千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える

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住宅ローンの本審査は最長2ヶ月待ち、融資実行時の金利はどうなる?

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2ヶ月後の融資実行時の金利はどうなるか…不動産業者、銀行、日銀の思惑とは

どうも千日です。借換の申し込みが殺到していて、本審査で2カ月待ちもあり得るというのが現状です。

8月のはじめに三井住友信託銀行に借換の仮審査を出したんですけど、『仮審査に通った』という連絡が来たのは9月の初めでした。

まさに仮審査だけで1カ月の期間を要したことになります。ネットでの申し込みでメールアドレスを入れていたんですけど、直接電話がかかってきました。

その時の銀行の融資担当者Sさんとの会話です。

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Sさん「…それで、このまま本審査のお手続きをされますか?」

千日「うーん、本番までの期間はどれくらいかかるんですか?」

S さん「ただいま、沢山のお申込みを頂いておりまして、本審査までには1カ月から2カ月ほど見ていただかないといけないんですが…」

千日「2カ月待ちですか!?凄い人気ですね!」

Sさん「先着順となりますので、今からですと最長では2ヶ月という期間もあり得ます」

千日「フゥ、2ヶ月先の金利なんて分かりませんよね」

Sさん「申し訳ございません、なにぶん…(以下略)」

 

うわーマジですよ。

ということは、2カ月先の金利を予測して申込をする必要があるってことですね。

千日の場合は借換ですけど、これから家を買うという人にとっては、さらに悩ましいことでしょう。

本審査を急かす不動産業者の思惑

売り手にとっては、今日、売買契約がとれても入金や売上は2カ月先までオアズケを食うことにもなります。 

この時期に完成済みの建売戸建てや中古住宅を購入された方の中には、住宅ローンを早く決めるように不動産業者から急かされている人もいるでしょう。

それは、こういう理由です。

  1. 住宅ローンの本審査が通らないと入金が確約できない。
  2. 入金が確約できない人に住宅を引き渡せない。
  3. 住宅を引き渡せないと売上にならない。

ですから、とにかく本審査を急いでほしいわけです。

 

千日なら、

そういう文句は銀行に言え。

と返します(もうすこしソフトに言うでしょうけど)。そもそも銀行が審査に時間がかかっているのはわたしの責任じゃありません。

それと後述しますが、今から9月21日までは最も住宅ローン金利を選びにくいタイミングなんですよ。逆に9月21日になったら、もう選択の余地がなくなる可能性もなきにしもあらずです。

 

銀行の貸し渋りにも警戒すべき時期に来ている

今回、融資担当のSさんと直接話して何となく肌で感じたんですけど、銀行としてそれほど積極的に融資を取りたいという雰囲気ではないですね。

銀行として表面的には優遇幅を競って、住宅ローンの争奪戦を繰り広げているんですが、現場としては徒労感を感じているようなムードを感じました。

好きで金利を下げている訳じゃないし。

っていうか、下げざるを得ないんだけど。

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借換で高い金利の既存債務者はどんどん減っていきます。低い金利を提示して新たな債務者をゲットしていかなければ、さらに苦しくなるんです。

めちゃめちゃ忙しいんですけど、それによって全く儲かっていない、報われない仕事です。

大きな蛇が自分のしっぽを飲み込んでいく…ウロボロスの蛇を彷彿しますね。

住宅ローンの利用者であるわたしたちにとって、今この瞬間は低金利のメリットだけが表面化してますが、その反面、確実に銀行の利益を圧迫しているんです。

今はわたしをお客扱いしてくれている融資担当のSさんですけど、一転して貸し渋りに振れるリスクが水面下で進行している…

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そしてこの貸し渋りリスクには、銀行の銀行である日銀(日本銀行)も既に警戒を強めている状態なんですよ。

 

日本銀行の思惑と今後の金利動向の行方

そもそも、銀行の利益を圧迫したのは日銀のマイナス金利政策が原因です。

マイナス金利とは、銀行が今まで日銀に預けていた余剰資金に逆に利息を払わせることです。

銀行は自分が預けている預金に利息を払うなんて嫌なので、日銀に預けた預金を引き落とす。その資金は投資や融資に向けられて、経済を刺激するだろう。

これが日銀の描いた絵で、下記は当時の千日の記事です。

このマイナス金利政策によって長期金利が史上初のマイナスになり、住宅ローンが歴史的な低金利を更新していますね。

しかし、日銀は住宅ローンの金利を下げたかったわけではありません。あくまで副作用です。

日銀が見ているのは物価安定目標です。

 

2%の物価安定目標

日本銀行法では、日本銀行の金融政策の理念を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」としています。

物価の安定が大切なのは、それがあらゆる経済活動や国民経済の基盤となるからです。

市場経済では、個人や企業はモノやサービスの価格を手がかりにして、お金の使い道を決めていますよね。なので物価の大きな変動は個人や企業が行う投資や消費の判断を迷わせ、景気を後退させます。

また物価の変動は所得配分にも歪みをもたらし、貧富の差を拡げるんです。

そこで日本銀行は2013年1月に「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これの早期実現にコミットしているんです。

マイナス金利政策はその肝入りで行った政策なんですね。

で、どうなった? 

そういう日本銀行としての総括2016年9月20日と21日に開かれる金融政策決定会合で行い、今の金融緩和策についての効果や副作用を検証して今後の政策を見直すことにしているんです。

 

見直すと「言っただけ」で反応する市場

長期金利は2016年1月29日のマイナス金利政策がトリガーとなり、歴史的な低金利が続いていたんですが、2016年7月29日の日銀の金融政策決定会合後に反転して急上昇しました。  

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なんで上がったか?

