキツ描写がありますので観る人を選ぶでしょう
オススメです。4月からアニメがスタートになったらぜひ観たいと思います。現時点で既に単行本で12巻まで出ています。
私がこれを知ったのは、いつも行くスーパー銭湯のくつろぎの間にあるマンガにあったからなんですよね。
なんとも言えないこのエロい目に誘われて読みました。
妻の方が1時間ちかく長湯なんで、行くたびに読んで12巻まで読破しました。
ちょっと脅しましたけど、最近のジョジョの奇妙な冒険が大丈夫なら、まあ、大丈夫かもしれません。
ジョジョにも、猟奇的な話もありますもんね。ただ、ジョジョは少年ジャンプ、ゴールデンカムイはヤングジャンプということで、ちょっとその匙加減が違ってくる感じだと思います。
万人受けはしませんけど、千日はオススメします。
以上、千日のブログでした。
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