千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える

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【佐川印刷80億不正流用】5年発覚しなかった理由。実損害は80億円もなかった?ヒントはCMS。

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佐川印刷の役員による巨額の不正流用事件を斬る

どうも千日です。ゴールデンウィーク中のニュースですが久しぶりに大きな不正のニュースです。

始めにことわっておきますが私は佐川印刷とは何の関係もありません。
総合印刷会社『佐川印刷』で元財務担当役員がグループ会社の資金約80億円を不正に流用していた。使途は
  • 元役員の知人男性によるシンガポールのサーキット建設資金に54億円
  • 元役員が代表をつとめる別会社の資金15億5千7百万円
  • 京都府南丹市ゴルフ場買収7億2千万円
  • モンゴル金融機関の増資4億円
などであり、元役員は今年の1月にその概要を記した報告書を会社に提出している。報告書では『銀行印を密かに押印できたので他の役員に発覚することなく出金できた』とその手口を説明し『多大な迷惑をかけた』と謝罪している。
その後元役員は自宅周辺でも姿を見せず海外に脱出したとみられている。

どうでしょうか、80億円という金額もケタ違いですが、その使い途もバブル経済を思わせますね。

でははじめます

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佐川印刷の損害は80億円もありません

じゃ報道が嘘なの?と思われるかもしれませんが全くの嘘ではないです。
 
順を追って説明します
 

80億が無くなっていればとっくに資金ショートしてるからです

佐川印刷の年間売上は680億円ほどだそうです。非公開会社としては大きな売上ですが、同業他社の営業利益率はだいたい2〜3%です。営業利益は16億円ほどでしょうね。
 
印刷会社は製造業です。先にカネが出ていきます。5年間とはいえ80億円のカネが無くなれば、普通は資金ショートします。
 
粉飾決算•不正経理でごまかしたとしても、無いカネを生み出せる訳ではありません。
 
恐らく80億円というのは5年間で出金した総額であり、その間に戻って来たカネを勘定に入れていないのです。
 
元役員は巧みに不正を隠蔽しており、本人不在の状態で全てを調査するのは極めて困難です。
 

本人が提出した報告書をソースに出金した金額だけ集計して発表した

というのが真相でしょうね。報道はまんまと騙されたのか、あえて乗ったのかはわかりません。しかし元役員の横領80億はニュースとして十分にセンセーショナルです。
 
本当に被害は80億円?なんて考えず、我先に飛び付いたんでしょう。
 

なぜそんな発表をするか?訴訟対策です

社内的には不正な出金であっても、財務担当役員が行ったことです。知人男性は『財務担当役員だから会社の正式な意思決定で投資したと思っていた。まさか不正な出金とは思わなかった。』と主張するでしょうね。
 
会社にとってかなり不利です。知人男性を詐欺で訴えたいところでしょうが詐欺罪の成立には以下の条件を満たさないとダメです。
 
  1. 犯人が騙すつもりで騙し
  2. 被害者が錯誤したことで
  3. 被害者が財産を処分し
  4. その処分した財産を犯人又は第三者に交付した
詐欺だとすれば、知人男性に騙されたのは元役員です。それに知人男性は騙したとは認めないでしょう。
 

裁判して会社が全面勝訴する可能性は低いんです

なんとか和解にまで持っていき、少しでも回収したいというのが会社の思惑です。
  • だから請求額は出来るだけ多く見積もって出す
  • しかし虚偽の請求は出来ないので、出金額だけを集計して請求する
これが80億円という発表の裏事情なのでしょう。『損害は80億円もないんだけど、全くの嘘ではない』というのはこういう意味です。
 

不正流用の手口はCMS=キャッシュ•マネジメント•システムに類似の自転車操業

CMS=キャッシュ•マネジメント•システムの本来の意味はグループ企業がグループ内に分散している資金を親会社の専用口座に一元管理して資金管理を効率化することをいいます。
 
こうすることでグループ企業でカネを融通しあい、小さな子会社が高い金利で銀行から運転資金を借りる必要が無くなるんです。
 
元役員はグループ会社の資金運用も任されていました。不正流用したカネはグループ企業の一つであるエスピータック社から流出したらしいです。
 
要するに自分達の投資プロジェクトをこのグループ資金運用の中に組み込んだ訳です。
 
元財務担当役員は入社から長きにわたって経理財務をやっていたスペシャリストです。どの時期にどの会社で資金が余り、どの会社で足りなくなるかを知り尽くしていたのでしょう
 
グループ間の一つ一つの資金の移動の全てを理解していたのは元役員だけだったんだろうと思います。
 

『真面目で目立たない』という元役員。そして知人男性の誤算

元役員は真面目で目立たない男だったそうですね。それにしては不正流用の規模とその使い途がケタはずれです。
 
元役員は『知人男性によって道を踏み外した』のは間違いないでしょう。資金を使ったという自らが代表取締役を務める会社というのは恐らくペーパーカンパニーであり、佐川印刷から金を引き出すだけの実体の無い会社です
 
長く経理畑に居た人間が自分からシンガポールにレース場を作ろうとは考えにくいです。
 
知人男性は打ち出の小槌として元役員を利用していたと思われます。そして善意の第三者として、隠れずとも刑事罰を受ける事の無い安全なポジションをキープし、民事訴訟でも有利
吐き気を催す『邪悪』とは、何も知らぬ無知なる者を利用することだ。
byブローノ•ブチャラティ

元役員はいい大人ですから、これは当てはまらないかもしれません。それに知人男性にも一つの誤算がありました。

知人男性の誤算=元役員が会社に提出した報告書です

普通は(と言っていいかわかりませんが)、横領の犯人がその手口『報告書』にまとめて提出するなんてしないでしょうね。
 
元役員の『真面目』という人物像が何と無く想像できるような気がします。この『報告書』には知人男性にとって都合の悪い真実が記載されているかもしれません。
 

知人男性としてはさらに元役員が表に出てきて、その真面目さを発揮されるのが一番困るでしょう

元役員の自宅周辺では、最近本人を見かけなくなり海外に脱出したのでは?と言われています。
 
しかし、彼が渡ったのは海ではなく三途の川かもしれません。

以上、千日のブログでした。

《あとがき》

本日、佐川印刷の元財務担当役員に電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕状が出ました。千日のこの記事に東南アジア方面からアクセスが増加してたので、もしや?とも思っていたのですが…

人生、生きているだけで儲け物ですよ。

勝負は3アウトから

です。

2015年8月25日

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