総括そのものは会合の度に行う定例のものですが、その当たり前の事をわざわざ表明するという事が「マイナス金利政策を縮小・撤廃する方向転換」のサインではないかと市場に受け止められたんですね。

日銀が「見直そうカナ」と言っただけでコレだけ即座に反応するのが市場なんです。 

事実これによって国債が売られて長期金利は急上昇し、9月の住宅ローンの固定金利と10年固定金利も連動して5カ月ぶりに上昇しました。

金利の決まり方についてはこちらで分かりやすく解説してます。

 

10月以降の長期金利は9月20日、21日の総括が出るまで分からない

もしも、マイナス金利政策を縮小・撤廃するという総括になれば、長期金利はその日のうちにマイナス金利政策前の水準に戻ります。急激な動きになりますので、それ以上の水準に上がるんじゃないでしょうか。

逆にマイナス金利政策をさらに深堀りするという総括になれば、いったん上がった長期金利はまた下がるでしょう。

  • 上がるか
  • 下がるか

どちらにもなりうるエックスデーが9月20日と21日ということです。

 

マイナス金利縮小で長期金利が上がったら変動金利

長期金利が上がったら、10月の適用金利に即座に反映されます。すでに10月に融資の実行を予定している場合は金利が上がった固定金利が適用されることになります。

マイナス金利の縮小によって長期金利が上がるとすれば、それは今の想定をはるかに上回る金利水準になるでしょう。

さっきのグラフを見れば分かると思いますけど、我々が「上がりそうだな」と思った時にはもう上がってるのが長期金利です。それ位早いんです。

この長期金利の影響を直接受けないのは短期プライムレートに連動する変動金利です。

固定金利のみで審査を受けているなら、違約金を払ってでも引渡し日を延期して変動金利で本審査をやり直す方がマシな場合もあり得るでしょう。

 

マイナス金利維持で長期金利は?

マイナス金利が拡大され、即座に長期金利が下がり10月の適用金利に反映され下がった固定金利が適用されることになります。

しかし、10月の固定金利は上がりました。

日銀総括の内容は、マイナス金利は0.1%に据え置かれる一方、国債買い入れで利回り曲線を意識した長短金利操作付き量的・質的金融緩和というものでした。

ちなみに、短期プライムレートに連動する変動金利はこの影響を受けません。ほぼ今月と同じ金利で推移するでしょう。

変動金利の方がむしろ安定しているんじゃないの?

この時期に限って言えば、特殊な状況なのです。

 

割れる日銀の金融決定会合その正念場

また、総括が玉虫色のよくわからないものである可能性もあります。というのも、金融政策決定会合で協議している9人の委員の意見が3つに割れているからなんです。

  • マイナス金利支持派:黒田総裁ほか数人
  • 国債購入の量を重視するリフレ派:岩田副総裁ほか数人
  • 追加緩和反対派:佐藤審議委員と木内審議委員

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政策委員会 : 日本銀行 Bank of Japan

9人の委員間で一致した意見が示されない場合は、個々の意見を併記することになるかもしれません。

個々の意見を併記、ということは、こういうことになります。

日銀もよく分かんない。

それが本音です。

この総括は、金融政策の方向性を占う試金石として市場の関心を集めています。

ただ、黒田総裁のマイナス金利支持派とリフレ派は大きな括りでは金融緩和派ですから、金融緩和が多数派というのは大きな流れです。

それが正解かどうかは別として、です。

今の日本は未だかつて誰も経験した事の無いポジションに置かれているんですよ。全員が初体験なんですから「自分には制御できる」って言ってるヤツは嘘つきです。

人口が減り、

市場は縮小し、

経済成長も終わり、

老人だけが増える。

それを日銀はハンドル出来る。

ウソなんですけど、そういう建前をとっていて、今のところ皆=市場はどっかで嘘と知りながらそれに乗っかってるんです。

ホントは分からないんだよね〜。

そういう「ぶっちゃけ話」をしてしまうと、建前が崩れ、市場は日銀の言動に懐疑的になりますのでダイレクトに日銀の政策が反映しにくくなっていくでしょう。

それは、日銀の目指す2%の物価安定目標が遠のくことを意味します。この日は日銀の正念場なんです。

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まとめ

9月20日と21日の会合結果は、我々住宅ローンの利用者にとって大事なポイントなんですね。

つまり、住宅ローンの金利タイプの決定を、この会合前に決めるのはある種のギャンブルになってしまいます。

しかし、早く決めないと相手に迷惑になる。

不動産会社の営業マンは「家を売るまでがお仕事」です。お客が住宅ローンの選択に失敗しても、審査が下りて残代金が入金されれば「めでたし」です。

自分はその家に今後何十年も住み続け、何十年も住宅ローンを払い続けるんです。

優先すべきは自分です。プレッシャーをかけてくる営業マンもいますが、そこのところは彼らも良く分かっています。

マイホームの購入に必要なのは冷静な判断と十分な自己資金です。千日のブログを読んだ方が、後悔の無い良い決断をされることを祈っています。

住宅ローンの金利タイプごとの特徴を知り最適な住宅ローンを選ぶ - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える ⇦に戻る。

以上、千日のブログでした。

《あとがき》

この記事はお題を下さい千日に きっと誰かの役に立ちます - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答えるにコメントでご相談くださったまろまろママさんのリクエストに応えて執筆しました。

参考になれば嬉しいです。

お題は随時募集してますので、どうか遠慮なくお寄せくださいね。

2016年9月10日

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