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【新地方公会計制度2】固定資産台帳が促進するスリム化と民間参入PPP/PFIとは?

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スリム化とアセットマネジメント

どうも千日です。

今回は前回頂いたご意見から、固定資産台帳について掘り下げます。固定資産台帳は複式簿記によって蓄積されるストック情報の代表的なもので、今回の新地方公会計制度の肝となっていることの一つです。
 
今日は総務省が公表している『統一的な基準による地方公会計マニュアル』『資産評価及び固定資産台帳整備の手引き』の中から制度の重要な部分を記事にします。

 

新地方公会計制度の固定資産台帳とは

新地方公会計制度固定資産台帳と企業会計の固定資産資産台帳は、どんな点が同じで、どんな点が違うのかを確認してみましょう。
 
まず同じところ
『資産評価及び固定資産台帳整備の手引き』より
固定資産台帳とは、固定資産を、その取得から除売却処分に至るまで、その経緯を個々の資産ごとに管理するための帳簿で、所有する全ての固定資産(道路、公園、学校、公民館等)について、取得価額、耐用年数等のデータを網羅的に記載したものです。
ほぼ同じです。
 
そして違うところ
『資産評価及び固定資産台帳整備の手引き』より
固定資産は、1年限りで費消される費用と異なり、その資産が除売却されるまで長期にわたり行政サービス等に利用されることから、会計上の価額管理を行う必要があり、(以外略)

ここはちょっと違います。ちょっとの違いですが重要な違いです。

行政コストのスリム化

企業会計では、固定資産はその使用によって獲得される利益で回収しなければならない投資だと考えます。

固定資産の取得に要した支出はその耐用年数にわたり『減価償却』という方法で費用に配分されます(減価償却費)。売上よりも減価償却費を含む費用が多い場合は『赤字』ということで店を閉めたり売却したりするんです。

新地方公会計制度ではちょっと違います。固定資産は利用者からの収入で回収する投資ではありません。固定資産を減価償却するのは同じですが『赤字』だからといって即撤退という訳にいきません。

じゃあどんな捉え方をするのか?

一例を挙げると『行政サービスの利用者1人当たりの行政コストは幾らか』という尺度です。

  • 他の地域の同じ行政サービスと比べて多いか、少ないか?
  • 他の代替可能な行政サービスと比べて多いか、少ないか?

統一的な基準で全ての地方公共団体が継続して固定資産台帳を整備することで上記の分析に利用できる情報が取れるのです。

 

これによって
他の地方公共団体と比べて過剰になっている行政コストが浮き彫りになる→公共施設の統廃合が進められて、行政コストのスリム化が進むということです。
 
また、他の地方公共団体が優れた取り組みをしている場合、統一的な基準で作成してますから、その成果も浮き彫りとなります。良いものはマネしようという動きが盛んになるんです。
 

民間参入PPP/PFIの促進による効率化

まずPPPとPFIとは何かを説明しておきます。
 
PPPとは公民連携=公共と民間が連携して公共サービスを提供する仕組みを言います。
 
PFIとは民間主導=民間が主導して公共サービスを提供することで、効率的でかつ効果的な公共サービスの提供を図る考え方を言います。
 
  • 少子高齢化
  • インフラの老朽化
先細りする税収に加えて増加する行政コストに備えるために、行政をスリム化するだけでなく、効率的にしていく必要があるのです。そこで目を付けたのが民間の積極的な参入です。
 
では、なぜ固定資産台帳の整備が民間参入=PPP/PFIの促進に繋がるのかを説明したいと思います。
 

PFIのファイナンスの側面

PFIはプライベイト•ファイナンス•イニシアチブの頭文字から来ています。その仕組みは(かなり大まかですが)下記のようになってます。
 
  1. 民間の金融機関が公共事業の収益力を担保に融資する
  2. PFI事業者(民間)はその融資金を元手に公共サービスを提供し、融資金を返済していく
  3. PFI事業者(民間)が事業に失敗し、融資金を返済出来ない場合は担保とした事業を処分して金融機関に返済する
つまり、金融機関が融資しないと始まりません。金融機関が融資するにあたって評価する担保は一般的には『事業の収益力』となってますが、もう一つは『資産の担保価値』です。
 
公有資産なので、実際にこれを売却して融資返済にあてるということはしません。しかし金融機関が無形の『事業の収益力』だけを担保にカネを貸すということは普通ありません
 
  • いつ
  • 幾らで
その資産を購入したか
 
  • いつ
  • 幾らで
その資産を修繕したか
 
全国の地方公共団体が統一的な基準で固定資産台帳を整備することは、金融機関による担保価値の査定スムーズにし、PFIの促進に繋がるだろうという狙いがあるのです。
 
もちろん、民間企業と同じ複式簿記によって作る財務書類等も『事業の収益力』を査定する材料にはなるでしょう。
 
しかし、これは私見ですが、『事業の収益力』が金融機関に対して物的担保に優る担保力を持ち得るかというと、ちょっと難しいんじゃないかと思います。
 
長文にお付き合い頂きありがとうございます。
 
ポンペイ遺跡の紀元前の道路。歩道が少し高くなっているのは道路が洪水制御用の雨水排水路となっていたからだと言われてます。
同じ頃の日本は縄文時代…驚くべき街路計画ですね!
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以上、千日のブログでした。

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