新公会計の導入に先立って日商簿記検定3級を取得した方がいいか?
どうも千日です。日商簿記検定3級のインターネットによる申込みの受付が開始されていますね。
一言で答えよと言われれば『YES』です。
二言許されるなら『限界はあるがメリットが上回る』と答えるでしょう。
念のため、私は日本商工会議所の関係者ではありませんし、何の義理もありません。
日商簿記検定とは
日商簿記検定っていうのは、日本商工会議所が年に2〜3回実施している簿記の技能を検定する試験です。経理や財務の実務を担当する人が大抵は取得してます。
国家資格ではありませんが、民間資格でも無く公的資格です。全国的に知名度が高く、経理や財務、一般事務職への就職や転職に有利な資格として認知されていますね。
新地方公会計がモデルとしている企業会計の基礎を身に付けられるメリット
最大のメリットはこれです。新地方公会計制度の目玉は以下の2点です。
- 複式簿記(官庁会計は単式簿記)
- 発生主義(官庁会計は現金主義)
日商簿記検定はまさに複式簿記の技能を測る検定試験なのです。また、民間企業の会計は発生主義で取引を認識します。
つまり、日商簿記検定試験の為の学習を行うことは、新地方公会計制度の複式簿記と発生主義を身に付けることに直接的に繋がります。
複式簿記の一番簡単な説明
複式簿記って何それ美味いの?という人のために極めて簡単に説明します。複式簿記とは、発生した出来事を会計の言葉で日々記録することです。
例えば、
4月1日に3千万円の土地を購入して、支払いは分割払いにした
この出来事は取引と言い、記録する際は以下のように翻訳されます。
2015年4月1日
(借方)土地 3千万 (貸方)未払金 3千万
複式簿記では左右で増加と減少を表現します。これを噛み砕くと以下の二つの面に分解出来ます。
- 3千万円の資産(土地)が増加した
- 3千万円の負債(未払金)が増加した
左側に土地3千万円というのは資産が増加したという意味です。
右側に未払金3千万円というのは負債が増加したという意味です。
翌日この土地を5千万円で売却し即金で受け取った
この取引は下記のように翻訳されます。
2015年4月2日
(借方)現金 5千万 (貸方)土地 3千万
(貸方)売却益 2千万
これを噛み砕くと以下のようになります。
- 5千万円の資産(現金)が増加した
- 3千万円の資産(土地)が減少した
- ということで2千万円儲かった(売却益)
仕訳を集計して出来る貸借対照表と損益計算書
4月1日に3千万円の土地を購入して、支払いは分割払いにした。
翌日その土地を5千万円で売却して即金で受け取った。
こんな感じの出来事を簡潔に下記のように記録するんです。このような簡潔な記録を仕訳と言います。
2015年4月1日
(借方)土地3千万(貸方)未払金3千万
2015年4月2日
(借方)現金5千万(貸方)土地3千万
(貸方)売却益2千万
仕訳は言葉で記録するよりも単純かつ簡潔に記録出来ます。
さらに仕訳を単純に集計して一覧表示することで、その会社の財政状態と経営成績を一目で把握する表を作ることが出来るのです。
貸借対照表(B/S)
貸借対照表(B/S)は財政状態という側面から見たこの出来事の結果です。土地は結局売却されましたので残っていませんね。黄色の部分=土地はプラスマイナスゼロとなります。
つまり分割払いする負債3千万円を上回る5千万円の現金を持っている状態です。これを財政状態と呼び、その財政状態を表す表を貸借対照表と言います。
B/SとはBalance Sheet(バランス シート)という英語の頭文字による略称です。
損益計算書(P/L)
損益計算書(P/L)は経営成績という側面から見たこの出来事の結果です。一連の取引によって2千万円の利益を得ましたね。
当期純利益の2千万円と貸借対照表の利益剰余金の2千万円は一致しています。これは偶然ではありません。貸借対照表と損益計算書のどちらのアプローチを取っても、計算される利益は同じということです。
この損益計算書で表現されているのは、土地を買って売っただけで費用を一切使わず2千万円の収益を得たという成果です。これを経営成績と呼び、この経営成績を表す表を損益計算書と言います。
P/LとはProfit and Loss statement(プロフィット アンド ロス ステートメント)の頭文字を取った略称です。新地方公会計では『行政コスト計算書』という名称になります。
このような財務諸表(貸借対照表と損益計算書又は行政コスト計算書の総称)を作成する複式簿記の技能検定が日商簿記検定なんです。3級は最も基本的な部分をマスターしているかというレベルになります。
日商簿記検定の限界
しかし、日商簿記検定の検定試験に合格してもそのまま新地方公会計の即戦力となる訳ではありません。
官庁会計と企業会計の根本的な目的の違い
(図は総務省HP 統一的な基準による地方公会計マニュアルから転載)
企業会計の作成目的は利益の追求です。これに対して官庁会計の目的は住民の福祉の増進です。日商簿記検定試験の学習によって習得した複式簿記の活用という点では、全く違う世界のものだということを肝に命じておく必要があります。
その他にも官庁特有の取引についてはカバーされていません。そういう部分については総務省のマニュアルで別途学習しなければなりません。
前時代的な日商簿記検定
日商簿記検定の残念な所です。現代において会計にITは不可欠ですが、今だに手書きで帳簿を作成することを前提とした内容です。
会計システムは手書きの帳票体系をプログラムにしただけだといえば、その通りなんですが、もう少しテキストや問題にIT化された実務を反映しても良いのでは?と思います。
日商簿記検定3級は個人商店をベースとした会計に限られる
最も基本的な簿記の技能レベルを想定した級なので、しょうがないといえばしょうがないですね。
日商簿記検定試験3級の申込み
3級の試験日は2015年11月15日です。今はインターネットで申込みが可能で既に9月7日から受付が開始されています。下記リンクを貼っておきます。
簿記3級の難易度と学習時間の目安
簿記3級は独学で取得する人も多い資格で比較的取りやすい資格と言われています。
学習時間について、個人差はありますが50時間から100時間と言われています。一日2時間なら25日から50日という所ですね。今からはじめても合格は十分に射程圏内だと思います。
以上、千日のブログでした。
簿記の仕訳をマスターするコツ