経営者が従業員のお金を掠め取る事件
どうも千日です。今回は経営者不正についてのニュースです。
メルセデスベンツの輸入販売大手として知られるヤナセの元専務取締役(64)が約12年に渡り、同社の共済会から2億円を自分の口座に振込ませていたことが発覚し刑事告訴しました。
千日のブログではこれまで2度、従業員不正を取り上げましたが、今回は元専務取締役ですから元役員、経営者による横領です。
本件は会社の代表権のある経営者が会社のお金ではなく従業員のお金を横領したのです
共済会について詳しく説明します。
共済会というのは、主に従業員がお金を出し合って、親睦や福利厚生を行う組織です。互助会と呼ばれることもあります。
会費は通常給料から天引となって共済会の口座に振り込まれプールされて行きます。そして、病気になったり死亡した時の保険金、従業員が結婚や出産の際の祝い金や見舞金、会員を対象としたイベントに使われたりします。
つまり、共済会のお金は会社のお金ではなく、従業員のお金です。
一方で給料から天引となりますのでその管理を会社が行うことが普通です。
それを自分の預金口座に振り込ませた…
経営者として有るまじき行為です
では、共済会にとってどれだけの影響かを確認してみます。
ヤナセの従業員の人数は平成26年9月期の有価証券報告書によると、グループ全社で4,595名です会費がいくらかわかりませんが、だいたい妥当な線で月1,000円とすると、年間55百万円位が天引きされる計算となります。
ヤナセ位の大企業になると、共済会は小さな会社の年商くらいの規模になるんですね
元専務取締役はそこから12年間で2億円を横取りしました。年間平均で17百万円、従業員から年間天引される55百万円の30%です。
普通の会社でやったらすぐバレます
なぜ長期にわたり発覚しなかったか?
報道では『ヤナセの共済会は監査部や公認会計士による監査の対象となっていなかった』ためとしています。ヤナセのプレスリリースにもそう記載されています。
共済会の会費は会社が天引しますが、共済会に入った後は『会社の資産ではなくなる』ため、管理の対象から外れます。
しかし、その管理を会社の従業員が行なっている実態があるんです。外部の監査をするとお金がかかります。費用は会費から払うことになります。
そんなお金を払うより保険金や祝い金が多い方が嬉しいですね。そこは『性善説』で行こうよ、ウチの会社にそんな悪い奴はいないでしょう。
監査が行なわれなかった背景にはそういう事情があるんです。
経営者の不正は従業員を巻き込むことになります
共済会の口座管理の仕事は、部下の従業員がやることになります。元専務はエライさんですから、そんな仕事はしません。
つまり、元専務は部下に指示して共済会のお金を自分の口座に振り込ませたんですね。プレスリリースにも共済会業務関係者も処分するとあります。(また、社長を含む役員報酬をカットするそうです。)
有価証券報告書の『役員の状況』によると、元専務は現場叩き上げです。
こういう大企業の役員には外部から役員を取るケースがありますが、どちらの役員が従業員に影響力が強いかというと、やはり現場叩き上げの役員でしょう。
『この人について行けば自分も…』
『この人を敵に回したら自分は…』
サラリーマンとして、『これを断固拒否できる』と断言できる人はどの位いるでしょうか?
どちらのインセンティブが働いたかわかりませんが、たまたま共済会の担当だったことで、人生の二択を迫られ、結果として一銭も手にしてないのに、共犯者として裁かれる結果となりました。
担当者については、今回は少し同情してしまいます。
経営者による不正は、その強い立場を利用して弱い立場の従業員を巻き込みます。有るまじき行為です。