今も発覚せず進行中の不正が存在する
どうも千日です。千日がブログを始めてからすぐ立て続けに大企業の社員による横領や着服が発覚し、ブログのテーマにしました。
あえて発生ではなく発覚という言葉を使うのは、発覚せずにたった今現在も進行中の不正があると考えるからです。
一つ目の東レ元社員による横領の記事を公開した後、私のブログには『横領』という単体のキーワードのみで流入するケースが見られるようになりました。
最後まで発覚しなかった不正は存在するのでしょうか?
この命題についての答えはその実行者しかわかりません。また、時効となったからといって、そのような人が自らその手口を公開することは無いでしょう。
では…
バレない不正は存在するのか?
これを考えることに一銭の価値もありません。何故なら他でも無い自分自身が不正を働いていることを知っているからです。
横領、着服の罪を犯して得た金銭は、使えば消えますが、『いつバレるか』という不安は繰り返す度に増幅して行きます。
バレにくい不正と何故その不安が消えないかを解説します
この記事で着服や横領とは、自分が勤務している会社の現金等の資産を会社にばれずに自分のポケットに入れることとします。どのタイミングでポケットに入れるかで3つに類型化できます。
全ての不正はこの3つのいずれかに当てはまります。
- 会社に保管状態にある資産
- 会社に入って来る資産
- 会社から出て行く資産
1.保管された資産
保管状態にある現金預金は毎日の入出金の結果の残高です。現金預金の入金と出金の記録は帳簿に記録されており、領収書などの証憑や銀行取引記録などの第三者の発行した資料で裏付けられています。
発覚しないようにするには、帳簿の記録と証憑の両方を改ざんしなければなりません。
現在は殆どの企業が会計ソフトを導入しています。帳簿を修正すればその痕跡が残ります。また、偽造した証憑書類は5年位は保管されます。
この方法は経理部員で、かつ、現金預金の管理と帳簿の記帳の両方を業務として行っている人ならば容易であり、発覚も遅れるでしょう。
実例記事(2015年佐川印刷)
この場合自らの偽装は全て社内に保管されている状態となります。
2.入って来る資産
売上代金や、資産の譲渡代金を着服する方法です。色々な手口がありますが概ね下記の2つに類型されます。
- 集金の際に満額を顧客から回収し、会社には値引きをしたと報告する
- 販売したことを報告せず、顧客から代金を回収する
いずれの方法も現金で回収する方法で無ければ出来ません。また、会社間の現金取引では領収書を求められますので領収書の偽造が必要です。
通常、会社で使用する領収書は冊子で綴じられ連番が付されているので、痕跡を残さず偽造したり差し替えるのは至難の技です。
顧客が領収書の発行を求めないような飲食店でテーブル会計を行うようなお店では容易であり、痕跡も残らず、発覚が遅れます。
しかし、売上代金をレジ打ちしていない、その決定的瞬間はいつか同僚の目に止まるでしょう。
3.出て行く資産(キックバック)
支払い代金を着服する方法です。仕入や資産の購入の際に相場より高い条件で支払い、上乗せ部分を仕入業者と山分けする方法がメジャーでキックバックなどと言われます。
この方法は立場を逆転させれば『2.入って来る資産を横取りする』にも該当します。所謂共謀による不正です。
取引先との共謀は相互に一定の『信頼関係』が必要です。人事ローテーションや担当顧客のローテーションが長く行われないと起こりやすいと言われます。
また一般的にこの方法には、双方に一定の権限が無ければ出来ません。支払う側の会社では『業者を決める権限』、業者側では『入金された代金を返金する権限』です。
賢明な読者様ならお気付きでしょう。業者側は社長か、それと同程度の権限のある者が認めて無ければ出来ません。または、業者側の組織ぐるみでやらなければ不可能です。
東レの社員による着服は、このキックバックを受ける方法でした。
実例記事(2015年東レ社員キックバック)
詳しくは記事にあるとおりですがその共謀の相手は業者の女性社長だったらしいです。
キックバックの特徴は業者側の会社の利益になる点です。『おかしい』と思っていても見て見ぬ振り…社長が出てくるケースは珍しく、普通は発覚したらトカゲの尻尾切りです。
会社外部の者と共謀した場合、証憑は本物ですし、その現場を押さえられる可能性は低く、発覚が遅れます。事実、東レのケースでは不正の期間は14年にも上りました。
但し、この先の人生、共謀相手に一生弱みを握られることが代償です。やめたいと思っても相手の要求を拒むことは出来ません。
不正を働く者(その進行中)の心理
不正によりカネをポケットに入れた瞬間から、職場の風景は一変します。
同僚や上司のちょっとした視線、一挙手一投足が自分の犯罪に向けられているのでは、と疑心暗鬼になります。
一度のミスも許されません。それは、全てを失うことを意味するからです。
もう、昨日までの自分に戻ることは出来ません
発覚して罪を償うまでの間、疑心暗鬼の牢獄の時間は続きます。
私がブログで取り上げた彼らは、不正が発覚して全てを失いました。
しかし、彼らは寧ろ運が良かったのではないかと思います。罪を償いその牢獄から抜け出す機会を得たのですから。
ヴェネツィアため息橋からの眺め
ヴェネツィアのドゥカーレ宮殿の尋問室と牢獄を結ぶ橋であり、ため息橋からの眺めは囚人が投獄される前に見るヴェネツィアの最後の景色だったと言われる。
以上、千日のブログでした。
念の為、補足しますがこの記事に載せた様々な手口には同時に防止策を記載しております。加えて、ここで取り上げた手口は全て過去に『発覚した』手口です。
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